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まだ間に合う!この夏に向けて「働き方改革を実現するテレワーク」

2020.01.29

冨吉 直美氏

冨吉 直美氏

一般社団法人日本テレワーク協会 主席研究員

鹿児島県出身。富士ゼロックスで、広島・福岡・東京でシステムエンジニアやソリューション企画等を経て、2016年度から日本テレワーク協会へ出向。厚生労働省事業の体験型イベントとモデル就業規則等の委員会の企画・運営や、障がい者テレワーク等の自治体事業を担当。2017年度は福岡にて完全在宅勤務を、2018年度からは東京と福岡の二拠点居住をし、ITをフル活用した、隙間時間の有効利用や時間あたりの生産性向上のためのセルフマネジメントを実践。雇用型・自営型・体験型等のテレワークに関する講演実績多数。

2020年を迎え、人事総務担当者の関心は、この夏の社員の働き方ではないでしょうか。 7月~8月は大規模な交通規制が予定され、電車等公共交通の混雑が発生することが予想されています。 これに伴い、首都圏や会場近隣に所在する企業では、7月~8月の勤務体制など、対策を検討されていることと思われます。こういった場合の対策として有効と考えられているのが「テレワーク」です。

テレワークとは

テレワークは「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」です。テレワークに関する詳細は日本テレワーク協会サイト(https://japan-telework.or.jp/tw_about-2/)をご覧ください。「テレワーク」という言葉を目にすることは増えていますが、在宅勤務だけと思っていたり、メリットや進め方も理解されていないのが現状です。2020年に向け、行政は様々な施策やツールを展開しています。うまく活用すれば、東京オリンピックに向けて、すぐにテレワーク導入に取り組むことができます。

テレワークに期待できる効果

テレワークのメリットは、優秀な人材の採用と流出防止、生産性向上(定型的業務と創造的業務)、大災害等への対応(BCP:事業継続性)、東京一極集中の緩和、通勤混雑緩和等があげられます。

優秀な人材の採用と流出防止の点では、せっかく育てた人材が育児・介護を理由にやめてしまい、募集してもなかなか人が集まらないという課題があります。テレワークを導入すれば、生活と仕事の両立ができ、ライフイベントに対応できます。また、若い世代の就職観は、楽しく働きことや生活と仕事の両立を求めており、テレワーク制度を導入することで、多様な働き方が可能となり、より良い人材の確保につながります。

生産性の向上については、テレワーク導入済と未導入では、労働生産性に差がでているという結果もあります(図1)。

図1:テレワーク導入と労働生産性の関係(推移)
図1:テレワーク導入と労働生産性の関係(推移)

出典:平成30年通信利用動向調査(総務省)令和元年

また、高度成長期には、同質性を武器にした大量生産が企業価値を上げました。しかし、今の時代は、より変化に対した柔軟な発想が求められ、従業員の多様性が高い企業の方が、収益性や価値創造の面でも優れた結果を残しているという調査があります。そこで注目されているのがダイバシティ(人材の多様さ)です。性別や人種等の違ういろいろな人とつながるには、場所や時間に制限されない働き方であるテレワークが有効になります。

テレワークの導入事例

テレワークが難しいとされている製造現場

製造業のある企業では、経営トップが率先し、顔を合わさないと仕事ができないという既成概念を打破し、働きがいと生きがいの両立を図るために、テレワークを導入されています。テレワークが難しいとされている製造現場でも、在宅勤務可能な業務を集め、マルチスキル化することにより、交替でテレワークを実践でき不公平感をなくしました。

お客様との対面時間を増やしたい営業部門

情報機器メーカーの営業部門では、モバイルを活用している営業がお客様の対面時間を増やすために、付帯業務をバックオフィス化し、付加価値業務を増加するとともに、総労働時間も減らせました。

移動に時間・コストがかかる建設業

建設業のある企業では、テレワーク導入により、工事現場への直行直帰を増やし、移動効率や移動コストを削減し、労働時間も減りました。人財採用面でも、仕事と生活の両立をしている企業に人が集まる傾向にあり、ある中小企業が募集した1名枠に対して600名の応募がありました。

社内と同じコミュニケーションでつなぐ在宅勤務

障がい者雇用のための特例子会社では、全国に散らばる在宅勤務者が、肉声重視のコミュニケーションツールを常時接続し、社内といるのと同じように声がけしたり、会議招集したりして働いています。ホームページ制作やWebシステムの開発を担当し、チーム制で運営することで、チームメンバーの体調にも配慮ができています。

平時にテレワークに取り組んでいれば、オリンピック開催のように日常どおりの勤務が困難になる場合や、2019年9月のような大きな台風が来ても、慌てずに事業継続ができます。予測不能な災害の場合、早めに判断をし、テレワークファーストで取り組んでいる事例もあります。

失敗事例としては、テレワーク自体を目的化したために本来の目的がわからないケース、対象者が限定的で育児・介護を担っている人しか実施されず、福利厚生になってしまい結果気兼ねして活用できないケース、意識改革が伴わず管理職が抵抗勢力になってしまうケース等があります。

テレワークを導入するには

それでは、テレワーク導入をどう進めればよいのでしょう?テレワークは、企業価値を上げるための働き方改革を実現する手段の1つです。よって、上位の経営課題と紐づけ、導入目的を明確にし、真の働き方改革をするという経営者の覚悟が重要です。

就業規則を担当する人事部門だけではなく、ツールを導入する情報システム部門、モデル部門、育児・介護で困っている当事者で、プロジェクトチームを作り、通常のプロジェクトと同じように現状分析を行い、ルール作りやIT導入、研修等を具体的に推進します。モデル部門での施行後、効果の測定や問題点の発掘をし、全社導入します。

それでは、テレワークの導入に必要な要素である「労務管理」、「執務環境」、「情報通信システム」をみていきましょう(図2)。

図2:テレワークの導入に必要な要素
図2:テレワークの導入に必要な要素

1.労務管理

労務管理については、時間管理が必要です。一番簡単な方法は電子メールですが、より厳密に時間のチェックをするためには勤怠管理ツールが有効です。メールでは「連絡する」だけですが、勤怠管理ツールでは、勤務実績や休暇、時間外労働の状況が一元的に管理でき、管理者や個人にアラートがでますので、チェック漏れのような人的なミスを防げます。さらに、スマートフォン等、どこからでも入力できたり、申請ワークフローを利用できたりと、IT化により煩雑さを減らせます。

働き方改革法案が平成31年4月から施行され、大企業では時間外労働の上限規制で月45時間、年360時間の管理が始まりました。また、平成29年に、労働基準法で始業・終業時刻等の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が、安全衛生法では管理監督者や裁量労働者であっても客観的な方法による労働時間の把握が求められています。テレワークでも「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成30年2月22日策定)で、中抜け時間や部分在宅時の移動時間の扱い方や、長時間労働対策について記述されていますので、ご確認ください。

また、上記ガイドラインと合わせて、「テレワークモデル就業規則 作成の手引き」(平成28年度)に費用負担等について、就業規則の文例がありますので、ご活用ください。

2.執務環境

執務環境として、在宅スペースと、テレワークスペースがあります。

在宅スペースで必要となる、椅子・机、照明等については、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月)を参照してください。

テレワークスペースについては、在宅スペースを確保できない、集中できない、プリンター等がない場合に、有効です。都会では、駅に近い利便性を重視した立地が多いですが、地方では、地方創生の関係人口増加のために、海や山等の日常から解放され創造性を高める場所にある場合もあります。また、キッズスペース付きや、障がい者向けのサテライトオフィス等、付加価値を付けたテレワークスペースも出てきています。

3.情報通信システム

情報通信システムについて、リモートデスクトップ方式、仮想デスクトップ方式、クラウドアプリ方式等の社内の情報資産へのアクセスの方法や、コミュニケーションツール、管理ツールを検討する必要があります。

コミュニケーションツールは、チャットやビデオ会議により、離れていても社内と同じように会話できるツールが様々リリースされています。クラウド型ですので、月額支払いで初期費用を抑えられ、無償版やお試し版も活用できます。使いやすさや、接続時の安定性等で、自社にあったツールを選択します。テレワークではありませんが、このツールを利用すれば、遠隔面接や複数拠点の営業会議にも有効です。

管理ツールは、前述の勤怠管理ツールや、在籍管理ツールがあります。在籍管理ツールは、離れている所にいるテレワーカーの状況をチェックするために有効です。

また、テレワークでは、持ち出すリスク、Wi-Fi環境へ接続するリスクがあります。人的ミスも含めルール化が必要です。

おわりに

行政はオリンピック・パラリンピックの2020年に向けて、テレワーク導入率をあげるため、様々な施策を展開しています。テレワーク相談センター、専門家の派遣、中小企業への助成、各種セミナー・イベント開催等です。また、東京都は通勤混雑緩和も含めて独自の施策を展開してます。テレワーク導入のための事例集・各種冊子をご用意していますので、テレワーク相談センター(http://www.tw-sodan.jp/)にお問い合わせください。オリンピック・パラリンピックまで、半年を切っていますが、これらの施策やツールをうまく活用すれば、これからでもまだまだ十分取り組めます。まずは始めてみる、小さく入れて大きく育てるという方針で、成功要因(図3)を参考にしながら、企業価値を上げるためのテレワークに取り組んでみてください。

図3:テレワーク導入成功の要因
図3:テレワーク導入成功の要因

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