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2021年度の最低賃金は全国平均で28円増に。給与担当者が求められる対応とは。

公開日時:2021.10.18

2021年度改定では最低賃金が前年から28円アップ

2021年度の最低賃金の改定では前年に比べ全国平均28円の引き上げがありました。最低賃金は全国一律に定められるものではなく、都道府県ごとに状況を考慮して定められます。具体的にいくら引き上げられたのか、および引き上げの背景について見ていきましょう。

全国平均額は930円

2021年の最低賃金改定により、全国の加重平均の最低賃金は930円となりました。この改定で全都道府県の最低賃金が800円を超えることとなります。

なお、最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2つの種類があります。この記事で記載している「最低賃金」は、基本的に「地域別最低賃金」を指しています。

地域別最低賃金:
産業や職種に関係なく、都道府県内の事業所で働く全ての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金。都道府県ごとに47件の最低賃金が定められている。

特定(産業別)最低賃金:
特定の産業について各都道府県ごとに設定されている最低賃金。2021年3月31日時点で、227件の最低賃金が定められている。

具体的な地域別最低賃金は以下の通りとなっています。

都道府県名 最低賃金時間額(円) 2020年の最低賃金時間額(円) 発効年月日
北海道 889 861 2021年10月1日
青森 822 793 2021年10月6日
岩手 821 793 2021年10月2日
宮城 853 825 2021年10月1日
秋田 822 792 2021年10月1日
山形 822 793 2021年10月2日
福島 828 800 2021年10月1日
茨城 879 851 2021年10月1日
栃木 882 854 2021年10月1日
群馬 865 837 2021年10月2日
埼玉 956 928 2021年10月1日
千葉 953 925 2021年10月1日
東京 1,041 1,013 2021年10月1日
神奈川 1,040 1,012 2021年10月1日
新潟 859 831 2021年10月1日
富山 877 849 2021年10月1日
石川 861 833 2021年10月7日
福井 858 830 2021年10月1日
山梨 866 838 2021年10月1日
長野 877 849 2021年10月1日
岐阜 880 852 2021年10月1日
静岡 913 885 2021年10月2日
愛知 955 927 2021年10月1日
三重 902 874 2021年10月1日
滋賀 896 868 2021年10月1日
京都 937 909 2021年10月1日
大阪 992 964 2021年10月1日
兵庫 928 900 2021年10月1日
奈良 866 838 2021年10月1日
和歌山 859 831 2021年10月1日
鳥取 821 792 2021年10月6日
島根 824 792 2021年10月2日
岡山 862 834 2021年10月2日
広島 899 871 2021年10月1日
山口 857 829 2021年10月1日
徳島 824 796 2021年10月1日
香川 848 820 2021年10月1日
愛媛 821 793 2021年10月1日
高知 820 792 2021年10月2日
福岡 870 842 2021年10月1日
佐賀 821 792 2021年10月6日
長崎 821 793 2021年10月2日
熊本 821 793 2021年10月1日
大分 822 792 2021年10月6日
宮崎 821 793 2021年10月6日
鹿児島 821 793 2021年10月2日
沖縄 820 792 2021年10月8日

特定(産業別)最低賃金は以下のページをご覧ください。

地域別最低賃金が決定するまでの流れは次の通りです。

1.中央最低賃金審議会(※)で、賃金や景気動向などの調査結果をもとに改定額の目安を決める
※公益・労働者・使用者の各代表で構成
2.各都道府県の地方最低賃金審議会で中央最低賃金審議会が提示した目安を元にして審議し、その内容をもとに都道府県の労働局長が最低賃金改定額を決定
※決定基準は「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払い能力」の3点

全国平均額1,000円を目指し引き上げ額は過去最大に

近年の最低賃金の動向ですが、第二次安倍政権で「年3%の最低賃金引上げ目標」が定められていたこともあり、2016年~2019年の間は年約3%の引き上げが行われました。2020年は新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響も考慮し、中央最低賃金審議会は引き上げ目安を示さず、各都道府県の最低賃金審議会でもほぼ据え置きとなりました。

2021年も経営側から引き上げに反対する意見が出されましたが、28円の引き上げで決着がつきました。ただ、公益・労働者・経営の3者間で話し合い、引き上げが決定するのが慣例だったところ、話し合いでは決着がつかず、採決による多数決で引き上げが決定したという経緯があります。

最低賃金の今後ですが、政府はコロナ禍でも最低賃金を引き上げている諸外国を参考に、全国加重平均1,000円の早期実現を目指しています。実現のために、中小企業・小規模事業者が賃金を上げやすいよう支援強化の実施や下請取引の適正化も進めているところです。

ただ、中小企業団体からは経営側への負担が大きくなるため、納得できないという声も上がっています。雇用に大きな影響を及ぼす点も懸念材料です。そのため今後も最低賃金引き上げには慎重な姿勢を取ることが予想されます。

連合は労働者側の意見として、今回の最低賃金引き上げが実現したことによって、「誰もが時給1,000円」の実現およびコロナ禍でも最低賃金を引き上げていくことの必要性が受け入れられた、といった談話を発表しています。今後も最低賃金1,000円、を目指して引き上げ要求は続くと見て良いでしょう。

最低賃金改定で押さえておきたいポイント

最低賃金の大幅改定に伴い、企業側も従業員の給与を見直す対応が求められるケースがあります。最低賃金が定められる目的、そして概要、さらには総務担当者に求められる対応について確認します。

最低賃金の目的

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき最低賃金を定め、使用者が最低賃金以上の賃金を支払うことを義務付けるものです。制度には下記の大きく3つの目的があり、社会や経済の状況に応じて毎年改定の検討、実施がなされています。

  • 賃金が低い労働者の生活の安定を図るため
  • 労働力の向上および事業の公正な競争の確保に役立てるため
  • 国民経済の発展に寄与するため

なお最低賃金の種類の特性上、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」では適用される対象者が異なる点に留意が必要です。地域別最低賃金の場合は、雇用形態に関係なく、すべての労働者が適用対象となります。一方で、特定(産業別)最低賃金の場合は、指定された産業に従事する労働者のみ適用対象です。

ただし、特定(産業別)最低賃金で該当する産業に従事している場合でも、以下に当てはまる労働者は対象外となります。

  • 18歳未満
  • 65歳以上
  • 雇い入れ後、一定期間未満の技能習得を終えていない場合
  • 特定の産業に該当するものの、特有の簡単な業務に従事している場合

また、従業員へと支払う金額のうち、最低賃金の対象となるものは基本的な賃金と決められています。例えば、時間外勤務手当や賞与などは対象外です。最低賃金制度の対象とならない賃金の代表例を下記にまとめているので、あわせて把握しておいてください。

  • 結婚手当など、臨時で支払われる賃金
  • 時間外の割増賃金など、所定労働時間を超過した際の労働に対して支払われる賃金
  • 休日割増賃金など、所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
  • 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 深夜割増賃金など、午後10時~午前5時までの間の労働時間に対する時間給を超える部分
  • 通勤手当・家族手当・皆勤手当

総務担当者が対応すべきこと

最低賃金が変更された場合、従業員に支払っている賃金が最低賃金を下回るという事態が生じる可能性があります。気付かないケースも想定されますので、きちんと確認し、必要に応じて賃金の見直しを行う必要があります。

もし、対応の怠りや間違いが発生した場合、労働基準監督署から企業に実態調査が入り、是正勧告が行われます。もし適切に対応しない場合は、次のペナルティが課せられることがありますので気を付けてください。

地域別最低賃金:50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)
特定(産業別)最低賃金:30万円以下の罰金(労働基準法120条)

また、賃金を見直す際はその旨を従業員に通知するのが一般的です。仮に賃上げの結果となり、従業員に不利益がないと考えられるケースでも労働条件の変更に該当します。例えば、パートで働く主婦の場合は、賃金が上がり収入増になることで扶養から外れるケースが生じる可能性もあります。通知が漏れていると、後々従業員から問い合わせを受けることになりかねないため、トラブルを回避するためにも事前に通知しておきましょう。

最低賃金引き上げ時に活用できる支援制度

最低賃金の引き上げに伴い企業側は給与の支払い額が増え、財政的な負担が大きくなることが予想されます。そこで、企業は負担増加分を補うために生産性向上を図ることが必要です。国によって企業の生産性向上に役立つ支援制度も設けられており、一度活用を検討してみても良いでしょう。下記は、企業が活用できる生産性向上に役立つ支援制度の一例です。

業務改善助成金中小企業・小規模事業者対象
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた事業者に対して、その設備投資経費の一部を助成
働き方改革推進支援助成金3社以上で組織する中小企業の事業主団体対象
労働時間短縮や賃金引上げのため、生産性向上の取り組みを行う際にかかった費用を助成
働き方改革推進支援センター賃金引上げのための業務改善に関しての相談支援を行う
生活衛生関係営業等の収益力向上・生産性向上に向けた支援事業等を紹介するため、関係機関が開催するセミナー等に講師を派遣

コロナ禍によって適用の機会がある支援制度もご紹介します。

雇用調整助成金新型コロナウイルス感染症の影響で「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持のため労使間の協定に基づき「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成
緊急雇用安定助成金業況特例等の対象となる中小企業が事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げる場合、2021年10月から12月までの3か月間の休業については、休業規模要件を問わず助成金を支給
事業再構築補助金新分野展開、事業・業種転換、業態転換、事業再編、またはこれらの取組を通じた規模の拡大など、事業再構築をしようと試みる中小企業の手助けをするための補助金

最低賃金の確認方法とは

最低賃金の確認方法は、時給・日給・月給といった給与計算の算出方法によって異なります。それぞれの各算出方法別の確認方法をご紹介します。

なお、算出の方法には出来高払いや日給と月給を組み合わせる方法などもあります。それらの場合は計算がやや複雑になるため、最寄りの都道府県労働局労働基準部賃金課室や労働基準監督署に相談することをおすすめします。

時給制

最低賃金は1時間当たりの賃金で表されています。時給制で給与を算出する場合は時給が最低賃金を上回っているかを確認してください。

以下で条件や計算例を解説します。

〈条件〉
地域別最低賃金:830円
時給:900円

〈最低賃金が適切に支払われている状態〉
時間給≧地域別最低賃金

900円(時給)>830円(地域別最低賃金)
となり、最低賃金をクリア。

日給制

日給制の場合は時間給との比較ができないため、時間当たりの賃金を算出する必要があります。また、手当についても時間あたりに換算して、最終的に賃金と合算します。「1時間当たりの手当」は」、1か月当たりの手当を1か月の平均所定労働時間で割ることで算出できます。1時間当たりの賃金合計が最低賃金を上回っているかを確認してください。

以下で条件と計算例を解説します。

〈条件〉
地域別最低賃金:830円
年間労働日数:220日
1日の所定労働時間:8時間
1日あたりの賃金:7,500円
職務手当:2万円(月額)
通勤手当:1万円(月額)

〈最低賃金が適切に支払われている状態〉
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※特定(産業別)最低賃金が適用される場合は「日給≧最低賃金額(日額)」であれば最低賃金をクリアしていると認められる

〈算出方法〉
①1日あたりの賃金を1時間あたりの賃金に置き換える

▼計算式
1日あたりの賃金÷1日の所定労働時間=1時間あたりの賃金
→7,500円÷8時間=937.5円

②月額で支給される手当のうち最低賃金の対象となる手当を1時間あたりの金額に置き換える

▼計算式
月額で支給される手当÷(1日の所定労働時間×年間労働日数÷12か月)=1時間あたりの手当
→2万円÷(8時間×220日÷12か月)=136.4円
※通勤手当は最低賃金の対象外

③1と2を合算して時給の合計額を算出する
→937.5円+136.4円=1,073.9円

1,073.9円(時給)>830円(地域別最低賃金)
となり、最低賃金をクリア。

月給制

月給も日給と同様にそのままでは時間給との比較ができません。そのため時間当たりの賃金の算出が必要です。まず最低賃金の対象となる賃金を合算し、1か月分の賃金を算出します。算出した賃金を1か月当たりの平均所定労働時間で割り、1時間当たりの賃金を算出します。算出した時間当たりの賃金が最低賃金を上回っているかを確認してください。

以下で条件と計算例を解説します。

〈条件〉
地域別最低賃金:830円
年間労働日数:240日
1日の所定労働時間:8時間
1か月あたりの賃金:15万円
職務手当:5,000円(月額)
固定残業代:5万円(月額)
通勤手当:1万円(月額)

〈最低賃金が適切に支払われている状態〉
月給÷1か月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

〈算出方法〉
①最低賃金の対象となる賃金を合算する
→15万円+5,000円=15万5,000円
※固定残業代、通勤手当は最低賃金の対象外

②1で算出した金額を1か月の平均労働時間で割る

▼計算式
1か月あたりの最低賃金対象の賃金の合計額÷(1日の所定労働時間×年間労働日数÷12か月)=1時間あたりの賃金合計
→15万5,000円÷(8時間×240日÷12か月)=968.75円

968.75円(時給)>830円(地域別最低賃金)
となり、最低賃金をクリア。

最低賃金の見直しの有無を確認する際は、厚生労働省が企業向けに出しているセルフチェックシートを活用するのもおすすめです。

最低賃金と固定残業代制については【用語集 固定残業代制】を参考にしてください。

まとめ

2021年度の最低賃金は全国平均で前年から28円増加しました。引き上げ額は過去最大となり、次年度以降も政府や労働者側から引き上げが要求される見通しです。ただ、コロナ禍などの経済状況によっては経営側の負担が大きくなるため、大幅な引き上げについては協議が難航することも予想されています。

10月上旬には各都道府県で新たな最低賃金が適用されます。各企業の総務担当者は最低賃金改正に伴い、従業員の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認しなければなりません。最低賃金を下回る従業員がいる場合は速やかに時給の見直しが求められます。

最低賃金は都度改正が行われるため、法改正後ごとに給与管理には注意を払わないとなりません。確実な給与管理のためには手作業での管理ではなく、システム導入による自動化が推奨されます。

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