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高度プロフェッショナル制度

こうどぷろふぇっしょなるせいど

公開日時:2021.06.28 / 更新日時:2022.03.22

⾼度プロフェッショナル制度は、職務の範囲が明確で高度な専門知識を有する年収1075万円以上の労働者を対象にし、労働基準法に定められた労働時間・休憩・休⽇や深夜の割増賃⾦に関する規定を適用除外とする制度です。 対象者本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意することを目的に、2019年に公布された働き方改革関連法によって新設されました。制度を導入する場合は、労使委員会の決議と本人の同意、対象者に対する年104日以上の休日確保措置や、会社にいた時間と会社以外の場所で働いた時間を足した「健康管理時間」 に応じた健康・福祉確保措置を講じる必要があります。

高度プロフェッショナル制度とは

対象者を労働基準法の適用外とし、働き方の自由度を上げる高度プロフェッショナル制度は希望すれば誰でも適用対象となるわけではありません。対象職種、対象となる業務、年収の要件について詳しく解説します。

1. 高度プロフェッショナル制度の対象職種・年収

高度プロフェッショナル制度の対象職種は以下の条件に当てはまる職種です。

対象職種

・高度な専門的知識などを必要とする業務
・従事した時間と成果の関連性が高くないと認められる業務

同じ対象職種であっても、業務内容において、高度プロフェッショナル制度の対象となる業務、ならない業務があります。例えば「アナリストの業務」であっても、特別の専門知識が必要ないとみなされるデータ入力業務や、一定時間内で終わる相談業務は対象となりません。具体的には以下の表を参照してください。

対象職種 対象となる業務 対象外の業務
金融商品の開発業務 金融工学など専門知識を用いた新たな金融商品の開発 金融商品販売の企画立案、データ入力や整理
金融商品のディーリング業務 資産運用会社のファンドマネージャー、トレーダー、証券会社のディーラー 金融機関の窓口、ディーラーの補助業務
アナリストの業務 高度の専門知識を持ち応用して分析、運用担当者に助言 一定の時間を設定した相談業務、分析のためのデータ入力
コンサルタントの業務 企業の経営戦略に直結する提案やアドバイス 調査、分析、助言のみの業務。個人顧客を対象にした助言
研究開発業務 新たな技術の開発、新たな技術を導入して行う新素材や新たなサービスの開発 日々のスケジュールが示され、予定の決まったプロジェクトで縛られる業務。既存の商品やサービスに関する業務

また、高度プロフェッショナル制度の対象者は年収が1,075万円以上である必要があります。厚生労働省の指針では、高度プロフェッショナル制度の対象となった後に条件を下げて働かせることがないよう、制度の適用になる前よりも対象者の賃金を減らしてはならないとしています。

2. 健康確保のための選択的措置を講じる必要がある

高度プロフェッショナル制度の対象者は労働時間の規制の対象外となります。そのため、企業は対象者の過重労働を防ぎ、健康を守るためにいずれか1つの措置を実施することが義務付けられています。

健康確保のための選択的措置

1. 勤務間インターバルと深夜労働の回数制限制度の導入
2. 対象者の時間外労働が1か月で100時間、または3か月で240時間を超えない範囲にする(健康管理時間の上限措置)
3. 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える
4. 時間外労働が80時間を超えたら臨時の健康診断を実施する

3. 高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の違い

同じく、裁量ある働き方を実現する目的で導入される高度プロフェッショナル制度と裁量労働制ですが、制度内容にはそれぞれ違いがあります。裁量労働制との最も大きな違いは高度プロフェッショナル制度には労働時間の制約がなく「○○時間働くという取り決め」自体がないことです。また、裁量労働制には高度プロフェッショナルと違い、年収要件がないため、要件を満たし、労使の合意をはじめ適切な手続きを経れば年収に関係なく適用可能です。

裁量労働制 実際の労働時間にかかわらず一定の労働時間働いたものとみなす
※みなし労働時間を9時間と定めた場合には、実際の労働時間が8時間や10時間であったとしてもみなし労働時間の9時間働いたものとして扱う
※22時以降から翌朝5時までの労働は割増賃金(深夜手当)が発生する、休日労働でも割増賃金(休日手当)が発生する
高度プロフェッショナル制度 労働時間の制限なし
※割増賃金(深夜手当、休日手当、時間外手当)は発生しない

4. 高度プロフェッショナル制度の導入企業数

高度プロフェッショナル制度の導入企業は2020年12月末時点で26企業、対象者は938人です。この数字は企業内で「高度プロフェッショナル制度に関する決議書」が提出された件数に基づきます。

制度導入時に労使委員会の決議と本人の同意が必要、または年104日以上の休日確保措置や健康管理時間に応じた措置を講じなければならないといった実際の導入までのハードルが高いことが、導入企業が少ない理由と考えられます。

高度プロフェッショナル制度のメリット・デメリット

高度プロフェッショナル制度を導入した場合のメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。

1. 高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナルは、実働労働時間に対する報酬ではなく、成果や業績のみで賃金を決定する制度であるため、制度の導入がもたらす代表的メリットは以下の点です。

・出社や退社の時間を自由に決めることができるため、対象労働者のワークライフバランスに配慮しやすい
 例:出社は打合せがある午後だけ、といった働き方も可能

・勤務時間の縛りがなく、各自に合った働き方ができるため、労働生産性の向上につながる
 例:成果を出せば1日の労働時間が短くてもよい
   業務に支障がなければ長時間勤務できる日、できない日があってもよい

2. 高度プロフェッショナル制度のデメリット

高度プロフェッショナル制度の対象者は1日当たりの労働時間の規制がないことから、以下のデメリットが生じる可能性があります。

・労働時間の制限がなく成果を出すために長時間労働になる可能性がある
 例:労働時間の縛りのない高度プロフェッショナル制度の対象者に業務が集中し、過重労働になる場合がある
・高度プロフェッショナル制度対象者には時間指定の業務命令を出すことが禁じられているため勤怠管理が難しくなる
 例:出社・退社時間がバラバラなので、勤務体系に合わせた勤怠管理が必要
   社外で業務をした際にタイムカードでは管理しきれない

まとめ

高度プロフェッショナル制度とは高度な専門的知識などを必要とし、時間と成果の関連性が高くない職種を対象にした制度です。年収1,075万円以上の人が対象という年収の要件もあります。「ワークライフバランスを実現しやすい」「労働生産性の向上につながる」といったメリットがありますが、導入、運用には厳格な条件をクリアする必要があります。運用時は健康管理時間を基にした適切な勤怠管理や長時間労働の予防に努めなければなりません。

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