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働き方改革で罰則も強化?改正労働基準法で企業がとるべき対策とは

公開日時:2023.12.05

2019年4月から、働き方改革関連法(改正労働基準法)の施行が順次始まっています。今回の法改正により、年次有給休暇の取得促進や残業時間の上限規制、賃金格差の是正など、労働者の生活や健康に配慮した内容へと法律が拡充されています。一方で、それに伴う罰則も新たに設けられているため、使用者たる企業は確実な法令遵守をしていかなければなりません。

今回は、改正労働基準法の施行に伴い、新たに設けられた罰則規定を確認しながら、法令を遵守した事業運営をするための対策について解説します。

働き方改革とは

働き方改革は、労働者一人ひとりのニーズに合った、多様な働き方が選択できる社会の実現を目的としています。日本が直面している課題でもある「生産年齢人口の減少」や「働き方の多様化」などに対応し、投資やイノベーションによる生産性の向上や成長と分配の好循環を構築することで、労働者一人ひとりがより良い未来を創造できる社会にするための改革です。

働き方改革と合わせて理解しておきたい「36協定」

労働基準法には、「1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない」「少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」という労働時間や休日の原則があります。この原則の範囲を超えた時間外・休日労働を実施するためには、企業(使用者)と労働者の間で結ぶ労使協定が必要です。この労使協定を「36協定」といいます。

36協定を締結しても、後述する「時間外労働の上限規制」の範囲は逸脱できません。あくまでも、労働者が企業から過度な残業を強要されないようにするための、労働者保護を目的とした制度です。36協定締結後、企業は速やかに所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。効力は原則として1年間で、毎年の更新が必要です。

「36協定」について、さらに詳しくまとめた解説記事もあわせてご参照ください。

改正労働基準法で罰則を伴う5つの条項

改正労働基準法に、新たに罰則が設けられた5つの条項があります。それぞれの内容を確認しましょう。

時間外労働時間の上限

改正労働基準法では、時間外労働時間の罰則付き上限が規定されています。

以前から「月45時間・年360時間」の原則はありましたが、今回の改正では「臨時的な特別の事情がある場合」の「年720時間」に加え、「所定の複数月の平均80時間以内(休日労働含む)」や「月100時間未満(休日労働含む)」という新たな時間外労働時間の上限が設けられました。

これらの時間外労働時間の上限を超えて労働させた場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

月60時間を超える時間外労働の割増賃金

2023年4月1日より、中小企業の月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられました。大企業ではすでに施行されていた制度ですが、このたび、中小企業にもその範囲が拡大されました。例えば、深夜時間帯の残業が発生したとき、対応した従業員の時間外労働が月60時間を超過していた場合は、最大75%以上の割増率となります。

この規定に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

年5日の年次有給休暇の確実な取得

年次有給休暇を年間10日以上付与される労働者を対象に、付与した日(基準日)から1年以内に取得時季を指定して5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。また、使用者は時季指定にあたり、労働者の意見を尊重しなければなりません。時季指定となる労働者の範囲及び時季指定の方法などは就業規則へ記載することも義務付けられ、さらに労働者ごとの年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。年次有給休暇管理簿の保管期間は、労働基準法の条文上では5年となっていますが、経過措置により当面は3年間とされています。

なお、「年5日の取得ができなかった」「就業規則に記載していなかった」場合には、30万円以下の罰金が科せられます。「労働者の請求する時季に、所定の年次有給休暇を与えなかった」場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

フレックスタイム制 清算期間1か月以上の労使協定届出

フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時間を自ら決められる制度です。就業規則の規定と、労使協定で所定の事項を定めることで導入できます。

今回の改正では、今まで1か月としていた清算期間の上限が、最長で3か月に延長されました。それにより、月をまたいだ労働時間の調整ができるようになり、より柔軟な働き方が可能となりました。

清算期間が1か月を超える場合は、所轄の労働基準監督署長へ労使協定を届け出る必要があります。これに違反した場合には、30万円以下の罰金が科せられます。

長時間労働者へ医師による面接指導の実施

一般労働者が月80時間超の時間外・休日労働を行った場合、研究開発業務の従事者が月100時間超の時間外・休日労働をした場合、高度プロフェッショナル制度の従事者で健康管理時間(事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計)の時間が1週間で40時間を超え、超えた分について月100時間超となった場合は、使用者が必ず医師の面接指導を受けさせなければならないと定められています。

職種により要件は異なりますが、それぞれの条件を満たしたところで行う医師の面接指導は義務です。研究開発業務と高度プロフェッショナル制度の従事者については、実施しなかった場合に50万円以下の罰金が科せられます。一般労働者に対して実施しなかったときの罰則はありません。

改正労働基準法で、罰則を伴う5つの条項について解説しました。ここで認識しておきたいのは、実際に労働するのは従業員でありながら、企業が罰則の対象となることです。しかし、時間外や休日労働、年次有給休暇の取得、医師の面接指導への参加は、従業員の意識も重要です。企業としては、そういった要素も踏まえ、対策していく必要があるでしょう。

2024年4月から時間外労働の上限規制が適用される業種

改正労働基準法のなかでも「時間外労働の上限規制」については、これまで適用が猶予されている事業・業務がありました。2024年4月以降は、その猶予期間が終了し、すべての企業に上限規制が適用されます。ここからは、それらの事業・業務について解説します。

工作物の建設の事業

工作物の建設の事業とは、労働基準法施行規則第69条第1項各号に掲げられている事業を言います。具体的には、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体またはその準備事業です。工作物の建設の事業に関連する警備や交通誘導もこれに該当します。

自動車運転の業務

自動車運転の業務とは、主として四輪以上の自動車の運転業務に従事する者を指します。具体的には、トラック運転者、バス運転者、タクシー・ハイヤー運転者です。

医業に従事する医師

対象となる医師は、病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院に勤務する「医業に従事する医師」に限定されます。例えば従業員の健康管理を行う産業医や、検診センターなどに所属する医師は働き方改革制度の対象にはなりません。

鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業

鹿児島県及び沖縄県において砂糖製造をする事業者です。砂糖製造業は離島で行われ、季節業務のため繁閑の差も激しく、人材確保が難しいという点でこれまで猶予されてきました。

業種別の内容をより詳しく解説した記事もあわせてご参照ください。

改正労働基準法を遵守するためにすべき対策とは

法改正により新たに罰則が設けられました。認識不足で知らないうちに法律違反していたといった手違いがないようにしっかり対策していきましょう。

従業員の意識改革

時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得などは、従業員の意識を変えていくことが重要です。そのためには、各従業員の現状をそれぞれに把握してもらう必要があります。自身の労働時間の見える化をすることで、時間に対する意識向上につながり、残業削減にもなるでしょう。

法改正へのスピーディーな対応

細かな法律やルールの改正までしっかりと把握し、思わぬところで法律に触れてしまわないよう努めなければなりません。しかし、これも人力でこなすのは大きな負担となります。最新の内容を随時取り入れた社内体制を整えるためには、後述のように勤怠管理システムなどを導入することも視野に入れると良いでしょう。

勤怠管理のデジタル化

日々発生する膨大な勤怠データを、法律に照らし合わせながら正確に処理するのは、人の力だけでは手に負えません。勤怠管理システムを活用すれば、モレやヌケのない正確な勤怠管理が実現します。さらに、関連する業務と連携し包括的な処理を行うことで業務効率が上がり、生産性の向上にもつながります。

まとめ

今回は、働き方改革関連法の施行により、罰則規定が設けられた条項とその対策について解説しました。その内容はどれも複雑で、これを実務に落とし込むとなると相当煩雑になるでしょう。「勤怠管理システム」を導入すれば、法令を遵守しながら適切な事務処理を行い、さらに従業員の健康にも配慮するような管理が、正確かつ効率的に実行できます。また、給与計算ソフトをはじめとする外部システムとも連携ができ、業務の包括的なマネジメントが可能となります。

勤怠管理システムで、法令にのっとった適切な勤怠管理をぜひ実現しましょう。

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