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過重労働対策・働き方改革で待ったなし!いま求められる労働時間管理のポイント

公開日時:2017.04.20 / 更新日時:2022.03.09

少子高齢化による労働力人口の減少や共働きの増加など社会状況の変化により、働き方改革が不可欠な時代となっています。ここに過重労働による自殺事件の社会的影響が加わり、過重労働対策が急速に進められています。今後は、長時間労働を前提とした企業は存続できない時代となっていきます。事業継続のためには、適切な労働時間管理が必要となっていきます。
宮武 貴美氏

宮武 貴美氏

特定社会保険労務士・産業カウンセラー

社会保険労務士法人名南経営

愛知県立大学卒業後、システム開発職、企業秘書職を経て、平成14年に株式会社名南経営コンサルティングに入社。人事労務分野でコンプライアンス遵守に向けた指導を進めるようになり現在では、人事労務分野での指導を主として行う。

一方で、労務ドットコムブログのメイン執筆者であり、人事労務の最新情報をホームページ・ブログ・メルマガ・facebookなどで発信し続けている。情報の早さには社労士業界でも定評がある。

「働き方改革」の目的

いまやわが国の雇用情勢は、深刻な人手不足の状況にあります。2017年2月の有効求人倍率は1.43倍を記録しました。バブル経済時のピークは1.46倍(1990年7月)でしたので、現在の人材不足の状況はバブル期に匹敵する水準となっていることが分かります。この状況は当面継続することが確実ですので、安定的な人材確保のためには、従来型の働き方を見直し、安心して働くことができる環境の構築が不可欠です。

また、かつては専業主婦が中心であった日本の家族形態も大きく変化しており、いまや共働きが当たり前となっています。これにより、今後は多くの従業員が育児や介護との両立を求められ、企業としても働き方に制約のある従業員が仕事を継続できる環境を作るための「改革」が急務となっています。

こうした背景から、政府の働き方改革実現会議では、以下の9つのテーマを掲げています。

このうち、同一労働同一賃金と労働時間制度改革は、今後の日本の働き方を大きく変えるキーワードになっていくことでしょう。

過重労働対策の歴史と今後の過重労働対策の基本方針となる「過労死等ゼロ緊急対策」

過重労働対策のきっかけとなったのは、平成3年8月に発生した過労うつ自殺事件です。この事件は最高裁まで争われ、最高裁では「会社側には長時間労働と健康状態の悪化を認識しながら負担軽減措置(安全配慮義務)を取らなかった過失がある」として、東京高裁に審理のやり直しを命じ、その後、当時の史上最高額での和解という結論を迎えました。

この結果を重視した厚生労働省では、最高裁判決の翌年、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準(いわゆる46通達)」を発出し、客観的方法による始業・終業時刻の把握のルールを整備し、過重労働対策を本格的に開始しました。以後、この通達が労働基準監督署による労働時間指導の基本となっています。

そして平成28年12月26日、過重労働対策の重要性の高まりを受け、厚生労働省長時間労働削減推進本部は、「過労死等ゼロ」緊急対策を発表しました。この緊急対策では違法な長時間労働撲滅のための取組みとして以下の対策が示されました。

これらの方針を受け、平成29年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が示され、従来よりも厳格な労働時間管理が求められるようになっています。このガイドラインは今後、労働基準監督署の監督指導の基準となりますので、右ではそのポイントを説明します。

労働時間の適正なガイドライン

● 労働時間の定義の明確化

労働時間は「使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間」であるという定義が改めて明確化されました。また、業務に必要な準備行為(制服への着替え等)や業務終了後の後始末(清掃等)、いわゆる手待時間、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間も労働時間に当たると、具体例が示されています。

● 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

従来からあるタイムカード、ICカードによる記録に加え、「パソコンの使用時間の記録等」が追加されました。

● 自己申告により労働時間を把握する場合に必要な措置

「始業・終業時刻を自己申告により記録している場合であっても、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など実態調査を実施し、乖離のある場合は労働時間の補正をすること」とされました。

労働基準監督署調査において、今後、アクセスログと労働時間の乖離についての指摘が増加すると予想されます。

労働基準法改正案

注目の労働基準法改正については、2019年4月施行が有力視されています。この法案は「残業代ゼロ法案」という批判を受けることが多いですが、その実質は働き方改革の流れを受けた「過重労働対策法案」であると理解することが重要です。

中でも、残業時間の上限規制や年次有給休暇の取得ルールの設定は大きな影響が予想されます。

現在議論されている改正案

● 残業上限時間の設定

現在の法律では36協定に特別条項を設けることで事実上無制限となっている残業時間の上限が、1年間720時間に制限されます。また1ヶ月で100時間などの短期の上限時間も設定される見込みです。その他、建設業や運送業で設けられていた適用除外ルールの撤廃も検討されています。罰則も設けられることから、今後はリアルタイムに残業時間を管理し、上限を超えない仕組み作りが求められます。

● 年次有給休暇の5日取得ルール

年次有給休暇が年10日以上付与される労働者について、5日間は取得させなければならないというルールが検討されています。また、年次有給休暇の取得状況を確実に把握するため、年次有給休暇の管理簿を作成させる厚生労働省令も予定されています。

● フレックスタイム制の見直し

フレックスタイム制については、清算期間の上限が現行の1か月から3か月に延長されます。1か月を超える期間で繁閑の差があるような場合には有効に活用することができると考えられますが、割増賃金支給についての新たなルールが設けられることにより、その管理は煩雑になります。

● 裁量労働制(みなし労働時間制)の見直し

企画業務型裁量労働制の手続きを簡素化すると共に、新たに対象業務を追加し使いやすい制度とします。

● 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)

一定の要件を満たした高度専門人材について、管理監督者同様の適用除外を認める制度です。いわゆる「残業代ゼロ」の制度ですが、適用対象者の要件が厳しく、当面の対象者は極めて限定的になると思われます。

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