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時間外労働の上限規制 読み方:じかんがいろうどうのじょうげんきせい

2021.01.27

罰則付き時間外労働の上限規制への対応は、残業削減の取り組みが重要

過労死・過労自死が社会問題化したことを受けて残業時間の上限を定めた制度が「時間外労働の上限規制」です。

従来から長時間労働対策として時間外労働を規制する仕組みはありましたが、2019年に施行された労働基準法改正によって初めて36協定で時間外労働の上限「1か月45時間、1年360時間」を超過した際の罰則が定められました。また、これまで36協定の特別条項を結べば事実上際限なく時間外労働が可能だった実態にもメスが入れられ、「年720時間以内」「休日労働を含み、1か月100時間未満」などの明確な上限が設定されました。時間外労働の上限規制は大企業には2019年4月から、中小企業には2020年4月から適用が始まっています。

日本企業における時間外労働の実態

労基法改正に伴う「時間外労働の上限規制」は、2018年に成立した働き方改革関連法の目玉として導入されました。導入にいたった背景には日本に蔓延する長時間労働や過労死問題、働き方への意識変化があります。日本企業で常態化してきた長時間労働の実態から、実行力のある対策が必要とされた経緯、時間外労働の上限規制に違反した場合の罰則内容と法改正のポイントを解説します。

1. 日本企業の平均時間外労働時間

経団連が調査した「2019 年労働時間等実態調査集計結果」によると日本企業の平均時間外労働時間は減少傾向にあるものの年223時間にも及びます。時間外労働を含めた年間の労働時間は300人以上1000人未満の中規模企業が最も多く、2,084時間でした。一方、5000人以上の大企業では残業時間が比較的少なく、ある程度IT化や業務の見直しなどの長時間労働対策が進んでいることが見受けられます。目立って時間外労働が多い傾向にあるのは製造業です。非製造業の時間外労働時間平均198時間に対し、製造業は241時間と、50時間ほど時間外労働が多い実態が分かっています。

2. 建設業では特に長時間労働が深刻

日本の企業の中では特に建築業の長時間労働が深刻です。長時間労働が目立つ製造業の年間実労働時間と比較すると100時間以上、その他の産業の労働時間と比較しても300時間以上にも上ります。建築業では休日を取得しづらい現状にあり、週に2日休めている人の割合は全体の1割以下という実態もあります。

建築業の他に長時間労働が深刻なのはトラック運送事業者をはじめとする「自動車運転」や「医師」「新技術・新商品等の研究開発業務」などです。短期間で時間外労働の上限規制対策を行うのが困難な事業や業務について、具体的には以下のような猶予期間や上限規制の適用除外の措置が設けられています。

3. 時間外労働が多ければ収益が上がるわけではない

時間外労働が多く、従業員が長時間働いているほど企業の収益が上がっているかと言えば、必ずしもそうではありません。前述した経団連の調査によると、企業が毎年どれくらい収益を上げているか示す「経常利益」が増えている企業の時間外労働時間は全体の平均よりやや長いものの、減少傾向にありました。収益を上げながら時間外労働を減少できている企業が多く存在することから、長時間労働を兼ねた業務効率化を図ることが、生産性と収益の向上につながっていると考えられます。

時間外労働の上限規制が導入された背景

時間外労働の上限規制が導入された背景には、近年深刻な社会問題になった過労死・過労自死の問題があります。過労死対策やワーク・ライフ・バランスを重視した働き方が注目された経緯、従来の法律の問題点を解説します。

1. 過労死や過労自死が社会問題化

2000年代から過労死や過労自死による労災が顕著になり、社会問題として認知されるようになりました。過労死問題を受け、厚生労働省は2001年に1か月当たり80時間を超える時間外労働は過労死に至る危険がある「過労死ライン」であるという労災認定の基準を設けました。2014年11月には「過労死等防止対策推進法」が制定され、違法な長時間労働を許さない取り組みの強化をはじめとする対策が進められました。過労死を防ぐためには、過労死ラインを意識した効力ある長時間労働対策を進める必要があるという一連の流れが強まり、時間外労働の上限規制が導入されました。

2. 従来は事実上際限なく残業ができる制度だった

従来も36協定で拡大できる時間外労働の上限として「月45時間・年360時間」が定められていましたが、大臣告示による基準として定められているだけで、超過した場合でも罰則はありませんでした。また、特別条項付きの36協定を結べば、事実上際限なく時間外労働が可能であり、長時間労働による健康悪化を防止する仕組みがありませんでした。死にいたる危険がある過労死ラインとして「1か月あたり80時間」の基準があるにも関わらず、際限なく残業が可能な制度は問題だとして、2018年に企業に時間外労働の上限規制を導入する法改正がなされました。

時間外労働の上限規制の概要と罰則の内容

「時間外労働の上限規制」は特別条項付きの36協定を結んでいる企業に対して明確な時間外労働の上限を設定した制度で、実行力ある長時間労働の抑制が期待されています。従来からの変更点はどこか具体的に解説します。

1. 36協定を結んでも上限は「月45時間、年360時間」まで

法定労働時間を超えて働かせる場合は、労使の合意に基づく36協定を結ぶ必要があります。従来から36協定を結ぶ上で設定できる時間外労働上限は「月45時間・年360時間」とされていました。この上限に変更はないものの、時間外労働の上限規制の導入によって上限を超えた場合は企業に罰則が科されるようになりました。「月45時間」と「年360時間」という2つの上限基準は片方だけ守ればよいのではなく、同時に遵守する必要があります。

2. 特別条項を結んだ場合でも「年720時間以内」が上限

これまで36協定の特別条項を結べば事実上際限なく時間外労働が可能で、過労死ラインの月80時間を大幅に超えていても残業できる状態が続いていました。法改正後は36協定の特別条項を結んでいても「年720時間以内」「休日労働を含み、1か月100 時間未満」といった明確な時間外労働の上限が定められました。

特別条項を結んだ場合の時間外労働の上限規制の詳細

「時間外労働の上限規制」で導入された具体的な上限は主に以下の4点です。

  • 年720時間以内
  • 休日労働を含み、1か月100 時間未満
  • 休日労働を含み、2か月~6か月平均で80時間以内
  • 月45時間の時間外労働を拡大できるのは年6か月まで(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)

3. 違反した場合は刑事罰が科される

時間外労働の上限規制に違反した場合は「6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科されます。罰則は刑事罰であり、具体的な罰則がなかった従来の規定と比較して極めて厳格なペナルティだと言えます。この罰則は企業に実効性を伴った残業時間の削減対策を求める目的で導入されました。罰則の対象となるのは経営者だけでなく、残業に関する権限を持っている上司も含まれます。

長時間労働削減対策が一層重要になる

時間外労働の上限規制の導入によって、長時間労働の削減対策がより重要な課題となりました。この対策には欠かせない労働時間の把握についてのポイントを解説します。

1. 管理監督者に対する労働時間の把握も義務化

働き方改革関連法で改正された法律の1つ、労働安全衛生法の改正によって管理監督者に対する労働時間把握の義務化も定められました。「管理監督者」とは経営者と一体的な立場で職務を遂行している人のことを指し、一般の管理職とは異なります。

働き方改革関連法の施行によって管理監督者の業務負担の増加が予想されることから、他の法律と共に管理監督者の労働時間の把握の義務化が規定されたという経緯があります。これによって管理監督者も一般の従業員と同じように労働時間の把握を正確に行い、タイムカードやPCログなどで正確な労働時間の記録を残す義務が生じました。管理監督者の労働時間の把握と記録を怠った場合は法律違反となります。労働時間の把握を行わず長時間労働によって管理監督者の健康が悪化した場合、義務を怠った企業に非があるとして損害賠償請求に発展する可能性もあります。

管理監督者と違い、社内で管理業務を行う一般の管理職に対しては、その他の従業員と同じく時間外労働の上限規制が適用されるため、上限を超えて残業をさせた場合には企業に罰則が科されます。また、実際には大きな権限を持たない一般の管理職を「管理監督者」として働かせていた場合、残業代請求訴訟に発展した際には請求額が高額ととなり大きな経営リスクが発生します。管理監督者以外にも、裁量労働制の適用者など、みなし労働時間制で働く労働者の労働時間の把握も法改正によって義務化されています。

2. 労働時間と残業時間の把握が欠かせない

長時間労働を抑制し残業を削減する対策としては、従業員の勤怠状況を正確にチェックする、経営者がトップダウンで対策を行うなどの対策が効果的です。テレワークを導入している場合でも従業員の労働時間を客観的に把握する必要があります。その場合は、遠隔でも勤怠状況を確認できる仕組みの導入が有効です。

まとめ

時間外労働の上限規制は、長時間労働が多い日本企業において過労死を防止し、ワーク・ライフ・バランスを向上させる目的で導入されました。残業時間の超過による法律違反を回避するためには、これまで以上に実効性のある長時間労働対策が必要になります。その一歩として、自社の従業員の労働時間と残業時間を正確に把握できる仕組みを導入し、確実に運用していくことが求められます。

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