業務改善ガイド

給与計算は何をすべき? 業務の基本や計算方法、リスクについて解説

公開日時:2022.05.27 / 更新日時:2023.01.06

従業員の労働の対価である給与額を確定し、支払う業務である「給与計算」。自社の就業規定や法律に基づいて給与額を計算すると同時に、社会保険料や税金など控除額の算出も行うことから、正確性の求められる業務だと言えます。 新たに給与計算を担当することになったら、業務の概要や進め方、注意点などの全体像を把握し、スムーズに対応できるよう準備をしておきましょう。

給与計算の基本知識

労働に関する法律の知識が求められ、計算を誤ると労務・税務リスクが発生することから、間違いが許されない給与計算。まずは業務の概要を確認しましょう。

給与計算とは何をする業務なのか?

名前の通り、従業員一人ひとりに支払う給与額を計算する業務のことです。給与の総支給額から社会保険料・税金などを控除し、手取り額を算出します。

総支給額(基本給+各種手当)-控除額(社会保険料+税金など)=差引支給額(手取り額)

従業員への給与の支払いや、徴収した社会保険料・税金の納付までを給与計算業務に含める場合もあります。

※この記事では従業員一人ひとりの給与額の計算、従業員への給与の支払い、徴収した社会保険料・税金の納付までを給与計算業務と定義し、解説を行います。

給与計算は誰がする業務?

企業規模や会社の事情によってさまざまですが、自社で行う場合は主に人事や総務、経理が担当します。1つの部門で計算から振り込み・納付までを行うケースもあれば、計算自体は人事や総務、振り込みや納付は経理が分担するといったケースもあるでしょう。

ただし、企業規模が大きく、計算の専門性が高くなるほど業務遂行の負担も増大するため、対応コストの削減のために給与計算業務をアウトソースする場合も少なくありません。代行業者や社会保険労務士・税理士事務所が、給与計算・振り込み・納税の主な依頼先です。

給与計算を行う方法とメリット・デメリット

  メリット デメリット
自社で行う アウトソースの費用を削減できる 計算ミスや法令遵守の対策が必要
代行業者に依頼する 社会保険労務士や税理士事務所よりも価格が低い傾向にある 法令遵守の正確性を確認する必要がある

社会保険労務士事務所や
税理士事務所に依頼する

法令対応のスペシャリストに依頼できるため、業務の正確性を担保できる 代行業者よりも価格が高い傾向にある

社会保険労務士事務所と税理士事務所のどちらに依頼するか考える際の決め手は「給与計算業務と合わせて社会保険関係や年末調整の手続きも依頼するかどうか」にあります。社会保険労務士・税理士には独占業務があり、他方の独占業務は担当できません。

・社会保険労務士の独占業務:労働・社会保険関連法に基づく申請書の作成・手続きの代行、帳簿書類の作成

・税理士の独占業務:税務代理、税務書類の作成、税務相談

よって、独占業務の依頼実績・予定のある社会保険労務士または税理士に給与計算も依頼し、やりとりを効率化するかどうかで考えるのがいいでしょう。

給与計算を間違えることで発生するリスク

給与計算業務でミスをすると、会社の信用を失うほか、法令違反にもなりかねません。次のようなリスクを生む恐れがあることを念頭に置いておきましょう。

・労務リスク

残業代や各種手当の計算を間違えてしまうと、実際とは異なる金額が従業員に支払われることになります。給与額に誤りがあると、従業員は会社に不信感を抱きかねません。

・税務リスク

税金の計算を間違えてしまうことによって、納付漏れが起こると、追徴課税の対応に追われる恐れがあります。

未払い残業代を請求される場合のリスクについては、人事・労務なんでもQ&A「退職した元従業員に未払い残業代を請求されました。残業代を支払う必要はあるのでしょうか?」で詳しく解説しています。

給与計算の方法・流れ

給与計算は大きく5つのステップで行うことができます。

①従業員の勤怠データから総労働時間を集計する

②総労働時間・各種手当から総支給額を計算する

③各種保険料・税金を計算する

④総支給額から各種保険料と税金を控除する

⑤給与を振り込み、保険料と税金を納付する

各工程で行う内容を詳しく確認しましょう。

①従業員の勤怠データから総労働時間を集計する

従業員の勤怠データを確認し、記録の抜け漏れや実態との乖離がないかをチェックします。必要に応じてマネージャーや従業員本人に事実を確認し、全従業員の全ての労働日について正しい勤怠データをそろえます。

勤怠を締めた後は、遅刻・早退・欠勤や時間外労働、休日労働などの項目ごとに労働時間を集計し、さらに総労働時間を割り出します。

②総労働時間・各種手当から総支給額を計算する

雇用契約書や就業規則で定めている基本給に対して、①の勤怠データと各種手当の変動額分を加算・減算し、総支給額を算出します。

③各種保険料・税金を計算する

雇用保険や健康保険、厚生年金保険、介護保険などの社会保険料を計算します。さらに所得税・住民税を計算し、税金額を算出します。

④総支給額から各種保険料と税金を控除する

②の総支給額から③の各種保険料・税金を控除し、差引支給額(手取り額)を割り出します。

⑤給与を振り込み、保険料と税金を納付する

④の差引支給額を給与として各従業員に振り込み、さらに保険料・税金を納付します。

給与計算で注意すべきポイント

「残業や休日出勤をした場合は賃金を割増計算する」「給与を支払う際は『賃金払いの5原則』を守る必要がある」など、給与計算業務は労働基準法に基づいて対応しなくてはなりません。さらに会社によっては担当部門・職種が複数になるケースもあるため、専門性・難度の高い業務と言えます。

給与計算業務において特に注意が必要なポイントを確認しておきましょう。

業務範囲を確認する

給与計算業務は会社によって担当部署が異なり、総務部や管理部が一括して行う場合や、人事部と経理部で手分けして行う場合など、色々なパターンがあります。これから給与計算業務を担当する方は、まずは自身の担当領域や業務範囲をマネージャーや先輩に確認しましょう。

時間外労働・深夜労働・休日出勤は割増賃金となる

労働基準法では、賃金を割増しして支払うケースを定めています。主なケースを確認しておきましょう。

・時間外労働

1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える残業については、25%以上割増しで残業手当を支給しなくてはなりません。

・深夜労働

22時~5時の深夜にあたる時間帯に労働をした場合は、25%以上の割増賃金となります。

・休日出勤

本来は労働の義務がないとされている週1回の法定休日に従業員を働かせた場合には、休日出勤手当を支給する必要があり、割増率は35%以上となっています。

その他の割増賃金が発生するケースについては、人事・労務の注目用語「【用語集】割増賃金」で詳しく解説しています。

固定給与と非固定給与がある

給与には「固定給与」と「非固定給与」があり、非固定給与は毎月変動することに注意が必要です。

・固定給与

基本給や職務手当、資格手当など毎月決まった金額の給与であり、労働契約や就業規則で定められている

・非固定給与

時間外労働や休日出勤、インセンティブなど、個人の働きによって変動する給与額のこと

労働基準法の「賃金払いの5原則」を守る

労働基準法第24条では、給与の支払いについて5つの項目を定めています。これを「賃金支払いの5原則」と言います。

賃金支払いの5原則

通貨払いの原則

直接払いの原則

全額払いの原則

毎月1回以上払いの原則

一定期日払いの原則

これらを満たさないと労働基準法違反となってしまうため、給与計算業務を担当する際は念頭に置いておきましょう。

まとめ

給与計算は毎月発生する業務となるため、ルーティンワークという印象を抱くかもしれません。しかしミスをしてしまうと自社の信用やコンプライアンスに関わるため、手順や注意点を押さえて慎重に対応するほか、法改正情報を常に追うことが求められます。

ミスを防ぐ対策として有効なのが、ヒューマンエラーの防止です。手計算やExcelで給与計算を行っていると計算を誤る恐れがあるため、給与計算システムを導入することを視野に入れましょう。計算ミスの防止だけでなく、業務時間の短縮にもつながります。

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