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コロナ対策として時差休憩を導入する方法を教えてください

昼休みに時差休憩を導入する場合、労使協定を締結して、「新たな昼休みの時間」と「対象者の範囲」の2つを決める必要があります。
公開日時:2023.02.16
詳しく解説

Q. コロナ対策として時差休憩の昼休みを導入しようと考えています。どのように導入すればよいか教えてください

従業員500人ほどの製造業の企業で労務担当をしています。拠点は国内に複数あります。現在、昼休みの時間は一律に12時から13時までとなっていますが、従業員からは、コロナの感染防止対策として、ランチタイムの混雑を避けるために時差休憩を取得したいという要望が出ています。

厚生労働省も推奨しているため、部署ごとに昼休みの時間をずらす時差休憩を導入しようと検討中です。しかし労働基準法に、昼休み一斉付与の原則があるので、時差休憩を従業員に付与するにはどうしたらいいのかわかりません。具体的にどのように導入すればよいのか教えてください。

A. 昼休みに時差休憩を導入する場合、労使協定を締結して、「新たな昼休みの時間」と「対象者の範囲」の2つを決める必要があります。

昼休みに時差休憩を導入する場合、「新たな昼休みの時間」と「対象者の範囲」の2点を決定し、労使協定を締結しましょう。また、従業員を10人以上雇用している事業者は、就業規則の変更手続きも必要です。なお導入に際しては、従業員の意見をよく確認し、現場の実情に即した取り決めを行うことが重要です。

時差休憩については、厚生労働省が2021年5月、労使団体の長に宛てて新型コロナウイルス感染対策の拡充方針を打ち出した際、各企業や労働組合に対して「昼休みの時差取得」を実施するよう求めています。

取り組みに際しては、まず労働基準法第34条「昼休み一斉付与の原則」を理解する必要があります。本記事では法律を踏まえて、昼休みに時差休憩を導入する方法を解説していきます。

コロナ対策としての時差休憩とは

時差休憩の付与により、従業員が昼休みの混雑を回避することで、新型コロナウイルスの感染リスクが低下すると想定され、感染症対策となります。感染リスクの抑制には、人の密集回避が求められています。すでに多くの企業が導入している時差出勤と同様に、従業員の昼休憩の時間もずらして取得させることは、感染症対策に有効な手段です。

オフィス勤務ならではの感染リスクがある場所としては、具体的には次のような所が挙げられます。

昼休みに従業員が一斉移動することにより混雑するため、感染リスクがある場所

・エレベーター
・休憩室、喫煙室
・食堂
・ランチタイムの飲食店

時差休憩の導入によって、こうした場所における「密状態」を回避できるでしょう。

感染リスクの抑制は、従業員本人の健康管理だけでなく、企業にとっての対外的な感染症対策としてもメリットをもたらします。また、テレワークに不向きな業種や職種に携わる従業員にとっては、時差休憩が導入されることにより、会社への信頼や安心感にもつながるでしょう。

労働基準法による一斉休憩の原則

労働基準法第34条*では、特定の業種を除き、原則として「休憩時間は労働者に一斉に与えなければならない」と定められています。

ただし例外として、労使協定を締結すれば、労働基準法違反とはなりません

また、下記に挙げる特定の業種については、仕事の性質上、労働時間の厳密な管理に適していない職種のため、労使協定の締結は不要です。

労働基準法第34条の主な内容

 

  • 労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を勤務時間中に与えなければなりません。
  • 前項の休憩時間は、労働者に対し一斉付与する必要があります。
    ※ただし労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合には、一斉付与の適用は除外となります。労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を勤務時間中に与えなければなりません。

次の特定業種については、特例措置により労使協定の締結が不要です。

 [特定の業種] 

・運輸交通業
・商業
・金融業
・広告業
・映画・演劇業
・通信業
・保健衛生業
・接客娯楽業
・官公署(現業部門を除く)

時差休憩導入を検討する前に、自社が特定業種に該当するかを確認しましょう。

時差休憩の導入方法

時差休憩の導入には、労使協定の締結及び就業規則への記載が必要です。

前述のように、まずは労働基準法を踏まえて、新たな休憩時間と対象者の範囲について定めた労使協定を締結しましょう。また、雇用する従業員が10人以上いる事業所の場合は、就業規則にも新たな休憩時間を記載しなければなりません。記載例は後述します。

なお、就業規則変更を行う場合には労働基準監督署への届出も必要です。

ここから、具体的な時差休憩取得の取組事例を紹介していきます。

製造業の昼休みの時差取得の例
就業時間 昼休みの時間 労働時間
7:00~16:00

①11:00~12:00

②11:30~12:30

8時間

*休憩時間の3密回避のため、労使協議の上、休憩時間帯を2つに分散

この製造業企業のケースでは、休憩時間に時間差を持たせ、分散させることで3密を回避し、コロナ感染のリスクを減少させています。

また、下記の建設現場のケースでは、休憩時間を交代制とし、入れ替わりでの詰所利用によって、コロナ感染のリスクを回避するよう工夫しています。

建設現場の詰所における時差休憩の導入事例
  A班 B班
午前休憩

9:45~10:15

10:15~10:45
昼休憩

11:30~12:30

12:30~13:30
午後休憩

14:45~15:15

15:15~15:45

なお、休憩時間に時差を設けると同時に、座席を離してレイアウトするなどの取り組みを追加することによって、さらに効果のある感染予防対策につながります。

次に、就業規則への記載例を下記に紹介します。自社の実情に合わせて、適用の範囲や合理的な事由を記載しましょう。

休憩時間を変更する場合の就業規則への記載事例

第○条

業務上その他必要ある場合には、全部又は一部の者について第○条の休憩の時刻を変更することがある。但し、この場合においても1日の就業時間は所定労働時間(8時間)を超えないものとする。

なお、部署によっては、通常よりも遅い時間や早い時間に昼休みになってしまうと、業務に支障をきたしてしまう場合があります。そのため、時差休憩の導入にあたっては、職務や現場に不都合がないかなど、事前に従業員に聞き取りを行うことが重要です。

また、休憩時間を固定すると、不公平感が生まれるといった問題も想定されます。公平性確保のため、隔月交代などのローテーションの導入も視野に入れると良いでしょう。

ルールの考案や対象者の選定に際しては、自社の実情に即した制度設計・導入を行いましょう。

時差休憩の注意点

時差休憩の導入に伴い、休憩時間の管理が複雑化することよって、労務担当者の負担の増加が懸念されます。

休憩時間は、従業員ごとに管理する必要があるため、勤怠管理も複雑になるためです。それにより、勤怠管理担当者の手間が増えたり、記録ミスが発生したりするなど、管理上のリスクの増加が考えられます。

各従業員の休憩時間の正確な管理を行うためには、記録漏れや集計ミスのないよう十分注意しながら計算を行いましょう。より効率的、かつ容易に休憩時間の管理を行う環境整備には、勤怠管理システムや人事労務ツールの導入も有効です。

まとめ

時差休憩を導入すると、昼休みの一斉休憩による食堂やエスカレーター等の混雑が回避できるため、新型コロナウイルスの感染防止対策に役立ちます。同時に従業員をはじめ、取引先など外部の方々の健康と安全を守ることにもつながります。

時差休憩を導入するには、「新たな昼休みの時間」と「対象者の範囲」の2点を定めることが必要です。併せて、労使協定を締結し、従業員数によっては就業規則への記載が必要となります。

なお、時差休憩は従業員ごとに休憩時間が異なるため、管理が複雑化して計算ミスを誘発する可能性があります。記録ミスの防止や効率化を行うためには、勤怠管理ツールや労務管理ツールの導入が有効です。

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