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休日出勤した従業員に代休を取らせないのは違法でしょうか?
Q.従業員が休日出勤した場合、代休を取らせないのは違法でしょうか?
中小企業の労務担当として働いています。最近、複数の従業員から「休日出勤したのに代休がもらえないのは違法ではないか」という問い合わせが寄せられました。休日出勤した従業員に代休を取らせないのは違法なのでしょうか。休日出勤と代休に関する規定について教えてください。
A.代休を取得させる法律上の義務はありませんが、代休取得を認める社内規定がある場合は、取得させないのは違法です
休日出勤に対して代休取得を義務づける法律はないため、ただちに法律違反となるわけではありません。ただし、就業規則や労使協定において「代休取得の権利」を規定している場合は、その規定に従う必要があります。この場合は、従業員が代休取得を希望したときに、企業はそれを断れません。
また、労働基準法第35条によれば、毎週少なくとも1回の休日を与えるか、4週間を通じ4日以上の休日を与える必要があります。休日出勤し代休を取得しなかった結果、この基準を下回った場合も違法になります。
なお、法定休日の出勤を可能とするためには、労使間での36協定の締結が必要です。協定がなければ、そもそも法定休日に出勤を命じることができないため、休日出勤命令それ自体が違法となります。
法定休日と所定休日の違いについては、以下の記事で解説しています。
そもそも代休とは
代休と振替休日は混同されがちですが、明確に定義が異なります。双方の違いを理解して、正しく運用しましょう。
代休とは
代休とは、休日出勤をした後に、その代償として取得する休日を指します。労働基準法で代休を義務づける規定はなく、代休制度は会社の裁量で導入できる任意の制度です。
休日出勤の日は通常の賃金に加え、法定休日なら35%以上、所定休日なら25%以上の割増賃金を支払う必要があります。先述のとおり、法定休日出勤を行うには、基本的に36協定で労働時間に関する取り決めを締結する必要があります。なお、会社が定めた所定休日に従業員を労働させる場合は、労働時間が1日8時間・週40時間の範囲内であれば、36協定を結ぶ必要はありません。
代休と振替休日との違い
振替休日は、休日出勤の前に、あらかじめ休日を決めておかなければならない点で、休日出勤後に休みを取得する代休とは異なります。振替休日では、休日自体が振り替わるため、休日出勤の日は労働日と同じ扱いになります。
すなわち、振替休日を取得する場合の休日出勤では、所定労働時間内の割増賃金が発生しません。ただし、時間外労働が発生すれば、その分の25%の割増賃金が発生することになります。
割増賃金率について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
休日出勤に伴う賃金の計算例
それでは、休日出勤に伴う賃金の計算例を解説します。
- 1時間あたりの賃金3,000円
- 所定労働時間:8時間
- 法定休日に9時間働いた
以上の条件で、同日の休日出勤について、1.代休を取得した場合、2.振替休日を取得した場合に分けて賃金を計算します。
1 代休を取得した場合
代休を取得した場合は、休日出勤として働いた時間すべてに対して割増賃金を払わなければなりません。このケースでは法定休日の出勤のため、割増率は35%です。従って、この日の日給の計算は次のとおりです。
1時間あたりの賃金×労働時間×135%
=3,000円×9時間×135%
=36,450円
労働時間すべてに割増賃金が適用されるため、一般に賃金が高くなります。
ただし、代休を無給扱いとする「代休控除」が行われることも一般的です。代休控除の場合、この例では、27,000円(3,000円×9時間)が控除され、35%の割増部分である9,450円のみが支給されることになります。
2 振替休日を取得した場合
振替休日を取得した場合は、この日の労働は、通常の労働日に働いた取扱いになります。そのため、所定労働時間の8時間については、通常の賃金が適用されます。一方で1時間が残業となり、その部分は25%の割増賃金が発生します。
1時間あたりの賃金×8時間+1時間あたりの賃金×(労働時間-8時間)×125%
=3,000円×8時間+3,000円×1時間×125%
=27,750円
ただし、休日出勤が週をまたぐ場合、1週間の労働時間が40時間を超えた部分については、法定労働時間を超える時間外労働として、追加の割増賃金が発生することにも注意が必要です。
休日出勤や代休を正しく活用するポイント
休日出勤や代休を正しく活用するために、以下のポイントを意識しておきましょう。
休日出勤・代休の取り扱いを就業規則に明記する
休日出勤や代休・振替休日のルールを就業規則に詳細に記載することが重要です。具体的には、休日出勤の割増賃金率、代休の付与方法、振替休日の指定方法などを明文化しましょう。運用方法を企業主導で取り決め、規律を持たせることで、従業員の理解を得やすくなり、トラブルを未然に防げます。就業規則の変更には従業員の意見聴取が必要なので、丁寧に説明し、合意形成を図ることが大切です。
36協定を正しく締結しておく
休日出勤を行うには、36協定の締結が必須です。36協定では、休日出勤の上限日数や、1日の労働時間の上限などを定めます。労使間で事前に合意しておくことで、法令違反のリスクを避けられます。協定の内容は従業員に周知し、協定書は労働基準監督署に届け出ましょう。また、36協定の内容を超えて休日出勤させることのないよう、適切に運用管理することが重要です。
休日出勤後の休日取得は必ず「代休」扱いにする
休日出勤後の休暇取得が「代休」か「振替休日」かを適切に管理することが大切です。これまで解説してきたように、労働基準法上、代休と振替休日では扱いが異なります。代休を振替休日と偽ると、法令違反になるおそれがあるため注意が必要です。確実に代休として管理し、休日出勤の日付、労働時間、代休取得日などの記録を残しておきましょう。
休日出勤や代休の管理にシステムを活用する
休日出勤、代休・振替休日や労働時間を正確に管理し、給与計算や休日日数のカウントを正しく行う必要があります。従業員数が多い場合やさまざまなシフトがある場合は、特に管理が煩雑になるため、勤怠管理システムによる自動化も検討しましょう。システム導入により、管理者の手間を省きながら、意図せぬ法令違反のリスクも回避できます。
まとめ
本記事で紹介したように、休日出勤をさせた場合、必ずしも代休・振替休日を与えなければならないわけではありません。休日出勤制度を正しく運用するためには、社内規則の整備や36協定の締結が重要となります。
休日出勤や代休・振替休日についてきちんと理解し、適切に管理していくことが求められます。休日出勤の取り扱いは、休暇日数や給与計算といったほかの勤怠・労務管理とも密接に関連しています。企業の労務管理全体を円滑に進めるためにも、優れた勤怠管理システムの導入をご検討ください。
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