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働き方改革推進支援助成金とは?申請方法や5つのコースを解説

公開日時:2022.12.27

働き方改革への取り組みを強化したい一方で、改革推進にかかる費用負担に悩む企業も多いのではないでしょうか。 そのような企業を支援するための制度として、働き方改革推進支援助成金が設定されています。 ただし、同制度を活用したい場合、自社が対象企業であるかや申請にかかる条件の事前確認が必要です。なお、2022年12月12日に制度が拡充され、一部コースで申請期間などが延長となりました。 本記事では、変更内容を踏まえて働き方改革推進支援助成金の内容や申請条件、設定されている5コースについて詳しく解説します。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は労働環境整備に取り組み、働き方改革を推進する中小企業を支援するための制度です。本制度のおもな狙いとして、働き方改革の実施にかかった費用の一部を支給することで、生産性・労働能率の向上を助成することが挙げられます。

この章では、働き方改革推進支援助成金の対象事業者や、2022年度の取り組み期間を解説します。

働き方改革推進支援助成金の対象となる企業規模

働き方改革推進支援助成金の支給対象となるのは、一定条件に該当する中小企業事業主です。中小企業事業主の定義は、下記の条件を全て満たす事業者を指します。

中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業となります。
業種A.資本または出資額B.常時雇用する労働者
小売業(飲食店を含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

なお、条件内容は助成金のコースによって異なるため、2章で詳しく解説します。

2022年度の取り組み期間

2022年度の申請期限は当初11月30日まででしたが、以下の3コースについて2022年12月12日から2023年1月13日まで申請期間が新設されました。

・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・労働時間適正管理推進コース

交付希望の企業は速やかに申請を行ってください。新設された期間に申請した場合の取り組み期間は、交付決定の日から2023年3月16日までとなっています。

なお、当初の期限である11月30日までに申請を行った企業の取り組み期間は、2023年1月31日となっています。

また、団体推進コースについては、2022年11月30日をもって交付申請受付が終了しており、取り組み期間は2023年2月17日までとなっています。

2023年度の申請期間は2022年12月時点では発表されていないため、助成金活用を予定している企業は2022年度の取り組み期間を参考に準備しましょう。

働き方改革推進支援助成金の申請前に確認すべき4項目

働き方改革推進支援助成金の申請に必要な項目内容は、コースごとに具体的な条件が異なります。そのため、事前に確認を行いましょう。なお、確認すべき4項目は以下のとおりです。それぞれの詳細は3章で解説します。

事前確認が必要な4項目

・支給対象の取り組み
・成果目標
・実施期間
・支給額

「支給対象の取り組み」の内容は、団体推進コース以外の4コースで共通しています。

ただし、来年度に新設の「適用猶予業種等対応コース」は、2022年12月時点で、取り組み内容などが変更になる可能性があるため、申請前に改めて確認しましょう。

コース選択方法については、以下の表「働き方改革推進支援助成金のコースの選び方」を参照してください。

働き方改革推進支援助成金のコースの選び方

働き方改革推進支援助成金おコースの選び方

働き方改革推進支援助成金の5つのコース

働き方改革推進支援助成金の申請可能なコースは、以下の5つです。

なお「団体推進コース」以外のコースでは、2022年12月12日に制度が拡充され、一部内容変更や申請期限が延長となりました。2022年度中に申請を行いたい場合は速やかに準備し提出しましょう。

また「適用猶予業種等対応コース」は2023年度から開始されるコースで、2022年12月時点では導入されていません。

・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・労働時間適正管理推進コース
・団体推進コース
・適用猶予業種等対応コース(2023年度から導入)

これらの5コースは、対象とする取り組みが異なります。自社の働き方改革の方向性を明確化した上で、抱える課題について解消可能な助成金コースの選択・申請をしましょう。

次項からは、それぞれのコースについて詳しく解説します。

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは生産性を向上させ、時間外労働の削減や、年次有給休暇・特別休暇取得促進に向けた環境整備といった働き方改革推進を支援する目的として設定されています。

支給対象となる企業

支給対象の企業となるためには、以下の3つをすべて満たしている必要があります。

・労働者災害補償保険を適用していること
・交付申請時点において、「成果目標」の設定に向けた条件を満たしていること:申請時点で未達成の目標が1つ以上あること
・交付申請時点で、年5日の年次有給休暇取得を目的として、対象となる全事業場の就業規則を整備していること

成果目標の設定

支給対象となるためには、上記支給対象の条件の1つである「成果目標」を設定し、その達成を目指して全事業所で実施しなければなりません。成果目標は次の1から4のうち、1つ以上を選択して取り組む必要があるため、申請時点で未達成の目標が1つ以上ない場合は設定に向けた条件を満たしません。

なお、これらに加えて「時間当たりの賃金額を3%以上引き上げる」という成果目標を追加することも可能です。
その場合、下記の1から4のうち、1つ以上の達成と合わせて実施しなければなりません。

4つの条件は以下のとおりです。

  1. 時間外・休日労働時間数の削減および、月60時間以下、または月60時間超・80時間以下を上限とした36協定を設定し、所轄の労働基準監督署長に届け出を行う
  2. 年次有給休暇の計画的付与の制度を新規導入する
  3. 時間単位での年次有給休暇制度を新たに導入する
  4. 特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇)の制度から1つ以上新たに導入する

助成金の支給額

助成対象となる取り組みの実施にかかった一部の金額が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。成果目標のそれぞれで上限金額が設定されており、達成度に比例して上限額も増加します。
なお、支給額は以下のいずれか低い額が適用されるため注意しましょう。

・成果目標の1から4の上限額および賃金加算額の合計額
・対象経費の合計額×補助率3/4(常時使用する労働者の数が30人以下で、助成金対象の取り組み6から9を実施し、かつ所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5)

参考として、常時使用する労働者が30人を超える場合、それぞれの上限額を合算した最大助成金額は490万円となります。しかし、常時使用する労働者が30人以下の事業主が、賃金を引き上げた場合の助成金額は12月12日に拡充された制度で増額されており、最大助成金額は730万円となっています。なお、成果目標ごとの助成金額の上限は、以下のとおりです。

常時使用する労働者が30人を超える場合常時使用する労働者が30人以下の場合
成果目標1:助成金額の上限150万円150万円
成果目標2:助成金額の上限50万円50万円
成果目標3:助成金額の上限25万円25万円
成果目標4:助成金額の上限25万円25万円
賃金加算額:助成金額の範囲15~240万円30~480万円

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル導入コースとは、従業員の健康保護・過労防止を目的として取り組みむ企業を支援するコースです。「勤務間インターバル」は勤務終了から次回出勤の間について一定時間設定し、睡眠や生活時間確保を目指すものです。

支給対象となる企業

支給対象となるためには、以下の5つをすべて満たす必要があります。

・労働者災害補償保険を適用していること
・次のアからウのいずれかに該当する事業場を有すること

  ア:現在勤務間インターバルを未導入の事業場
  イ:勤務間インターバルにかかる休息時間を既に9時間以上設けて導入しており、対象人数が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
  ウ:実施中の勤務間インターバル実施にかかる休息時間数が9時間未満の事業場

・交付申請時および支給申請時点において、対象となる全事業場で36協定が締結・届出されていること
・原則過去2年間にかかる時間外労働のうち、全対象事業場で月45時間を超える実態があること
・交付申請時点において全事業場で、年5日の年次有給休暇取得を目的とした就業規則整備が済んでいること

成果目標の設定

成果目標は以下3つの中からいずれかを設定して取り組みます。これに加えて「賃金額の引き上げを3%以上行う」という成果目標の追加も可能です。なお、全ての取り組みについて労働協定または就業規則に定める必要があります。

・勤務間インターバル未実施の事業場で、労働者の半数を対象とし、休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルに関する制度を新規制定すること
・9時間以上の勤務間インターバルを実施している事業場で、対象となる労働者が半数以下の場合、半数以上対象とするよう現行制度を拡大・制定すること
・休息時間を9時間未満とする勤務間インターバル実施事業場で、労働者の半数を対象として勤務間インターバルを2時間以上延長し、9時間以上と規定すること

助成金の支給額

助成金は成果目標の達成状況に応じて上限金額が決定され、助成対象となる取り組みにかかる負担費用の3/4が支給されます。なお、常時使用する従業員数が30人以下の場合で、助成金対象取り組み6から9の実施かつ所要額が30万円を超える場合、補助率は4/5となります。

勤務間インターバル導入コースの助成金額は、従業員数が30人を超える中小企業事業主につき最大340万円であり、超過している場合はかかった金額に関わらず、上限金額が支給されます。賃金加算額の上限は労働時間短縮・年休促進支援コースと同額です。勤務間インターバルコースの場合も、常時使用する労働者が30人以下の事業主が賃金を引き上げた場合の助成金額は12月12日に拡充された制度で増額されており、最大助成金額は580万円となっています。

参考として、各取り組みごとの助成金額上限は以下のとおりです。

常時使用する労働者が30人を超える場合常時使用する労働者が30人以下の場合
成果目標における助成金額の上限100万円100万円
賃金加算額にかかる助成金額の範囲15万円~240万円30万円~480万円

労働時間適正管理推進コース

労働時間適正管理推進コースは、生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理を中心とした働き方改革推進企業への支援を目的としています。

支給対象となる企業

支給対象となるには以下に挙げる5つの条件をすべて満たしている必要があります。

・労働者災害補償保険を適用していること
・交付決定日より前の時点で、勤怠管理と賃金計算を連動させた賃金台帳作成・保存など統合的に管理可能なITシステムを活用した労働管理方法を、対象事業場で採用していないこと
・対象事業場で交付決定日よりも前の時点で、労務管理書類について5年間保存する旨を規定していないこと
・交付申請時点で、全対象事業場にて36協定が締結・届出されていること
・交付申請時点で、年5日の年次有給休暇取得を目的とした就業規則整備を対象事業場で行っていること

成果目標の設定

以下の成果目標の1から3すべての目標達成を目指して実施する必要があります。なお、このコースも対象事業場で指定する労働者の時間あたり賃金額について「賃金額の引き上げを3%以上行う」という成果目標を追加可能です。

  1. 対象事業場で、勤怠管理と賃金計算をリンクさせ、賃金台帳などの作成・保存といった管理が統合的に可能なITシステムを用いた労働管理方法を採用する
  2. 対象事業場で、賃金台帳といった労務管理書類について5年間保存する旨を規定に加える
  3. 対象事業場で、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」についての研修を労働者・労務管理担当者に対して実施すること

助成金の支給額

助成対象となる取り組みの実施にかかった一部金額が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。成果目標それぞれで助成金上限額が設定され、達成度合いが大きいほど上限金額も増加します。

労働時間適正管理推進コースの支給額は下記表のうちいずれか低い方が適用され、助成金額は最大340万円です。労働時間適正管理推進コースの場合も、常時使用する労働者が30人以下の事業主が賃金を引き上げた場合の助成金額は12月12日に拡充された制度で増額されており、最大助成金額は580万円となっています。

  • 成果目標達成時の上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4

なお、各取り組みごとの上限額は次のとおりです。

常時使用する労働者が30人を超える場合常時使用する労働者が30人以下の場合
成果目標における助成金額の上限100万円100万円
賃金加算額にかかる助成金額の範囲15万円~240万円30万円~480万円

また、常時使用する従業員数が30人以下の場合にかかる対象経費補助率は、他コースと同じ条件下でのみ4/5となります。

団体推進コース

団体推進コースは、中小企業事業主団体の傘下にある事業主が実施する労働条件改善の取り組み支援が目的です。他コースと異なり、対象が企業ごとの取り組みではないため注意しましょう。なお、助成は事業主団体に対して行われます。

支給対象となる団体

以下の条件をすべて満たしている団体が支給対象となります。

・3事業主以上の組合や法人で構成され、1年以上の活動実績があること
・労働者災害補償保険を適用していること
・組織を構成する中小企業にかかる占有率が、事業主全体の1/2を超えていること

成果目標の設定

団体推進コースは以下の成果目標を達成する必要があります。

・団体が事業実施計画で規定する時間外労働の削減または賃金引き上げを目標とした改善事業を行うこと
・構成事業主の1/2以上に対して、実施内容または取り組み結果を活用すること

助成金の支給額

上記成果目標達成のために支出した経費が助成されます。助成上限額は構成企業が10社以上の場合最大1,000万円、10社未満ならば原則500万円です。

なお、団体推進コースの支給額は次のいずれか低い額が適用されます。

・対象費用の合計額
・総事業費から、試験販売などの収入額を控除した額
・助成上限額

適用猶予業種等対応コース(2023年度から導入)

本制度は2023年度から開始される新制度です。2024年3月まで時間外勤務の上限規制適用を猶予されている業種に対して助成することにより、労働時間の短縮や生産性向上を目的としています。

ただし、2022年12月時点では、他のコースほど詳細な情報が公開されていません。活用を検討する場合は、順次公開される情報を確認してください。

支給対象となる企業

支給対象は限定的で「建設事業」「自動車運転の業務」「医業に従事する医師」「鹿児島県・沖縄県での砂糖製造業」の4業種です。なお、医業に従事する医者については、申請対象を労働者300人以下の中小規模医療機関まで拡大しています。

助成対象となる取り組みや成果目標、助成金額の上限

助成対象となる取り組みは他のコース内容とほぼ同様です。ただし、これらは各業種・業務によって管轄の法規制が異なるため、対象事業ごとに成果目標が掲げられています。成果目標が異なれば助成上限額も異なるため、詳しくは以下の図をご覧ください。

事業の概要・スキーム

【助成対象】
就業規則等の作成・変更費用、研修費用(業務検収を含む)、外部専門家によるコンサルティング費用、労務管理用機器等の導入・更新費用、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用、人材確保等のための費用等 労働時間短縮や生産性向上に向けた取組に必要な経費
適用猶予業種等対応コース

各コースとも従業員の労務時間管理・生産性向上にかかる取り組み事業が対象となるため、申請の際は自社の課題を洗い出した上でコース選択を行いましょう。

働き方改革推進支援助成金の申請方法

働き方改革推進支援助成金申請には大きく分けて3つの手順があります。それぞれ期日が設定されていますが、応募状況によっては期限到来前に受け付けを締め切る場合もあるため、できる限り早めの申請が理想的です。

手順1:交付申請書の提出
手順2:事業実施
手順3:支給申請書の提出

それぞれの手順について、次から詳しく見ていきましょう。

手順1 交付申請書の提出

まずは交付申請書を最寄りの労働局雇用環境・均等(部)室に提出します。提出方法は郵送・窓口どちらでも可能です。締切は団体推進コースと他のコースで異なりますが、各コースとも締切日必着のため注意しましょう。

また前述のとおり、申請数が予算を上回る場合は期限前に締め切られる可能性があるため、早めの申請がおすすめです。

手順2 事業実施

交付申請書提出後、労働局雇用環境・均等(部)室が受付・審査を行い、交付または不交付の決定を行います。その結果、交付決定として通知された場合は、各コースの取り組み期間内に事業を実施します。

なお、2022年度の取り組み期間は前述のとおりです。

手順3 支給申請書の提出

対象取り組み実施後、支給申請書を事業実施予定期間が終了した日から30日以内、もしくは2022年度の場合は2023年3月24日のいずれか早い日まで提出します。なお、団体推進コースについては、事業実施予定期間から30日以内もしくは2023年2月28日のいずれか早い日までとなっています。

提出後、支給申請書の受付・審査によって支給または不支給が決定されます。支給となった場合は助成金を受け取ることができます。

申請にかかる各期限を厳守しない場合、条件を満たしていても受給不可となるため、必ずそれぞれの日程を確認し期日までに提出しましょう。

まとめ

働き方改革推進支援助成金の申請や手順などについて、注意点を踏まえて解説しました。

働き方改革を推進する場合は、働き方改革推進支援助成金を視野に入れた上での実施がおすすめです。助成金を受給できることで、経営資源が豊富でない場合でも、働き方改革を幅広く推進することが可能となります。

なお、助成金対象となる取り組みの1つに「労務管理用ソフトウェアの導入・更新」が設定されています。ぜひ自社の実態に最適な労務管理用システムを導入し、働き方改革を推進してください。

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