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労働安全衛生法をわかりやすく解説|2025年・2026年改正のポイントと対応方法

公開日時:2023.03.27 / 更新日時:2025.12.01

2025年の労働安全衛生法改正では、化学物質のリスクアセスメント対象物質拡大、熱中症対策の法的義務付け、事業者による保護措置の義務付けなど対応範囲が大幅に拡充されました。事業者は意見聴取や教育の徹底、記録管理を3年~30年保存し、厚生労働省の最新ガイドラインに沿った運用が必要です。
2026年からは高年齢労働者の安全衛生対策強化、50人未満事業場のストレスチェック義務化、届出の電子化などの段階的な施行が予定されています。これに伴い、人事・現場担当者は早期の準備と効率的な管理体制の構築が必須となります。

労働安全衛生法とは:2025年改正のポイント

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するため、事業者に安全衛生管理体制の整備や危険・健康障害の防止措置を義務付けた法律です。2025年の改正では、リスクアセスメントの実施が必要となる化学物質が約2,100種類に拡大し、労働安全衛生規則の改正により熱中症対策が義務化されました。請負作業や個人事業主も安全衛生管理の対象となり、教育と記録管理の強化が求められます。具体的には以下が挙げられます。

  • 作業環境の熱中症リスク把握と対策強化
  • 保護具の適切な使用と教育徹底
  • 化学物質のリスクアセスメント義務化の拡大
  • 請負・フリーランスを含む労働者保護の範囲拡大

作業環境の熱中症リスク把握と対策強化

2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、事業者には熱中症のリスク把握と予防対策の強化が法的に義務付けられました。具体的には、暑さ指数(WBGT)が28度以上の環境での測定・評価と効果的な熱中症予防措置の実施が必要になります。

また、事業者は熱中症の予防を目的とした作業計画の策定や冷房・送風機などの設備対策、適切な休憩時間の確保どの具体的措置を講じなければなりません。作業員への教育・指導の徹底も重要な要件となっています。

この改正は地球温暖化に伴う労働災害増加を背景としており、WBGT測定器(JIS B 7922準拠)やウェアラブルデバイス(体温・心拍数モニター)などの活用による効率的なリスク管理が求められています。

保護具の適切な使用と教育徹底

2025年4月から、危険箇所などで作業をする労働者だけでなく、一人親方や下請け業者、資材搬入者など現場で作業に従事するすべての者に対して保護具の適切な使用が義務化されました。これにより、事業者は保護具の必要性や正しい使い方を周知し、教育を徹底する責任を負います。

また、保護措置の効果的な実施のため、定期的な点検や使用状況の確認、不具合時の迅速な対応体制の構築も重要な要件となっています。

教育は保護具を支給するだけでなく、動画や実演、定期的な研修を通じて現場の文化として浸透させる取り組みにより、労働者の安全意識と自主的な保護具使用が促進されます。

化学物質のリスクアセスメント義務化の拡大

2025年4月から、リスクアセスメントの対象となる化学物質が674物質から約2,900物質へと大幅に拡大されました。これまで規制対象外だった多くの化学物質について、事業者は危険性・有害性の調査と適切な管理措置を講じることが義務付けられています。

具体的には、化学物質管理者の選任、労働者への化学物質の危険性・有害性情報の通知、作業記録の作成・保存(通常3年、がん原性物質は30年)が必要です。また、化学物質を取り扱う労働者に対する定期的な教育も強化され、安全データシート(SDS)の内容理解や緊急時対応の習得が求められます。

請負・フリーランスを含む労働者保護の範囲拡大

2025年の改正では、従来の正社員だけでなく、請負業者、一人親方、フリーランスなど多様な働き方をする者も労働災害防止の対象として明確に位置づけられました。これにより、建設現場や製造業の外注作業において、元請事業者は下請け業者や個人事業主に対しても適切な安全衛生管理を行う責任を負います。

具体的には、作業開始前の安全打合せの実施、危険箇所の情報共有、必要な保護具の提供または着用指導、緊急時連絡体制の構築などが義務付けられています。この改正により、現場全体の安全レベルの底上げと労働災害の予防効果が期待されています。

事業場規模別対応要件

事業場規模ストレスチェック産業医選任化学物質管理熱中症対策高年齢者対策
50人以上✅義務✅義務✅義務✅義務✅義務
50人未満🔄2026年から義務❌不要✅義務✅義務✅義務
個人事業主・一人親方❌対象外❌対象外⚠️保護具着用義務✅義務✅義務

2026年以降の労働安全衛生法改正:何が変わるのか?

2026年からは、2025年改正を踏まえたさらなる施行が行われ、以下の対応が重要になります。

高年齢労働者の安全衛生対策強化

60歳以上の労働者が増加するなか、2026年4月から高年齢労働者の身体機能低下を考慮した安全衛生対策の強化が努力義務として規定されます。具体的には、個別健康診断の頻度見直し、視力・聴力・筋力低下に対応した作業環境の整備、転倒・墜落防止設備の強化が求められます。

事業者は高年齢者専用の安全教育プログラムを策定し、体力や反応速度の変化に適応した作業手順を確立する必要があります。また、作業負荷の軽減措置として、重量物の取扱制限や休憩時間の延長、夜勤・交代勤務の配慮などの取り組みが推奨されています。

事業者は多世代が安全に働ける職場環境を構築し、高齢者特有のリスク管理体制を整備することが必須です。

50人未満の事業場のストレスチェック義務化

これまで義務化対象外だった常時使用労働者50人未満の事業場においても、2026年4月から段階的に年1回のストレスチェック制度の導入が義務化されます。対象は正社員だけでなく、契約期間1年以上の契約社員・パート労働者も含まれます。

小規模事業場では産業医の選任義務がないため、外部の産業保健機関との契約や地域産業保健センターの活用が推奨されています。また、実施者の確保(医師・保健師・精神保健福祉士など)と高ストレス者への面接指導体制の整備が必要です。

違反時は労働基準監督署による指導対象となるため、事業者は早期の体制構築と労働者への制度周知、プライバシー保護対策の準備が急務となります。

新たな化学物質の管理強化と労働者教育

2026年4月から、2025年時点で施行された化学物質管理強化を基盤により細かなリスク管理・教育プログラムが求められます。対象物質が約2,900物質から更なる拡大が予定され、事業者は化学物質管理者の選任と専門的な管理体制の構築が必要です。

特に職長や現場リーダーの安全教育が義務化レベルで拡大され、化学物質の取扱い方法、緊急時対応、健康への影響に関する知識習得が求められます。また、作業者への定期教育(年2回以上)と理解度確認テストの実施が義務付けられる予定です。

さらに、リスクアセスメント結果の労働者への説明義務が強化され、化学物質による健康リスクを具体的に周知し、適切な保護措置への理解促進が必要となります。

項目改正前2025年改正後2026年予定
対象物質数674物質約2,900物質さらに拡大予定
記録保存期間3年3年(がん原性は30年)同様
教育対象作業者のみ職長・現場リーダー含む義務化レベル拡大

2026年改正に備えた実務対応のポイント

多様な雇用形態や勤務体系に対応して、段階的な法改正に対応するためのポイントは以下のとおりです。

  • 情報収集の継続的強化:厚生労働省通知や業界団体の最新情報を定期的に確認
  • 現場教育の拡充:特に高年齢者向けの安全教育プログラムの策定
  • 管理体制の見直し:ストレスチェックを含むメンタルヘルス管理の導入準備
  • システム対応のアップデート:勤怠管理や健康管理システムの機能拡充を検討

これらの準備を早めに始めることで、改正が施行された際の運用負担を軽減できます。

情報収集の継続的強化

2026年に施行される労働安全衛生法改正に備えるには、最新の法令や施行スケジュール、規制化学物質の追加などの情報を継続的に収集・確認する体制が不可欠です。法律の改正は段階的に行われ、多岐にわたるため、最新情報の見落としがコンプライアンスリスクにつながります。

厚生労働省や業界団体からの通知、関連する行政指導・解説資料を定期的に確認し、社内の関係部署へ迅速に共有することが重要です。これにより、改正内容に合わせた教育計画や管理体制の見直しを適時に実施できます。専門家や外部コンサルタントからの最新情報獲得も効果的な手段です。

現場教育の拡充

2026年の改正では職長や作業監督者に対する安全衛生教育の対象業種が拡大され、より多くの現場責任者が安全管理の知識習得を義務付けられます。これにより、現場での指導力向上と労働者の安全意識の強化が期待されます。

教育内容は作業手順の詳細、安全リスクの把握と対応策、異常時の措置など実務に即したものが求められ、動画や実演を活用した効果的な研修が推奨されています。こうした取り組みは事故防止と安全文化の醸成に不可欠です。

管理体制の見直し

2026年の改正により、事業者は化学物質管理や労働災害防止のための責任体制をさらに強化して見直す必要があります。具体的には、個人事業主や請負業者も含めた作業現場全体での安全衛生管理責任を明確にし、管理者や責任者の責任義務を拡大します。

また、申請手続きの電子化が推進されるため、情報の一元管理や迅速な対応体制の構築が必要です。これに伴い、社内のハザードコミュニケーションやリスクアセスメント体制も継続的に見直し、改善することが重要です。適切な管理体制は労働者の安全確保と事業者の法令遵守の両面で不可欠です。

システム対応のアップデート

化学物質の届出や申請手続きの電子化に伴い、システムによる効率的な情報管理と迅速な対応が求められるようになります。システム対応が進むと、紙ベースのやりとりが減り、申請漏れやミスの軽減にもつながります。

また、勤怠管理や健康管理システムとの連携を強化し、リスクアセスメント結果や健康診断データを一元管理することで、情報共有や法令遵守の透明性が向上します。企業は最新のITツールを導入し、改正対応をスムーズに行う体制を構築することが重要です。

まとめ:企業や人事部門ができること

労働安全衛生法の2025年、2026年の改正は、企業の安全衛生管理のあり方に大きな転機をもたらします。2025年は化学物質の管理強化や熱中症対策の義務化が中心で、企業はリスクアセスメントや教育の充実、管理体制の見直しを求められます。2026年からは高年齢労働者対策とストレスチェックの義務化が新たに加わり、多様な働き方に対応するための現場体制の見直しが必要です。これらの法改正に的確に対応することが、従業員の健康維持だけでなく企業のリスク回避やブランド価値向上にも直結します。

法改正に伴う現場の意見聴取や教育強化、複雑化する記録管理は人事部門にとって大きな負担となります。従業員の安全と健康を守るためには、化学物質管理や熱中症対策だけでなく、長時間労働に起因する事故やメンタルヘルス不調の防止も重要な課題です。勤怠管理システムによる正確な労働時間の記録と分析は、過重労働の早期発見や健康リスクの可視化に不可欠であり、入退室管理システムとの連携により、化学物質取扱区域へのばく露時間の正確な把握や健康診断との照合も可能になります。

企業、人事部門は早期に体制を整え、最新の勤怠管理・入退室管理システムを活用することで、法令遵守と従業員の健康確保を両立させることが重要です。アマノでは、労働安全衛生法改正に対応した包括的な勤怠管理システムをご提供しています。多様な働き方に対応し、確実な労働時間管理を実現するために、ぜひアマノのラインアップをご参照ください。

FAQ:2026年以降の改正も含めたよくある質問

Q: 2026年以降の改正はいつから施行?

A:

主に2026年4月1日から段階的に施行されます。一部の規定は2026年1月1日やそれ以降の時期に段階的に施行されるため、最新スケジュールの確認が重要です。

Q: 50人未満事業場は何から準備すべき?

A:

ストレスチェック体制の構築、労働者への周知・教育が最初のステップです。加えて、外部専門機関の活用や労務管理システムの導入も効率的な対応策となります。

Q: 高年齢者の安全管理は具体的には?

A:

個別健康診断の頻度見直しや作業負荷軽減措置の導入が求められます。さらに、高年齢者の体調変化に合わせた柔軟な勤務体系の検討も重要です。

Q: 熱中症対策義務は何を実施すればよい?

A:

WBGT値による暑熱環境の把握が義務化され、それに基づいて冷房・送風設備の設置、適切な休憩時間の確保、労働者への教育などの具体的な予防措置を講じることが求められます。体調確認や作業計画の見直しも効果的な対策として推奨されています。

Q: 化学物質の管理はどう変わる?

A:

管理対象物質が大幅に拡大され、リスクアセスメントの実施と情報通知の頻度・範囲が強化されました。管理責任者の選任や教育の強化も求められるため組織内の体制整備が必要です。

Q: 記録保存義務の期間は?

A:

通常は3年、がん原性物質関連は30年保存が必要です。特に30年保存の対象では労働履歴とのひも付けが求められ、長期にわたる健康被害の因果関係検証が可能になります。

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