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「法定休日の特定」が義務化されると聞きましたが、「週1日休み」というあいまいな運用ではいけませんか?
大友 大 氏
社会保険労務士
大手資格予備校にて、制作課チーフとして社労士試験必修テキストの執筆、全国模試の監修を行う。
平成20年より都内の社会保険労務士事務所に勤務ののち、平成26年に開業。
給与計算業務を中心に行いつつ、労務にまつわるさまざまな問題に取り組む。
大友労務管理事務所 代表
Q.「法定休日の特定」が義務化されると聞きましたが、「週1日休み」というあいまいな運用ではいけませんか?
今後の労働基準法改正により、法定休日を特定することが義務化されるという話を聞きました。現在は就業規則に「休日は土曜日および日曜日とする」と定めているだけで、どちらが法定休日かを特定していません。
また、店舗などシフト制の部署では「週休2日」とだけ定めて運用しています。これまでの「週のいずれか1日が休みであればよい」というあいまいな運用のままでは、どのような問題があるのでしょうか。具体的な実務対応やシステムでの管理方法について教えてください。
A. 割増賃金の未払いリスクを防ぐため、就業規則等での明確な特定が求められます
労働基準法の改正論議において、法定休日の特定を義務化する方向で検討が進められています。法定休日と所定休日では、休日労働させた際の割増賃金率が異なります。両者を明確に区別していないと正確な給与計算が行えません。
今後の改正で法定休日の特定が義務化された場合、あいまいな運用のままでは違反とみなされます。就業規則で曜日を特定するか、シフト制の場合はシフト表で明示するなど、客観的に判別できるルールの策定とシステム対応が必要です。
なぜ法定休日の特定が義務化されるのか
現在の労働基準法(第35条)では、原則として「毎週少なくとも1回の休日」を与えることが義務づけられています。これが法定休日です。しかし、法律上は「何曜日を法定休日にするか」を特定することまでは義務づけられておらず、実務上の運用は企業にゆだねられてきました。
近年、週休2日制を採用する企業では、一般的に2日の休日のうち1日が「法定休日」、もう1日が「所定休日(会社が任意に定めた休日)」となります。これらを明確に区別しないケースも多く、休日労働が発生した際の割増賃金の計算において、労使間の解釈の相違やトラブルが生じやすい状況にあります。
こうした背景から、割増率(35%と25%)を正確に適用し、労働者の権利を適切に保護することを目的として、法定休日の特定を義務化する動きが加速しているのです。法改正が行われた際のリスクを回避するためにも、企業はあいまいな運用を改め、就業規則などで明確にすることが推奨されます。
法定休日と所定休日の違いと割増賃金への影響
法定休日と所定休日では、労働させた場合に支払うべき割増賃金率が法律で明確に異なります。
法定休日に労働させた場合の割増率は「35%以上」です。一方、所定休日に労働させた場合は、その労働によって週の法定労働時間(原則40時間)を超えた部分について通常の残業代と同じ25%(月60時間を超えた部分については50%)の時間外割増賃金が発生します。
特に注意が必要なのは、土日休みの企業で両日とも出勤し、かつ法定休日が特定されていないケースです。行政解釈では、特定がない場合は「暦週(原則として日〜土)において後順に位置する休日」を法定休日として扱うとしています。
例えば、週の起算日が日曜日の場合、後順となる「土曜日」が法定休日となります。週の起算日を月曜日と定めている場合は、後順の「日曜日」が法定休日となります。
就業規則の改定と曜日固定が難しいシフト制での運用方法
法定休日を特定するには、まず就業規則の改定が必要です。「休日は土曜日、日曜日とし、法定休日は日曜日とする」といったように、明確な条文を追加しましょう。
問題となるのは、月ごとに休みが変動するシフト制の職場です。曜日を固定できない場合は、「シフト表に(法)と記載した日を法定休日とする」といった運用ルールを就業規則に定めます。
シフトの作成時には、週に1回または4週に4回の法定休日が確保されているかを確認しながら組みます。事後的に決めるのではなく、事前にシフト表で明示しておくことが重要です。
未払い残業代リスクを回避するための給与計算と勤怠管理
法定休日が特定されていない場合、給与計算の担当者が毎月の出勤簿を確認し、暦週の「後順」を都度判断して割増率を決定しなければなりません。これはヒューマンエラーの温床となります。
35%以上の割増賃金の支払いが必要な法定休日労働を、誤って25%の割増率で計算してしまうと10%、就業規則の規定によってはそれ以上の未払い賃金が発生します。現在、未払い賃金の請求権は「当分の間3年」とされていますが、本来の規定である「5年」への完全移行も議論されており、遡及支払いのリスクは年々高まっています。
こうしたリスクを回避するには、法定休日労働と所定休日労働の労働時間をシステム上で自動判別し、正しい割増率を乗じて集計できる仕組みの構築が重要でしょう。
残業管理については、以下の記事で詳しく解説しています。
勤怠管理システムでの自動判別とアラート設定の重要性
複雑な休日管理を正確に行うには、勤怠管理システムによる自動化が最も効果的です。システム上で個人のカレンダーごとに法定休日と所定休日を事前に設定します。
具体的には、従業員が休日に打刻した際、その日が「法定休日」であれば自動的に35%割増、「所定休日」であれば25%割増の項目として集計されるようにします。これにより、集計ミスを防止できます。
また、シフト作成時に法定休日が不足している場合や、法定休日に出勤申請が出された場合に、システムから警告(アラート)を出す機能も有効です。管理職がリアルタイムで状況を把握し、事前の調整が可能になります。
まとめ:法定休日の特定は労務管理の基本です
「法定休日の特定の義務化」は、これまでのあいまいな労務管理を見直す絶好の機会です。まずは就業規則で休日を明確に定義し、それに基づいた適正な給与計算体制を確立することが重要です。
特に多様な働き方を導入している中堅・大手企業では、複雑化する休日管理を目視や手作業で行うには限界があります。シフト制やフレックスタイム制といった柔軟な勤務形態にも対応できる、柔軟なシステム基盤の構築が急がれます。
今後の法改正の動向を注視しつつ、今のうちから自社の休日規定とシステムの設定を点検し、労務リスクのない健全な労働環境を整えましょう。
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