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退職前、退職後に企業がすべき手続きとは? 社会保険や税金の扱いについても解説

2021.09.15

従業員が退職する際には「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」そして「税金」関連の手続きを企業側が行う必要があります。それぞれに提出期限があり、手続き書類の様式や提出先も違うため、総務担当者は手続き漏れがないように把握しておく必要があります。
総務担当者ならば必ず押さえておきたい従業員退職時の手続きについて解説します。

従業員の退職に伴い企業が対応すべきことは?

従業員が退職する際の手続きについて、流れと企業側が対応する内容、そして従業員から回収するものについても確認しておきましょう。

1.従業員が退職するまでの流れと企業の対応内容

従業員が退職する際は、従業員への退職手続きの説明を行う必要があります。雇用保険、健康保険、厚生年金保険といった保険関連、そして住民税、源泉所得税など税金の手続きは総務や人事で行います。この際、説明不足や手続きの遅れ・漏れがあると退職する従業員に迷惑がかかるため、迅速かつ適切な対応が求められます。

退職の申し出から退職手続き完了までの流れは以下の図をご覧ください。

退職の申し出から退職手続き完了までの流れ 退職の申し出から退職手続き完了までの流れ

退職関連の手続きについて具体的に解説します。

数か月前~1か月前

退職届を受理します。ほとんどの企業では、就業規則により「退職希望日」と、申し出る日の期日を定めています。定められた規則に則って退職日を確定させ、必要な処理を進めていきます。なお、自己都合退職ではなく、会社都合の退職の場合、30日前までに解雇予告を行うよう法律で定められており、期日までに解雇予告ができない場合は「解雇予告手当」を支払わなければなりません。

~2週間前

退職手続きの説明を従業員に対して行います。具体的には以下の点について詳細を伝えます。

  • 退職前に行うことの流れ
  • 退職日までに回収するもの(詳細はこちら
  • 退職日までに渡すもの(詳細はこちら
  • 退職後に送付するもの
  • 退職後に社員自身で行う手続き

2週間前~退職日

退職金(発生する場合)の支給準備、退職証明書といった従業員に渡すものを準備します。

退職金の支払いは経理処理を行ったうえで期日に遅れることがないよう、以下の手続きを進めてください。

  • 「退職所得の受給に関する申告書」の作成
  • 源泉徴収票の作成

また、「退職証明書」の発行の要否を事前に従業員に尋ねておきましょう。企業は従業員から「退職証明書」を請求された場合、遅滞なく発行する義務があります。「退職証明書」を請求されたにも関わらず応じなければ労働基準法第22条1項により、企業に罰則が科せられます。

その他、社会保険、雇用保険、税金の手続きもありますが、こちらは次章以降で詳しく解説します。

退職日以降

社会保険、雇用保険、税金の手続きの完了に伴い発行される書類を元従業員宛に送付します。具体的な書類名は3章の「従業員に渡すもの」で解説します。

2.従業員から回収するもの

後々のトラブルを未然に防ぐため、従業員が退職するまでに支給、もしくは貸与しているものを全て回収しましょう。現物支給したものだけでなく、従業員が業務で得た情報等も含まれます。具体的には以下の書類です。

  • 社員証
  • 健康保険証(扶養する家族の分も含む)
  • 貸与品(ノートパソコン、携帯電話・スマートフォン、制服など)
  • 業務で作成した資料 など

特に注意したいのが、「健康保険証」です。従業員のみならず扶養している家族の分も確認し回収します。また、貸与品には、パソコン、携帯などのIT機器、社員証、制服・社章だけでなく、名刺や事務用品も含まれます。これらも漏れのないよう回収します。

業務上の機密に当たることも想定される企画書や報告書についても返却対象としてください。

定期券は、切符のように使う磁気定期券を利用している場合はそのまま従業員から返却してもらい、総務担当者が駅で払い戻しの手続きを行います。従業員の定期券が交通系ICカードやクレジットカード兼用の定期券だった場合、定期券自体を会社に返却することはできません。従業員に定期券の払い戻しをしてもらい、金銭を会社に返却してもらうようにします。

3.従業員に渡すもの

従業員に渡すものは「退職日までに渡すもの」「退職後に郵送等で送付するもの」に分かれます。退職後に送付するものは原則として退職以降に手続きが完了する書類です。出社しなくなった後に送ることになりますので、退職手続きの時点で何を送るのかを従業員に伝えてください。

退職日までに渡すもの退職後に渡す(送付する)もの
・年金手帳
・雇用保険被保険者証
・退職証明書
など
・離職票1、離職票2
・源泉徴収票
・健康被保険者資格喪失確認通知書(従業員から求められた場合)
など

退職日までに渡すもの

年金手帳は、転職先でも同じものを使い続けますので、返却は必須です。起業等で第1号被保険者へと変更する際にも必要です。雇用保険被保険者証は企業側で保管していることが多く、退職者が雇用保険給付手続きで使用します。もし従業員が保管しているという企業は、紛失していないかを従業員に確認してください。

従業員から「退職証明書」を請求された場合は、労働基準法第22条1項により、企業側には発行の義務があります。請求拒否や発行遅延の場合は30万円以下の罰則が科せられます。なお「退職証明書」には以下の項目のうち、従業員が請求したものが記載されます。

  • 雇用期間
  • 業務の種類
  • その事業における地位
  • 賃金または退職の理由(解雇の場合はその理由も)

退職後に渡すもの

退職後は離職票、雇用保険被保険者離職証明書を送付しなければなりません。「離職票1」は雇用保険の資格を喪失したことを通知する書類、「離職票2」は退職前に従業員が確認した「雇用保険被保険者離職証明書」の複写となります。離職票は雇用保険給付手続きの際に必要になるため必ず渡してください。

なお、退職後に転居する従業員がいることも想定されます。滞りなく必要書類を渡せるように退社後の連絡先を従業員に確認しましょう。

退職後に必要となる手続き関連業務

退職後に必要な手続きについて解説します。

1.社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失

厚生年金と健康保険の資格喪失日は退職日の翌日です。また、資格喪失日の前月まで保険料が発生します。そのため、月末近辺など退職の日が数日異なると保険料負担が変わることもあるため日付の確認には注意が必要です。例えば、7月30日退職の場合、資格喪失日は7月31日となり6月までの保険料が発生しますが、7月31日退職の場合、資格喪失日は8月1日となり7月までの保険料が発生します。

退職日の翌日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出してください。

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」提出時の添付書類は以下の通りです。

  • 本人・被扶養者分の健康保険被保険者証(全国健康保険協会の場合)
  • 高齢受給者証
  • 健康保険特定疾病療養受給者証
  • 健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証

また、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届には以下のような項目を記載します。

  • 本人・被扶養者の名前
  • 生年月日
  • 個人番号
  • 喪失年月日
  • 資格の喪失理由

添付書類のうち、健康保険証は必須であるため、万が一紛失等で回収できない場合は「資格喪失届」に理由を記載、もしくは「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」を添付します。

2.雇用保険の資格喪失

従業員が退職する場合、雇用保険の資格喪失手続きも必要です。退職から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」を、事業所を管轄するハローワークに提出しないとなりません。それぞれ記載する内容は次の通りです。

雇用保険被保険者資格喪失届
※用紙はダウンロード可能
雇用保険被保険者離職証明書
※ハローワークで用紙を受け取る、もしくは電子申請
・名前
・生年月日
・個人番号
・事業所番号
など
・被保険者番号・事業者番号
・離職日取り職の理由
・被保険者期間算定対象期間
・賃金支払い基礎日数
・賃金支払い対象期間
・賃金額
・離職者本人の署名(もしくは捺印)

雇用保険被保険者離職証明書は退職する従業員に内容を確認してもらい、署名をしてもらう必要があります。なお、保険料の控除は退職した月も対象です。社会保険のように資格喪失日の前月までではありません。

(雇用保険被保険者資格喪失届がダウンロードできます。)

より詳しい雇用保険関連手続き、書類の記載方法についてはこちらもご覧ください。

3.住民税・所得税関連

住民税については、給与から天引きする「特別徴収」の場合に、納税者が自ら支払い手続きを行う「普通徴収」へ徴収方法変更手続きが必要です。退職日を含む月の翌月10日までに「給与支払い報告に係る給与所得異動届」を退職者の特別徴収先の市区町村に提出します。提出漏れがあると、未徴収とみなされ督促状が届くこともあります。

また、住民税の金額は前年の1月1日~12月31日の間の所得によって決定します。普通徴収の場合は毎年6月初旬~中旬ごろに自治体から納税者宛に通知が届きますので、その年の6月から4回に分けて納付するようになっています。
※一括払い等も可能です。

退職者の場合、退職の時期によって徴収方法が異なりますので、そちらも確認しておきましょう。

退職時期徴収方法
1月~5月に退職最後の給与か退職金から残額を一括徴収
6月~12月に退職最後の給与か退職金から一括徴収、もしくは普通徴収に切り替え

所得税については、通常の給与に加え、退職金からも源泉徴収を行います。退職する従業員から「退職所得の受給に関する申告書」を提出されている場合は退職金に所得控除の適用ができます。その際の源泉徴収額は控除後の税額となります。

反対に「退職所得の受給に関する申告書」提出されていない場合は、退職手当等の支給額に20.42%を掛けて算出された金額を源泉徴収します。

退職の手続きに関するトラブル例

退職手続き時には人的ミスによるトラブルが起こる可能性もあります。具体的にどんなシーンでトラブルが起こりやすいのか確認しましょう。

1.退職者の個人情報の取り扱い

退職後も、従業員の個人情報を記載した書類には保管期間が定められています。保存期間を守らないで破棄したり、必要以上に長期間にわたって個人情報を残したりすると、個人情報保護の観点からトラブルに発展する可能性があります。

労働基準法109条では以下のような従業員の重要書類を3年間保管することを定めています。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 雇入・解雇に関するもの
  • 災害補償に関するもの
  • 賃金・その他労働関係に関するもの

この他、健康保険に関する書類や厚生年金に関する書類は、退職後2年間の保存が義務付けられています。履歴書や雇用契約書など雇用関係の書類の保存期間は3年間です。

ただし、「マイナンバーが記載されている書類」は速やかな処分が求められます。保管期限を決め、期限が過ぎたものから処分してください。

2.手作業による各種手続きや計算のミス

従業員の退職に伴う手続きは、手続きごとに窓口や書類が異なるため、一元処理・管理ができません。企業によっては手作業で書類作成を行っている場合もあるため、計算ミス、記入ミス、手続き漏れのリスクもあります。

退職関連手続きはハローワーク、年金事務所、各自治体でそれぞれ期限が設定されています。計算ミスや記入漏れが原因の差し戻しや作り直しが起こらないよう、細心の注意を払わなくてはなりません。

退職関連手続きのミスを防ぐためにも、マニュアルの整備、チェックリストの作成、自動化ソフトの導入などの対策を行いましょう。負担軽減やミス発生防止などのリスク軽減が期待できます。

まとめ

従業員が退職する場合、人事・総務部門の担当者は漏れがないように計画的に退職手続きを行う必要があります。特に社会保険・雇用保険、住民税・所得税の処理は手間がかかりミスが起こりやすい部分です。処理の都度、対応を確認するのではなく、手続きに入る時点で全体の流れを把握することが重要です。チェックリストを準備し万全な対策をとりましょう。

従業員の退職手続きに関する手続きは多岐にわたるため、企業は手続きでミスが発生しないよう、環境を整える必要があります。例えば、従業員のデータベースから作成書類に自動的に反映ができるシステムを導入し、なるべく手作業を減らすことも効率化やミス防止に役立ちます。

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