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介護休業

かいごきゅうぎょう

公開日時:2021.05.31 / 更新日時:2022.03.09

介護休業は要介護状態にある家族を介護するために、長期間の休みを取得できる制度です。従業員が介護を理由に離職することを防止するため、1991年に定められた「育児・介護休業法」に基づき創設されました。介護休業における要介護状態とは「負傷や疾病、身体上・精神上の障害が原因で2週間以上の常時介護が必要な状態」で必ずしもその家族が介護保険制度の要介護認定を受けている必要はありません。対象となる家族は「配偶者・父母・祖父母・兄弟姉妹・子ども・孫・配偶者の父母」です。休みを取得できる期間は最大93日間で、3回まで分割ができます。

介護休業を取得する条件

介護が必要な家族がいる従業員が利用できる、介護休業を取得するための条件を詳しく解説します。

1. 介護休業の対象従業員

介護休業取得の対象となるのは日雇いの従業員を除く全ての従業員です。パート・アルバイトなど、期限を定めて雇用されている従業員は以下の条件を満たしていれば取得が可能になります。

  • 1年以上同一事業主に雇用されている人
  • 介護休業取得予定日の93日後から6か月経過する日までに、労働契約期間が満了しない従業員

なお、日雇いの従業員ではなかった場合でも、介護休業を取得できないと合理的に判断される従業員は取得できません。取得できないと判断される要因には次のようなものがあります。

  • 申し出の日から93日以内に雇用関係が終了する従業員
  • 所定労働日数が週2日以下の従業員

2. 要介護状態の判断基準

介護休業は2週間以上の期間、常時介護が必要な対象家族を介護するための休業制度です。ここでいう要介護状態とは以下の2つの状態いずれかに当てはまる場合を指します。

  • 介護保険制度の要介護状態区分が要介護2以上であること
  • 以下の表の状態1~12のうち、②が2つ以上もしくは③が1つ以上あり、その状態が継続すると認められること
状態
1.座位保持 (10分間一人で座っていることができる)自分で可支えてもらえればできるできない
2.歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m歩くことができる)つかまらないでできる何かにつかまればできるできない
3.移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作)自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
4.水分・食事摂取自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
5.排泄自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
6.衣類の着脱自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
7.意志の伝達できるときどきできないできない
8.外出すると戻れないないときどきあるほとんど毎回ある
9.物を壊したり衣類を破ることがあるないときどきあるほとんど毎日ある
10.周囲の者が何らかの対応を取らなければならないほどの物忘れがあるないときどきあるほとんど毎日ある
11.薬の内服自分で可一部介助、見守り等が必要全面的介助が必要
12.日常の意思決定できる本人に関する重要な意思決定はできないほとんどできない

1. 介護休業の申し出

介護休業取得を希望する従業員は、休業開始予定日の2週間までに事業主に書面で申し出る必要があります。
書面の記載内容は以下の6つです。

1. 申し出の年月日
2.
従業員の氏名
3. 対象家族の氏名と従業員の続柄
4. 対象家族が要介護状態にあること
5. 休業を開始しようとする日及び休業を終了しようとする日
6. 対象家族についてのこれまでの介護休業日数
※2016年12月31日以前の介護休業は対象外です。

この書面は事業主が認める場合はファックス、電子メール等での提出も可能ですが、電子メールでの提出になる際は従業員が記録を出力することにより書面を作成できるものに限られます。

事業主は従業員から書面を提出された場合、「育児・介護休業法」の規定により、申し出の拒否はできません。また介護休業取得を理由に解雇・降格・減給・賞与の削減といった従業員に不利益を与える措置を取ることは禁止されています。

書面が提出された後、事業主は介護休業開始日と終了日などをおおむね1週間以内に書面で従業員に通知する必要があります。

介護休業中の社会保険料の扱いと介護休業給付金の活用

介護休業中の従業員に対する賃金の支払いに関しての法的な定めはないため、休業取得中の従業員は就業規則で給与を支払う規定を定めていない限り、原則無給となります。

また、介護休業中は社会保険料の免除制度がないため、従業員が無給になっても社会保険料が発生します。その際は雇用保険から休業期間中の所得保障として支給される介護休業給付金を活用することによって、無休期間の従業員が収入を得ることができます。介護休業の取得と給付金の活用によって、従業員も安心して介護を行えます。

1. 介護休業中の社会保険料の扱い

育児休業とは違い介護休業を利用している人が対象の社会保険料免除の制度はありませんが、雇用保険料については、介護休業中に無給であれば発生しません。介護休業給付金は賃金には含まれませんので、支給されている場合も無給扱いとなり雇用保険料は発生しません。

休業中に無給となる場合、従業員に社会保険料を支払う余裕がなくなる可能性もあります。その際は企業が立て替えて保険料を納付するか、介護休業給付金の利用を検討しましょう。

2. 介護休業給付金とは

介護休業給付金とは、介護休業を取得する従業員に対して賃金の約67%の金額を支給する制度です。

雇用保険の被保険者で以下の一定要件を満たした人が、職場復帰を前提として介護休業を取得した場合に支給されます。支給される給付金は次の計算式で算出されます。

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

申請方法は以下の厚生労働省のサイトを参照にしてください。

まとめ

介護休業は要介護状態の対象家族を介護するために従業員が休業できる制度です。介護離職が社会問題となっている現在、企業は従業員が介護休業を取りやすくするための制度整備を行い、離職防止対策を講じることが重要な課題です。

なお、介護休業を取得するためには、従業員側は休業開始希望日の2週間前までに申請を行う必要があります。

事業主には介護休業中の賃金支払いの義務がないため従業員は介護休業中に無給となる恐れもあります。その場合、事業主が、賃金の約67%の金額が支給される「介護休業給付金」の申請を行うことで、休業中の従業員の生活の不安を軽減することができます。

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