今回は、勤怠管理システムをより効果的に使うために必要な「サポート」について、詳しく解説します。導入前から本稼働後の運用まで、それぞれで受けられるサポートの重要性を知り、勤怠管理システムを導入する際の参考にしてください。
勤怠管理システムにおける「サポート」とは
サポートというと、購入した製品のアフターケアという印象が一般的でしょう。しかし、勤怠管理システムのサポートは、システムを導入する前から始まります。メーカーにもよりますが、導入前に顧客に直接ヒアリングを行い、適切なシステムを提案したのち、初期設定やテスト運用などの実作業へと移行します。もちろん、本稼働後のサポートも重要なのはいうまでもありません。勤怠管理システムは、全従業員が毎日使うシステムです。従業員のITリテラシーは、個々人により差があるでしょう。また、どんなに優れたシステムでも、機械的なトラブルが発生しないとは限りません。そういった、さまざまなトラブルや疑問、問い合わせに対応するサポート窓口は、とても重要です。勤怠管理システムを導入する際は、導入前はもちろん、運用開始後もどこまでサポートを受けられるかについて、しっかりと吟味する必要があります。
2つのタイプ別 サポート内容の比較
勤怠管理システムのサポート体制は、「メーカー設定型」と「ユーザー設定型」の2タイプに分けられます。それぞれの代表的なサポート内容の比較は下記の一覧表のとおりですが、メーカーにより若干の差異はあります。また、「ユーザー設定型」であっても、メーカーによる設定代行が可能なケースもあります。実際に比較検討する際には、各メーカーのWebサイトでご確認ください。
勤怠管理システムのサポート比較一覧
メーカー設定型 | ユーザー設定型 | |
導入費用 | 規模・予算に合わせて 個別見積もり | 従量課金制 |
導入前支援 | ○ 事前コンサルティング 運用設計・システム設計 | × |
システム初期設定 | 〇 メーカーで設定 | × ユーザーで設定 |
教育 | 〇 | × |
運用後サポート | 〇 | 〇 |
問い合わせ・ サポート方法 | 電話・メール・チャット・リモート | チャット・電話・メール |
対応時間帯 | 問い合わせ方法による | 問い合わせ方法による |
勤怠管理システムの導入におけるサポートの重要性
勤怠管理システムの導入におけるメーカー設定型のサポートの内容を、導入前・テスト運用中・本稼働後の各フェーズに分けて、解説します。
導入前のサポート
メーカー設定型では、最初にユーザーの現状をヒアリングするところから始まります。ユーザーの課題を十分に把握したところで、それぞれの課題を解決する運用設計を提案します。その後、具体的なシステム設計を行い、初期設定へと移行します。
メーカー設定型では、顧客のさまざまな要望に柔軟に対応が可能なため、導入前の段階で自社の業務に適切なシステムかどうかを確認できるのがメリットといえます。
テスト運用中のサポート
ヒアリングをへてユーザーの課題を確認し、運用設計の合意ができたら、次は本稼働に向けてのフェーズへと移行します。
メーカー設定型では、ここでさらに専任SEが綿密なヒアリングをします。ユーザーの要望や事情に合わせて、システムに搭載する機能や項目を設計・構築します。まずはテスト運用で、「計算結果に不備はないか?」「既存業務との相違はないか?」「使いにくいところはないか?」などを確認します。また、事業所別や、正社員、アルバイトといった勤務形態別、月給者、日給者といった給与形態別の確認も欠かせません。
テスト運用は、既存の業務と照らし合わせながら、一つひとつシステムをチェックし、判明した課題に対して修正をかけていく作業となります。チェック項目は膨大であり、時間と手間のかかる大変な作業です。
本稼働前には、システムを主に利用する管理部門向けに研修を実施します。これも、メーカー側の専任SEが担当します。
本稼働後のサポート
勤怠管理システムのサポートは、この運用フェーズからが最も重要です。どれほどテスト運用していても、本稼働が始まってしばらくたてば、想定外の問題や機械的な故障なども起こりえるでしょう。
そのようなときに、頼りになるのがメーカーの問い合わせ窓口やサポートです。これらがいかに充実しているかが重要となります。
また、仕様変更や設定変更の際には、これまでの設定を確認したり、担当者変更によりブラックボックス化したシステムの解明を要したりと、手間のかかる作業も発生します。そのようなときも、メーカー設定型であれば、仕様書をもとに打ち合わせから専任SEが対応するため、スムーズに進められます。また、運用中に法律改正や就業規則改定が行われた場合も、対応も任せられます。
こうした幅広く柔軟なサポートを受けられるのも、サポート体制がしっかりしているメーカー設定型ならではといえるでしょう。
初期設定のおすすめは、断然「メーカー設定型」
勤怠管理システムの初期設定のうち、「メーカー設定型」は、メーカーのSEがユーザーの要望をヒアリングしてシステムの設計や構築を行い、本稼働まで導く手法です。一方、「ユーザー設定型」は、システム本稼働までの工程を、すべてユーザーが自ら行う手法を指します。
勤怠管理システムの初期設定は簡単な作業ではないため、メーカー設定型をおすすめします。特に、以下のようなケースでは、メーカー設定型を選択するとよいでしょう。
- 従業員数が200名を超える企業
- フレックスタイム制や変形労働時間制など、勤務形態が多岐にわたる企業
- 拠点数が多い(事業所ごとに36協定が異なる)企業
- 導入から本稼働まで、効率よくスムーズに進めたい企業
- 導入する勤怠管理システムの機能を、無駄なく使いこなしたい企業
なお、メーカー設定型での導入がおすすめなケース、および勤怠管理システムの初期設定に関して、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
サポートを重視した勤怠管理システムの導入事例
勤怠管理システムを導入するにあたり、サポートを重視したことで成功した企業の導入事例を紹介します。
株式会社ヒノキヤグループは、注文住宅、戸建・宅地分譲、リフォーム、資産活用・戸建賃貸経営などの建設関連事業を幅広く展開している企業です。
導入の背景
同社では、すでに高機能で自由度の高い勤怠管理システムを導入済みでした。しかし、設定は自社担当者が行っており、その設定が正しいかどうかの確認も自社で判断しなければなりませんでした。法律上の設定ミスが発生したこともあり、「人事のプロであっても人事システムのプロではない以上、常に不安がつきまとう」状況だったのです。勤怠管理にリスクがあるのでは、時間外労働の上限規制への適切な対応や、将来的なフレックスタイム制の導入なども難しいため、勤怠管理システムのリプレースを検討することにしました。
受けたサポート内容
ヒアリングによる自社の特徴や要望に合致したシステムの提案
いくつもの会社が集まった企業形態であるため、各社で勤務形態や就業ルールなどに違いがあるという状況でした。それでも、メーカー側の丁寧なサポートを受け、状況や要望を的確に伝えることができました。メーカーより提示された提案は具体的であり、「こういう設定であれば、こういう結果が得られる」など、非常にわかりやすい内容であったといいます。
テスト段階における複雑なトラブルへの対処
グループであるゆえ、ある1社で設定変更した際に別の会社の設定にも影響がおよぶといったトラブルも発生しました。しかし、メーカー側のサポートを迅速に受けたことによって検証、修正がスムーズに行われました。その結果、勤怠管理の設定が確実なものとなり、安心して運用を開始できたのです。
得られた結果
多大な労力を要していた「自ら設定して、入力して……」という作業がなくなり、人事業務の省力化が進むと同時に、勤怠管理の不安も解消しました。また、導入した「TimePro-VG」は、画面が色分けされており、カウンター機能で残業時間や年休取得日数などがひと目で把握でき、コンプライアンス遵守だけではなく、業務効率化にも寄与しています。
積立年休という新制度の導入の際にも、「TimePro-VG」にはすでに積立年休の設定があり、制度の運用開始も短期間のうちにスムーズに進めることができています。
さらに詳しい同社の導入事例については、下記をご覧ください。
まとめ
今回は、勤怠管理システムのサポートについて解説しました。クラウド型によくある手軽に始められるタイプのシステムは、低コストがゆえに、サポート体制もシンプルなものが多いようです。
システム選定において、「サポート」は違いがわかりづらく、軽視されがちです。しかし、理想どおりのスムーズなシステム導入や運用を実現し、それを業務効率や生産性の向上につなげていくためは、サポートは重要な要点となります。
勤怠管理システムを選定する際は、機能やコストだけではなく、どのようなサポートが受けられるのかについても検討しましょう。