人事・労務の注目用語

標準報酬月額

ひょうじゅんほうしゅうげつがく

公開日時:2021.04.28 / 更新日時:2022.03.09

標準報酬月額とは、厚生年金保険、健康保険、介護保険の保険料(社会保険料)を算出するための基準となる金額のことです。毎年4~6月に支給した報酬の平均額(報酬月額)を、「標準報酬月額表」の区分(等級)に当てはめ、標準報酬月額を決定します。健康保険料の算出用として50等級の区分が、厚生年金保険料の算出用として32等級の区分が設けられています。標準報酬月額の基準となる3か月の報酬には、基本給のほか、役付手当や通勤手当、家族手当、住宅手当、残業手当などが含まれます。

標準報酬月額の範囲

標準報酬月額を算出する際は、「従業員に支払ったすべての報酬が標準報酬月額に含まれるわけではない」という点を押さえておきましょう。標準報酬月額の報酬に含まれるもの、含まれないものをそれぞれ説明します。

報酬の対象となるもの

標準報酬月額の範囲に含まれるのは、賃金や手当、俸給、賞与など名称を問わず、労働の対償として労働者に支払う報酬全般です。現金だけでなく、通勤に使用する定期券や社宅、食事など、現物で支給する報酬も含まれます。

報酬の対象とならないもの

標準報酬月額の報酬に含まれないのは、臨時に支払う報酬や、支給回数が年3回以下の賞与です。継続的に発生しない報酬、例えば見舞金や退職手当、交際費などは標準報酬月額の範囲外です。見舞い品や作業着など現物で支給されるものに関しても、臨時に受け取るものに該当し、報酬には含まれません。

  金銭で支給されるものの例 現物で支給されるものの例
報酬の対象と
なるもの
基本給(月給・週給・日給など)、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、扶養手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金、年4回以上の賞与 など 通期定期券、回数券、食事、食券、社宅、社員寮、被服(勤務服でないもの)、自社製品 など
報酬の対象と
ならないもの
大入袋、見舞金、解雇予告手当、退職手当、出張旅費、交際費、慶弔費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与(標準賞与額の対象) など 制服、作業着(業務に要するもの)、見舞い品、食事(本人の負担額が、労働大臣が定める価額により算定した額の3分の2以上の場合) など

随時改定を行う必要があるケース

標準報酬月額の等級は、従業員に支給する報酬額によって変動します。報酬額が大きく上がったとき、あるいは下がったときには随時改定で標準報酬月額の変更手続きを行う必要があります。ここからは、随時改定とは何か、行うタイミングや必要な届出について説明します。

随時改定とは

報酬額が大きく増減した際には、標準報酬月額の「随時改定」を行う必要があります。随時改定は昇給や降給、家族手当や役職手当など従業員の固定的賃金が変動していることが条件になります。標準報酬月額を決めるタイミングには、大きく分けて「資格取得時」「定時決定」「随時改定」の3つがあります。

資格取得時とは、新たな人材を雇用し、入社した際のタイミングを指します。事業主が新入社員の「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出することで、標準報酬月額が決定されます。

定時決定は、前述した「4~6月の3か月間の報酬総額の平均」から標準報酬月額を決定するタイミングで年に1回行われるものです。定時決定では、毎年7月1日~10日の間に企業が日本年金機構に提出する「被保険者報酬月額算定基礎届」を基に標準報酬月額が決定されます。

どのようなケースで随時改定が必要なのか

年の途中で昇給や降給によって従業員の報酬額が大きく変動した際には、「随時改定」で標準報酬月額を変更する必要があります。

ただし、随時改定を行うのは次の条件に当てはまる場合のみです。

随時改定の条件

  • 基本給等固定の賃金が変動している
  • 報酬支払基礎日数が17日以上(短時間労働者の被保険者は11日以上)ある
  • 変動した月から3か月の月平均の報酬額から算出される標準報酬月額と、変動する前の標準報酬月額を比較して 2等級以上の差が生じている

報酬が大きく変動しても、これらの条件に当てはまらない場合は随時改定の対象外です。例えば、2等級以上の差が生じる報酬の増加があったとしても、残業手当のように非固定的な賃金の変動では随時改定の対象にはなりません。

随時改定の対象になるケース

  1. 昇給や降給によって基本給が大きく変動したとき
  2. 給与形態が時給制から月給制に変わったとき
  3. 時間給や日給が変わり賃金が変動したとき
  4. 通勤手当や住宅手当などの固定的な手当てが追加されたとき
  5. 歩合給制の歩合率が変動したとき

随時改定の対象になるケースを見ると、基本給だけでなく通勤手当や住宅手当などの各種固定手当の変更によっても随時改定が必要になることが分かります。昇給や降給のタイミングだけではなく、定期的に各従業員の報酬額の確認をすることが必要です。

随時改定時は月額変更届の提出が必要

随時改定を行う際は、日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届(月額変更届)」を提出します。届出は窓口持参、郵送、電子媒体、電子申請のいずれかで行います。この届出には通常、添付書類は必要ありません。

従来は、改定月の初日から起算して60日以上経過してから月額変更届を提出する場合には、賃金台帳や出勤簿のコピーなどの書類の添付を求められていましたが、2019年4月から不要となりました。現在は年金事務所による調査実施時に確認を行うことになっています。

まとめ

社会保険料と給与の支払いミスが生じないよう、人事・労務担当者は標準報酬月額の対象、対象外の報酬を把握しておく必要があります。標準報酬月額に間違いがあったと後から発覚した場合は、社会保険料の追徴をはじめとする手続きが発生し、担当者、従業員に対し大きな負担がかかります。

随時改定において、どこが改訂対象となるかの判断も複雑であるため、対応に迷った場合は都度年金事務所に確認を取るなどの対策を取りましょう。

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