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DX人材育成に必要なリスキリングの意味とは? 導入時のポイントや企業の取り組み事例まで

公開日時:2022.11.29 / 更新日時:2023.01.24

世界的にデジタル化が推進される中で企業の市場競争力を強化するため、DXをリードし企業戦略や企画立案、サービス構築・実行可能な人材育成が急務となっています。デジタル化によって生まれる新規事業や業務フローに対応するためには、新しいデジタル技術や知識のリスキリングが有効です。 しかし、具体的な方法やリスキリング導入時の懸念で検討段階から進展しない企業も多いのではないでしょうか。 本記事では、DX人材育成に欠かせないリスキリングの意味やさまざまな教育方法との違い、導入時に留意すべきポイントについて、実際に導入している企業の取り組み事例を踏まえ詳細に解説します。

リスキリングとは

技術革新が目覚ましい昨今、DX人材育成にはリスキリングの定義や注目される背景を理解した上での適切な対応が必要です。

経済産業省の定義

経済産業省によるリスキリングの定義は「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」とされており、DXに限定されるものではありません。

リスキリング自体は個人的な興味分野を学ぶのではなく、継続的な提供価値の創造を目的に、現在のスキル向上や必要なスキルを会得する意味合いが強い概念です。特に、今後よりビジネス発展に不可欠となるDX人材育成の文脈中にリスキリングという言葉が使用されていることから、最新デジタル技術の導入・駆使に必要な学び直しが重要となります。

もちろん、企業としての提供価値にはDXに関連するスキルだけではなく、コミュニケーション能力を始めとしたソフトスキルも重視すべき点です。しかし、ソフトスキルを過剰に強調すると、新たなデジタル技術導入に否定的意見を持つ従業員への教育が滞るため注意が必要です。

DX化によって変化する経営戦略達成のために人材育成にも注力し、従業員がソフトスキルとデジタルスキルをバランス良く取得・発揮することで企業全体の生産性が高まります。

注目される背景

リスキリングが注目される背景には、DX実現を加速するために必要な技術・知識を備えた人材の確保が急務であることや、DX化による急激な仕事の創出・衰退に伴う失業リスクへの対応が挙げられます。

また、2020年のダボス会議※では「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表され、大きな注目を集めました。

リスキリングは、DX化の加速やそれによる職業衰退・創出が予想される中で世界全体が注目している学習形態です。現存のソフトスキルとリスキリングで新たに習得するデジタルスキルを適切に発揮することが、社内外での継続的な提供価値に必要となります。

※ダボス会議とは?

例年1月に開催される「世界経済フォーラム」の年次総会です。スイスの「ダボス」で開催されるため「ダボス会議」と呼ばれています。世界各国の政財界トップや学者らが集結し、地球全体の課題や問題を検討しています。

リスキリングとリカレント教育、アンラーニングとの違い

さまざまな教育方法を有効活用するには、状況に応じた使い分けが重要です。リカレント教育、アンラーニングとリスキリングを比較しどのような違いがあるのかを解説します。

リカレント教育との違い

リカレント教育は「自ら必要なタイミングで現在の仕事から離れ、大学などに編入し教育を受けること」と定義されています。一方、リスキリングは企業が行う人材育成の一貫であるという点が大きな違いです。

リカレント教育では就業と教育を繰り返すため、離職期間の発生が想定されています。一方で、リスキリングは企業に属した状態での新しいスキルや知識習得が前提です。

アンラーニングとの違い

「アンラーニング(unlearning)」の定義は「既存スキルのうち不要なものを捨て、新しいスキルを習得すること」とされています。リスキリングは必ずしも既存スキルを棄却するわけではない点がアンラーニングと異なります。

デジタル化によって社会が大きく変化する中、早急な課題解決に向けて不要な業務の廃止や業務スタイルの変更が必要となるケースは珍しくありません。アンラーニングはそのような事態への対応策として、既存概念や使用しないスキルを棄却し、新しいスキル・知識の獲得が必要という考え方に基づいています。ただし、スキルを捨てると言っても一時的に使用しないだけであり、必要なタイミングがきたら再度活用します。

これらアンラーニングに見られるような教育方法は、企業にとって必要な状況で使い分けると良いでしょう。DX人材の育成に関しては、企業に所属した状態で既存スキルと掛け合わせながら学ぶリスキリングが有効と言えます。

 

リスキリング導入の手順

リスキリング導入は、ただ従業員にスキルを身に着けてもらうものではありません。ここからは、具体的なリスキリング導入の手順を解説します。

①事業戦略に基づき、必要な人材像やスキルを提示する

経営課題解決や今後の事業計画といった企業戦略に基づき、社内の既存スキルと存在しないスキルを整理し、内部に存在せず会社にとって新規習得が必要な能力・技術を抽出します。

リスキリングの対象となる部署や従業員を選定する際は、従業員へのヒアリングだけでなくスキルデータベースやAIによる能力の可視化を行い判断しましょう。

また、一度限りのリスキリングではなく、AIを活用した社内外の最新情報から必要な能力・技術を洗い出し、対象部署や従業員のスキルを継続更新できるシステム構築も重要です。

②具体的な教育施策を考案する

必要なスキルを整理したら、リスキリングの具体的な教育施策を考案します。研修やeラーニングといった学習方法を取り入れ、効率的に習得できる構成・順番でプログラムを組み立てましょう。ただし、座学のみのリスキリングは不十分であり、実践経験を積むことではじめて有用なスキルとなります。

また社内に存在しないスキルは内製化せず、外部コンテンツを利用するのも一つの手段です。外部リソースを上手に活用することで育成にかかる経費を削減できます。社外企業選定の際はコンテンツ内容はもちろん、社内の課題に対し柔軟かつ合理的な対応が可能かといった要素も基準にすると良いでしょう。

③運用体制の構築

リスキリングの運用を開始する際は、社内における適切な体制構築が必須です。リスキリングは従業員の負担が大きいため、学習継続のモチベーションを維持できず成果を得られない可能性も考えられます。また、従業員がITスキルに対して拒否感・苦手意識を抱いている場合や、現在抱えている業務が多忙のため抵抗を覚える場合もあるでしょう。

事前に対象従業員にリスキリングの目的や意義について理解を促した上で、成果の可視化や習得状況に合わせた寸志支給※など、モチベーション維持に効果的な運用体制構築が大切です。

※「寸志」は心ばかりの感謝や心遣いを意味し、ビジネスでは給与や賞与以外に日頃の貢献を労って支給されるなど、シチュエーションはさまざまです。

④実践とフィードバック

リスキリングは習得したスキルを実践し、フィードバックを継続して行うことが重要です。スキルを活用できる業務の用意や社内インターンシップ、一時的な試験配属などで実践を積み能力向上を図りましょう。

さらに成長度合いを可視化し、プログラムへのフィードバックを受け付け改善を重ねることで、リスキリングの取り組みに関して従業員のモチベーション向上にも役立ちます。

リスキリング導入には、今後の企業戦略を基にデータベースやAIなどを取り入れ情報の可視化によりモチベーションを維持し、継続して実践とフィードバックを積み重ねることが重要です。

リスキリング導入時のポイント

リスキリング導入を成功させるには、誤った認識の解消や課題解決への取り組みも重要となります。実際にリスキリングを導入する際は、次のようなポイントへの留意が必要です。

OJTでの導入は難しい

OJTでは、効果的なリスキリング導入を行うことが困難です。そもそもOJTとは、既存の業務や職務などを通して実際に取り組まれている内容を引き継ぐことを指し、日本企業の風習としてOJT形式による従業員教育が習慣的に行われています。

しかし、リスキリングは社内に存在しないスキルを習得するものであり、業務中に先輩や上司から指導を受けて身につく能力ではありません。リスキリング導入の際は、社内状況に合わせてさまざまな学習方法を幅広く用意することで、最適かつ効率的な従業員のスキル習得が可能となります。

従業員の自主的な動きが重要

リスキリングは現存しないスキルを習得することから従業員に大きな負担がかかるため、実施に対し消極的になる可能性があります。しかし、従業員自身がリスキリングの重要性を理解し主体的に行動すれば、社内全体での取り組みが可能です。リスキング導入時は企業の経営層から重要性を説明し、モチベーションを維持する施策や学習環境の整備が重要です。

また、一部の従業員はリスキリング導入に難色や抵抗を示すことが予想されます。まずは、それぞれのキャリア計画を入念にヒアリングした上で、リスキリングによるスキル向上が企業や本人の価値をいかに底上げするかといった説明が必要です。その上で現状と今後の可能性を可視化するなどし、意義や目的について従業員の理解・納得を得ることが成功を左右します。

リスキリングの取り組み事例

リスキリングの取り組み方は企業によってさまざまです。ここからは、大手企業3社の取り組みを紹介します。

Amazon

従業員へのリスキリングを積極的に行うAmazon社は、2025年までに米アマゾンの従業員10万人をリスキリングすると発表。(一人当たり投資額は約75万円)

技術職でない従業員を技術職に職種移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」や、技術職に在籍中の従業員やデジタルスキル保有者による、AI分野の高度なスキル習得を目的とした「機械学習大学」といった取り組みを実施しています。

富士通

富士通は顧客や社会に対する提供価値を創造し、企業としての存在意義を実現するため5年間で5,000~6,000億円という巨額投資を発表しています。「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱する中で、リスキリングによる人材育成は重要課題であると明言しました。

また、富士通株式会社の連結子会社である株式会社富士通ラーニングメディアは、社外向けにDX分野のリスキリングに関するコースを新規開設するなど、DX急速化に伴う人材不足やビジネス環境の大きな変化に対応可能な人材を育成する事業を展開しています。

丸紅

従業員へのリスキリングを積極的に推進する丸紅は技術的にもAIを扱う、より実践的なプログラミング講座「デジチャレ」を実施しています。従業員自らデジタルで解決できるテーマを決めて応募するというスタイルで運用され、50人が応募しました。この講座では、Python やデータ分析、機械学習等に関する研修の他、データサイエンティストによる個別フォローも行われ受講者は実践的なスキル習得に取り組みました。

当初は成果物提出に想定以上の時間を費やす従業員の出現や、時間が確保できず脱落者が続出しました。しかし、ミドル世代の積極的なチャレンジによる活躍や、修了者が講師として従業員への研修を行う制度などからポジティブな効果が現れています。

まとめ

デジタル人材育成の文脈では大幅な時代変革に適応し、社内外への提供価値を創造するために必要なスキルの獲得をリスキリングと言います。リスキリングはリカレント教育、アンラーニングとは異なる学習の在り方であり、導入にはリスキリング対象スキルをAIで抽出し、対象部署や人材、柔軟な学習方法の選定が必要です。

その他デジタル人材の確保手法として、戦略的に内製化せず外部コンテンツを利用する選択は、コスト・時間の削減に寄与します。すでに大手企業のAmazonや富士通でもリスキリングが導入・実施されており、リスキリング導入はDX含め新しい時代に通用するスキルを習得し、活躍する人材育成に不可欠な視点と言えるでしょう。

リスキリングなどの新たな人材育成の取り組みを導入する際には、自社人材のスキルや資格、経験を参照できる人事管理システムが便利です。

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