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在宅勤務手当の相場やメリット|導入前に押さえるべき注意点も解説

2021.08.30

新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、在宅勤務を行う企業が増えています。そこで導入が進んでいるのが「在宅勤務手当」です。福利厚生の一環として在宅勤務手当の導入を検討する場合、手当の相場はどの程度なのかを知っておく必要があります。また、就業規則の変更まで必要なのかどうか、在宅勤務手当導入のために押さえておきたい点、導入している企業の例について解説します。

在宅勤務手当の相場や広まる背景とは?

在宅勤務手当とは在宅勤務を行う従業員に支払われる手当のことです。在宅で仕事をすると、オフィスでの業務と異なり、自宅の水道光熱費や通信費が余分にかかります。人によってはパソコン用デスク・椅子の購入、Web会議用のマイクなどの準備も必要になります。これらを仕事の経費とみなした場合に、従業員の経費負担を埋めるために必要となるのが在宅勤務手当です。

1.手当の相場は3,000円~5,000円

在宅勤務手当の支給額に法律上での決まりはなく各企業が任意で決めます。支給額は在宅勤務手当を導入している企業ごとに金額が異なりますが、相場は3,000円~5,000円です。これから在宅勤務手当を導入するのならば、この金額を目安に支給額を検討しましょう。

在宅勤務手当の相場についての詳細は以下を参照してください。

2.在宅勤務手当の導入が広がる背景

オフィスに出勤することなく、在宅で仕事ができる在宅勤務は企業側にとっても複数のメリットがあります。在宅勤務および在宅勤務手当が広がった背景について、ここでは「経費削減」「働き方改革に対応できる」という2つのメリットの観点から解説します。

・経費削減

長期的に見て在宅勤務手当を新たに導入したとしても在宅勤務を推奨した場合の方が経費節減を実現できる可能性があります。

従業員がオフィスに通勤する際に必要なのが「通勤費」です。通勤費がかかる従業員には企業から福利厚生として「通勤手当」が支払われます。従業員が遠方から通っている場合は、それだけ支給額が高額になります。特に遠方から通う従業員が多い企業の場合、企業側も負担する経費がかさみます。

ただし、従業員に在宅勤務を命じた場合は通勤費の支払いが不要になります。在宅勤務手当を支払ったとしても、相場の3,000円~5,000円は通勤手当の金額よりも低くなると見込まれます。また、在宅勤務を推奨することでオフィスの維持費用や電気代が節約できる場合があります。

・働き方改革に対応

在宅勤務による柔軟な働き方の導入、生産性アップは働き方改革の一環として政府からも推奨されています。在宅勤務手当を支給し、従業員に自宅の作業環境を整えてもらうことで柔軟な働き方とオフィスで働くのと同程度の成果を上げる生産性向上が期待できます。通勤時間も不要となり、朝早い時間に家を出て、遅い時間に帰宅する必要もなくなるため、ワークライフバランスに配慮した働き方を従業員に提供することができます。

満員電車での通勤、長時間かかる通勤を苦痛と感じる従業員は多くいると見込まれ、在宅勤務制度を設けることで優秀な人材も集めやすくなると期待できます。

さらに、在宅勤務手当を導入することで、在宅勤務を長期的な施策として運用する準備が整います。在宅勤務を永続的に行っていくために、従業員の負担を減らす在宅勤務手当制度の導入は不可欠と言えます。

また、新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークが広がっています。在宅勤務の制度と手当の要件を定めておけば、普段はオフィスで業務を行う企業でもウイルス感染や災害時に出社が難しい時期に在宅勤務にスムーズに移行できます。

在宅勤務手当導入のポイント

在宅勤務手当を導入する上で企業側が押さえておきたいポイントは以下の3つです。
・ 支給方法によって課税・非課税の適用が変わる
・ 社会保険料や残業代が変動する可能性がある
・ 就業規則を変更する必要がある

1.支給方法によって課税・非課税の適用が変わる

在宅勤務手当の支給には大きく分けて3つの方法があり、方法ごとに課税・非課税かどうかが変わります。

1.毎月定額を支給

この場合の在宅勤務手当は給与とみなされ、課税対象となります。なお、従業員が在宅勤務の準備をするために使用した金額より、在宅勤務手当が多い場合でも企業への返還義務はありません。

2.業務にかかった実費(もしくは使用した分)を支給

従業員が仕事に使うパソコン代やWi-Fiに関する料金、モニター代の実費を支給するという企業もありますが、この支給方法の場合、非課税となります。

3.業務に必要な機器・用品を現物支給

業務に必要な設備が貸与であれば非課税ですが、支給の場合は現物給与となりますので課税の対象となります。現物支給の場合、従業員に係る所得税が増える可能性もあります。

2.社会保険料や残業代が変動する可能性がある

在宅勤務手当は毎月の定額支給の場合、もしくは現物支給の場合は給与扱いとなります。そのため、社会保険料や残業代をはじめとする割増賃金の金額が従来とは変わる可能性があります。なお、社会保険料・割増賃金の算出の根拠は以下の通りです。

  • 社会保険料:標準報酬月額に保険料率を乗じて算出します。在宅勤務手当はこの標準報酬月額に含まれます
  • 割増賃金:1時間当たりの賃金に割増率を乗じて算出します。在宅勤務手当は1時間当たりの賃金の算出に使われます

3.就業規則を変更する必要がある

新たに在宅勤務制度の導入と在宅勤務手当の支給を実施する場合、これまでとは別の給与体系を採用することになるため、「労働基準法第89条」にもとづき就業規則の変更が必要となります。

ただし、在宅勤務時の労働条件が通常の勤務時と同じであれば就業規則を変更する必要はありません。また、就業規則を変更する際は、既存の就業規則の中に在宅勤務規定を追加するのが一般的です。

また、就業規則には在宅勤務時の従業員の費用負担の扱いをどうするか明記しておくと混乱がありません。就業規則規定の制定の際には以下の厚生労働省のモデル就業規則を参考にしてください。

テレワーク勤務規定(費用の負担)

  1. 第◯条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。
  2. 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
  3. 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。
  4. その他の費用については在宅勤務者の負担とする。

また、就業規則を変更し、在宅勤務手当の支給を決める場合は、以下の点が変わる点、もしくは変わる可能性がある旨を、事前に従業員に説明しておくことが必要です。

  • 従来の通勤手当が廃止されること
  • 支給方法によっては在宅勤務手当が社会保険料・割増賃金・雇用保険の算出に含まれ、社会保険料額が変わること

在宅勤務手当を導入する企業事例

これから在宅勤務の導入を検討したい企業のために、現在、在宅勤務制度を導入している企業を紹介します。どのような手当があるのか、手当以外の従業員へのフォロー、対応についてもチェックしてみてください。

1.日立製作所

「日立製作所」では1999年5月より在宅勤務制度を導入していましたが、2020年6月より在宅勤務手当(同社内での正式名称「在宅勤務感染対策補助手当」)を支給することを決定しました。その内容は次の通りです。

  • 在宅勤務に必要な費用、出社する場合のマスクや消毒液など感染予防対策のための費用として、1人当たり月3,000円を支給
  • 在宅勤務のために購入した「モニター・Wi-Fiルーター等」「作業机・椅子等」の購入費用の補助

その他、日立製作所では産業医などのリモート相談窓口の設置、コミュニケーション活性化ツールの提供など、在宅勤務の環境づくりを積極的に行っています。(2021年8月時点)

2.さくらインターネット

インターネットインフラサービスを提供するさくらインターネットでは、新型コロナウイルス感染症対策として、2020年3月2日から原則リモートワーク(在宅勤務)に移行しています。それに伴い、新しい働き方についての制度を整えました。具体的には以下の通りです。(2021年8月時点)

  • 保守作業など、リモートでは対応できない業務を担う従業員に1日当たり5,000円の緊急出勤手当を支給
  • 自宅のリモートワーク環境を整えるための支援として、2020年4月に臨時特別手当1万円(アルバイト3,000円)、臨時通信手当3,500円を支給
  • リモートワークを前提とした働き方に移行。2020年5月以降は通信手当を月3,000円支給

3.メルカリ

メルカリは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、在宅勤務や会議のオンライン化を進め、2020年4月には在宅勤務体制整備のために次のような対策を打ち出しました。

  • 東京・大阪・福岡の拠点のオフィスを閉鎖。完全在宅勤務体制への移行
  • 仙台拠点も原則在宅勤務。必要に応じて完全在宅勤務へ移行していく
  • 自宅での勤務環境の構築やオンラインコミュニケーションのために6万円(半年分)の在宅勤務手当の支給

在宅勤務の環境整備だけならば、通常手当は数千円にしている企業が多いところ、メリカリが1か月の手当を1万円に設定しているのは、オンライン上での従業員同士のコミュニケーション促進を進めているためです。コミュニケーション機会確保のためのオンラインランチ会やオンライン飲み会などを通じて、物理的に離れていても従業員同士が心理的につながれる環境づくりを重視しています。(2021年8月時点)

まとめ

在宅勤務制度を新たに作る場合、考慮する必要があるのが在宅勤務手当の導入です。在宅勤務手当の支給方法によっては課税の対象となるため、単に通勤手当を減らし、その費用を在宅勤務手当に回すのではなく、支給方法と課税の有無を踏まえて手当の導入を検討し、就業規則を整備する必要があります。

また、在宅勤務手当を給与扱いで支給する場合、課税対象となるため、所得税や社会保険の金額に影響する可能性もあります。在宅勤務手当導入後、給与支払いと税金の計算が従来よりも煩雑化する可能性もあり、給与計算を円滑に行うシステムを活用し、柔軟に対応できる状態にしておくことが重要です。

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