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【2022年7月施行】女性活躍推進法に基づく男女の賃金格差開示義務化とは?

公開日時:2022.08.03 / 更新日時:2022.08.08

政府の決定により対象企業の男女の賃金格差の開示の義務化が2022年7月8日から施行されました。今回の開示義務の対象企業は公表すべき内容と賃金格差の計算方法について確認する必要があります。企業が開示義務化に向けて実施すべき対応に加え、男女の賃金格差が生じている要因と格差解消に向けた取り組み例について紹介します。

2022年7月から男女の賃金格差開示が義務化

政府は、女性活躍や男女共同参画分野で重点的に取り組む内容をまとめた「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2022」(女性版骨太の方針2022)を決定し、企業に対する男女間の賃金格差の開示を義務化することを発表しました。具体的には女性活躍推進法に基づく「自社の女性活躍に関する情報の公表」の中に、「男女の賃金の差異」の項目を公表必須の項目として追加することを定めました。

賃金格差の開示の義務化は女性活躍推進法を省令改正した上で、2022年7月8日に施行されています。また、3月期決算企業が多いことから、男女の賃金格差の公開は2023年5月以降から本格化する見通しです。

開示義務化の背景

男女間の賃金格差の開示が義務化された背景には、日本の国内全体で見て男女の賃金格差が開いている現状があります。男女の賃金格差とは、具体的な賃金額の差ではなく、男性賃金の中央値に対し、女性賃金の中央値が低い割合を指します。

日本には、労働基準法4条による「男女同一賃金の原則」があるのにも関わらず、企業の男女の賃金格差がなかなか埋まらない状況が続いていることが問題視されてきました。他の先進国と比較しても、日本のフルタイム労働者の男女間の賃金格差は高い水準にあります。内閣官房の資料によると現状日本の男女の賃金格差は22.5%と米国より4.8%高いことが分かります

また、各国と比較して、日本における管理職に占める女性割合の水準が低いことも大きな問題として指摘されています。内閣官房の調査による各国比較(2021年時点)によると、米国の41.4%に対し日本は13.2%であり、先進国の中でも低い水準にあります。

対象企業と雇用形態

今回の男女の賃金格差の開示義務の対象となる企業と、雇用形態の扱いについてそれぞれ解説します。

対象企業

今回の義務化の対象となるのは常時雇用する労働者が301人以上の企業です。労働者が101〜300人の企業については、今回の施行後の状況を踏まえ今後の開示を義務化するか検討が行われます。男女の賃金格差の開示は企業単体ごとに行いますが、持ち株会社(ホールディングス)の情報も開示の対象になります。

雇用形態

男女の賃金格差の開示は、全従業員(労働者)の男女別の差だけでなく、正規・非正規の雇用別の全3区分で賃金格差を計算して示します。具体的には以下のような形で公表することが想定されています。

区分男女の賃金格差※
全労働者30.0%
正社員15.0%
非正規労働者(パート・契約社員等)40.0%
男性の賃金水準に対する女性の割合

これら男女の賃金格差の情報は自社のホームページに掲載することを想定しており、上場企業が事業年度ごとに作成する有価証券報告書でも、同様の情報開示を求める方針です。

開示する情報

今回の女性活躍推進法の省令改正により従業員が301人以上の企業に義務付けられている「自社の女性活躍に関する情報の公表」の中に「男女の賃金の差異」が公表必須の項目として追加されています。

従来から従業員が301人以上の企業は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績」と「職業生活と家庭生活との両立に関する実績」を選択項目から1つずつ選んで公表する必要がありましたが、2022年7月8日以降、男女の賃金の差異を加えた内容で公表しなければならなくなった、ということです。

これまで男女の賃金格差の開示が義務化された後
●女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績①~⑧の項目から1項目選択

①採用した労働者に占める⼥性労働者の割合
②男⼥別の採用における競争倍率
③労働者に占める⼥性労働者の割合
④係⻑級にある者に占める⼥性労働者の割合
⑤管理職に占める⼥性労働者の割合
⑥役員に占める⼥性の割合
⑦男⼥別の職種又は雇用形態の転換実績
⑧男⼥別の再雇用又は中途採用の実績
①~⑧の項目から1項目選択+⑨(必須)

①採用した労働者に占める⼥性労働者の割合
②男⼥別の採用における競争倍率
③労働者に占める⼥性労働者の割合
④係⻑級にある者に占める⼥性労働者の割合
⑤管理職に占める⼥性労働者の割合
⑥役員に占める⼥性の割合
⑦男⼥別の職種又は雇用形態の転換実績
⑧男⼥別の再雇用又は中途採用の実績

※上記いずれか1項目に加えて⑨を必ず公表
⑨男女の賃金の差異(新設)

●職業生活と家庭生活との両立に関する実績①~⑦の項目から1項目選択

①男⼥の平均継続勤務年数の差異
②10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合
③男⼥別の育児休業取得率
④労働者の1か⽉あたりの平均残業時間
⑤雇用管理区分ごとの労働者の1か⽉あたりの平均残業時間
⑥有給休暇取得率
⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
①~⑦の項目から1項目選択(従来どおり)

①男⼥の平均継続勤務年数の差異
②10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合
③男⼥別の育児休業取得率
④労働者の1か⽉あたりの平均残業時間
⑤雇用管理区分ごとの労働者の1か⽉あたりの平均残業時間
⑥有給休暇取得率
⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

例えば、これまで「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績」として③管理職における女性労働者の割合、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」として④労働者1か月あたりの平均残業時間、をそれぞれ公表していた企業は、これに加え⑨男女の賃金の差異も計算した上で公表しなければ法違反になります。

男女の賃金格差の算出方法

男女の賃金格差の開示義務化によって公表するのは、男女の賃金額そのものではありません。男性の賃金水準に対する女性の割合を開示させ、その差を明確にするという方法で開示します。男女の賃金格差を算出する計算式は以下の通りです。

  1. 正規、非正規を問わず雇用する従業員全員分、それぞれ男女別に直近事業年度の賃金総額を計算する
  2. 賃金総額を人数で割り、平均年間賃金を算出する
  3. ①②を実施した上で、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で割り100を掛けた(%)数値を男女賃金の差異として開示する

このとき、小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。また計算の前提とした対象期間、対象労働者の範囲、「賃金」の範囲等などの重要項目を付記します。さらに具体的な方法については厚生労働省の資料をご覧ください。

男女の賃金格差が起こる要因

厚生労働省の調査では賃金格差の要因として、管理職や役員の女性登用が進まないことや、出産・子育てなど制約を抱えた女性が正社員として働きにくい雇用環境などを挙げています。これらの要因について1つずつ解説します。

管理職・役員への女性登用が進んでいなかったことが影響

男女の賃金格差の要因として挙げられている管理職・役員への女性登用が進まない理由について、データから分かる内容を解説します。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で示されている「性、年齢階級別」の男女別に賃金カーブをみると、男性では年齢が高いほど賃金も高い傾向にあります。具体的には男性は55〜59歳の賃金がピークとなり、その後下降しています。一方女性は、全体的に男性より賃金水準が低いのに加え、賃金のピークは50〜54 歳です。また、男性に比べ賃金の上昇が緩やかです。

男性の賃金ピークが55〜59歳なのは、男性ではこの年代に管理職や役員になる割合が比較的多いのに対し、女性はキャリアの中断などが原因で管理職・役員に登用される機会が少ないからだと考えられます。

出産・子育てなどでキャリアの断絶が起こりがち

管理職・役員への女性登用の少なさとも密接に関係していますが、女性の出産や子育てによりキャリアの断絶が起こりがちなのも男女の賃金格差の大きな要因です。

まず、日本では社会的に女性の子育て負担が多く、これまで男性の育児休暇の取得も進んできませんでした。そのため女性にとって子育てと仕事の両立は極めて難しい状況が続いて来たのです。また、出産後に職場に復帰したとしても、それまで築いたキャリアの継続が断たれたり、育児の都合で時短勤務を希望した場合アシスタント的なポストを用意されがちだったりする現状もあります。このような要因が重なることで年齢が上がっても職階が上がらず、賃金アップが起こりにくい状況が続いてきました。

男女の賃金格差開示後に必要な対応

男女の賃金格差の開示は、これまで説明した女性の賃金が上がりにくい構造を是正する目的があります。賃金格差の開示に伴い、企業が実施すべき制度改善や現状の男女取り扱いの見直しの方法について解説します。

男女間で差別的な扱いがないか見直す

企業内で、男女間の賃金や昇給について差別的な取り扱いが存在していないか、いま一度見直しましょう。

差別的な取扱いの例

  • 男女別の賃金体系、賃金形態(男女別の賃金表、男性は月給制なのに女性は日給制等)が存在していないか
  • 男性にのみ住宅手当、家族手当を支給していないか
  • 職務、能率、技能等が等しい場合に、男性を優先的に昇給させ女性のみ昇級を遅らせていないか

例えば、部長は慣例的に男性のみに任命する、外勤は男性、内勤は女性という区別を付ける、既婚社員のうち男性のみ賃金アップの対象とする、などは差別的な取り扱いにあたり、是正する必要があります。

女性の育児・出産がハンデになる評価制度を見直す

育児や出産によって女性従業員の評価を下げ、後のキャリアの断絶につながるような評価制度になっていないか評価の基準の見直しをしましょう。

差別的な評価制度の例

  • 育休や産休明けに査定が下がるような評価制度を見直す(育休・産休に入る前の実績で評価するなど)
  • 人事評価基準の公正性、明確性、透明性の確保、評価結果のフィードバック

例えば、女性が育休に入ったことで空白になった期間を「何も実績がない」としてマイナスの評価をするのは女性には不利であり、不適切な評価の方法です。育休に入る前の段階の実績で評価し、賞与や昇給に反映させる必要があります。また、例え育休制度を利用したのが男性であっても育休期間を「実績なし」と評価したり、育休を取得したことで慣例的に低い評価をつけたりといったことは不適切です。このような実態がある場合、評価基準を見直し、透明性ある評価制度にする必要があります。

ポジティブ・アクションの推進

評価制度に問題はなく、男女の差別的取り扱いがないのにも関わらず、女性の管理職が増えなかったり女性の職域が広がらなかったりという場合があります。このような格差を解消するために個々の企業が自主的、積極的に必要な取り組みのことを「ポジティブ・アクション」と呼びます。

具体的には以下のような取り組みを検討しましょう。

ポジティブ・アクションの例

  • 女性に対する社内訓練・研修の積極的な実施
  • 基準を満たす従業員のうち女性を優先して配置、昇進させる
  • 「3年のうちに女性管理職を20%増やす」といった目標を掲げる

まとめ

男女の賃金格差の開示義務化が、女性活躍推進法の省令改正に伴い2022年7月8日から施行されました。対象は常時雇用する従業員が301人以上の企業であり、全従業員、正規、非正規の3つの区分における男女の賃金格差を決算時期などに応じて開示しなくてはなりません。今後、企業ごとの男女の賃金格差が公開されることで、女性の賃金が男性よりも大幅に低い企業は、求職者からの評価が下がると考えられます。賃金格差の要因は女性の管理職比率の低さ、出産育児によりキャリアが中断されることなどで、格差是正のため、賃金、評価制度の見直しやポジティブ・アクションに取り組む必要があります。従業員が平等に働ける環境を整えるためには、的確な勤怠、人材管理が有効です。男女の賃金格差の開示に合わせ、これらをスムーズに実施できるシステムを導入しましょう。

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