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【社労士監修】2024年4月より改正!労働条件通知書のルール変更とは?対応法も解説

公開日時:2023.12.05 / 更新日時:2024.01.19

2024年4月より、労働条件明示事項に関するルールが改正により変更されることになりました。
労働条件明示事項とは、企業が従業員を雇う際に交わす「労働条件通知書」で明示する内容のことです。労働条件がはっきりと明示されないことで労使間の認識にズレが生じ、これまでも労使トラブルが相次いでいました。この状況を受け、こうしたトラブルの原因となりやすい就業場所や有期契約労働者の無期雇用に関する明示事項が、新たに改正される運びとなったわけです。
この記事では、労働条件通知書の概要や具体的な労働条件明示事項の内容、そして改正内容について、企業側が知っておかなければならないポイントについて詳しく解説します。
加藤 知美 氏

加藤 知美 氏

社会保険労務士

愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。

総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

「労働条件通知書」とは

労働条件通知書とは、企業で新たな従業員を雇用する際の労働条件に関する具体的な内容を書面化したもので、作成し明示することが法律により義務づけられています。
従業員は、これから企業のために働くことによって対価となる賃金を得ることになりますが、その際にどのような形で働くことになるのかを明確に知るための書類が「労働条件通知書」になります。

労働条件通知書で明示しなければならない内容はさまざまですが、例えば、所定労働時間は何時から何時までか、残業はあるのかないのか、休日は何曜日か、週に何日の休みがもらえるのか、などの労働時間に関する事項については、従業員自身の毎日の生活に影響する非常に重要な内容なので、明示が義務づけられています。

また、基本給や各種手当はあるのか、交通費は支給されるのか、昇給やボーナス支給のタイミングはいつか、などの賃金に関する事項についても、従業員やその家族にとって生活に直結する重要な内容ですし、雇用保険や健康保険、厚生年金保険の適用はあるのか、福利厚生制度はどのようになっているのか、なども、従業員にとっては入社の時点で知っておきたい情報になるため、やはり労働条件通知書での明示が義務づけられています。

これらを含むその他の具体的な明示事項については、のちほど紹介します。

なお、労働条件通知書による労働条件の明示は、従業員の雇用形態を問わず、すべての従業員が対象となります。正社員だけではなく、契約社員やパートタイマー、アルバイト、嘱託社員なども対象となる点に注意しましょう。

「雇用契約書」との違い

労働条件通知書に類似した書類として、「雇用契約書」を連想する方も少なくないでしょう。雇用契約書とは、雇用にあたって交わされる雇用契約の内容について、企業と従業員の間で合意を交わすための書類です。一見、労働条件通知書と同様の内容に見えますが、労働条件通知書とは異なり、作成や明示に関する法的義務はありません。あくまでも、雇用契約を交わした証明となる書類という位置づけです。
なお、昨今では、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる企業が多く、労働条件通知書で明示しなければならない内容を雇用契約書に記載し、ひとつの書類としてしまうケースも見られます。

労働条件通知書の発行方法

なお、労働条件通知書による労働条件の明示は書面媒体が基本とされてきましたが、2019年4月より、従業員本人が希望した場合はメールやFAX、各種SNS媒体を活用して労働条件の明示ができるようになりました。
SNS媒体の選択に制限はありませんが、従業員が見やすいようにPDF形式の通知書ファイルを添付する方法が適していると言えるでしょう。また、「送った」「送っていない」問題が発生しないよう、送信後は従業員にその旨を通知し、必ず従業員から「受け取った」旨の連絡をもらう形にルール化する方法が有効です。
なお、メールやFAX、SNSによる明示は、あくまでも「従業員本人が希望した場合」に限ります。従業員の希望に反してこれらの媒体を活用して労働条件の明示をした場合は、法律違反に問われる可能性があるため注意しましょう。

労働条件の明示義務

まず初めに、改正前の労働条件の明示義務についておさらいをしていきましょう。

先ほど述べたように、従業員を新たに雇用した際には、企業は労働条件に関する一定の事項について従業員へ明示することが義務づけられています。
明示事項は、重要度に応じて「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」に分類されます。絶対的明示事項は必ず明示をしなければならない内容、相対的明示事項は社内でその内容に関するルールがある場合は明示をしなければならない内容のことです。

絶対的明示事項

絶対的明示事項には、書面を作成して明示しなければならないものと、書面までは必要ないが明示しなければならないものの2種類があります。なお、ここでいう「書面」には、メールやFAX、各種SNS媒体を活用して作成してデータ化されたものも含まれます。

【書面の作成が必要な明示事項】

  • 労働契約の期間に関する事項
  • 就業場所や従事する業務内容に関する事項
  • 始業や終業の時刻、所定労働時間を超える労働(いわゆる残業)の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合の就業時点転換に関する事項
  • 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金などを除く)の決定、計算や支払いの方法、賃金の締め切り日や支払いの時期(昇給に関する事項を除く)に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇事由に関する内容を含む)

【書面が不要な明示事項】

  • 賃金の昇給に関する事項

相対的明示事項

  • 退職手当のルールが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算や支払いの方法ならびに退職手当の支払い時期に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与やこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  • 労働者に負担させるべき食費、制服、作業用品その他に関する事項
  • 安全や衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

2024年4月以降の改正内容とは

2024年(令和6年)4月より、労働条件明示に関する以下のルールが変更になります。

就業場所・業務の変更の範囲

入社後に働くことになる職場の場所や業務内容については、改正前も絶対的明示事項として書面の作成が義務づけられていた内容です。
今回の法改正では、「雇入れ時」のみならず、配置転換や人事異動、昇進や昇給などのタイミングで職場の場所や業務の内容が変更になる可能性を見越して、「今後起こり得る」変更の範囲について記載をすることが新たに義務づけられました。
ただ、会社の事業拡大や経営方針などの動きが不透明なために、雇用した従業員に対して、今後どの部署への配置転換があり得るのか、どのような業務を任せることになるのかが不透明な場合が多いことも想定されます。このような状況に置かれた企業に対しては、「企業の定める就業場所や業務内容に従事する」という形で書面に明示する方法も許可されています。
なお、就業場所や業務内容に関する事項は、雇用形態に関係なくすべての従業員にとって非常に重要な要素です。したがって、すべての従業員に対して労働条件の明示が必要になります。

有期契約労働者についての明示事項

ここからは、一定期間ごとに契約の更新が必要となる「有期契約労働者」に対して労働条件の明示が必要になる内容です。

1.更新上限の明示

従来、有期契約労働者と契約をする際には、「契約の期間」「契約更新があるかどうか」「契約を更新する判断基準」を明示する必要がありました。
今回の改正では、これに加えて有期契約労働者を新規雇用するとき、そして契約を更新するときに、それぞれ「通算の契約期間、もしくは契約更新回数の上限があるかどうか」「更新上限の内容について」を明示することが必要になります。

なお、これまでは更新回数の上限や通算契約期間に関するルールを設けていなかった企業が、改正内容を受け新たにルールを設ける場合や、すでにルール化されていた更新回数上限の引き下げ・通算契約期間の短縮を行う場合は、結果として有期契約労働者側に不利なルールに変更されてしまうことになります。
このような状況において有期契約労働者を守るため、企業には労働契約を明示する前の段階で変更の理由について説明することが義務づけられています。

2.無期転換ルールに関する明示

改正により、有期雇用契約者に無期転換への申し込みの権利が発生したタイミングでの更新時には、「無期転換を申し込めること」と「無期転換後の労働条件の内容」を明示しなければならなくなりました。
なお、無期転換ルールとは、同じ会社で有期契約労働者として雇用される者が通算して5年以上を経過した状況で雇用契約を更新された場合、労働者本人が申し出ることで「無期労働契約」に転換することができるという決まりのことです。

まとめ

労働条件明示に関するルール改正の内容について、お分かりいただけましたでしょうか。今回の改正を受け、各企業において労働条件通知書をはじめとした従業員雇用時のルール見直しが必要になります。厚生労働省のホームページでも、改正内容を受けた「モデル労働条件通知書」が公開されていますので、参考資料として活用してみてください。

なお、この「モデル労働条件通知書」には、今回の改正内容に加え、「就業規則を確認できる場所や方法」に関する内容が追加されています。
就業規則については、企業側が従業員の入社時にその場所や内容確認の方法を知らせるケースが多く見られますが、時がたつにつれ就業規則の格納場所が変更されたり忘れられたりしてしまい、従業員が十分に確認できない場合が少なくありません。

このような状況を受け、今回のモデル労働条件通知書では、就業規則の保管場所や確認方法の明示が新たに求められる運びとなりました。改正内容とは別の扱いとなりますが、企業側の誠意を見せる方法のひとつとして労働条件通知書の項目に加え、あとあとの労使トラブル回避に努めてみてはいかがでしょうか。

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