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退職した元従業員から退職証明書の発行依頼がありました。発行する義務はあるのでしょうか?

退職証明書の発行は法律で定められており、発行を求められた場合には交付する義務があります。
公開日時:2023.02.28
詳しく解説

Q. 退職した元従業員から退職証明書の発行依頼がありました。発行する義務はあるのでしょうか?

従業員50人規模の企業で総務・労務を担当しています。先日退職した元従業員から退職証明書の発行依頼がありましたが、どう対応するべきか困っています。そもそも発行は義務付けられているのでしょうか。発行の目的や注意点、具体的な書き方や離職票との違いについても教えていただきたいです。

A. 退職証明書の発行は法律で定められており、発行を求められた場合には交付する義務があります。

退職証明書とは、その名のとおり「当該従業員が退職した事実」を証明する書類です。退職した従業員が国民健康保険や国民年金の手続きを行う場合や、転職先の企業から求められた場合に必要となるケースが多くなっています。

企業は、労働基準法第22条の定めにより、従業員から発行を求められた場合には、速やかに交付する義務があります。そのため、従業員から発行の申請を受けたら、申請内容に基づいて速やかに証明書を作成し、交付しましょう。申請内容に不明瞭な箇所があれば、本人に確認してから作成することをおすすめします。

労働基準法第22条(退職時等の証明)

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

退職証明書の発行拒否は違法行為に該当

退職者から退職証明書を請求されたにも関わらず発行しなかった場合には、労働基準法違反に該当し、30万円以下の罰金が科せられます。特別な理由なく交付が遅延した場合にも違法となるため、発行請求を受けたら速やかな対応が必要です。

また、アルバイトやパートタイムといった従業員の雇用形態や、退職証明書の使用目的によって発行を拒否することもできません。

ただし、労働基準法第115条により、発行義務の対象となるのは退職後2年間と定められており、期間内の請求であればその都度、発行対応が必要です。この期間を過ぎての申請に応じる義務はありません。

労働基準法第115条(時効)

この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効により消滅する。

発行を拒否したりむやみに遅延させたりすると、労働基準監督署に通報される可能性があります。本人とのトラブル発生や、今後の企業活動にも大きく影響するため、誠意ある対応が必要です。

退職証明書の役割

退職証明書は私文書であり、かつて企業に在籍した当該従業員について、「現在は確かに退職している」という事実を証明する役割があります。離職した従業員が退職証明書を必要とするケースは以下のとおりです。

  • 国民健康保険と国民年金の手続きをする場合
  • 転職先から提出を求められた場合
  • 離職票を紛失した場合

なお、退職証明書と混同されやすい書類が離職票です。離職票とは公共職業安定所から発行される「雇用保険被保険者離職票」のことで、公文書に該当します。企業から公共職業安定所に対象従業員の離職証明書を提出すると発行され、企業から本人に手渡しされます。よって、企業が独自に発行できる書類ではありません。

離職票の代わりに退職証明書が代用される場合などにも、従業員から発行を求められることがあります。例えば、本人が離職票を紛失した場合や、国民健康保険などの加入手続きを急いでいる場合などです。離職票は手続きに時間を要したり、雇用保険加入期間によっては発行されなかったりする場合があるため、退職証明書は離職票を補完する役割があるとも言えるでしょう。

退職証明書の書き方

退職証明書への記入が必要な事項は以下の5項目です。

  • (1)使用期間
  • (2)業務の種類
  • (3)その事業における地位
  • (4)賃金
  • (5)退職の事由

ただし、労働基準法第22条第3項では「労働者の請求しない事項は記入してはならない」と規定されています。事前に依頼者と記載事項の認識を合わせたうえで発行しましょう。

退職証明書の書式は任意で作成可能です。発行依頼を受けたときにスムーズに対応できるよう、フォーマットを準備しておくと良いでしょう。

なお、厚生労働省から退職証明書フォーマットが提供されています。こちらの記載事項は「(5)退職の事由」のみですが、依頼者から(1)~(4)の記載を求められた場合には記入が必要です。

ここから、(1)~(5)の記入方法について詳しくご紹介します。

退職証明書

(1)使用期間
使用期間は、退職者が企業に在籍していた期間を記載します。本採用前の試用期間を含めるかは企業の判断に委ねられています。特に差し支えなければ、試用期間開始を入社日とし、退職日まで記載することが一般的です。

また、退職時に有給休暇を消化した場合は、最終出勤日ではなく退職日を記入します。

(2)業務の種類
業務の種類は退職者が担当していた職種を記載してください。例として、事務職、営業職、製造職といった簡潔な内容で問題ありません。
在籍中に複数にまたがって業務を担当した場合はすべてを記載します。ただし、部署や職種異動が多かった場合には、直近3カ年の職種や業務名を記入しましょう。

(3)その事業における地位
その事業における地位とは、退職者が就いていた最終役職を指します。例えば、総務部長や技術課長などです。

退職した従業員によっては、退職証明書にて入社から退職までの詳細な経歴を記入することで、転職活動に不利になるケースもあります。そのため、記載内容については発行前にすり合わせておくことをおすすめします。なお、役職がない場合には「一般職」と記入しましょう。

(4)賃金
賃金欄は、一般的に退職時の基本給に交通費などの各種手当を加えた金額を記入します。手取り額ではなく、社会保険料や各種税金が控除される前の総支給額です。

この項目は、退職した従業員の転職先での給与額決定に影響すると予想されます。退職証明書への記載の有無や、記載する範囲・内訳など、発行前に本人の意向を確認することをおすすめします。

(5)退職の事由
本人の退職事由を記入します。記載例としては以下のようなパターンがあります。

  • 自己都合による退職
  • 契約期間満了による退職
  • 定年による退職
  • 当社勧奨による退職
  • ○○による解雇
  • その他(上記に該当しない場合) 

その他の場合でも、「諸事情による」といった曖昧な理由は認められず、「退職の事由」を記載する以上は理由を具体的に記入する必要があります。

退職理由によっては、退職者の転職活動を困難にする場合もあることから、記載の有無については、希望を明確に確認する対応が求められます。退職理由は離職票にも記載項目として挙げられているため、退職証明書で記載内容を変更してしまうと、矛盾が出てしまいトラブルの元となります。

退職証明書の記載内容はあらかじめ本人とのすり合わせを行い、トラブルにならないよう慎重に対応しましょう。

まとめ

退職者から退職証明書の発行依頼があった場合の対応や注意点などについて解説しました。

退職証明書を請求された場合、会社には発行義務が生じます。依頼があったにも関わらず発行しなかったり、理由なく遅延させたりすることは法令違反となり、罰金が科されます。

従業員の退職時は、退職証明書以外にも、離職票や社会保険喪失関係など、多岐にわたる書類作成および手続きが発生します。なかには提出期限が定められている書類も多く、手続きに関するトラブルを防止するためにも、事前に提出すべき内容や期限といった一連の流れを把握しておきましょう。

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