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【社労士監修】2026年10月からの労働条件通知書の様式変更について

公開日時:2026.09.03

2026年10月に、パートタイム・有期雇用労働法(以下、パート・有期法)の改正が施行予定です。今回の改正では、非正規社員と正社員の待遇差に関する説明の仕組みが見直され、その一部として労働条件通知書の様式が変更されます。本記事では、改正全体の概要と労働条件通知書の変更点を整理し、企業が当面どのような準備を進めるべきかを説明します。また、今回の改正が企業に求める本質的な意味についても考えていきます。

改正の概要

202610月施行のパート・有期法改正は、「待遇差の説明義務」を強化し、非正規社員の処遇改善を促すことを目的とします。 改正内容は以下の3つです。

1. 雇い入れ時の労働条件明示事項の追加

パートタイム・有期雇用労働者の雇い入れ時の労働条件明示事項に、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が追加されます。

2. 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正

パート・有期法では、同一企業内の正社員とパートタイム・ 有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることを禁じています。

不合理な待遇差についての詳しい考え方や具体例を示す「同一労働同一賃金ガイドライン」が見直され、新たな内容が追加されました。

3. 雇用管理の改善等に関する措置の内容の改正

雇用管理の改善等に関する措置とは、「短時間・有期雇用労働者法」に定められた事業主(パートタイム労働者または有期雇用労働者を1人でも雇用する、すべての法人および個人事業主 )が、パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等のために講ずべき措置のことです。

今回の改正により、雇用管理の改善等に関する措置等についての指針の一部の改正が行われました。

具体的な改正点とポイント

上記で示したとおり、今回の改正は「明示事項の追加」「ガイドライン改正」「雇用管理措置の改正」という3本柱で構成されています。 ここでは、それぞれの柱について「制度として何が変わるのか」 を具体的に整理します。

1. 労働条件通知書の様式変更(明示事項の追加)

現行法では労働条件通知書に、昇給、賞与、退職手当の有無と相談窓口について明示する必要があります。202610月からは、これらに加えて「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の明示が必要となります。

ポイントは、待遇差の理由そのものは通知書に書く必要はない点です。今回の明示事項の追加は、あくまでも「労働者が説明を求める権利を持っていること」と、「企業には合理的な説明責任があること」を明確にするためのものです。

厚生労働省が公開するモデル労働条件通知書(【短時間労働者用】常用、有期雇用型)も、すでに新様式に更新されています。施行に備え、自社のひな型を見直しておきましょう。

2. 同一労働同一賃金ガイドラインの改正

「同一労働同一賃金ガイドライン」では、正社員とパートタイム・ 有期雇用労働者との間で具体的にどのような待遇差が不合理になるのかの考え方を示しています。今回の改正により、賞与と手当と福利厚生について、記載内容を充実させる変更がなされました。

具体的には退職手当の条項が新設され、各種手当に無事故手当、家族手当、住宅手当が新規追加されました。また福利厚生にも夏季冬季休暇、褒章が追加されました。

たとえば、賞与について改正前は、実務上「責任が重い」「将来期待される」といった抽象的な説明でも差を設けることが許容されるケースが多くありました。

改正後は、待遇の決定基準・ルールの相違については、主観的・抽象的な説明では不十分とされ、客観的・具体的な実態に基づく判断が求められます。客観的・具体的な説明、職務内容・責任範囲・配置変更範囲などの実態に基づく説明が必要です。

家族手当については、労働契約の更新を繰り返しているなど、正社員と同じように継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者には、正社員と同一の家族手当を支給しなければなりません。

住宅手当については、住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」である場合、正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイム・有期雇用労働者には、正社員と同一の住宅手当を支給しなければなりません。

家族手当、住宅手当については現行では正社員のみに支給している会社も多いため、抜本的な賃金制度の改正が必要になるでしょう。

3. 雇用管理の改善措置の見直し

今回の改正は「パートタイム・有期雇用労働者の処遇改善をより実効的にするための強化」 が中心で、特に次の3点が大きく変わりました。

1点目は、「公正な評価・賃金決定」の考え方が新設・強化された点です。改正前には具体的な評価基準の提示はありませんでしたが、 今回の改正で「評価制度の整備」が企業に強く求められるようになりました。

2点目は、「パートタイム・有期雇用労働者の過半数代表者」の選出ルールが新設されたことです。このルールでは、パートタイム・有期雇用労働者だけで「別の過半数代表者」を選ぶ必要があること、選出方法は民主的でなければならないこと、事業主の意向に基づく選出は不可であることを定めています。

3点目は、待遇差の説明の方法が新設され、説明義務が実質強化されたことです。説明は労働者が理解できるような方法で行うことが必要で、資料を用いた説明が推奨されるとしています。

企業が対応すべきこと

今回の改正は、労働条件通知書の様式変更だけでなく、待遇差の説明義務や改善措置の強化など、企業の実務に大きな影響を与える内容となっています。ここでは、企業がまず取り組むべき実務対応を整理します。

現行の待遇差を棚卸しする

最初に必要なのは、正社員とパートタイム・有期雇用労働者の間にどのような待遇差が存在するのかを把握することです。基本給、手当(家族手当・住宅手当・無事故手当など)、賞与、退職手当、福利厚生(休憩室・更衣室・給食施設など)、休暇制度(夏季冬季休暇、病気休暇)など、今回のガイドライン改正では、これらの項目が細かく整理され、具体例が追加されました。 そのため、「どこに差があるのか」「その差をどう説明するのか」 を棚卸しすることが不可欠です。

説明できる状態を整える

労働条件通知書に具体的に記載する必要はありませんが、説明を求められたときに即答できる資料を用意しておく必要があります。賃金差の理由書、職務記述書(ジョブディスクリプション)、賞与・退職金の支給基準、評価制度の概要、昇格基準・配置変更基準などを整備しておくことで、説明責任を果たせます。 特に職務記述書は、待遇差の説明だけでなく、改善措置(キャリアパス・評価制度)の基礎となるため、今回の改正対応の中心資料となります。

過半数代表者の選出ルールへの対応

202610月の改正で雇用管理指針に追加された、パートタイム・有期雇用労働者の「過半数代表者」の選出ルールへの対応が必要です。これは、就業規則変更や意見聴取の場面で実務的に大きな影響があります。 特に、パートタイム・有期雇用労働者の人数が多い企業では選出方法の整備が急務となるため、早めの対応が必要です。

説明の方法の整備

今回の改正では、説明の方法についても新たに基準が示されました。「資料を活用し、口頭により説明することを基本とする」 「資料を交付する方法でも差し支えない」と雇用管理の改善措置に関する指針の改正案には記載されています。つまり、 説明は理解できるように行うことが義務化されたということです。説明資料の作成、説明担当者の教育など、実務的な準備が必要です。

まとめ

202610月の改正における労働条件通知書の様式変更は、あくまでも、非正規社員と正社員の待遇差の説明義務を「実効性あるものにするための入口」 にすぎません。本質は次の2点に集約されるといえます。

1点目は、「説明のつかない待遇差は維持できない」ということです。同一労働同一賃金ガイドラインの改正により、賞与・退職手当・家族手当・住宅手当など、 これまで正社員だけを対象としてきた待遇についても、客観的・具体的な説明が求められる ようになりました。抽象的な説明では待遇差が不合理と判断される可能性が高くなります。

2点目は、説明した後には「改善できる体制」が必要ということです。今回の改正では、説明して終わりではなく、待遇差を縮めたり解消したりするための改善措置を講じることが求められています。 改善措置として示されているのは、職務内容・責任の明確化、能力開発の機会提供、キャリアパスの整備、正社員への転換を見据えた仕組みなどです。

これらを踏まえると、今回の改正は「待遇差の説明 改善措置 キャリアパス 正規転換」 という流れを制度として明確に示したものといえます。そのため、正規転換制度そのものは法的義務ではないものの、 待遇差の説明と改善措置を実効性あるものにするためには、実質的に不可欠となっていくと考えられます。

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