業務改善ガイド
退社手続きの流れと必要書類。社会保険、雇用保険、税金はどう対応するか
公開日時:2021.01.27 / 更新日時:2025.02.28

そこで、ここでは従業員が会社を辞めるときの退社手続きの流れや、必要になる書類などをまとめてみました。企業経営者や、総務に在籍している方はぜひ最後まで目を通してください。
退社手続きの基本的な流れ
まずは基本的な流れを押さえておきましょう。社員が職場を去る場合、退社まで、退社当日、退社後にそれぞれ手続きが必要になります。ここでは、それぞれの手続きをステップごとにご紹介しましょう。
退社までに必要な手続き
会社を去ることを決めた従業員は退職願を提出します。受理したら、今後の引き継ぎのことなどを話し合い、いつ職場から去るのかを会社と当事者とで決めていきます。
退職証明書を求められることがあるので、そのときは発行しましょう。書類に記す内容ですが、どれくらいのあいだ働いていたのか、どんな業務に従事していたのか、退社する理由などです。ただし、全部盛り込まなくてはいけないわけではなく、基本的には辞めていく人が希望する事項だけを記載します。
退社当日に必要な手続き
制服や仕事で使用していた備品などがあるのなら、それを返却してもらいます。会社によっては備品の返却が必要ないケースもありますが、基本的には回収することがほとんどです。会社を辞める前日まで使用しているケースが多いため、職場を去る当日に回収してください。
ただ、制服に関しては辞める当日まで着用しているケースが多いため、別の日に改めて返却してもらいます。会社によってルールが異なりますが、直接持ってきてもらうか郵送などで送ってもらいましょう。クリーニングが必要かどうかも事前に伝えてください。
社員証や健康保険証などのほか、名刺を使っていたのならそれも返してもらいます。社員証を入れているホルダーも会社から支給したものなら当然返してもらいます。名刺は従業員のものはもちろん、取引先や顧客などから受け取ったものも返却してもらってください。
退社後に必要な手続き
従業員が辞めた後は、健康保険や厚生年金保険の資格喪失手続きをします。また、職場を去った翌日から10日以内に雇用保険の手続きもしなくてはなりません。「雇用保険被保険者資格喪失届」を、職業安定所の窓口に提出します。
源泉所得税や年末調整の手続きも必要です。ほかにも住民税の手続き、支払った退職金からの控除計算も必要なので覚えておく必要があります。
退社手続きの必要書類
退社手続きにはさまざまな書類が必要です。会社が発行するものもあれば、元社員に準備してもらうものもあります。ここでは、手続きに必要となる代表的な書類をまとめました。
離職証明書
文字通り、社員の離職を証明するための書類です。離職票と同じものと勘違いする方が多いですが、離職票は会社を辞めた社員が失業給付金の受給申請をするときに必要となる書類です。一方、離職証明書は会社が職業安定所に提出しなくてはならない書類。この書類は3枚の複写式で、そのうちの1枚を離職票として元社員に渡します。
退職証明書
これまで働いていた社員が会社を辞めたことを証明するための書類です。公的機関への提出が求められる書類ではなく、あくまで会社側から辞めていく人に発行するものです。社員が辞めたときに絶対発行しなくてはならない、という性質の書類ではなく、あくまで希望されたときに発行します。
健康保険や年金の手続きをする際にも必要になることがあります。また、転職先から求められることも少なくありません。この書類にはどんな理由で職場を去ったのか、理由も記載されているため、それを確認するために提出を求めるのです。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
企業が従業員を雇用したときには、健康保険や年金の加入手続きを行います。逆に、社員が辞めたときにはその資格を失った事実を示さなくてはならず、そのための書類となります。作成した書類は日本年金機構へ提出してください。
記載する内容ですが、退職者の生年月日や氏名などのほか、基礎年金番号や資格喪失の原因、標準報酬などです。資格喪失原因は、転勤による場合や死亡または退職、障害認定を受けた場合、70歳に到達する場合、75歳に到達する場合など5つに分けられており、その中から選ぶことになります。 ※具体的な手続き方法については後述します。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険の適用企業に入社した社員は、一定の条件をクリアすることで雇用保険に加入できます。正社員でいるうちは被保険者ですが、退職したら当然その資格を失います。被保険者であったスタッフが会社を去ったことを届け出るための書類です。
こちらの書類は、職場を去った従業員に必ず渡さなくてはならないものです。希望されて提出するといった性質の書類ではないため注意しましょう。原則としてどのような理由で会社を去った人に対しても渡す必要があります。 ※具体的な手続き方法については後述します。
社会保険に関して必要な手続き
手続きを行うためには、前述の健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届などの書類が必要になります。会社を辞めてから5日以内に手続きしなければならないため、覚えておきましょう。書類の提出先は、そのエリアを管轄している年金事務所です。
年金事務所へ提出するときには、辞めた人の健康保険被保険者証も添付しなくてはなりません。本人のものはもちろんですが、扶養者がいた場合にはその分も必要になります。そのため、本人が会社を去る当日に忘れず回収しておきましょう。
手続き自体は、年金事務所へ足を運んで窓口に直接提出する方法のほか、郵送でも行うことが可能です。郵送のときでも保険証を忘れずに添付しましょう。
雇用保険に関して必要な手続き
手続きには、前述した退職時の必要書類一式のうち、雇用保険被保険者資格喪失届を使用します。従業員が会社を辞めた翌日から10日以内に手続きしなければならないため、注意しましょう。提出するのは、そのエリアを管轄している職業安定所です。
なお、退職者が離職票の発行を求めている場合には、雇用保険被保険者離職証明書も一緒に提出しなくてはなりません。会社を去るまでに本人へ確認してください。ただし、退職者が59歳以上の場合には、希望されなくても渡す必要があります。
税金に関して必要な手続き
給与から住民税を天引きしていたケースでは、納税していた自治体へ従業員が辞めたことを知らせなくてはなりません。退職すれば自然に給与からの天引きはストップしますが、手続きをしていないと以前と同じように課税されてしまいます。トラブルのもとになるので、きちんと手続きしておきましょう。
手続きに必要な書類は給与所得者異動届出書です。納税していた自治体の窓口に、退職月の翌月10日までに提出しなくてはなりません。
源泉所得税や年末調整の手続きも必要です。その年の1月1日から会社を辞めるまでに支払いした給与額を記載した源泉徴収票を退職者に渡さなくてはなりません。会社を辞める月の給与明細に添付するケースが一般的です。
源泉徴収票は確定申告や転職先への提出などで必要になりますが、人によっては紛失してしまうこともありえます。再交付を求められた場合には応じなくてはなりませんが、手間がかかるのでなくさないように口頭で念押ししておきましょう。
年末調整ですが、基本的に12月31日の段階で在籍している社員に行うものなので、会社を辞める人には関係ありません。ただ、12月の給料をもらってから辞めた人、再就職できないほどの心身の障害によって退職した人、死亡してしまった人などの場合には例外として年末調整が必要になります。
退職者へ退職金を支払うのなら、所得税や住民税を支払った退職金から天引きする必要があります。ただ、これは支払った金額によるので、必ずしなくてはならない手続きではありません。この計算はかなり複雑なので、顧問税理士がいるのなら相談してみるとよいでしょう。
退職金を支払ったのなら、退職所得の源泉徴収票も渡しましょう。給与所得のものとは異なる様式になるため注意が必要です。記載の方法は国税庁のホームページで紹介されています。
その他退社手続きにおける注意点
保険に関する手続きでお伝えしましたが、被保険者証は本人のものだけでなく扶養家族の分も回収しなくてはなりません。意外に忘れがちなので注意が必要です。
また、仕事で使用するためのパソコンやタブレット端末など、備品を貸与していたときは忘れずに回収しましょう。後になって「回収し忘れた」となると二度手間になってしまいます。人によっては退職後まったく連絡が取れなくなる、といったケースもあるため、退職日には確実に回収しなくてはなりません。
転職などに伴う自己都合で退社する場合には、退職願を忘れず作成してもらいましょう。本人の都合ではなく、会社都合なら解雇通知書を渡します。
また、退職金の支払日に関するトラブルが発生することもあるため注意が必要です。退職金の支払日、期日は企業によって異なりますが、基本的には就業規則に記されているはずです。もし、支払期限を過ぎているのに支払っていないとなると、まず間違いなくトラブルに発展してしまいます。
支払期限を過ぎても支払わなかった場合には、恐らく従業員から退職金の振り込みを要求されるはずです。労働基準法第23条では、会社を辞めた労働者から請求された場合、7日以内に支払わなくてはならないと定められています。それでもしつこく支払わないでいると、労働基準監督署に訴えられる可能性があるので注意が必要です。
従業員を雇用するときはもちろんですが、会社を辞めていくときにもいろいろな手続きや書類が必要になります。その都度調べていては手間も時間もかかるので、ミスやトラブルを防ぐためにも必要書類のリスト化、届け出順序のルール化を進めることをおすすめします。
まとめ
従業員が会社を辞めるときの手続きや必要書類は多岐にわたるため、しっかりと覚えておく必要があります。また、ケースによって手続きの流れや必要書類が変わってくることもあるので、その点も理解しておきましょう。書類の提出期日や手続きの期限が定められていることも多いので、漏れなくスムーズに手続きを済ませられるようにしてください。
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