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建設業の働き方改革と2024年問題の現状 – 今後の課題と対策

公開日時:2021.07.29 / 更新日時:2025.12.02

建設業では休日出勤、人手不足などの課題が多く、特に長時間労働の削減に向けた早期の取り組みが困難な業種でした。そのため、時間外労働の上限規制に5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年4月からついに適用が開始されました。
制度適用開始後も、多くの建設企業では従来の業務体制からの転換に苦慮しており、2024年問題への対応は現在進行形の重要課題となっています。
本記事では、建設業の働き方改革の概要や2024年問題の現状、企業が取り組むべき対策について解説します。また、建設業の働き方改革を進めるうえでの注意点や実際の取り組み事例もあわせて紹介します。

建設業における時間外労働上限規制と労務課題

建設業界では天候の影響や工期の制約、重層下請構造など業界特有の商慣行により、他産業とは異なる労働環境が形成されてきました。特に技能労働者の多くが日給制で働いているため、労働時間の短縮は直接的な収入減少につながるという独特な課題があります。

建設業での時間外労働の上限規制

建設業では、2024年4月1日から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されました上限規制の時間は月45時間、年360時間です。臨時的な特別な事情がある場合でも、単月で100時間未満、複数月平均80時間以内、年720時間以内に収める必要があります。ただし、復旧・復興に関わる業務の場合については、単月で100時間未満、複数月平均80時間以内の条件は適用されません。

通常の時間外労働の上限規制建設業での時間外労働の上限規制
施行時期大企業は2019年4月から
中小企業は2020年4月から
2024年4月から
規制内容・労働時間は原則1日8時間、1週に40時間まで
・36協定を結んだ場合でも時間外労働は原則月45時間、年360時間まで
・特別条項付き36協定を結んだ場合の時間外労働は年720時間まで(休日労働を含まない)
・一時的に業務量が増加する場合にも上回ることのできない以下の上限を設定
 a.休日労働を含み、1か月100 時間未満  b.休日労働を含み、2か月~6か月平均で80時間以内
 c.月45時間の時間外労働を拡大できるのは年6か月まで(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)
一般企業と同じ通常の上限規制が全て適用される。
但し、災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について、以下のaとbは適用されません。
a. 1か月100時間未満
b. 2か月~6か月平均80時間以内

建設業は上限規制の適用までに5年の猶予期間が設けられていました。長時間労働、休日出勤、人手不足の課題を早期に解決することが難しく、一般企業のように時間外労働の上限規制を遵守することが難しいと判断されたためです。

建設業の労務課題

建設業の労務課題は主に「長時間労働」と「人材不足」です。厚生労働省の2020年度の毎月勤労統計調査によると、建設業の総実労働時間は164.7時間で、全産業平均よりも30時間以上多い結果でした。年間の総実労働時間も全産業より300時間以上多く、長時間労働の傾向が見られます。また、建設業では週休2日(4週8休)が十分に実施されておらず、建築工事においては約5割が4週4休で働いています。

厚生労働省が示している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では「テレワークにおける労働時間管理の考え方」としてテレワークで長時間労働や休日・深夜労働が横行しないよう、使用者が注意喚起をする仕組みの導入を推奨しています。

国土交通省が総務省の「労働力調査」をもとに「建設業及び建設工事従事者の現状」にまとめたデータでは、60代や40代に比べて20代の人材がきわめて少ないことが示されています。

上限規制適用後も若年層の確保は困難な状況が続いており、建設業で多くの割合を占める団塊の世代の人材が大量離職することで、さらなる人材不足の深刻化が懸念されています。

さらに2024年4月以降、時間外労働の制限により既存の作業員の労働時間が短縮されたために、同じ工事量をこなすためには追加の人員確保が必要となっています。しかし、労働市場での人材獲得競争は激化しており、多くの企業が人手不足解決の決定打を見つけられずにいるのが現実です。

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長時間労働が慢性化している建設業でも、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用開始されました。人手不足が深刻な問題となっている多くの建設業では、現在も労務管理の課題解決に苦慮しています。若年の建設従事者の確保・育成や適切な勤怠管理の実施により労務課題を解決することが急務となっています。建設業の働き方改革における現在の課題に対し、アマノからのご提案です。

建設業の2024年問題とは - 現状と課題

2024年4月から建設業にも働き方改革関連法が本格適用され、業界は大きな転換期を迎えています。しかし、現在も多くの企業が対応に苦戦しているのが実情です。なぜ建設業界だけが、これほど深刻な影響を受けているのでしょうか。

ここでは、2024年問題の本質と建設業界が直面している具体的な課題について詳しく解説します。

2024年問題の定義と背景

建設業の「2024年問題」とは、時間外労働の上限規制適用によって発生するさまざまな経営課題や労務問題の総称です。単なる労働時間の制限ではなく、業界全体のビジネスモデル変革を迫る構造的な転換点として位置づけられています。

この問題が注目される背景には、建設業界特有の商慣行があります。建設業界には、天候に左右される屋外作業や急な仕様変更への対応など、時間管理が困難な要素が多く存在します。また、元請・下請という重層構造により、工期短縮の負担が現場作業員に集中しがちです。

技能労働者の多くは日給制で働いており、労働時間短縮は直接的な収入減少を意味します。こうした複合的な要因により、2024年問題は他業界以上に深刻な影響をもたらしていると考えられています。

2024年4月以降に変わったこと

2024年4月以降、建設業にも一般企業と同様の時間外労働規制が適用されています。原則として月45時間、年360時間が上限となりました。特別な事情がある場合でも年720時間を超えることはできません。

これまで建設業では、36協定を結べば実質的に無制限の残業が可能でした。しかし新制度では上限を超えた場合、企業に対して6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

労働基準法違反は企業名とともにインターネット上で公表されるため、社会的信用の失墜は避けられません。このため、企業は従来のビジネスモデルの根本的な見直しを迫られています。

2024年問題が企業経営に与える影響

時間外労働の制限により、従来と同じ工期で工事を完成させるためには、追加の人員確保が必要になります。しかし人材市場では慢性的な人手不足が続いており、採用コストの増大は避けられません

また、労働時間短縮に伴い、これまで残業代に依存していた作業員の収入が減少する可能性があります。これが離職率上昇の要因となり、さらなる人手不足を招く悪循環が懸念されています。

中小企業では2023年4月から、60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%に引き上げられました。人件費負担の増加により、経営基盤の脆弱な企業では存続が困難になるケースも出てきています。

業界全体の対応状況と課題

多くの建設企業がICTツールの導入や業務プロセスの見直しに着手しています。ドローンによる測量や建設キャリアアップシステムの活用など、デジタル化による効率向上を図る動きが活発化しています。

しかし、根本的な解決には時間を要するのが現実です。工期設定の適正化や下請構造の改善など、業界全体で取り組むべき課題が山積しています。

発注者側の理解と協力も不可欠です。適正な工期と価格での発注がなければ、建設企業だけの努力では限界があります。官民一体となった継続的な取り組みが、2024年問題解決のカギとなるでしょう。

2024年問題への対応策と現在の取り組み状況

建設業に時間外労働の上限規制が適用された2024年4月以降、業界ではさまざまな対応策が実施されています。国土交通省が策定した「建設業働き方改革加速化プログラム」に基づく取り組みの現状と課題を整理します。

長時間労働の是正への取り組み状況

週休2日制の導入は公共工事では着実に拡大が進んでいます。2024年問題を見据えた取り組みにより、国土交通省の直轄工事における週休2日工事の実施率は近年大幅に向上しました。しかし、民間工事での普及は依然として課題となっており、発注者の理解促進が必要な状況です。

適正な工期設定に関しては、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」の改定により一定の改善が見られます。ただし、現場レベルでは急な仕様変更や天候不良による工期への影響を適切に評価し、柔軟に対応することの難しさが浮き彫りになっています。

働き方改革に積極的な企業への評価制度も導入されていますが、評価基準の明確化や実効性の向上が今後の課題です。

給与・社会保険分野の進捗

国土交通省によると、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録は順調に増加しており、技能者の能力評価制度も段階的に整備されています。しかし、約300万人の建設技能者すべての加入という目標達成には、さらなる推進策が必要です。

労務単価の活用については、発注者団体への要請により公共工事を中心に賃金水準の適正化が進んでいます。ただし、民間工事への波及効果は依然として限定的であり、適切な賃金の確保には課題が残っています。

社会保険加入の徹底については、建設業許可制度との連動によって大幅に改善されました。未加入業者の排除は着実に進んでいますが、社会保険料負担の増加により中小企業への経営圧迫が懸念されています。

生産性向上への取り組み実績

ICT活用工事は公共工事を中心に拡大しています。ドローン測量や建設機械の自動化などにより、作業効率の向上が実現されています。ただし、中小企業では導入コストや技術者不足により、活用が進んでいない企業も多く存在します。

建設業許可等の電子申請システムは導入が完了し、事務負担の軽減に寄与しています。IoTや新技術の現場導入も徐々に進んでいますが、投資対効果の検証や運用ノウハウの蓄積が課題となっています。

施工時期の平準化については、発注機関での取り組みが強化されていますが、予算制度の制約もあり抜本的な改善には時間を要する見込みです。

重層下請構造改善の現状

下請次数の削減については、一部の大手企業で専門工事業者との直接契約が増加するなど改善の兆しが見えています。しかし、業界全体の構造変革には長期的な取り組みが必要で、即効性のある解決策は見つかっていません。

技術者配置要件の合理化も段階的に実施されていますが、安全性確保との両立や現場管理体制の見直しが重要な検討課題となっています。

建設業の働き方改革を進める上での注意点

建設業の働き方改革を効果的に進めるためには、時間外労働の上限規制が適用された現在でも「建設業働き方改革加速化プログラム」および「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」に基づく継続的な取り組みが必要です。受注者・発注者はガイドラインに定められている取り組みの必要性や具体的な取り組み内容について相互に理解・協力し、持続可能な改革を推進することが重要です。

適正な工期設定・施工時期の平準化

ガイドラインでは、適切な工期を設定し、施工時期を平準化することを建設業に求めています。制度適用後の現在も、工期の設定時は建設工事従事者の休日確保や労務・資機材調達、BIM/CIM活用(建設情報の3次元化とその活用)の準備期間、現場の後片付け期間、降雨日や降雪・出水期等の作業不能日数などを十分考慮することが必要です。

公共工事では週休2日工事の件数拡大が進んでいますが、民間工事での普及が課題となっています。発注者の理解促進と業界全体での意識改革が継続的に必要です。

また、急な仕様変更や設計変更が発生した場合の工期調整ルールを明確化し、適切な工期変更が円滑に行われる体制づくりが求められます。

必要経費へのしわ寄せ防止の徹底

ガイドラインに定められた必要経費へのしわ寄せ防止は、制度適用後も継続的な監視と改善が必要な重要課題です。公共工事設計労務単価の動きや生産性向上の努力などを考慮した適切な積算・見積りを行い、適正な請負代金での請負契約締結を徹底することが重要です。

特に中小企業では人件費負担の増加により経営が圧迫されるケースが見られるため、適正価格での受注を確保できる環境整備が急務です。

下請企業への影響も含めた全体的なコスト配分の見直しと適正な利益確保が可能な価格体系の構築が求められます。

生産性向上

時間外労働の上限規制適用後、生産性向上の重要性はさらに高まっています。ガイドラインで示された建設生産プロセス全体における生産性向上を推進するため、以下の取り組みを継続的に強化する必要があります。

  • ドローンによる3次元測量やICT建機の活用等、ICT活用工事を推進する
  • 3次元モデルを導入し、設計から施工、維持管理に至るまでの建設ライフサイクル全体で情報を蓄積し活用するBIM/CIMを積極的に運用する
  • 工事関係書類の削減・簡素化や、情報共有システムを活用した書類授受の省力化を進めて業務効率化を図る

下請契約における取り組み

下請契約における適正な取り組みについては、制度適用後の現在も重要な課題となっています。週休2日の確保に際しては日給制の技能労働者の処遇水準に十分配慮しなければなりません。労務費の見直し効果が確実に末端まで行き渡るよう、適切な賃金水準を確保することが不可欠です。

工事着手前に工程表を作成する、工事進捗状況を元請と共有するなど、工事の円滑な施工に向けた準備を徹底することが重要です。予定された工期での工事完了が困難と認められる場合には、元請・下請双方が協議のうえで適切に工期変更を行う仕組みを定着させる必要があります。

また下請企業の労働時間管理体制の整備支援と、適正な労務管理の実現に向けた継続的な指導が必要です。

適正な工期設定に向けた発注者支援の活用

工事の特性を踏まえた発注者支援が可能な外部機関の活用がより重要になっています。コンストラクションマネジメントなどの建設コンサルタント業務を行う企業の専門知識を活用することで、適正な工期設定と円滑な工事進行が可能です。

特に公共発注者は、適正な工期設定の発注関係事務を自ら適切に行うことが困難な場合、発注者支援を適切に行える外部機関を積極的に活用し、適正な工期設定等を行う体制整備が望ましいとされています。

民間発注者に対しても、適正な工期設定の重要性について理解促進を図り、業界全体での意識共有を進めることが重要です。

建設業の働き方改革の事例

以下では、労働時間の削減や有給休暇取得促進などに取り組む建設業の働き方改革事例を紹介します。

事例1:残業や休日の作業ができない環境づくりで時間外労働時間を削減

残業や休日の作業ができない環境づくりによって時間外労働時間の削減に成功した事例です。この事例では、所定休日の土曜のうち月一回は作業所を閉所するようにし、労働時間の短縮を図りました。また、週一でノー残業デーを実施し、会社と職員組合が協力して社員に対するノー残業デー推進の声がけを行いました。

事例2:育児と両立しやすい勤務体制で出産する女性社員の100%が育児休業を取得

2つ目の事例は、育児と両立しやすい勤務体制を整えたことで出産する女性社員全員が育児休業を取得した事例です。具体的には、育児休業を子どもが3歳になるまで取得できるようにしました。また9歳未満の子どもを養育する社員は育児のための短時間勤務が利用可能で、労働時間を6時間、6.5時間、7時間の中から選択できるようにしました。

事例3:建設業の2024年問題を見据えた段階的な時間外労働管理で働き方改革を推進

3つ目の事例は、時間外労働の上限規制適用を見据えて段階的な準備を行い、働き方改革を成功させた事例です。株式会社ヒノキヤグループでは、制度適用前から社内で時間外労働に関する特別条項を実施し、「予行演習」として取り組みました。

TimePro-VGの導入により、時間外労働が多い傾向にあるとアラートが表示される仕組みを構築しました。上司から部下への声かけや適切なコミュニケーションが自然に生まれる環境がつくられています。

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まとめ

建設業に時間外労働の上限規制が適用開始された現在、長時間労働や休日出勤がいまだ多い建設業において働き方改革を実現するためには、適切な勤怠管理が行える環境を整えておくことが重要です。特に建設業の課題である適正な工期設定には企業ごと、現場ごとの労働時間の正確な把握が必要となります。

建設現場ではタイムカードや出勤簿では記録漏れが発生しやすくなります。タブレット端末やスマートフォン、顔認証に対応した勤怠管理の方法であれば、簡単かつ正確な出退勤打刻が可能です。

直行・直帰の作業員が多く、現場によって労働時間が異なる建設現場での勤怠管理には、打刻しやすい方法を選択でき、労働時間や雇用形態にあった設定が可能な勤怠管理システムの導入がおすすめです。

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