人事・労務なんでもQ&A

体調不良で欠勤が多い従業員がおり業務に支障が出ています。

まずは従業員と話し合い、欠勤の理由についてヒアリングしながら改善指導や解雇を含めた対応を決めましょう。体調不良の背景にはさまざまな要因があるため、威圧的にならず、丁寧に事情を聞くことで適切な解決策を見つけられます。
公開日時:2022.09.16 / 更新日時:2025.12.01
詳しく解説

Q. 体調不良で欠勤が多い従業員がおり業務に支障が出ています。トラブルにならない対応方法を知りたいです。

100人規模の中小企業の人事です。体調不良で週に何度も欠勤する従業員がおり、所属部署の業務にも支障が出ています。 このまま欠勤が続くようなら解雇を視野に入れて、従業員の処遇を決める必要があると考えています。このような場合、トラブルに発展させずに対応を進めるにはどうすればよいでしょうか。

A. まずは欠勤している従業員と話し合いの場を持つところから始めましょう。欠勤の理由についてヒアリングしながら、その内容に基づいた改善指導や解雇を含めた対応を決めていきます。

トラブルにならないよう対応するには、威圧的にならない態度を心がけつつ、対象となる従業員と、話し合いの場をつくるところから始めましょう。その状態で、欠勤になった事情を本人からヒアリングします。

考えられる事情としては、体調不良や事故、忌引き、交通機関の乱れなどが一般的な事情です。しかし、精神的な事情で体調不良になっている場合には、その原因まで確認しましょう。例えば、プライベートの悩み、長時間労働やハラスメントなど仕事に関する悩みなどが健康問題に関わっているケースも考えられます。

ヒアリング内容にもとづき、従業員の努力不足などが背景にある場合には、従業員の改善指導を行い、健康問題が深刻な場合は病院への受診を勧めましょう。

これらの取り組みを継続的に実施しても改善が見られず、従業員の責任が大きいと考えられる場合には、解雇を視野に入れて対応をしていきます。解雇の条件について詳しくは、人事・労務の注目用語「整理解雇」をご覧ください。

従業員と話し合うこと

まずは対象となる従業員と冷静に話し合いをする機会を設けましょう。威圧的に従業員を非難すると、ハラスメント問題に発展する可能性があるため、注意が必要です。話し合いのときには、本人が考える体調が悪くなる理由や、抱えている悩みがあるかどうかについて確認します。

考えられる理由としては、長時間労働やパワハラ、仕事がうまくいかないなどの悩み、家庭の悩み、メンタルの不調などが考えられます。これらのヒアリングを行う際には、本人に責任があるか、会社で改善できる部分はないか考慮しながら話を聞きましょう。

本人に責任がある場合であれば、注意や指導をし、会社側で対応できる部分があれば、対応策を実施します。療養の必要があると判断した場合には、病院への受診を勧めてください。

面談時の記録と管理

面談を行う際は、以下の点に注意して適切な記録を残しましょう。

  • 面談記録の作成: 日時、場所、出席者、話し合った内容、従業員の発言内容を詳細に記録
  • 第三者の同席: 人事担当者や直属の上司など、適切な第三者を同席させ、客観性を保つ
  • プライバシー保護: 個人的な健康情報や家庭事情については、必要最小限の人員のみで共有
  • 記録の保管: 労働関係書類として適切に保管し、不当解雇等のトラブル時の証拠とする

メンタルヘルス不調への具体的対応

体調不良の背景にメンタルヘルス不調が疑われる場合は、より専門的なアプローチが必要です。

精神的疾患が疑われる場合の対処法

継続的な気分の落ち込み、意欲低下、集中力の欠如などうつ病や適応障害の兆候が見られる場合は、専門的な対応をとる必要があります。精神科や心療内科への受診を勧める際は、強制的にならず本人の意思を十分に尊重することが重要です。医療機関の情報提供を行い、必要に応じて受診に同行するなどの支援も検討しましょう。

産業医との連携方法

常時50人以上の労働者を使用する事業場では産業医の選任が法的義務となっています。産業医による健康相談や職場巡視を積極的に活用し、専門的な医学的判断を仰ぐことで適切な対応方針を決定できます。産業医の意見書に基づいて、就業制限や配置転換などの具体的な就業上の措置を検討しましょう。

ストレスチェック制度の活用

労働者50人以上の事業場では年1回のストレスチェック実施が義務づけられています。この制度を効果的に活用することで、メンタルヘルス不調の早期発見・予防が可能です。高ストレス者と判定された従業員には医師による面接指導を実施し、集団分析の結果をもとに職場環境の改善に取り組んで、根本的な問題解決を図ります。

休職制度の運用と復職判断

継続的な療養が必要と判断される場合は、休職制度の活用を検討します。

休職制度の適切な運用方法

休職制度を適切に運用するには、まず就業規則で定めた期間内での休職を実施し、休職中の給与支払いの有無や社会保険料の取り扱いを事前に明確化しておくことが重要です。休職期間中も従業員の状況を適切に把握するため、プライバシーに配慮しながら定期的に連絡を取り、必要に応じて産業医や医療機関との連携も図りましょう。

復職可能性の判断基準

復職の可否を判断する際は、復職可能であることを示す医師の診断書の提出を必須とします。単に体調が改善しただけでなく、元の業務を遂行できる健康状態まで回復しているかを慎重に確認しなければいけません。また、同様の症状の再発を防ぐための具体的な対策が講じられているか、本人や職場環境の改善状況も含めて総合的に判断する必要があります。

段階的復職(リハビリ出勤)の導入

復職時には一気に通常業務に戻すのではなく、最初は短時間勤務から始めて段階的に労働時間を延長していく方法が効果的です。業務内容についても負荷の軽い業務から徐々に通常業務に戻していきます。復職後も一定期間は健康状態を注意深く観察し、必要に応じて再度就業制限を行うといった柔軟な対応が重要です。

体調不良での欠勤を理由に解雇はできる?

体調不良の改善が見られない場合には、解雇の選択肢もありえます。しかし、ケースによって、解雇にできるケースとできないケースがあるため、その見極めをしてから対応を決めることが大切です。

解雇が可能なケース

労働契約法第16条(解雇権濫用の禁止)

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

この条文により解雇の濫用は禁止されており、合理的な理由がなければ従業員の解雇はできません。合理的な理由があると認められるのは、以下の手続きを踏んだ場合です。

①いきなり解雇をせず、欠勤に対して注意や指導をする

②本人と話し合い、会社としてできる改善案を示す

③効果がない場合には、「戒告」や「けん責」など軽い懲戒処分を決定する

④指導や懲戒が複数回あっても、改善が見られず、今後の改善見込みも見られないと判断される

ここまでの手順を踏んで、初めて体調不良を理由にした欠勤での解雇が可能になります。

なお、病気であっても、業務遂行が困難な場合には、解雇が有効となることもあります。その場合、まずは休職制度の利用ができないか検討しましょう。休職制度がない場合で、一定期間以上欠勤が続くと解雇できる場合があります。しかし、このようなケースに該当する場合でも、即日解雇はできず、一定期間空けなければいけません。

解雇手続きに関する法的要件

解雇を行う場合は、以下の法的要件を満たす必要があります。

  • 解雇予告: 30日前の解雇予告、または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い
  • 解雇予告除外認定: 解雇が労働者の責めに帰すべき事由によるときは、労働基準監督署の認定を受けた場合に解雇予告の要件を満たさずに解雇できる
  • 解雇理由証明書: 労働者が請求した場合は、遅滞なく解雇理由を記載した証明書を交付

解雇ができないケース

従業員の解雇ができないケースとしては、以下が考えられます。

  • 欠勤している従業員の体調不良の原因に病気がある場合
  • 子どもや高齢の家族の病気などの対応の場合
  • 体調不良の原因が妊娠・出産・生理の場合
  • 「解雇が可能なケース」の手順を踏んでいない場合
  • 従業員の体調不良について、企業側に一定の責任がある場合

これらの場合には、不当解雇とみなされるため解雇できず、従業員に命令した場合は無効となります。仮に体調不良による欠勤が続いた場合でも、後の業務に支障がないと判断され、勤怠状況が改善されていれば、「体調不良のため解雇」と言われても無効にできます。

病気の理由が労災にある場合には、その病気を理由に解雇はできません。なお、違法な長時間労働やサービス残業、パワハラなどの原因で病気になったと従業員が主張する場合も、解雇できません。ただし、その場合には、違法行為であることを従業員側が証明する必要があります。

一方、労災であっても、療養開始後3年経過し、病気の改善が見られない場合には、会社側は平均賃金の1200日分の打切補償を行うことで、解雇が可能になります。

労働基準法第19条による解雇制限

労働基準法第19条では、業務上の負傷や疾病により療養中の期間とその後30日間、および産前産後休業期間とその後30日間の解雇を厳格に禁止しています。ただし、打切補償を支払った場合や天災事変等のやむを得ない事由により事業継続が不可能となった場合には、この制限から除外される例外規定が設けられています。この条項に違反した解雇は無効となるため、解雇を検討する際は必ず確認が必要です。

労働基準監督署への相談・報告

適切な対応を行うため、必要に応じて労働基準監督署への相談を検討しましょう。

相談すべきケース

労働基準監督署への相談は、業務が原因で従業員が健康を害した可能性がある労災の場合や、解雇の適法性について法的判断に迷う場合には検討するべきでしょう。複数の要因が複雑に絡み合い、適切な対応方針の決定が困難な状況でも、専門的な見解を求めることで適切な解決策を見出すことができます。

労災認定の可能性がある場合の対応

労働者が労災申請を行う場合には、企業として適切に協力することが法的義務となります。労働時間記録、具体的な業務内容、職場環境の状況などに関する証拠資料を適切に保管し、必要に応じて提出できるよう準備しておくことが重要です。労災認定がなされた場合は、同様の事故や疾病の再発防止に向けた具体的な対策を速やかに講じ、職場環境の改善に取り組む必要があります。

欠勤が多い従業員に対して企業がとるべき対応

欠勤が多い従業員に対しては、注意や指導の前に以下3つのことを日頃から実施し、対策しておきましょう。従業員の欠勤が目立って多い場合にスムーズに対応できます。

①勤怠記録を確認する

欠勤が多い従業員はもちろん、従業員それぞれの勤怠状況を確認し、遅刻などの問題がある従業員には指導を行いましょう。

②欠勤の理由を把握しておく

欠勤があったときには、欠勤の理由を把握しておきましょう。家庭の事情や風邪、業務過多による体調不良であっても、理由を従業員から提出させ、理由のない欠勤と区別しておきます。理由がない欠勤の場合、就業規則で規定しておけば、懲戒にすることも可能です。

欠勤の理由が分かっていて、会社側で解決できる内容の場合には、原因にもアプローチし、改善を試みましょう。

③就業規則に欠勤についてのルールを明記する

就業規則に欠勤についてのルールを明記しておけば、欠勤があった場合に懲戒処分を速やかに行えます。

例えば「理由なく〇回以上欠勤や遅刻を繰り返した場合に戒告とする」などのように定めておき、従業員にも周知しておけば、理由がない欠勤があった場合に、懲戒にすることができます。

安全配慮義務と企業責任

企業は労働契約に付随して、従業員の生命・身体の安全を確保する安全配慮義務を負っています。定期健康診断の結果を適切に活用し、健康上の問題が発見された場合は就業上の必要な措置を講じることが求められます。また、長時間労働やハラスメントなどのストレス要因を排除し、従業員が心身ともに健康で働きやすい職場環境を継続的に整備することが企業の重要な責務です。

早期発見・早期対応のためのチェックリスト

以下のような兆候が見られた場合は、早期に対応を検討しましょう。

  • 月3回以上の体調不良による欠勤
  • 遅刻・早退の頻度が著しく増加
  • 業務効率の明らかな低下
  • 表情や態度の著しい変化
  • 同僚とのコミュニケーション減少

労務管理上の注意点

欠勤が多い従業員への対応では、以下の労務管理上の注意点を遵守する必要があります。

個人情報の取り扱い

従業員の健康に関する情報は、特に配慮を要する個人情報として厳重に管理し、健康管理と就業上の配慮という本来の目的のみに利用することが法的に求められています。これらの情報は法令で定められた期間内で適切に保管し、保管期間が経過した後は確実に廃棄する体制を整備しておく必要があります。

他の従業員への情報共有の範囲

健康情報の共有は業務上必要な範囲内に厳格に限定し、情報を知り得た従業員には守秘義務を徹底させることが重要です。本人の明確な同意を得ることなく、詳細な健康情報や家庭事情を他の従業員に共有することは、プライバシーの侵害にあたる可能性があるため避けなければなりません。

ハラスメント防止の具体的な方法

面談や指導の際は威圧的・高圧的な態度を避け、一対一ではなく人事担当者や上司など複数の担当者で対応することでハラスメントの発生を防止できます。面談内容を詳細に記録し保管することで、適切な対応が行われたことを客観的に証明できる体制を整えておくことも重要な予防策となります。

まとめ

体調不良で欠勤を繰り返す従業員がいる場合には、威圧的にならないようにしながら、欠勤の理由を確認することからはじめましょう。丁寧に話を聞く姿勢を示すことで、ハラスメント問題への発展をあらかじめ防ぐことができます。

欠勤理由を聞いたうえで、内容に応じて、従業員への改善指導や会社側での対応の見直し、健康状態に問題がある場合には、受診を勧めるなどの対応を進める必要があります。

病気が理由ではないにもかかわらず、欠勤を繰り返し、改善の見込みがない場合には、懲戒解雇も選択肢となります。しかし、合理的な理由がない場合には、不当解雇となり、無効になってしまうため、最後の手段として検討しましょう。

日頃から勤怠管理体制を整え、従業員の勤怠状況や欠勤の理由を確認し、就業規則に欠勤についてのルールを定めておくと、欠勤が多い従業員に対してスムーズな対応が可能です。欠勤回数や欠勤が増えた時期をすぐに把握でき、遅刻や欠勤の理由の申告も可能な、勤怠管理システムを導入することで、このような体制を無理なく整えられます。

関連記事

アマノの勤怠管理システムで適切な労務管理を実現

体調不良による欠勤への適切な対応には、正確な勤怠記録の把握と継続的な管理が不可欠です。アマノでは、企業規模や業務形態に応じた多様な勤怠管理システムをご提供しています。

勤怠管理システム導入のメリット

✓ リアルタイムな勤怠状況の把握により、欠勤パターンの早期発見が可能

✓ 欠勤理由の電子申請・承認により、適切な記録管理を実現

✓ 労働時間の正確な把握で、安全配慮義務の履行をサポート

✓ 法改正対応やアラート機能で、コンプライアンス強化

GUIDE

勤怠管理のパイオニア「AMANO」のノウハウをぎゅっと凝縮してお届けします!

01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

勤怠管理システム
導入のポイント

全てを1つの資料にまとめた総集編「勤怠管理の選び方完全ガイド」無料配布中!

「高いシステムと安いシステムでは何が違うのか」を徹底解説