
パーキンソンの法則(Parkinson's Law)とは?
パーキンソンの法則とは、イギリスの海軍史家シリル・ノースコート・パーキンソン (Cyril Northcote Parkinson 1909年-1993年)が提唱した、人間の行動に関する法則です。
パーキンソンの法則は複数ありますが、便宜上、第一法則と第二法則とに分類されて伝わっています。どちらも根本的には「人は利用可能な資源をあるだけ使ってしまう」という人間の性質に基づいて展開されています。この章では、パーキンソンの法則が提唱された背景を踏まえて、第一法則と第二法則について紹介します。
第一法則【仕事について】
第一法則では「仕事は利用可能な時間の限界まで拡大する」ということが示されています。
当てはまる事例としては、「時間の許す限りつい残業をしてしまう」「納期まで余裕があったにも関わらず、仕事を先延ばしにしてしまい、提出が締切日直前になった」といった身近な例などが挙げられます。不適当な時間のゆとりは、業務の効率的な遂行を妨げたり、集中力が低下したりする原因となることを表しています。
第二法則【予算について】
第二法則では「支出は予算の限界にまで増大する」という旨が論じられています。
事例としては「与えられた予算や財源をいつも使い切ってしまう」といったケースです。これは、企業だけではなく、家計でも同様の問題が発生します。具体的には、金銭に余裕がある場合に気の緩みによって、衝動買いをしてしまい、散財をしてしまうという例が挙げられます。
また、収入が減少したにも関わらず、支出水準を下げられないという場合も、応用として当てはまるでしょう。
提唱された背景
パーキンソンの法則は、C.N.パーキンソンが英国海軍の経費の研究をはじめたことに端を発し、イギリスの官僚組織や行政を分析する中での、考察や発見にもとづいています。具体的には、イギリスの公務員数が増大していくことについての研究を元にして法則が提唱されました。
第一法則は、仕事の量に関係なく公務員数が増え続けていくこと、また増員しても業務時間や効率は変化しなかった現象から導かれています。さらに、増税分の資金を予算として使い切り、その上で増税を繰り返す国家財政を事例として、第二法則が発見されました。
この研究を元に同氏が1958年にロンドンで出版した著書“Parkinson’s Law: The Pursuit of Progress”(日本語版は『パーキンソンの法則』として至誠堂書店から1973年刊行)で、「パーキンソンの法則」が発表されました。
その後、官僚組織に限らず、世の中の組織や企業、個人の仕事術にまで広く一般化できる法則として広まっています。
パーキンソンの法則による長時間残業を克服する5つの対策
パーキンソンの法則は、具体的な方法を用いることで克服でき、業務の効率化が可能となります。
この章では、残業や長時間労働が増大してしまうパーキンソンの法則「第一法則」の状況を解消するために、有効な5つの対策を解説します。
仕事を細かいタスクに分けて正確な使用時間を算出する
仕事時間を適正に算出するために、まず仕事を作業(タスク)として細分化し、各所要時間を算出します。それにより、仕事全体に必要な時間の見積もりの精度が上がります。その見積もりをもとに締切を設定すれば、時間の無駄を減らすことができます。
締切までに時間の余裕があると、仕事を後回しにしたり、必要以上の時間を仕事にかけてしまったりすることが想定されます。
そのため「使用可能な時間」に仕事を合わせるのではなく、「仕事内容」に合わせて使う時間を最適化することが有効です。
具体的にはToDoリストを作成し、他の業務進行と照らし合わせながら最適な所要時間を導く方法が挙げられます。
現実的な締切を自分で設定する
従業員自身が締切日の設定を行うことにより、作業の進捗に対する認識や進行管理についての意識が高まります。
その結果、仕事に使用する時間が明確になり、先延ばしや時間感覚の欠如の防止にもつながります。
チームや別の部署と連携して仕事を行う場合、特に時間管理は重要となります。全体のゴールを明確にした上で、スムーズな業務進行となるように、締切日を設定しましょう。
目標時間を区切り時間内にタスクを終える
この作業(タスク)は何時までに終える、という作業ごとの目標時間を区切り、設定した時間内に終える習慣を身につけることも効果的な対策です。これにより、不必要に長い時間をかけることを防止できます。
また個々人だけではなく、特定の部署やチームに残業が多く発生している場合には、部署やチーム全体で作業の完了時間を設定することも有効です。
時間で区切る方法は、作業量で区切る方法と比較すると、リミットが把握しやすいため、集中力が続く可能性が高いでしょう。なお、各タスクを遂行する間は、スマートフォンなど集中を妨げるものを傍に置かない、といった工夫をすると、より能率の向上が見込めます。
使った時間ではなく成果を評価する
仕事にかけた時間ではなく、成果を評価する、という対策も有効です。具体的には、期限通りに売上目標を達成した人や部門を表彰したり、賞与に反映したりするといった方法が挙げられます。
残業を多く行えば、時間外労働の分の報酬も得られるため、パーキンソンの法則と併せて残業時間が膨らむ可能性があります。
しかし、長時間の残業が必ずしも成果につながるとはいえません。成果による評価制度を導入することで、従業員の意識改革を促し、生産性と業績の向上が見込めるでしょう。
正確な勤怠管理を行う
残業を減らす対策として、勤怠管理システムを導入し、正確に残業時間の把握ができる体制を整えることも有効です。時間外勤務の適切な管理により、従業員の残業時間が容易に把握できるようになります。
具体的には、勤怠管理システムの画面上で残業時間を可視化したり、残業(時間外労働)の上限規制に近づいた際にはアラート機能で通知したりするなどの機能の活用が挙げられます。
勤怠管理の整備により、従業員の「時間内に仕事を終える」という意識も高まるでしょう。
パーキンソンの法則による「支出の増大」を抑える2つの対策
支出増大の抑制にも、パーキンソンの法則を踏まえた対策を行うことは役立ちます。
この章ではパーキンソンの法則「第二法則」により、予算の限界まで支出が増大してしまう状況を克服する、2つの対策について解説します。
予算と実績の管理を徹底する
支出の増大を抑えるためには、予算と実績をよく比較しながら予算管理を行うことが重要です。予算と実績の乖離が少なくなるようにするための施策が有効となります。
具体的には、予算管理を行う中で、支出内容の把握を徹底することです。月ごとに予算計画の振り返りを行い、前月や前年の実績と比較することで、不要な支出に気付いたり、無駄な出費を抑えたりすることができるでしょう。
「予算を使い切る」という前提ではなく、「予算内に支出を抑える」という発想に切り替えることで、収益性や財務体質の健全化につながります。
投資効果の確認を習慣化する
設備投資をはじめ、さまざまな投資を行った際に、その支出が適切だったかどうか、投資効果を後で確認することを習慣化しましょう。
投資効果を測定・確認することにより、もし不適切な投資だった場合には、内容の見直しや中止をすることで支出の増加を抑えられます。
また、予算や資産があるからと投資を優先するのではなく、予め投資に見合う効果が得られるかを十分に検討することも重要です。
まとめ
パーキンソンの法則について、第一法則・第二法則の内容を踏まえ、不必要な残業を解消する具体的な方法を解説しました。
パーキンソンの法則を参考にした時間管理や勤怠管理は、残業削減・生産性の向上に効果的です。
残業削減の対策としては、「使用可能な時間」の方に仕事の進捗を合わせるのではなく、仕事や作業の内容の方に時間を合わせるという発想の切り替えにより、従業員自身に時間管理の意識を喚起することが期待できます。
また、予算の管理についても、「予算を使い切ること」を考えるのではなく、「予算内に支出を収める」ように、定期的に予算と実績の比較分析を行うといった収支管理の徹底が必要です。それにより、健全な財務体質への改善と、収益の向上につながるでしょう。
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