人事・労務なんでもQ&A

従業員の出入りが激しく、定着しません。何か対策はありますか?

公開日時:2021.03.31 / 更新日時:2022.03.22
詳しく解説

今年で設立10年目になる200人規模の中小企業で人事をしています。企業規模を拡大中で人員も増えていますが、従業員の離職率が例年高く、中途・新卒ともになかなか定着しないので人材が育ちにくい状況です。経営面でもエンゲージメント面でも悪影響が懸念されるので、従業員の定着率を上げるために有効な施策を取り入れたいです。

A.離職理由と現在の従業員の不満を検証した上で、離職の原因ごとに有効な人事施策を導入しましょう。

なぜ従業員の離職が続いてしまうのか、まずはその原因を知ることが重要です。そのためには、今までの従業員の離職理由を面談やアンケートなどで集約し、現在の従業員の抱いている不満を把握することです。その上で、労働条件や給与面など代表的な離職原因ごとに効果が期待できる施策を検討し、具体的な制度に落とし込みます。離職対策として大幅な給与アップが実施できない場合でも、自社に合った人事評価制度や入社後の支援体制の整備を推進することで、中・長期的な定着率アップが期待できます。

1.従業員の定着率が低い企業の特徴

従業員の定着率が低い企業の特徴として「有給休暇が取りづらく、長時間労働が多い」「給与水準が低く、貢献度が給与にどう反映されているのか分からない」「ハラスメント体質が残っている」「採用後のフォロー体制が整っていない」などがあります。厚生労働省の「平成30年雇用動向調査結果の概要」でも離職理由として、労働条件、給与、人間関係による理由が目立ち、これらの課題について重点的にフォローができていない企業はエンゲージメント率の低下を招いていると考えられます。

離職につながる問題の全てに対して完全な対策ができないとしても、納得度の高い制度を作り、対策を行うことが重要です。制度作りの一歩として、人事担当者は社内アンケートや管理職への面談を通して従業員の不満や希望を吸い上げ、それらを活用しましょう。

2.労働条件、給与、人間関係の課題別に有効な施策

労働条件、給与、人間関係といった代表的な離職理由に対応した人事施策を導入し、長期的な従業員定着率アップを目指しましょう。

労働条件の不満解消のためには、ワークライフバランスを考慮した施策が有効です。ワークライフバランスの実現のためには、子育てや通勤の負担など従業員それぞれの事情をカバーできる「柔軟な働き方」の実現が鍵となります。具体的には、時間や場所を問わず働ける施策としてテレワークやフレックスタイム制度の導入、介護や子育てをしながらでも働きやすい環境整備として、子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得制度や育児時短勤務制度の整備などが挙げられます。

給与の不満解消のための施策としては、納得度の高い報酬制度や評価制度の構築が重要となります。「自分がなぜ今の給与なのか」という理由や昇給の条件が明らかになっていない状態は、従業員のモチベーション低下を招きます。マネージャーや経営者層が「どのように従業員を評価しているのか」という評価基準や昇給ルールを整備し、社内に公開できるようにしましょう。

また、評価の精度を高め、従業員に納得感を持ってもらうためには、評価面談の定期的な実施が有効です。面談を通じ、これまでの従業員の成果を一対一で振り返り、評価に対する曖昧な部分を減らすことで効果が期待できます。

人間関係を理由とする不安解消のためには、自社内で従業員同士のトラブルが発生していないか、マネージャー層の指導に見直しの必要がないか、現場の実態を把握しましょう。その上で、適切な人材配置を行うとともに、未然のトラブル回避や相談しやすい環境づくりにも対応できるようなマネージャー層のマネジメント力の育成が重要です。具体的には、風通しの良い職場をつくるためのコミュニケーション研修や、部下の指導方法を学ぶワークショップを実施するなどして、マネジメント力の底上げを目指しましょう。

このほか、人間関係の中でもハラスメントに起因する離職対策としては、社内のハラスメント防止のガイドラインを整備する、従業員の相談の受け皿となる外部窓口を設置することなどが考えられます。

3.新卒・中途別の定着率アップ施策

ベースとなる社内制度の整備と並行して、入社間もない従業員向けのフォロー体制を整備し定着率アップと戦力化を図りましょう。

新卒の従業員は、先輩と信頼関係を築く前に業務上の悩みを抱え、相談できず離職に至るという傾向があります。そのため、新卒に対しては、入社後に信頼関係を構築する工夫を取り入れると共に、初めての社会人となる際に抱えやすい悩みをキャッチアップできる体制を整える必要があります。具体的には、同じ部署の先輩従業員が教育を行うOJT制度とは別に、別の部署の先輩従業員が新卒の悩みや相談に対する助言を行うメンター制度の導入や、週1度の頻度で業務上の悩みや進捗を上司に伝え、振り返りを行う1on1ミーティングの導入などが推奨されています。

中途の従業員に対しては、まずは自社の希望する人物像やスキル条件をブラッシュアップして採用段階でのミスマッチを減らす対策を実施しましょう。入社後は、無理なく業務に慣れスキルのレベルを上げるためのオンボーディング体制※の確立が重要となります。

※新たに採用した従業員の受け入れに加え、定着・戦力化のため入社後すぐに実施される施策のこと。「オンボーディング」という用語は船や飛行機に乗っているという意味の「on-board」という言葉が由来。

まとめ

まずはなぜ従業員が離職に至るのか、面談やアンケートなどを通じて不満や要望を可能な限り把握し、分析しましょう。その上で、給与面や労働条件、自社の評価制度や働き方にもメスを入れることを検討し、中・長期的な従業員の不満解消につながる制度整備を行います。自社の働き方のベースとなる制度の整備と並行し、新卒、中途社員の入社後のフォロー体制を見直して、従業員の定着率アップにつなげましょう。

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