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なぜ進まない?電子申請化に対応するために

2020.10.28

竹内 潤也 氏

竹内 潤也 氏

ドリームサポート社会保険労務士法人 法人社員/特定社会保険労務士

早稲田大学法学部卒、旅行会社に16年間勤務。2011年 たけうち社会保険労務士事務所設立。2013年 特定社会保険労務士付記。2015年 法人化(ドリームサポート社会保険労務士法人)。
約300社の顧問先企業のために労使紛争の未然防止、社内活性化のための人事制度構築支援、裁判外紛争解決手続代理業務、経営労務監査、創業支援(雇用と人材育成の視点を持った事業計画の策定支援)にあたる。
大学、新聞社、地方自治体、各種経営者団体での講演実績多数。
東京都商工会連合会エキスパートバンク専門家

電子申請が進化しています。一定の大企業への電子申請の義務によって利用を促すのとあわせて、普及のネックのひとつであった仕組み上の課題の解決も進んでいます。初めての会社も一度取り組んで断念した会社も、もう一度トライしてみましょう。

行政手続きオンライン化の現状

令和2年7月2日に内閣官房IT総合戦略室と総務省から「行政手続等の棚卸結果等」の令和元年度調査分が発表されました。これは、行政手続きのオンライン化がどのぐらい進んでいるかを毎年調査し公表しているものです。
https://cio.go.jp/tetsuduki_tanaoroshi
令和元年度調査は、平成31年3月31日時点のもので、年間の件数などは原則として平成30年4月1日~平成31年3月31日のものです。

オンライン実施状況(概要)
オンライン実施状況(概要)

これによれば、すべての行政手続きのうちオンライン化されている手続きの種類は12%です。ただし、これはあまり発生しない手続きも含めての割合です。年間の手続きの件数から見てみると、オンラインで実施できる手続きの件数は77%となっています。オンラインで実施できる手続きの件数のうち、実際にオンラインで実施された手続きの件数の割合は60%です。

つまり、全体の77%の手続きについてオンライン手続きの用意がされ、そのうち60%が実際に利用されているということになります。多いと感じるでしょうか。それとも少ないと思われますか。

これらの手続きのうち、社会保険・労働保険分野での利用状況はどうなっているでしょうか。利用頻度が高く主として企業等が反復・継続的に利用する手続きに絞った「主な分野のオンライン利用状況」の調査結果でのオンライン利用率は次の通りです。

  • 登記分野…77.5%(約2億2,600万件中1億7,500万件)
  • 国税分野…68.6%(約3,700万件中約2,600万件)
  • 社会保険・労働保険分野…21.6%(約1億5,000万件中約3,200万件)

これは、社会保険労務士や司法書士などそれぞれの分野の専門家が代行した手続きも含まれています。

利用率が低い3つの理由と解決策

社会保険・労働保険分野のオンライン手続き利用率の低さの理由には、さまざまなものが考えられます。よく言われるのは、①添付書類の扱い、②時間、③申請主である事業主の本人確認方法の3つでしょう。

添付書類については紙ベースのものをPDFにして用意しないといけない、手続きによってはかなりの枚数をそろえないといけない、といった事務処理上の手間が理由と言われます。

時間については、書類受領の連絡や、公文書の受領までの時間が、窓口での手続きに比較し長くなるといったことが理由に挙げられます。

ただ、これらは、心理的なものが大きいかもしれません。

例えば、紙の添付書類をPDF化して電子申請用のフォルダに整理して、と考えると手間が増え、そのまま郵送する方が楽なのでは、などと考えてしまいますが、添付書類の中心となる法定3帳簿などはすでに社内でシステム化され、電子データとして存在しているのであれば、処理のフローさえ整理されれば、負担が多くなることもないかもしれません。

時間についても、確かに窓口では提出してすぐに受理印がもらえたり公文書が発行されたりするものもありますが、これはあくまでも提出してから返ってくるものを受け取るまでの時間です。

電子申請の処理スピード自体が以前に比べかなり速くなりましたし、手続きの処理に関わっている時間をネットタイムで考えたらどうでしょうか。

書類を作成する時間、添付書類を準備する時間、移動の時間、窓口での提出までの待ち時間、窓口での処理を待つ時間、帰社してからの書類の整理の時間など、処理を開始してから終了するまでのトータル時間で比較すれば、電子申請のほうがはるかに短いこともあるでしょう。

以上は、心理的なもののように思われますが、ひとつ実際上の大きな理由もあるように思います。

それが、電子申請では「入力する内容や添付する書類を100点満点で提出しなければならない」という点です。

窓口では、80点程度までそろえて、不明な点はその場で指導を受けながら完成させるということが可能です。ところが、電子申請の場合、事前に一般的な事項を行政機関等へ問い合わせすることはできますが、具体的なケースを、データや書類を共有しながら相談することは困難です。また、電子申請でも一部には申請後、電話等のやり取りで補正等が可能なケースもありますが、そもそも書式的な要件がクリアしていないと申請が受け付けられませんし、その後、内容に不備があることが判明すれば返戻となり申請自体をやり直すことになります。これによって、再び添付書類の難しさや処理に時間がかかるといった心理的な障壁にもなるのです。

これらについては、●ある程度返戻・再申請が生じることをフローに取り込む●100点を目指すことができるよう業務知識を高めナレッジの蓄積をはかる●社会保険労務士に代行を依頼するといった方法が解決策です。

ますます加速する各種申請のオンライン化

ところで、最初にご紹介した調査では、いくつかある本人確認方法が電子証明書の場合での利用率が際立って低いという結果が出ています。社会保険・労働保険分野での電子申請は本人確認方法に電子証明書が必要であることが基本であり、これが、現実的な大きな課題でした。

政府もこの課題を重要視し、電子証明書に代わる本人確認方法として、2020年4月から「ID・パスワード方式」を用意し、両方の方法を並行して対応することにしました。ID・パスワードの取得は、電子証明書に比べ手間が少なく、費用も掛からないので普及が期待されます。現在、ID・パスワード方式が利用できるのはマイナポータルを経由した電子申請に限られ、手続きの種類も少ないですが、2020年11月24日(火)にはこれまでのe-Govを経由する電子申請でも利用できるようになる予定です(当初、9月末とアナウンスされていましたが、時期の延伸が発表されました)。

これによって、次のように電子申請の手段が拡充されます。

また、健康保険組合が間もなく②の方式に対応することになっています。これによって、これまで、厚生年金保険は電子申請、健康保険は紙若しくは組合独自の電子申請というように同じ申請で2つ手続きをしなければいけなかった不便さが解消されることが期待されます。

これからは、自社で使用している業務ソフト毎に、上記のどの対応が可能か確認が必要です。また、新しいソフト導入の際の選択ポイントにもなります。

政府としてはオンライン利用を高めたいため様々な施策をしていますが、ついに「義務」という強権的な手法をこの4月からとることになり、一定の大企業等は、一部の手続きではあるものの、社会保険・労働保険の電子申請が義務化されました。今後、この方向での流れは加速していくでしょう。

コロナ禍により、今後、業務の遠隔化、テレワーク勤務、がさらに進みます。

電子申請制度を理解、活用し、業務の効率化、生産性向上のカギとしてください。

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