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パート従業員に時間外労働をさせることはできますか?残業代の計算方法についても教えてください。

雇用条件として従業員にあらかじめ明示していれば、時間外労働をさせても問題ありません。
公開日時:2022.07.21 / 更新日時:2023.12.21
詳しく解説

パート従業員に時間外労働をさせることはできますか?残業代の計算方法についても教えてください。

飲食店や小売店を展開している企業のマネージャー職です。店舗スタッフのシフト管理を担当しています。パートの従業員にも時間外労働をしてもらわなければシフトが埋まらない日があります。パート従業員に時間外労働をさせることは可能なのでしょうか。また、時間外労働が可能なら残業代の計算方法や支給条件、考えられる労務管理上のリスクについても教えてください。

A.雇用条件として従業員にあらかじめ明示していれば、時間外労働をさせても問題ありません。

パート従業員に時間外労働をさせること自体は、雇用条件としてあらかじめ明示しているのであれば問題ありません。契約時に提示した「労働条件通知書」や自社の「就業規則」に記載された時間外労働の有無を改めて確認しましょう。これらの書類で時間外労働が発生する場合があると明記していない場合は、当然ながら業務命令としてパート従業員に時間外労働をさせることはできません。

また、パート従業員に時間外労働をさせる場合は時間外労働をした分の残業代を支払う必要があるため、時間外、深夜、休日労働で発生する残業代の計算ルールについても確認しておきましょう。

そもそも時間外労働とは?

時間外労働とは、「法定労働時間」を超えて労働することを指します。似た言葉に「所定労働時間」があるため、この2つの違いを整理しておきましょう。

・所定労働時間…雇用主と従業員の間で取り決めた、契約上の労働時間のこと。

・法定労働時間…労働基準法によって定められた労働時間の上限のことで、1日8時間以内、1週間に40時間以内。

所定労働時間を超えて働いた場合は残業となりますが、法定労働時間を超えない限りは労働基準法上の「時間外労働」には該当しません。

例えば1日の所定労働時間が7時間の企業で8時間働いた場合、1時間の残業となりますが割増賃金は発生せず、9時間働いた場合に割増賃金が発生する時間外労働となります。

残業代を計算する際は「割増賃金」に注意

残業代は通常通りの賃金を支払うケースと、割増しして支払うケースがあります。

・通常通りの賃金を支払うケース

法定労働時間内の労働であれば、残業した労働時間に時給額※をかけて計算します。

残業代:時給額✕残業した分の労働時間(所定労働時間を超えた分)

※月給制などで働く従業員の場合は、「1時間あたりの賃金」を別途算出する

・割増賃金が発生する主なケース

①法定労働時間を超える場合

1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超えて働く場合は、割増賃金を支払う必要があり、1時間あたりの時給額の1.25倍以上で計算しなくてはなりません。

残業代:時給額✕労働時間(法定労働時間を超えた分)✕1.25

②法定休日の勤務(休日労働)

労働基準法では、週1日、もしくは4週間あたり4日以上の「法定休日」を与えなければならないと定めています。この法定休日に仕事をする場合には、「休日手当」として通常の時給の1.35倍以上の割増賃金を支払う必要があります。

残業代:時給額✕労働時間✕1.35

休日労働の場合、深夜労働をしない限り割増賃金は1.35倍以上のままです。また、法定労働時間の1日8時間を超えなくても休日労働した時間分、割増賃金が発生します。

例えば9:00〜18:00までの勤務(休憩1時間)で、所定労働時間が8時間の企業で22:00まで働いた場合、以下のように計算します。

残業代:時給額×12時間×1.35

③22:00~5:00の時間帯に勤務する場合(深夜労働)

22:00~5:00の時間帯の勤務は「深夜手当」の対象になり、1時間あたりの給与の1.25倍以上で計算しなくてはなりません。

残業代:時給額✕労働時間(22:00~5:00の時間帯に働いた時間)✕1.25

また、休日労働をした日に深夜まで働いた場合、22:00~5:00の時間帯に働いた分は「深夜手当」を足して1.6倍(1.35+1.25)以上で残業代を計算します。

割増賃金が発生するケースについて詳しくは用語集「割増賃金」をご覧ください。

割増賃金の計算は複雑ですが、万が一計算を誤って実際よりも少なく支払ってしまうと「残業代未払い」として労働基準法違反に該当し、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。割増賃金の発生ルールを正確に把握し、確実に給与計算に反映させましょう。

残業代を抑えるには?

パート従業員に残業を依頼することが増えると、その分人件費がかさみます。月々の残業代を含む人件費を抑えるには、時間外労働が発生しないよう、法定労働時間に収まるように従業員のシフトを組んだり、代理出勤を依頼したりするといった対策が必要です。

例えば1人の従業員に全ての仕事を任せると長時間労働となり、残業代が都度発生してしまう状況なら、忙しい時間帯は勤務する人数を増やして仕事を分担し、1日の法定労働時間内に収まるような人員配置を検討します。

また、すでに従業員が1週間40時間を超えて労働をしている場合、労働時間が少ない別の従業員にその日の代理出勤を頼むといった対応により月の残業代を抑えることも可能です。

4.パート従業員に残業をさせる際は本人とよく相談を

「労働条件通知書」や「就業規則」で時間外労働が発生することを明記していても、パート従業員に残業をさせる際は本人の事情を踏まえて、不満・負担が生じないよう考慮することが大切です。

パート従業員の多くはフルタイム勤務ではなく「短時間労働」であることを理由に雇用形態を選んでいます。具体的には子育てや介護、家事の時間の確保や、兼業している他の仕事との両立のため、パートというある程度決まった労働時間、シフトで働ける雇用形態で働いていることが多いと考えられます。

そのため、残業が発生したとしても、パート従業員の多くは残業時間が長時間にならないよう希望すると考えられます。マネージャーは「契約上は残業をさせることはできても、パート従業員には頻繁かつ長時間の残業をさせることはできない」という前提でシフトを組む必要があるでしょう。

まとめ

パート従業員に時間外労働をさせること自体は可能ですが、事前に「労働条件通知書」や「就業規則」に時間外労働が発生する旨を記載し、本人の合意を得る必要があります。また、時間外労働をさせた時間に応じて割増賃金を含む残業代を支払う必要があるため、残業代の計算ルールを踏まえ、正確に残業代の計算をしましょう。また、人件費削減のため残業代を抑えるには、従業員ごとの雇用条件を把握したシフト管理の徹底が必要です。

ただし、従業員の人数が多い企業の場合、こうした勤怠管理・シフト管理をマネージャーが手動で行うのには限界があります。円滑なシフト管理のため、法令違反が起きないようにシフトを組む機能を搭載した勤怠管理システムや、従業員のスキル・雇用条件を判別しながらシフトを自動作成してくれる「シフト作成支援サービス」を利用する方法も検討してみましょう。

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