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コロナの影響で、やむなく整理解雇を検討しています。

経営上の必要性、解雇回避の努力をしたか、解雇の対象者を選ぶ基準は公平か、手続きが正当かといった要件を満たす必要があります。

2021.05.11

詳しく解説

Q.新型コロナウイルスによる経営悪化の影響で、やむなく正規雇用の従業員を対象とした整理解雇を検討しています。整理解雇が可能な条件や手続きについて知りたいです。

100人以下の中小企業で人事担当をしています。新型コロナウイルスの影響で経営が悪化し、経営者とともに正規雇用の従業員を対象に整理解雇の検討を始めています。自社で整理解雇の行った経験がないため具体的な手続きや違法とならない条件を詳しく確認しておきたいです。また、整理解雇後の失業手当や雇用保険の取り扱いも確認しておきたいと思います。

A.経営上の必要性、解雇回避の努力をしたか、解雇の対象者を選ぶ基準は公平か、手続きが正当か、といった要件を満たす必要があります。

整理解雇とは、従業員に落ち度がなく、このままでは事業が継続できないという場合に企業の責任で行う「人員整理」を目的とした解雇に該当します。整理解雇を行う要件は厳しく、経営上の必要性、解雇回避の努力をしたか、解雇の対象者を選ぶ基準は公平か、手続きが正当かどうかといった要件を満たす必要があります。解雇した後は雇用保険を抜けるための手続きや、離職者が失業手当を受給する際に必要な書類の手続きを迅速に行わなければいけません。

整理解雇の概要

整理解雇は退職勧奨や早期退職者の募集などのように従業員の合意を得るものではなく、企業側から従業員に対して一方的に行われ、また従業員には落ち度がない処分です。解雇権が濫用されないよう、整理解雇は過去の労働判例から確立された要件によって厳格に判断され、不合理と認められた場合は解雇が取り消しになることもあります。また、解雇の手続きや判断が不適切な場合、訴訟に発展して賠償金を支払うリスクが生じる可能性もあります。

整理解雇が有効となるための4つの要件

整理解雇は使用者側の事情による解雇であるため、解雇の4要件に基づき厳格に判断されます。例えば、人員削減の必要性が妥当であっても、解雇手続きが不適切で従業員に一方的に辞令を伝えたり、話し合いをしなかったりした場合、訴訟によって解雇が無効となるケースもあります。

解雇の4要件を踏まえ、検討している整理解雇が適切に行えるか判断しましょう。

整理解雇の4要件

  1. 人員削減の必要性

    人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいているか判断します。経営赤字が続いている、経営状況が危機的状況にあるといった事実を客観的に示す必要があります。

  2. 解雇回避の努力

    配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のため企業側が最大限の努力をしたか判断します。具体的な努力の例は「役員報酬の減額」「新卒採用の停止」「希望退職者の募集」「解雇ではなく配転や出向を行う」などです。

  3. 人選の合理性

    整理解雇の対象となる従業員を選定するための基準が、公平かつ客観的であるかどうか判断します。選定基準として「年齢」「勤続年数」「正規雇用か非正規雇用かなどの雇用形態」「勤務態度」「成績」「扶養家族の有無など生活への影響」などが、客観性があり合理的と認められやすいです。

  4. 解雇手続きの妥当性

    労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について協議や説明を行い、納得を得るための努力をしているか判断します。十分な協議や説明が行われない場合、他の3つの要件を満たして いたとしても解雇は無効となります。

解雇の進め方と失業保険などの手続き

整理解雇は以下の手順に従って行います。

  1. 人員削減が必要と示す客観的なデータ(決算資料や余剰人員が発生している証拠資料など)を用意する
  2. 解雇以外の手段(希望退職者の募集をはじめ、経費削減や助成金の活用)の検討、実施
  3. 解雇基準(対象人数、対象者の基準)を決定する
  4. 退職金(退職手当)の制度がある場合は制度に基づき退職金を算出する
  5. 解雇の実施日を決定する
  6. 解雇基準や退職金、実施日などの情報を含め解雇実施について社内に通知する
  7. 解雇対象者の人選
  8. 解雇対象者には説明会の実施、労働組合には説明・協議の場を設け、整理解雇を行う背景や解雇基準の説明を行う。解雇が必要と示す客観的なデータの提供や、解雇対象者や労働組合からの質問への回答も可能な限り丁寧に行う
  9. 解雇予告を行う。解雇日の30日前までに解雇予告が不可能な場合は解雇予告手当を支払う
  10. 雇用契約終了の通知または辞令を交付する、退職金制度がある場合は退職金の支払いを行う

整理解雇後に必要な雇用保険、失業保険などの手続きは以下の手順に則って行います。

  1. ハローワークで行う書類手続き

    ・解雇した従業員が雇用保険の被保険者(加入者)でなくなったことを示す「雇用保険被保険者資格喪失届」と、退職理由や給与などを明記した「離職証明書」をハローワークに届け出る
    ・企業へ送られた「離職票」は失業手当受給に必要なためすぐに従業員に郵送する

  2. 社会保険に関する手続き

    ・解雇から6日内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出する
    ・健康保険から抜けたことを証明する「資格喪失証明書」を従業員に郵送する

  3. 源泉徴収票を作成し交付する

    ・1か月以内に税務署に解雇した従業員の源泉徴収票を送付する
    ・1か月以内に解雇した従業員にも源泉徴収票を送付する

  4. 企業側で住民税の特別徴収(天引き)を行っている場合は停止の手続きを取る

    ・解雇した月の翌10日までに、住所がある市区町村に「給与支払報告に係る給与所得異動届」を提出する

まとめ

新型コロナウイルスに伴う経営悪化や業績不振など企業側にとって不可抗力な事情があっても、整理解雇は従業員に落ち度のない解雇のため厳格に進めなくてはなりません。基準となる4要件を満たす手順に則って準備を進め、従業員には理解を得られるよう慎重に対応することが重要です。この際に従業員や労働組合と協議の場を持つことを怠り、不誠実な対応をした場合、「不当解雇」だとみなされ、訴訟に発展するリスクもあります。

また、解雇後の従業員は生活基盤を失うことになるため、給付を受け取るための手続きも迅速に進める必要があります。特に失業手当を受け取るために必要な離職証明書の発行、離職票の送付など、解雇後に必要な手続きは最優先で行いましょう。

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