人事・労務の注目用語

マミートラック

まみーとらっく

公開日時:2021.11.29 / 更新日時:2022.03.09

マミートラックとは女性従業員が育児と仕事の両立を目指していても単調な業務や補助的な仕事しか任されずキャリアアップできなくなることを指します。もともとは1988年のアメリカで生まれた言葉で、マミートラックの「マミー」は母、「トラック」は陸上競技のコースのことで、「一度その働き方のコースに入ると抜け出れない」という意味の言葉です。当時は「子どもがいる女性従業員でも育児と仕事を両立できる」というポジティブな意味合いを持っていましたが、現在ではキャリアを妨げるネガティブな意味で使われています。日本は女性のほうが育児の負担を多く背負う傾向にあり、マミートラックは女性活躍推進やワーキングマザーのキャリア形成を妨げるとして課題となっています。ただし、キャリアよりも子どもとの時間を優先したいと考える社員もいるため、企業にはそれぞれの社員の価値観に沿った働き方を検討することが求められています。

マミートラックの問題点

一度マミートラックに乗ってしまうと、妊娠・出産を経験した女性従業員が本人の希望に沿ったキャリア形成をあきらめざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。マミートラックが働く女性に与える影響や問題点を詳しく解説します。

キャリア形成やモチベーション維持が難しい

妊娠した従業員・子どもがいる従業員は「戦力外」とみなされ、単調な仕事、補助的な仕事しか与えられなくなるケースが多々あります。そのため、「子どもと離れてまでする仕事なのか?」と悩み、マミートラックが仕事を続けるモチベーションの低下だけでなく、退職や転職を検討するきっかけにもなります。

女性活躍推進の考え方から離れる

現在、国を挙げて女性活躍推進法の施行・改定など、女性が社会で活躍しやすい環境づくりが進められています。キャリアアップを目指すワーキングマザーの活躍を妨げるマミートラックは、女性活躍推進の流れに逆行していると言えます。また、「子どもがいる女性従業員には簡単な仕事しか任されない」という働き方は多様性のある働き方を推進する「ダイバーシティ」のあり方とも離れています。

マミートラックが見直されないまま、女性活躍やダイバーシティから離れた働き方しかできない職場は、今後、優秀人材の登用や新入社員の採用の面で不利になる可能性があります。

「マミートラックに乗りたい」価値観も尊重する必要がある

女性のキャリア形成という点からマミートラックはネガティブな側面が注目されますが、自ら「マミートラックに乗りたい」と希望する女性がいることも考慮する必要があります。

マミートラックに乗ることを希望する女性がいるのには以下のような理由があります。

  • 短時間勤務や補佐的な仕事の担当になったことで、仕事と育児のバランスを取りながら働ける
  • 仕事のストレスを減らしながら子育てができる
  • 主要な仕事や忙しい仕事から離れることで、子供の体調不良や保育園の送り迎えなどの急な用事にも対応しやすい

マミートラックに関連して企業に求められる対策

働く女性の間でも様々な価値観がある中、マミートラックに関連して企業に求められる対策を紹介します。

女性社員の意見を把握し、男性社員の理解を得る

女性従業員にとっても働きやすい環境を実現するためには、職場の女性のそれぞれ異なる意見を把握することが重要となります。

まずは、女性従業員の側に働く意欲があるのに、マミートラックが起きてしまっていないかを確認しましょう。出産前と変わらずキャリアを積みたい、残業や出張が発生する仕事からは一部離れたい、時短勤務にしたい、など女性それぞれのキャリア志向を把握した後は、その志向に合った業務配置を行います。

また、男性従業員には女性のキャリア志向は人それぞれで異なることを理解してもらう必要があります。本人の意志に沿わないまま戦力外とみなしたり、勝手に主要な業務から外したりするようなことはしないよう、特に男性の管理職にはマミートラックの問題点についても周知しておきましょう。

一方で「育児と仕事の両立をしたい」とマミートラックに乗ることを希望する女性もいます。企業や上司側の価値観を押し付けて働き方を決めるのではなく、当事者の意向をしっかり確認することが重要です。

人事評価制度を見直す

マミートラックによって生じる問題を解消するためには、自社の働き方を見直し、残業が難しいワーキングマザーでも働き続けながら、キャリア形成できるような制度の導入を検討することが有効です。成果に基づくキャリアアップ制度や、裁量労働制に即した労働時間の長さに囚われない人事評価制度の導入を検討しましょう。

働き方の多様性を確保する

子供の送り迎えや育児などで、働く時間や場所に制約がある女性従業員でも仕事を続けられるように、働き方の多様性を確保することが必要です。多様な働き方を確保する方法としては以下があります。

働く時間の多様性時短制度の導入
フレックス制度の導入
働く場所の多様性リモートワークの導入
サテライトオフィスの導入

まとめ

キャリア志向は女性従業員それぞれで異なります。さらには「子どもが小さいうちは子育て優先、手が離れたらバリバリ働きたい」など、子どもの成長によっても変化する場合もあります。

女性従業員が望まない不本意なマミートラックが起こらないようにするためには、まずはそれぞれの女性の価値観を尊重することが必要です。そのうえで労働時間に囚われない評価制度、キャリアアップ制度の導入、柔軟な働き方ができる仕組みを整えていくことが求められます。

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