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障害者法定雇用率が2026年にかけて段階的引き上げへ! 企業が注意すべきポイントは?

公開日時:2023.03.27

厚生労働省は2023年1月、企業の障害者法定雇用率について、現在の2.3%から段階的に引き上げ、3年後の2026年に2.7%にすることを決めました。引き上げは2段階に分けて行われる見込みです。

本記事では、障害者法定雇用率の引き上げに際して、企業への影響や備えておくこと、支援策や罰則など、企業が押さえておくべきポイントを解説していきます。

障害者法定雇用率が2026年7月にかけて段階的に引き上げへ

厚生労働省の決定により、障害者法定雇用率は2023年から段階的に引き上げられることになります。これにより、現在は法定雇用率を達成している企業でも、今後は雇用率を達成するための雇用を広げる必要が出てきます。

障害者法定雇用率とは

企業に雇用が義務付けられている障害者の割合を指します。障害者雇用率制度により、一定数以上の従業員を雇用している企業は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務付けられています。

障害者法定雇用率を満たすよう義務付けられている企業が、規定の雇用率を下回った場合、納付金の支払い、行政指導の対象になるなどの不利益が生じます。

障害者法定雇用率 引き上げの背景

障害者雇用促進法では企業に対し、従業員に占める障害者の割合を一定以上にするよう義務付けており、現在は2.3%となっています。

2023年1月18日に開催された第123回労働政策審議会 障害者雇用分科会において、障害者の働く場をさらに拡大させるため、厚生労働省は障害者法定雇用率の段階的引き上げを行い、2026年にかけて2.7%にすることを決定しました。

また、障害者の法定雇用率は障害者雇用促進法により、労働者の総数と対象となる障害を持つ労働者の総数の割合を基準として設定されており、少なくとも5年ごとに当該割合の推移等から引き上げられてきた経緯があります。

 

障害者法定雇用率の変遷

施行時期国及び地方自治体特殊法人民間企業
昭和35年7月 現業的機関:1.4%
非現業的機関:1.5%
現業的事業所:1.1%
非現業的事業所:1.3%
現業的事業所:1.3%
非現業的事業所:1.5%
昭和43年10月 現業的機関:1.6%
非現業的機関:1.7%
1.3%1.6%
昭和51年10月 現業的機関:1.8%
非現業的機関:1.9%
1.5% 1.8%
昭和63年4月 現業的機関:1.9%
非現業的機関:2.0%
1.6%1.9%
平成10年7月 国及び地方公共団体:2.1%
教育委員会:2.0%
1.8%2.1%
平成25年4月 国及び地方公共団体:2.3%
教育委員会:2.2%
2.0%2.3%
平成30年4月 国及び地方公共団体:2.5%
教育委員会:2.4%
2.2%2.5%
令和3年3月国及び地方公共団体:2.6%
教育委員会:2.5%
2.3%2.6%
昭和35年7月 現業的機関:1.4%
非現業的機関:1.5%
現業的事業所:1.1%
非現業的事業所:1.3%
現業的事業所:1.3%
非現業的事業所:1.5%
昭和43年10月 現業的機関:1.6%
非現業的機関:1.7%
1.3%1.6%
昭和51年10月 現業的機関:1.8%
非現業的機関:1.9%
1.5% 1.8%
昭和63年4月 現業的機関:1.9%
非現業的機関:2.0%
1.6%1.9%
平成10年7月 国及び地方公共団体:2.1%
教育委員会:2.0%
1.8%2.1%
平成25年4月 国及び地方公共団体:2.3%
教育委員会:2.2%
2.0%2.3%
平成30年4月 国及び地方公共団体:2.5%
教育委員会:2.4%
2.2%2.5%
令和3年3月国及び地方公共団体:2.6%
教育委員会:2.5%
2.3%2.6%

※昭和51年10月まで民間企業は努力義務。
※(現業的機関):郵政省、林野庁、大蔵省造幣局及び印刷局等の身体障害者が比較的従事しにくい作業を内容とする職種が多い機関
 (非現業的機関):現業的機関以外

障害者法定雇用率 引き上げの日程

今回の改定については、企業の採用活動の準備などが考慮され、段階的に実施されます。

2023年度においては、現状の2.3%のまま据え置き。
 ↓

①2024年4月、2.5%に引き上げ(従業員数40名以上の企業に障害者の雇用義務が発生する

 ↓

②2026年7月から2.7%に引き上げ(従業員数37.5名以上の企業に障害者の雇用義務が発生する

障害者法定雇用率の引き上げは、国、地方公共団体等、都道府県などの教育委員会も対象となります。2026年度より、国および地方公共団体等は3.0%、教育委員会は2.9%へ引き上げられる見込みです。

障害者雇用率の現状

障害者法定雇用率はおよそ5年ごとに雇用状況をみて見直しされていますが、法定雇用率の達成状況は微増していると言えます。

厚生労働省が発表した「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者数は61万3,958.0人で、前年より1万6,172.0人増加しました。対前年比では2.7%の増加で、障害者の実雇用率は2.25%、対前年比では0.05ポイント上昇しました。法定雇用達成企業は48.3%となり、対前年比で1.3ポイント上昇しています。

一方で、法定雇用率未達成企業は55,682社という結果となりました。また、障害者を1人も雇用していない企業は32,342社で、未達成企業に占める割合は58.1%であった。

障害者法定雇用率引き上げに伴う影響

障害者法定雇用率の引き上げに伴い、障害者の雇用義務が発生する企業が増大します。段階的にとは言え大きな引き上げになるため、法定雇用率を達成していない企業は障害者雇用を積極的に行う必要があります。

除外率の一律10ポイント引き下げ

「除外率制度」とは、障害者の雇用が一般的に難しいとされる業種を対象に、雇用義務の軽減を認める制度です。今回の改定により、2025年4月から一律10ポイント引き下げられる予定です。

除外率設定業種除外率
・非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く。) 
・倉庫業 ・船舶製造
・修理業、船用機関製造業 ・航空運輸業
・国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る。)
5%
・採石業、砂・砂利・玉石採取業 ・水運業
・窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)
・その他の鉱業
10%
・非鉄金属第一次製錬・精製業
・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く。)
15%
・建設業 ・鉄鋼業 ・道路貨物運送業
・郵便業(信書便事業を含む。)
20%
・港湾運送業 ・警備業25%
・鉄道業 ・医療業 ・介護老人保健施設
・介護医療院 ・高等教育機関
30%
・林業(狩猟業を除く。)35%
・金属鉱業 ・児童福祉事業40%
・特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く。)45%
・石炭・亜炭鉱業50%
・道路旅客運送業 ・小学校55%
・幼稚園 ・幼保連携型認定こども園60%
・船員等による船舶運航等の事業80%

障害者法定雇用率引き上げで企業がやるべきこと

2024年、2026年と段階的に引き上げられる障害者法定雇用率に備え、今から企業が対策しておくべきことを解説していきます。

雇用が必要な障害者の人数を算出する

2024年、2026年の引き上げに伴い、現状からあと何人の障害者を雇用する必要があるのか(目標値)を算出しなくてはなりません。

  • 現在、総従業員に対して障害のある労働者を何人雇用しているのか
  • 2024年、2026年時点で何人雇用していなければならないのか

各企業が雇用すべき障害者の人数は、次の計算式で算出できます。

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.5%または2.7%)

障害者の働き方について知る

今まで障害者を雇用したことがない企業では、まずは障害者を雇用する際のイメージを持つ必要があります。支援機関や相談窓口に問い合わせて疑問を解消するほか、障害者が実際に作業する姿を見学し雇用後のイメージを持ち、障害者雇用へ役立てましょう。

今後を見据えた雇用計画を立てる

今後必要な雇用人数に応じて、雇用計画を立てる必要があります。まずは具体的に障害者に担当してもらう業務内容を検討しましょう。障害者雇用促進センターで紹介している雇用事例を参考に業務を検討する方法もあります。具体的な業務が確定したら、ハローワークを利用して求人票を出しましょう。

社内の理解を得る

障害者の雇用方針を社内に共有し、受け入れ部署のマネージャーやともに働く従業員の理解を得ることが大切です。雇用形態や労務管理などについて不安がある場合は、社会保険労務士への相談も検討しましょう。

障害者の雇用が進まない場合の相談先

障害者雇用に関する相談・支援を行っている機関はいくつかあります。主要機関は以下のとおりです。

ハローワーク

障害者を対象とした求人の申込みを受け付けています。専門の職員・相談員が就職を希望する障害者にきめ細かな職業相談を行い、就職した後は業務に適応できるよう職場定着指導も行っている。その他、障害者を雇用する事業主や雇用しようとしている事業主に、雇用管理上の配慮などについての助言や、必要に応じて地域障害者職業センターなどの専門機関の紹介、各種助成金の案内を行っており、求人者・求職者が一堂に会する就職面接会も開催している。

地域障害者職業センター

職業リハビリテーション専門機関の立場から雇用管理に関する助言その他の支援が行われている。事業主に対する支援に当たっては、個々の事業主の障害者雇用に関するニーズと雇用管理上の課題を分析して「事業主支援計画」を策定し、体系的な支援を行っている。障害者職業カウンセラーが配置され、公共職業安定所等の関係機関との密接な連携の下、地域の職業リハビリテーションネットワークの中核として、地域に密着した職業リハビリテーションサービスが実施されている。また、障害者及び事業主に対して職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業とともに、そのためのジョブコーチ養成研修を障害者職業総合センターと一体的に実施している。

雇用相談は基本的にハローワークへ問い合わせれば間違いありません。単純な雇用だけでなく、一歩踏み込んだ相談であれば地域障害者職業センターや障害者雇用を専門とする企業へ相談するのも良いでしょう。

障害者雇用に際して企業が注意すべきポイント

障害者雇用に際しては、障害者一人ひとりが自己の特性に合わせた働き方ができるような配慮が重要になります。

障害者に対して「合理的配慮」を行う

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に働くことができ、能力を発揮できるよう改善策を講じることです。個々の事情を有する障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものとされています。

ここでは、厚生労働省が推奨する合理的配慮指針をご紹介します。

基本的な考え方

  • 対象となる事業主の範囲:全て
  • 対象となる障害者の範囲:身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者。(障害者手帳所持者に限定されない。)

合理的配慮の内容

厚生労働省は、合理的配慮の事例として、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例を「合理的配慮指針」の「別表」で記載しているため、参考にすると良い。

(記載例)
視覚障害の方には、募集内容について音声等で提供する。聴覚・言語障害の方には、面接を筆談等により行う。など

(採用後)
肢体不自由の方には、机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行う。知的障害の方には、本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やす。精神障害の方には、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮する。など

合理的配慮の手続き

(募集・採用時)
障害者から事業主に対し、支障となっている事情などを申し出る。

(採用後)
事業主から障害者に対し、職場で支障となっている事情の有無を確認する。
合理的配慮に関する措置について事業主と障害者で話し合い、措置を確定し、講ずることとした措置の内容及び理由(「過重な負担」に当たる場合は、その旨及びその理由)を障害者に説明する。採用後において、措置に一定の時間がかかる場合はその旨を障害者に説明する。※障害者の意向確認が困難な場合、就労支援機関の職員等に障害者の補佐を求めても差し支えない。

合理的配慮の提供の義務は、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合を除く。事業主は、過重な負担に当たるか否かについて、次の要素を総合的に勘案しながら個別に判断する。

①事業活動への影響の程度
②実現困難度
③費用・負担の程度
④企業の規模
⑤企業の財務状況
⑥公的支援の有無

事業主は、過重な負担に当たると判断した場合は、その旨及びその理由を障害者に説明する。その場合でも、事業主は、障害者の意向を十分 に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮の措置を講ずる。

相談体制の整備

事業主は、障害者からの相談に適切に対応するために、必要な体制の整備や、相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、そ の旨を労働者に周知する。 事業主は、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止を定め、当該措置を講じていることについて、労働者に周知する。など

障害者に関する雇用管理上の留意点を押さえる

障害者が安定して働くためには、職場で共に働く職員が障害者雇用について理解し、必要な配慮をすることが重要です。また、人事担当者や受入部署の職員が障害者雇用に関して共通認識を持ち、組織全体で連携を図ることも大切でなことです。

障害者を雇用する上で留意する点は、以下のとおりです。

①障害者の力を活かせる組織・職場づくり
②障害者の募集・採用
③障害者の配置・職場適応・定着
④障害者の職業能力開発
⑤障害者の勤務条件等の整備
⑥障害者の健康と安全
⑦障害者のための職場環境
⑧障害者へのカウンセリング(相談)

これらは厚生労働省が掲げている留意点の一部です。詳しくは厚生労働省の資料をご覧ください。

障害者雇用納付金制度について理解しておく

「障害者雇用納付金制度」は、障害者の雇用促進と安定を図るために設けられた制度です。 障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引き上げることを目的に、雇用率未達成企業(常用労働者100人超)から納付金を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給している制度です。

まずは、法定雇用率が未達成の場合は障害者雇用納付金が徴収されることを認識しておきましょう。

障害者雇用促進法を知ろう

障害者の職業生活において自立するための措置を講じ、職業の安定を図ることを目的とする法律。障害者が職業生活を安定して営むために、職業リハビリテーションの推進、障害者に対する差別の禁止等、対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等、紛争の解決等の合理的配慮の提供義務について定めている。

参考:障害者雇用促進法の概要

まとめ

企業に対する障害者雇用の法定雇用率は今後2段階で引き上げられる見込みです。未達の場合には徴収や行政指導などのペナルティがあるため、対策を講じ、また支援制度を活用しながら達成を目指しましょう。

また、企業には多様な人材・働き方を実現する労働環境づくりが求められています。人事情報の管理はもちろん、勤怠、給与、労務管理等を手間なく行えるよう、人事部門のDX化を進めるといった環境整備もあわせて行っておくと便利です。

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