制度縮小の背景には、高年齢者雇用安定法改正による雇用環境改善、同一労働同一賃金の浸透、労働力不足の深刻化があります。企業への影響として、月額25万円の再雇用者の場合、給付金が年間15万円減額されます。給付金減額分を企業が補填する場合、年間約15万円の追加負担が発生します。企業が対応すべき事項は、次の5点です。
(1)現状の影響度調査
(2)賃金制度の抜本的見直し
(3)就業規則・雇用契約の改定
(4)従業員への丁寧な説明
(5)代替的な処遇改善策の検討
高年齢雇用継続基本給付の申請は企業の人事担当者が行い、初回は支給対象月から4ヶ月以内、継続申請は2ヶ月に1度実施します。
年金との調整や他の雇用関連助成金との併用も可能で、特定求職者雇用開発助成金や65歳超雇用推進助成金の活用も検討できます。高年齢者雇用の重要性は増しており、年齢にとらわれない持続可能な雇用制度の構築が企業に求められます。
高年齢雇用継続給付の廃止スケジュール【いつから?】
高年齢雇用継続給付の廃止時期の具体的なスケジュールを解説します。段階的縮小の開始時期、経過措置の対象者、完全廃止への道筋を詳しく確認しましょう。
2025年4月1日から段階的縮小開始
高年齢雇用継続給付の縮小は、以下のスケジュールで実施されます:
| 時期 | 対象者 | 支給率 | 変更内容 |
| ~2025年3月 | 現行制度利用者 | 15% | 変更なし |
| 2025年4月~ | 現行制度利用者 | 15% | 変更なし |
| 2025年4月~ | 新たに60歳到達者 | 10% | 5%縮小 |
| 将来的 | 段階的縮小 | 0% | 完全廃止 |
重要なポイント
- 2025年4月以降に60歳に到達する人から新制度が適用
- 給付率は現行の15%から10%に縮小
- 完全廃止の具体的時期は未定だが、段階的に進行予定
経過措置の対象者
以下の条件に該当する人は、現行制度(15%)が継続適用されます:
- 昭和40年(1965年)4月1日以前に生まれた人
- 2025年3月31日までに60歳に到達した人
この経過措置により、制度変更の激変緩和が図られています。
完全廃止への道筋
厚生労働省の方針では、給付率を段階的に引き下げた後、最終的には完全廃止する予定です。この段階的アプローチは、企業や労働者への急激な影響を避けるための配慮措置として設計されています。
具体的な廃止年は今後の政府方針により決定されますが、高年齢者の雇用環境がさらに改善され、企業の雇用慣行が定着した段階で完全廃止に移行するものと予想されます。企業は完全廃止を見据えた長期的な対策が必要であり、給付金に依存しない持続可能な高年齢者雇用制度の構築が求められます。
高年齢雇用継続給付とは?【基本知識】
高年齢雇用継続給付の仕組みを基礎から解説します。支給条件、支給率、2種類の給付金の違い、支給額の計算方法など、制度理解に必要な基本知識を整理します。
制度の概要
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者を対象とした給付制度です。定年等により60歳時点の賃金と比較して賃金が大幅に低下した高年齢者の就業継続を支援することを目的としています。
支給条件
受給資格として、雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あること、週の所定労働時間が20時間以上であることが必要です。さらに支給要件として、60歳到達時点の賃金と比較して75%未満に低下していることが条件となります。
現行の支給率
- 賃金低下率64%以下:賃金の10%
- 賃金低下率64%超75%未満:逓減計算(新たな給付率に基づく)
- 賃金低下率75%以上:支給なし
2種類の給付金
高年齢雇用継続給付には、継続雇用者向けの「高年齢雇用継続基本給付金」と失業後に再就職した人向けの「高年齢再就職給付金」の2種類があり、雇用形態に応じて区分されています。
1. 高年齢雇用継続基本給付金
- 対象者: 60歳以上65歳未満の一般被保険者で、同一企業で継続して雇用されており、60歳到達時の賃金と比較して75%未満に低下している人(雇用保険の被保険者期間が通算5年以上であること)
- 支給期間: 60歳到達月から65歳到達月まで(最長5年間)
- 典型例: 定年後の再雇用、嘱託雇用などで継続勤務している場合
- 支給条件: 失業保険の基本手当や再就職手当を受給していないこと、被保険者資格が継続していること
2. 高年齢再就職給付金
- 対象者: 60歳以上65歳未満で、失業後に雇用保険の基本手当を受給し、再就職した一般被保険者
- 支給期間: 再就職日の前日における基本手当の支給残日数に応じて、最長2年間(ただし65歳到達月まで)
- 支給条件:
- 基本手当の支給残日数が100日以上であること
- 再就職後の賃金が離職前賃金(基本手当算定基準の賃金日額×30)と比較して75%未満に低下していること
- 雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あること(高年齢被保険者等は除く)
- 週の所定労働時間が20時間以上、かつ1年以上の継続雇用が見込まれる安定した職業に再就職したこと
- 同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと
支給額の計算方法
支給額は以下の2ステップで計算されます。
ステップ1:賃金低下率の算出
低下率 =支給対象月に支払われた賃金額 ÷ 60歳到達時の賃金月額 × 100
ステップ2:給付額の計算
- 低下率64%以下:月額賃金 × 10%
- 低下率64%超75%未満:複雑な逓減計算(支給率は低下率に応じて逓減)
- 低下率75%以上:支給なし
支給限度額
高年齢雇用継続給付金は、支給限度額を設定しており、毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに、その額を変更します。2024年度の支給限度額は約376,750円、最低限度額は約2,295円でした。2025年8月1日からは支給限度額が386,922円に引き上げられ、最低限度額も2,411円に変更されています。最新の支給限度額などの詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
なぜ廃止?制度縮小の背景
高年齢雇用継続給付が廃止される理由を詳しく解説します。法改正による雇用環境の改善、同一労働同一賃金の浸透、労働力不足などの社会情勢変化を整理します。
高年齢者雇用環境の劇的改善
高年齢雇用継続給付の縮小・廃止は、高年齢者の雇用環境が大幅に改善されたことが主な理由です。
法改正による環境整備
1. 2013年 高年齢者雇用安定法改正
- 65歳までの雇用確保措置を義務化
- 定年引上げ、継続雇用制度、定年廃止の選択制
2. 2021年 改正高年齢者雇用安定法施行
- 70歳までの就業確保措置を努力義務化
- 多様な働き方の選択肢拡大
環境改善の具体的な成果
- 希望者全員が65歳以上まで働ける企業:80.4%(令和4年版高齢社会白書)
- 65歳以上の就業率:25.1%(2022年労働力調査)
同一労働同一賃金の浸透
働き方改革関連法により、2021年4月から中小企業にも同一労働同一賃金が適用されました。この制度により、年齢のみを理由とした不合理な賃金格差の是正が進み、職務内容に応じた適正な処遇の実現や高年齢者の処遇改善が促進されています。
社会情勢の変化
給付金制度の見直しには、日本社会全体の構造的変化も大きく影響しています。
労働力不足の深刻化
生産年齢人口の継続的減少により労働力不足が深刻化し、高年齢者の労働力としての重要性が増大しています。これに伴い、企業の高年齢者雇用に対する意識も大きく変化しました。
高年齢者の就業意欲向上
健康寿命の延伸や働き方の多様化、経済的必要性の高まりなどを背景に、高年齢者の就業意欲が向上しています。多くの高年齢者が積極的に働き続けることを希望する時代となっており、企業側もこうした変化に対応する必要があります。
2025年4月施行による企業への影響
給付金縮小が企業経営に与える具体的影響を分析します。人件費負担の増加、雇用形態別の課題、中堅・大手企業特有の問題を数値例とともに詳しく解説します。
人件費への直接的影響
給付金縮小により従業員の実質収入が減少するため、企業は賃金制度の見直しや代替的な処遇改善策を検討する必要があります。給付金減額分を補てんする場合、人件費負担が増加します。
影響度の試算例:
【60歳再雇用者の例】
- 60歳時賃金:40万円
- 再雇用後賃金:25万円(62.5%)
- 現行給付額:25万円 × 15% = 37,500円
- 2025年4月以降:25万円 × 10% = 25,000円
- 給付金減額:12,500円/月(年間15万円)
雇用形態別の課題
給付金縮小の影響は雇用形態によって異なる課題を生み出します。正社員の再雇用から嘱託・契約社員、パート・アルバイトまで、それぞれの特性に応じた対応が求められます。
正社員の定年後再雇用
正社員の定年後再雇用では、再雇用時の賃金水準見直しが主要な課題となります。給付金縮小により従業員の実質収入が減少するため、職務内容に応じた適正な賃金設定を行い、従業員のモチベーション維持と人材確保を両立させる必要があります。
嘱託・契約社員
嘱託・契約社員においては、処遇の透明性確保が重要な課題です。給付金減額の影響を受ける従業員に対して、労働条件の明確化と丁寧な説明責任を果たすことで、雇用の安定性と従業員の納得感を確保する必要があります。
パート・アルバイト(週20時間以上)
週20時間以上勤務するパート・アルバイトでは、時給水準の競争力維持が課題となります。給付金縮小により実質収入が減少するため、地域相場との比較検討を行い、人材確保に支障をきたさない水準での処遇を検討する必要があります。
中堅・大手企業特有の課題
従業員数の多い企業では、給付金縮小による影響が大規模化し、組織運営や企業ブランドにもかかわる特有の課題が発生します。統一的な制度運用が重要になります。
大規模な対象者への対応
中堅・大手企業では、数百人規模の60歳前後従業員が給付金縮小の影響を受けるため、個別対応では限界があります。全社的に統一的な制度運用を行う必要があり、労働組合が組織されている企業では事前の協議・調整も重要になります。制度変更による影響が大規模化するため、計画的かつ組織的な対応が求められます。
企業ブランド・採用力への影響
大手企業では、高年齢者にとって魅力的な職場環境の維持が企業ブランドに直結します。競合他社との処遇格差が生じると、優秀な人材の確保や企業イメージに悪影響を与える可能性があります。また、企業の社会的責任として高年齢者雇用を推進する立場にある大手企業では、制度変更への対応が社会からの評価にも影響するため、より慎重で先進的な取り組みが必要となります。
制度変更に向けて企業が準備すべき4つの対策
制度変更に向けて企業が取るべき4つの具体的対策を解説します。影響度調査から賃金制度見直し、従業員への説明まで、実践的な準備方法を詳しく紹介します。
1. 現状の影響度調査
まず、自社への具体的影響を正確に把握し、人件費への影響度を定量的に分析しましょう。調査結果は、対策の優先順位決定や経営陣への報告資料作成に活用できます。
確認すべき項目
- 60歳前後従業員の人数(部署別・雇用形態別)
- 現在の給付金受給者数と支給額
- 2025年4月以降5年間の60歳到達予定者数
- 現在の60歳以降の賃金水準と低下率
- 年間の給付金総額と企業負担増加予測
2. 賃金制度の抜本的見直し
給付金縮小を機に、年齢にとらわれない賃金制度への転換を検討しましょう。年功序列型から職務内容や成果に基づく処遇制度に移行することで、同一労働同一賃金の理念を実現し、高年齢者雇用の持続可能性を高めることができます。
職務給・役割給の導入
年齢ではなく職務内容に基づく賃金設定を行い、成果・貢献度に応じた評価制度を導入します。キャリアパスを明確化することで、高年齢者も含めた全従業員のモチベーション向上を図ることができます。
60歳以降の賃金水準の再検討
同一労働同一賃金の観点から賃金水準を見直し、段階的な賃金調整を検討します。賞与・手当制度を活用して、柔軟な処遇体系を構築します。
実施手順:
- 現行制度の問題点洗い出し
- 他社事例の調査・ベンチマーク
- 制度設計と試算
- 労働組合・従業員への説明
- 就業規則の改定
3. 就業規則・雇用契約の改定
制度変更に対応した就業規則の見直しが必要です。給付金縮小により高年齢者の労働条件や処遇体系に変更が生じるため、法的根拠を明確にし、労働者との合意形成を図る必要があります。また、将来的な完全廃止も見据えた、柔軟で持続可能な規則体系の構築が求められます。
改定項目:
- 定年後雇用制度の詳細規定
- 60歳以降の労働条件
- 65歳以降の雇用方針
- 賃金・処遇の決定基準
注意点:
就業規則を変更する際には、労働基準監督署への届出が法的に義務付けられているため、変更内容と手続きスケジュールを事前に確認する必要があります。就業規則の変更は労働者代表との十分な協議を経て行うことが重要であり、特に労働条件の不利益変更を伴う場合は慎重な合意形成が求められます。
また、賃金や労働時間など個別の労働契約に関わる事項については、就業規則の変更だけでなく従業員個人の同意が必要な場合があるため、法的要件を十分に検討したうえで手続きを進める必要があります。
4. 従業員への説明・コミュニケーション
制度変更への理解と納得を得るために、従業員への丁寧な説明が重要です。段階的な情報提供により従業員の不安を軽減し、円滑な制度移行を実現しましょう。
段階的な情報提供
- 全体説明会: 制度変更の概要と背景
- 部署別説明: 具体的な影響と対応策
- 個別面談: 個人への影響と今後のキャリア
説明資料の準備
制度変更のQ&A集を作成し、従業員ごとの影響額計算書を提供します。また、他社の対応事例を紹介して、従業員の理解を深めることができます。
フォローアップ体制
相談窓口を設置し、定期的な意見聴取を行います。必要に応じて制度調整を検討し、従業員の声に応える姿勢を示すことが重要です。
申請手続きと注意点【実務担当者向け】
高年齢雇用継続給付の申請実務を詳しく解説します。申請期限、必要書類、手続きの流れから、よくある申請ミスの防止策まで、担当者必見の実務ポイントを整理します。
申請期限と必要書類
高年齢雇用継続給付の申請は、企業の人事担当者が行います。
申請期限
- 初回申請: 支給対象月の初日から4ヶ月以内
- 継続申請: 原則として2ヶ月に1度
必要書類(初回)
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票
- 高年齢雇用継続給付支給申請書
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿またはタイムカードなど、被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況および賃金額を証明することのできる書類
- 被保険者の運転免許証(コピーも可)など被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類
必要書類(継続)
- 高年齢雇用継続給付支給申請書
- 賃金台帳・出勤簿
申請の流れ
1. 事前準備
対象者の確認と必要書類の収集を行い、申請書の記入を完了させます。この段階で漏れや誤りがないよう十分に確認することが重要です。
2. ハローワークへの提出
会社の所在地を管轄するハローワークで手続きを行います。窓口での提出のほか、電子申請の活用も可能で、効率的な申請方法を選択できます。
3. 審査・支給決定
提出後、通常2週間から1ヶ月程度で審査が完了し、支給決定通知書を受領します。審査期間中は追加書類の提出を求められる場合もあるため、迅速な対応が必要です。
4. 継続申請
支給開始後は2ヶ月に1度の定期申請を行い、支給終了まで継続します。継続申請では賃金台帳や出勤簿などの最新情報を提出する必要があります。
よくある申請ミスと防止策
申請手続きでは期限切れや書類不備などのミスが発生しやすく、給付金の受給に影響を与える可能性があります。代表的なミス事例と効果的な防止策を確認しましょう。
期限切れのリスク
4ヶ月の申請期限を過ぎてしまうミスが最も多く発生しています。防止策として、60歳到達者の一覧管理と申請スケジュールの可視化を行い、リマインド機能を活用して期限管理を徹底することが重要です。
書類不備の防止
賃金計算期間の誤りなど書類不備による申請遅延を防ぐため、チェックリストの作成とダブルチェック体制の構築が効果的です。また、複雑な計算が必要な場合は、事前にハローワークに相談することで正確な申請を行うことができます。
みなし賃金の取り扱い
欠勤・遅刻などによる賃金低下も「みなし賃金」として計算に含まれるため注意が必要です。正確な勤怠管理と賃金計算を行い、実際の労働に対する賃金と区別して適切に処理することが求められます。
他の助成金・給付金との関係
高年齢雇用継続給付と関連する制度との関係を整理します。年金との調整、他の雇用関連助成金との併用可能性など、制度活用で知っておくべき重要な関連情報を解説します。
年金との調整
高年齢雇用継続給付は、特別支給の老齢厚生年金受給者を対象として、在職老齢年金との調整が行われます。給付金を受給すると年金の一部が支給停止される場合があり、支給停止額は最大で賃金の6%相当となります。
年金との調整による影響は個人の年金受給状況により大きく異なるため、制度変更前に試算を行うことが重要です。複雑な計算が必要になることが多いため、正確な影響額を把握するには社会保険労務士への相談を推奨します。
他の雇用関連助成金
高年齢者雇用に関する他の支援制度との併用も検討しましょう。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 対象:
60歳以上の高年齢者や障害者など、特定就職困難者を雇用する事業主 - 支給額:
対象者の属性や企業規模により異なり、中小企業で60万円、大企業で50万円程度が一般的な上限です。重度障害者など特定の条件を満たす場合は最大240万円まで支給されることもあります。 - 併用:
高年齢雇用継続給付金との併用可能。ただし他の助成金との重複に注意、管轄ハローワークでの確認推奨
65歳超雇用推進助成金
- 対象:
65歳以上への定年引上げ、定年廃止、または希望者全員を66歳以上まで継続雇用する制度を導入した事業主 - 支給額:
制度の内容や適用人数によって10万円から160万円まで幅があります。65歳以上への定年引上げや定年廃止などの制度を導入した事業主が対象で、具体額はケースによって異なります。 - 併用:
他助成金と併用の場合は、支給要件を踏まえ選択的に活用される。制度改善の積極的な取り組みとして利用推奨
今後の展望とまとめ
2025年以降の労働市場予測と企業に求められる対応を展望します。高年齢者雇用の重要性増大、持続可能な雇用戦略の必要性など、将来を見据えた取り組みを総括します。
2025年以降の労働市場予測
制度変更後の労働市場では、高年齢者雇用を取り巻く環境がさらに変化し、企業の人材戦略にも大きな影響を与えると予測されます。主要な変化を確認しましょう。
高年齢者雇用の重要性増大
2025年には団塊世代が75歳に到達し、これまで労働力の中核を担ってきた世代が後期高齢者となります。この人口構造の変化により労働力不足がさらに深刻化し、企業にとって高年齢者の雇用継続と新たな高年齢者の採用がより重要な経営課題となります。
労働力確保競争の激化
労働力不足の深刻化に伴い、企業間での人材獲得競争が激化しており、高年齢者にとって魅力的な職場環境の整備が競争優位の源泉となっています。給与水準だけでなく、働きやすさや成長機会の提供など、処遇・労働条件での差別化が企業の採用力を左右する重要な要因となります。
企業に求められる対応
労働市場の変化を踏まえ、企業は従来の高年齢者雇用の枠組みを超えた包括的な取り組みが必要になります。持続可能な雇用制度の構築が急務です。
年齢にとらわれない人事制度
能力・成果に基づく評価制度を導入し、多様な働き方の選択肢を提供することが重要です。また、継続的なスキル開発支援を行い、高年齢者も含めた全従業員の能力向上を図る必要があります。
持続可能な雇用戦略
長期的な人件費計画を策定し、世代間のバランスを考慮した雇用管理を行います。事業継続性を確保するため、高年齢者の豊富な経験と若手の新しい発想を組み合わせた組織運営が求められます。
法改正への継続的対応
労働法制の動向を常に把握し、柔軟な制度運用体制を整備する必要があります。専門家との連携を強化して、法改正に迅速かつ適切に対応できる体制を構築することが重要です。
まとめ:継続的な対応が重要な理由
高年齢雇用継続給付の縮小により、高年齢者雇用のあり方を根本的に見直すことが求められています。
重要なポイント
1. 制度変更への対応が急務となっている
2025年4月の制度変更により、すでに多くの企業で人件費負担の増加や従業員への影響が生じています。まだ十分な対策を講じていない企業では、自社の高年齢者雇用制度(賃金制度、就業規則等)の見直しと従業員への説明が必要な状況となっています。迅速な対応をとり問題の拡大防止が必要です。
2. 従業員への影響を最小化できる
企業が自社の高年齢者雇用制度を段階的に変更することにより激変緩和を図ることができ、従業員に対して十分な説明時間を確保することが可能です。急激な変更による混乱を避け、従業員の理解と納得を得ながらスムーズな移行を実現できます。
3. 競合他社との差別化機会
先進的な取り組みにより人材獲得競争力を向上させ、企業ブランド価値の向上につなげることができます。他社に先駆けて高年齢者にとって魅力的な制度を構築することで、優秀な人材の確保と企業イメージの向上を同時に実現できます。
継続的に取り組むべきアクション
高年齢雇用継続給付金の段階的縮小・廃止に対応するため、企業は影響度の継続的な把握により、制度変更が自社に与える影響を定期的に評価する必要があります。制度見直しの継続的な推進では、労働市場の変化や法制度の動向に応じて自社の高年齢者雇用制度を継続的に改善していくことが重要です。外部専門家との連携強化により、社会保険労務士などの専門知識を活用し、より効果的な制度構築を実現できます。
高年齢雇用継続給付金の縮小を踏まえ、年齢にとらわれない持続可能な雇用制度を継続的に改善し、すべての従業員が活躍できる職場環境を実現しましょう。
よくある質問(FAQ)
高年齢雇用継続給付の制度変更について、企業や従業員から寄せられる代表的な質問にお答えします。実務上の疑問点を解消し、制度理解を深めるための参考にしてください。
Q1. すでに60歳を超えている従業員への影響は?
A. 2025年3月31日までに60歳に到達した人(昭和40年4月1日以前生まれ)は、現行制度(15%)が継続適用されます。2025年4月以降に60歳に到達した人からは新制度(10%)が適用されるため、制度変更前からすでに給付を受けていた人への直接的影響はありません。
2025年3月31日までに60歳に到達した人(昭和40年4月1日以前生まれ)は、現行制度(15%)が継続適用されます。2025年4月以降に60歳に到達した人からは新制度(10%)が適用されるため、制度変更前からすでに給付を受けていた人への直接的影響はありません。
Q2. パート・アルバイトも対象になる?
A. はい、以下の条件を満たせば対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用保険の被保険者であること
- その他の支給要件を満たすこと
雇用形態(正社員・パート等)は問いません。
Q3. 給付金がなくなると企業負担はどのくらい増加する?
A. 従業員の賃金水準により異なります。
月額25万円の賃金で低下率64%以下の場合:
- 現行:37,500円/月の給付
- 2025年4月以降:25,000円/月の給付
- 従業員の給付金減額:12,500円/月(年間15万円)
- 企業が補てんを行う場合、同額の追加人件費が発生
対象者数×個別影響額で総負担増を試算できています。
Q4. 他の企業はどのような対策を取っている?
A. 主な対策例は以下のとおりです。
- 賃金制度の見直し: 職務給制度の導入、段階的賃金調整
- 福利厚生充実: 健康管理支援、研修機会提供
- 柔軟な働き方: 勤務時間・日数の選択制
- 代替給付: 企業独自の支援金制度
具体的な対策は企業規模・業種により異なります。
Q5. 制度変更前後での退職者の取り扱いは?
A. 退職時期と60歳到達時期により異なります。
- 2025年3月31日までに60歳到達: 現行制度適用(15%)
- 2025年4月1日以降に60歳到達: 新制度適用(10%)
退職予定でも、60歳到達時期により適用制度が決まります。再就職する場合は「高年齢再就職給付金」の対象となる可能性があります。

