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BCP(事業継続計画)
びーしーぴー(じぎょうけいぞくけいかく)
公開日時:2021.05.27 / 更新日時:2022.03.09
BCP(事業継続計画)とは、Buisiness Continuity Planの頭文字をとったもので、企業が自然災害やテロ攻撃などの緊急事態に直面した場合に備え、損害を最小限にとどめながら事業の継続・早期復旧を図るための方法を事前に決めておく計画のことです。中小企業庁は大企業に比べ特に予期せぬ緊急事態の影響を受けやすい中小企業に対し、顧客や市場から信頼される企業体制の構築につながるBCP策定を推進しています。
BCPを策定する意義
地震、台風、集中豪雨、新型コロナウイルスの感染拡大など、ここ数年で自然災害や感染症による大きな被害をはじめテロやサイバー攻撃などの人的災害など外的要因リスクが増加しており、倒産回避のために行うBCP策定の意義がますます高まっています。BCPを策定する意義、メリットについて詳しく解説します。
1. BCP策定のメリット
BCP(事業継続計画)とは緊急事態に遭遇した場合に企業が受ける損害を最小限にとどめ、事業の継続や復旧を行うために策定する計画です。
BCPを策定する代表的なメリットを具体的に解説します。
・緊急事態時の迅速な対応と損害の最小化
緊急事態が発生した際に損害を最小限にとどめることがBCP策定の最も大きな目的の1つです。迅速な復旧対応が可能になる対策を整えておくことで早期に事業が再開でき、自社の従業員や取引先の損害も最小限にすることができます。
・信頼度向上と企業価値を高める
BCPを策定しておくことで、緊急時の対応や自社や関係企業に関わる損害を抑える体制が整っているとアピールできます。BCPを策定した上で自社の方針をホームページ上で公開することで株主や取引先からの信頼度が向上し、未策定の企業と比べ、企業価値も高まると考えられます。
・BCPを策定する中で自社の強みを理解できる
BCPを策定する際には「優先して継続・復旧すべき中核事業」の特定を行います。中核事業を探す中で自社の強みを経営層をはじめ自社のコアメンバーが深く理解することができ、その後の事業運営にもプラスの効果をもたらすと考えられます。
2. コロナ禍におけるBCPの役割
2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大は世界経済や企業活動に大きな影響を及ぼしました。緊急事態時に備えたBCP策定は不確実性が高いコロナ禍の状況で従業員に時短勤務要請や休業要請を行う際にも重要な役割を果たします。緊急度の高い感染症の拡大に関連して特に策定が必要なのは以下の点です。
対策 | 具体的な内容 |
予防対策 | ・時差出勤・テレワークの手順の策定 ・Web会議の活用 ・情報収集の手順の策定 |
感染者対策 | ・消毒作業者を事前に決めておく ・取引先等利害関係者への情報発信 ・感染した従業員の復帰フォロー |
復旧対策 | ・事業復旧のための取引先との情報交換 ・出社率を徐々に上げるための対策作り ・次の感染拡大に備え、足りなかったことの洗い出し |
BCP策定の手順
BCP策定に取り組むための手順と手順ごとのポイントや優先して実施すべき点について順を追って解説します。
1. BCP策定の目標を設定
BCPの策定を実施する前に、自社の経営理念や基本方針を今一度確認します。自社にとっての重要な業務や、自社が地域や業界で担っている社会的責任を考えた上で、自社の事業継続目標を設定します。
中小企業の場合は、自社の事業を継続することで、顧客からの信頼、従業員の雇用、または業界や地域経済の活力を守ることを念頭に置き、BCP策定に取り組むことが推奨されています。
2. 中核事業に対して起こりうるリスクを把握
次のステップとして、自社の中核事業に対して起こりうるリスクを把握するための作業を行います。
・必要な資源の把握
緊急事態が発生し、さまざまな制限がある中で事業を継続することを想定し、優先して提供すべき商品・サービスをこの工程で洗い出しおきます。その上で、商品提供にはどのくらいの資源(人・モノ・金・情報)が必要かを把握しておきます。
・リスクと被害の洗い出し
中核事業に影響があると思われるリスクを洗い出し、リスクごとにどのような被害や事業へのダメージが見込まれるか想定しておきます。
リスク | 被害の例 |
地震・台風などの自然災害 | 工場や事業所の倒壊や火災、生産のストップ |
予期せぬ事件・事故の発生 | 体外的な被害状況の発表、取引先・利害関係者への情報発信への対応が発生 |
新型コロナウイルス等の伝染病の流行 | 従業員の感染、休業要請などの対応の発生 |
ステム障害 | 個人情報や社内の機密情報が漏えい、商品注文や生産のストップ、関係者への謝罪対応の発生 |
3. 具体的な対策の決定
洗い出したリスクや想定される事業への被害を考慮して、緊急時にどの商品やサービスにどの程度の資源を投入するかを決定します。
・対応の優先順位付けを行う
各種対応の優先順位を付ける際は、「リスクの発生頻度」「被害の深刻度」の2つを総合的に判断する必要があります。また、被害が発生している中、わずかな資源を元に事業を継続するための代替案を出せるかどうかも検討します。
・BCPの発動や指揮、行動など具体的な対策の文書化
BCPを発動すべき状況や、BCP発動時の指揮権を誰が持つか、実際に各種対応を行う際の担当者を誰にするかといった決定事項など具体的な対応、対策を文書化します。
・BCPが機能するかシミュレーションを行う
事業の復旧業務にもそれぞれ優先度を付けておき、策定したBCPが実際に機能するかシミュレーションを行います。このシミュレーション段階で予期せぬことが起きる、または予定より事業復旧に時間や必要な工程が発生すると判明した場合は随時計画を見直し、より緊急時に適したBCPの精度を上げていくことも必要となります。
まとめ
BCPは災害や事故発生などの緊急時に被害を最小限にし、事業を早期復旧させるための計画のことで政府や中小企業庁からも策定が推奨されています。緊急事態に迅速に対応し復旧対応を行う体制を整えておくことで、自社の事業継続や従業員の生活維持だけでなく、取引先からの信頼度向上につながるというメリットもあります。
BCP策定では、まず目的の決定、そして中核事業やリスクを洗い出した後に具体的な施策を決定します。策定したBCPが想定通り機能するかどうか、シミュレーションで精度を上げつつ、計画を定期的に見直し、緊急時の対応に備えましょう。