人事・労務の注目用語

ワーキングケアラー

わーきんぐけあらー

公開日時:2021.05.31 / 更新日時:2022.03.09

ワーキングケアラーとは、家族や親族の介護をしながら仕事をしている人のことです。総務省が2018年に公表した最新の「就業構造基本調査」によれば、働きながら介護をする人は全国に346万人以上いることが分かっています。ワーキングケアラーは、身体的な疲労だけでなく、周囲に相談できる人や理解してくれる人がいないことによる精神的な疲れも抱えていることが多いと言われています。介護と仕事の両立に限界を感じた従業員が介護を理由に離職するケースもあり、高齢化が進み労働人口が減少する現在の日本において、ワーキングケアラーを支える対策は企業にとって喫緊の課題です。

ワーキングケアラーとは

日本ケアラー連盟の定義では、ケアラーとは「介護」「看病」「療育」など、ケアの必要な家族や近親者を無償でケアする人とされています。

今回は働きながら家族をケアする人=「ワーキングケアラー」の解決すべき課題、そして企業側にできることについて順を追って解説します。

1. ワーキングケアラーの実態

総務省発表の「平成29年就業構造基本調査」によると、15歳以上で介護をしている人は627万6千人、そのうち、働いている人は346万3千人という結果が出ています。つまり、介護や看病をしている人の半数以上が「ワーキングケアラー」ということです。

また、同調査では性別・年齢別のワーキングケアラーの割合は以下のような結果となりました。

性別・年齢別のワーキングケアラーの割合

※総務省「平成29年就業構造基本調査」

年齢男性女性
40歳未満75.1%66.1%
40歳~49歳87.4%68.2%
50歳~54歳87.0%67.5%
55歳~59歳87.8%61.7%
60歳~64歳72.9%47.5%
65歳~69歳47.3%30.0%
70歳以上21.2%12.4%

40代、50代といった、企業の中核で働く年代の人の割合が多いことが分かります。また、この中には、介護だけでなく、育児も同時にこなしている「ダブルケアラー」が存在している可能性もあります。

2. ワーキングケアラーが抱える問題点

ワーキングケアラーが抱える問題として挙げられるのが「介護離職」です。働き盛りの40代、50代が仕事を辞めることは企業にとっても大きな痛手となります。企業の中核を担う世代が抜けることで、経営にも悪影響を与えると考えられます。

また、働き盛り世代の就業の面から考えても問題が山積しています。先述の「平成29年就業構造基本調査」によると、過去1年間に前職を離職した人のうち、介護・看護のために前職を離職した人の割合は1.8%となっています。人数にすると9万9千人(男性2万4千人、女性7万5千人)です。このうち、調査時点での有業者は2万4,600人であり、つまり、7万人以上の人が介護離職した後、1年の間に新たな職に就いていないことが分かります。

介護・看護を理由に離職をした場合、ワーキングケアラーになりやすい40~50代は再就職が難しく、ケアの問題だけでなく、その後の生活維持が困難になる可能性もあります。ワーキングケアラーの離職問題をそのままにしておくことは、企業、従業員双方にとってメリットが大きいと言えます。

ワーキングケアラーの離職対策

ワーキングケアラーの問題解決のために企業ができることについて解説します。

1. ワーキングケアラーに関わる制度の整備

ワーキングケアラーの離職を防ぐためには、企業内の制度を整える必要があります。代表的なのが以下の制度です。

介護休業の活用

従業員が要介護状態にある対象家族を介護するための休業です。
※要介護状態とは負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。

対象となる従業員は日々雇用を除いて対象家族を介護する必要がある従業員です。パートやアルバイトなど期間を定めて雇用されている場合は、以下の条件を満たすことが必要です。

  • 入社1年以上である
  • 取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。

介護休暇の活用を促す

介護休暇は対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日まで利用できる休暇制度です。日々雇用を除いて、対象家族を介護する必要がある従業員が活用できます。

労使協定を締結している場合に対象外となるのは以下に当てはまる従業員です。

  • 入社6か月未満
  • 1週間の所定労働日数が2日以下

その他取り組み

上記に挙げた介護休業制度、介護休暇制度以外にも企業内で以下のような制度整備が推奨できます。

・介護のための短時間勤務制度の整備
・子の看護休暇取得制度の導入
・介護休暇の時間単位取得の制度の導入
・ケアラーへの転勤に対する配慮

2. 企業側ができること

従業員に介護休暇、介護休業取得を勧める以外にも、以下の取り組みや、ワーキングケアラーが働きやすい職場づくり、離職対策が推奨できます。

  • 介護に関する相談窓口を社内に設置
  • 介護離職後の再雇用制度の整備
  • 企業独自で介護休業の取得条件を緩和する措置を設ける
  • 介護セミナーを開催する
  • 従業員向けに介護に関する情報提供する機会を設ける

まとめ

介護・看護をしながら働くワーキングケアラーは全国で346万人以上存在します。その中の多くが、40代~50代と企業内の中核を担う年代の人たちです。

ワーキングケアラーに該当する多くの従業員が、介護と仕事の両立が困難だとして離職に至っています。働き盛り世代の離職は労働者の問題だけでなく、企業の経営面にも大きな影響を及ぼします。

ワーキングケアラーの介護離職問題を解決するためにも、企業でも介護休業・介護休暇の取得推進に加え、短時間勤務制度の整備、看護・介護休暇の時間単位取得制度の導入などを進めることが重要です。高齢化社会が進む現在、事業継続のために企業側も、家族のケアを担う従業員が働きやすい環境を整えるよう努めましょう。

GUIDE

勤怠管理のパイオニア「AMANO」のノウハウをぎゅっと凝縮してお届けします!

01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

勤怠管理システム
導入のポイント

全てを1つの資料にまとめた総集編「勤怠管理の選び方完全ガイド」無料配布中!

「高いシステムと安いシステムでは何が違うのか」を徹底解説