人事・労務の注目用語

ワーケーション

わーけーしょん

公開日時:2021.04.28 / 更新日時:2022.03.09

ワーケーションとは、ワーク(労働)とバケーション(休暇)を合わせた造語で、オフィス・自宅以外の場所で休暇を取りながら働くことを指します。働き方改革の促進や新型コロナウイルス拡大の影響でリモートワーク導入が増えた日本でも徐々に普及しつつある働き方です。ワーケーションには休暇目的で取得し必要なタイミングのみ仕事をする「休暇型」と業務の一環として取得し仕事以外の時間で休暇を楽しむ「業務型」の2種類があります。ワーケーションの普及が進めば、有給取得率や従業員の幸福度の向上、地域活性化などが期待できるとされおり、企業だけでなく日本政府や各省庁、各地方自治体もワーケーションの促進に力を入れています。

ワーケーション導入のメリット・デメリット

ワーケーション導入は労働者だけでなく企業側にもプラスの効果があります。しかし、ワーケーションを導入する上ではいくつか課題を乗り越えなければなりません。ワーケーション導入におけるメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

ワーケーションのメリット

ワーケーション導入が企業側にもたらす代表的なメリットは、人材の定着、有給休暇取得促進、イノベーション創出の3つです。

働き方や休暇制度としてワーケーションを導入すれば、多様な働き方を認めていることを社内にも社外にも伝えることができ、人材のさらなる定着が期待できます。また、自由度の高い働き方を採用することで企業イメージの向上や、人材流出の抑制や離職率の低下、優秀な人材の採用が見込めます。

ワーケーション導入は有給休暇の取得促進にも効果が期待されています。ワーケーションの制度を設けることで、きがねなく有給休暇を取れるようになるほか、従業員がワーケーションを行うホテルや施設までの往復時間に有給休暇を充てることで有給休暇を消化しやすくなると考えられています。

さらに、従業員がワーケーションを利用して休暇を取ることで、会社全体のイノベーション創出につながる可能性があります。ワーケーションを通じ従業員が普段とは異なる環境で新しい人や物に出会ったり、充実した時間を過ごして企業に対するエンゲージメントが高まったりすることで、新しいアイデアが生まれやすくなると期待されています。

ワーケーションのデメリット

ワーケーション導入が企業側にもたらす代表的なデメリットは、労働時間の管理の難しさと、セキュリティ対策整備のコストの2つです。

ワーケーションでは業務時間とプライベートの時間の区別が曖昧になりがちで、正確な時間管理が難しくなります。タイムカードやICカードなどによる物理的な労働時間の記録・管理ができないため、長時間労働を見逃してしまう可能性も考えられます。また、ワーケーション中はその日の業務が会議の出席だけ、というケースも往々に生じます。そのため他の従業員と同じ拘束時間を設定するのではなく、ワーケーション中の従業員に対しては柔軟な労働時間管理を行う必要があります。

ワーケーションの実態に即した労働時間管理の方法としては具体的には以下のような方法が考えられます。

労働時間の管理方法の例

  • リモート下で労働時間を記録・管理できる方法を新たに取り入れる
  • 長時間労働防止のためにシステムのアクセス時間の制限を設ける
  • ほかの従業員と同じ勤務時間に縛られない柔軟な勤務制度を取り入れる

また、ワーケーションを導入する場合は端末紛失による情報漏洩、公共Wi-fiの利用による不正アクセスなどのリスクに備える必要もあります。以下のような対策を実施し、不慮の事態に備えましょう。

セキュリティ対策の例

  • ポケットWi-fiの貸し出し
  • VPNを利用した通信の暗号化
  • セキュリティソフト・OSの定期的なアップデート
  • 多要素認証の導入
  • ワーケーション実施前にセキュリティ対策に対する従業員側の意識醸成を図る

デバイスの設定などハード面の対策だけではなく、セキュリティに関する危機意識醸成などワーケーションを利用する従業員の意識面にアプローチする取り組みも合わせて実施することがポイントです。

ワーケーション導入事例

ここでは、ワーケーションを実際に導入した企業の事例を紹介します。各企業がワーケーションを導入した背景や導入後の会社の変化、導入するにあたって工夫したことを紹介します。

事例1:日本航空株式会社(JAL)

日本航空株式会社(以下、JAL)は、有給取得率の向上を目指して休暇型のワーケーションを導入しました。ワーケーション制度は2014年にJALが導入したリモートワークに関する労務規定(テレワーク規定)を基に制度を整備しました。ワーケーションの導入後は、社内で長期休暇を取得するハードルが下がり、有給取得率の向上という目標を達成しました。

制度を導入するにあたっては、ワーケーションはあくまで休暇であり、その一部として休暇先でリモートワークを行うことを基本としています。ワーケーションを円滑に進めるための工夫として、長時間労働が起きないよう業務時間を短くする、勤務状況の把握のため、当日の就業場所や業務の進捗状況の報告を義務付けるといった「休暇取得ルール」を定めています。

事例2:株式会社野村総合研究所(NRI)

株式会社野村総合研究所は従業員の業務に対するモチベーション向上、社内のイノベーション創出を狙い2017年にワーケーションを導入しました。ワーケーション実施にあたり、地域との交流・共同企画を行うことを重視しました。ワーケーションは徳島県三好市にある古民家で1か月間にわたって行い、平日は通常の業務を行い、週末は休暇を取る仕組みです。導入後は、地域密着型のワーケーションを通した思考の変化や、地域の課題に対する視野の広がりなどの従業員の成長面や、地域での交流促進の成果がありました。

まとめ

ワーケーションは人材の定着・有給取得促進など、従業員だけでなく企業にもメリットがある働き方です。しかし、労働時間の正確な管理や、ワーケーションの実態に即した柔軟な労働時間管理の方法、セキュリティ対策など導入には徹底した準備が求められます。

ワーケーション導入にあたっては、他社の事例を参考にしつつ、自社がワーケーション実施で得たいメリットは何か、実現可能なワーケーションの制度はどんなものかといった事前の検討が必要です。

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