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【弁護士が解説】厳重な勤怠管理で未払い残業代請求のリスクを防ぐ

公開日時:2022.05.25 / 更新日時:2022.06.30

会社側が勤怠管理をしていても、未払い残業代を請求されてしまうケースは少なくありません。客観的に見て残業がなかったと立証する場合、重要となるのは積極的且つ厳格な勤怠管理を実施することです。今回は人事・労務問題、労務紛争に明るい村上 元茂弁護士に、企業が勤怠管理をしていても残業代請求が起こってしまう要因、またそのリスクを防ぐためのポイントを解説していただきます。
村上 元茂 氏

村上 元茂 氏

2008年 弁護士登録(東京弁護士会)
2014年 株式会社アクセア社外取締役就任(現任)
2015年 弁護士法人マネジメントコンシェルジュ設立(現任)
2019年 社会保険労務士法人clarity設立(現任)

人事・労務、外国人雇用、企業に対する不当クレーム対応等の業務に従事。
弁護士法人における人事労務分野対応としては、日常的な問題社員対応に加え、訴訟、労働審判、あっせん、労働組合との団体交渉を得意とする。
社会保険労務士法人における対応業務としては、紛争対応を見据えた労務管理についてのアドバイス、各種規程整備、人事評価システムに関するアドバイス、HRテックを用いた労務管理についてのアドバイスを行っている。
また、弁護士として、BtoC企業の依頼を受け、企業に対するクレーム・クレーマー対応にも多数関わる。

勤怠管理をしていても未払い残業代を請求されるのはなぜ?

いわゆる過払い金請求バブルが収束に向かい、次なるバブルの様相を呈しているのが未払い残業代請求訴訟です。検索エンジンにて「未払い残業代」と検索をすると、多くの法律事務所の広告宣伝が掲載されています。その中には、残業代チェッカーとして入力するだけで請求できる残業代を簡易計算するソフトを搭載したサイトも見受けられます。

当事務所におけるご依頼案件の状況としても未払い残業代請求に関するご相談は多く、業種問わず、多くの企業が悩まされる案件類型といえます。それほど多くの企業が、残業代をしっかりと支払っていないということなのでしょうか。この点、全く勤怠管理をしていないとか、サービス残業をさせているといった場合は論外ですが、一応、しっかりと勤怠管理をしている(と思っている)企業が、想定外の残業代を請求されるという案件も多くございます。

これは、どのような理由によるのでしょうか。

様々な理由が考えられますが、多くの未払い残業代請求事案で見られる一つの現象として、「残業があったかのような証拠」が残ってしまっているケースが散見されます。

客観的に「残業があったようにみえる証拠」とは?

すなわち、残業代請求をしている社員が実際には残業などしていなかった(所定労働時間外に指揮命令監督下にある業務を行っていなかった)にもかかわらず、客観的な証拠として残業をしていたかのような証拠が残っているために、裁判所によって残業があったとして認定されてしまう、というパターンです。

最近よく見られる例として、コロナ感染を避けるために満員電車を避け、始業時刻である9時より2時間早い7時に出社するといった社員がいたとします。

始業時刻までは、新聞を読んだり、YouTubeを見たりして過ごし、始業時間の少し前になってタイムカードを打刻するのです。

この場合、7時~9時の2時間は、当該社員は社内にはいますが業務をしていないため、会社としては当然ながら業務時間(早出残業時間)であるとは考えていません。

ところが、何かのきっかけでその社員と会社の関係性が悪化するなどした場合に、その社員が「毎日2時間早出残業していたので、1日につき2時間分の未払い残業代を支払ってほしい」と主張し始めます。

会社からすれば、当該社員がコロナ感染を避けたいという事情で自己判断に基づき早く出社していたものと認識しています。タイムカードの打刻も9時少し前となっており、よもや新聞を読んだり動画を見たりしている時間を労働時間と主張してくるとは思いもしなかった、というパターンです。

場合によっては、会社としてそのような早い時間から出社していることすら認識していないというパターンもあります。

これに対して、当該社員は入退室のログやPCのログから、自分は毎日7時には出社していたことを立証します。また、7時~9時の間に時折送信した業務上のメールを証拠として出したうえ、会社として当該時間帯に業務をすることを黙認していたではないか、すなわち黙示の業務命令がなされていたではないかと主張をするのです。場合によっては、上司が毎日早く出社していることをわかっているため、朝早く対応が必要になった雑務などを依頼してしまっている(明示の業務命令)ことすらあります。

このような事情が重なると「タイムカード上は9時から始業となっているが、タイムカードの記録と他の客観的な記録との間には乖離があり、その乖離時間には労働がなされていたのではないか」といった話になってくるのです。

なお、労働基準監督署は、この「乖離時間」に着目をする傾向が強く、労基署の調査においても乖離の有無はよくチェックされるポイントです。

「乖離時間」に残業がなかったことを立証することは不可能に近い

未払い残業代請求訴訟においては、これらの乖離時間の存在と乖離時間中に断続的にであっても労働をしていたかのような主張立証がなされると、会社においてその主張を覆す主張立証が必要となります。

しかし、「存在しないこと」の証明は悪魔の証明と言われているように、「その時間に労働していなかったこと」の立証は容易ではありません。容易に想像できるかと思いますが、毎朝の2時間の中で一切業務がなされていなかったことを立証することなど、ほぼ不可能です。

このようにして、会社の認識している「真実」としては早出残業(とその前提となる指揮命令監督)の事実などないにもかかわらず、早出出勤の事実と断片的な業務を行ったような証拠及び黙示の業務命令があったかのような証拠により、早出残業があったものとして、多額の残業代を支払わされる企業が後を絶ちません。

「労働していなかったこと」を証明するためのポイント

このような事態を避けるためには、どのようにすればよいか。

一つは、所定労働時間以外の事業所への一切の立ち入りを禁止するといった対処が考えられます。この点、所定労働時間外の立ち入りを禁止すること自体は会社の施設管理権という観点から問題のない対応といえます。

もっとも、コロナ禍においてリモートワークが普及したことにより、物理的な立ち入りを禁止するだけでは勝手な業務的行為とそれに対する黙示の業務命令という問題を、完全に回避することは困難です。なぜなら、始業前や終業後に社外から業務用のPCにログインすることを黙認することで、同様の問題は生じるからです。

そこで、重要となるのは積極的且つ厳格な勤怠管理の実施です。

厳格な勤怠管理を徹底することで、どの時間に労働をしていたかのみならず「その時間に労働していなかったこと」の証拠も積み上げていく必要があるのです。

具体的には、残業許可制の厳格な運用の徹底によって、事実と異なる証拠が積み上げられることを避けるのです。

前提として、残業をするか否かは企業の業務命令によるのであって、残業することは社員の権利ではありません(無論、所定労働時間内に終えられない業務を命じておきながら、終わらなければ自己責任としてサービス残業させるといったことは認められません。業務量を適正配置することは前提となります)。

すなわち、時間外労働が必要であれば都度承認申請をさせ、それに対する承認決裁についても手続を厳格に実行し、承認のない時間外労働は業務命令として認めないという運用を徹底することで、「残業命令がないのであるから、所定労働時間外に勝手に作業をしていても、それは(指揮命令監督下にある)労働とはいえない」という反論がなし得るのです。

まとめ

以上から、日常的に厳格な勤怠管理を徹底することこそ、想定外の未払い残業代請求を防止する基本的且つ重要な対応策であることがいえるのです。

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