勤怠管理ガイド
勤怠管理システム導入に利用できる補助金・助成金とは?支援制度を徹底解説
公開日時:2022.09.22 / 更新日時:2024.06.13
勤怠管理システムの導入で申請できる補助金・助成金
勤怠管理システムの導入にあたっては、「IT導入補助金」「働き方改革推進支援助成金」というふたつの主要な支援があります。今回はこのふたつの制度について、補助・助成の内容、金額の目安、利用条件などを解説します。
なお、中小企業等が事業再構築に取り組む一貫でシステム導入やシステム構築を行う場合、その費用の一部を補助する「事業再構築補助金」も活用できる場合があります。「事業再構築補助金」については、下記の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、制度内であらかじめ認定を受けたITツールを導入する場合、費用を一定の条件のもとで補助する制度です。
補助金対象者
IT導入補助金は、個人事業を含む中小企業・小規模事業者を主な対象としています。補助額や補助対象によっていくつかの種類(枠・類型)に分かれています。
勤怠管理システムの申請は「通常枠」で行い、そこからさらに「A類型」と「B類型」に分かれます。なお、この後「プロセス」「賃上げ要件」という用語が出てきますので、ここで簡単に説明しておきます。
プロセス
「プロセス」とは、申請区分が通常枠の大分類I「ソフトウェア」に設定されている業務工程や業務種別のことです。ソフトウェアについては、業務工程や種別により6つの業務プロセスと1つの汎用プロセスに分類されています。詳細は「IT導入補助金2023」のWebサイトでご確認ください。
賃上げ目標
賃上げ目標とは、企業が従業員の給与総額と最低賃金基準を向上させることを目指すものです。事業計画終了時に、給与水準を年率1.5%以上の増加を目標としています。賃上げ目標設定は補助金交付にあたって、加点もしくは必須項目となります。達成出来なければ補助金の返還を求められるケースもあるので注意が必要です。
種別 | Pコード | プロセス名 |
業務プロセス(共通) | 共P-01 | 顧客対応・販売支援 |
共P-02 | 決済・債権債務・資金回収管理 | |
共P-03 | 供給・在庫・物流 | |
共P-04 | 会計・財務・経営 | |
共P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | |
業務プロセス(業種特化型) | 各業種P-06 | 業種固有プロセス |
汎用プロセス | 汎P-07 | 汎用・自動化・分析ツール |
通常枠(A類型)の補助金額および条件
- 補助金の上限・下限額・・・5万円以上150万円未満
- プロセス数・・・6つの業務プロセスのうち1つ以上
- 賃上げ目標・・・加点項目
通常枠(B類型)の補助金額および条件
- 補助金の上限・下限額・・・150万円以上450万円以下
- プロセス数・・・6つの業務プロセスおよび汎用プロセスのうち4つ以上
- 賃上げ目標・・・必須要件
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金には、5つのコースが存在します。そのうち、勤怠管理システムを導入しようとする企業が利用できるのは次の3つです。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 適用猶予業種等対応コース
各コースの違いは「助成内容」や「成果目標」などですが、まずは、各コース共通の条件を見てみましょう。
【各コース共通】助成金対象者
中小企業の事業主が助成対象です。詳細な定義は、資本金または出資総額や常時雇用の労働者数により、以下の4つに分類されます。IT導入補助金とは要件が異なりますのでご注意ください。
業種 | 資本金または出資総額 | 常時雇用従業員数 |
小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
【各コース共通】支給対象の取組み要件
それぞれのコースにある成果目標の設定・達成を目指すため、下記の9項目のうち、1つ以上の実施が必要になります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修、周知・啓発
- 外部専門家(社会保険労務士・中小企業診断士など)によるコンサルティング
- 就労規則・労使協定等の作成・変更
- 人材確保に向けた取組
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理機器の導入・更新
- デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
- 労働能率の増進に資する設備・機械等の導入・更新
成果目標および助成金額
成果目標や助成金支給額は各コースで異なります。各コースの概要は以下のとおりです。
1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
生産性の向上と時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業の事業主が対象です。
- 成果目標の設定
次の成果目標から1つ以上選択し、目標達成を目指して実施します。
- すべての事業場において、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下または月60時間を超え80時間以下に設定する
- すべての事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
- すべての事業場において、時間単位の年次有給休暇を新たに規定し、かつ特別有給休暇の規定をひとつ以上新たに導入する
- 支給額
目標の達成状況に応じ、最大でかかった費用の3/4が支給されます。(別途、上限設定あり)
2. 勤務間インターバル導入コース
勤務終了後、次の勤務までに一定の休息を設ける、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業の事業主が対象です。
- 成果目標の設定
次の成果目標の達成を目指して実施します。
- 勤務時間のインターバルを「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の間隔を空けるよう労働協約や就業規則で定め、事業計画で指定した全事業場において導入および定着を図ること。
- 支給額
成果目標の達成状況に応じ、最大でかかった費用の3/4が支給されます。(別途、上限設定あり)
3. 労働時間適正管理推進コース
生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理に向けた環境整備に取り組む中小企業の事業主が対象です。
- 成果目標の設定
次の成果目標1~3までのすべての目標達成を目指し実施します。
- 統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用する
- すべての事業場において、労務管理書類を5年間保存することを就労規則等に規定する
- すべての事業場において、労働者および労働管理担当者へ向けた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」について研修を実施する
- 支給額
成果目標の達成状況に応じ、最大でかかった費用の3/4(上限100万円)が支給されます。
各コースの詳細については、厚生労働省のホームページからご確認ください。
4. 適用猶予業種等対応コース
2024年4月1日から、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業といった、適用猶予業種等へ時間外労働の上限規制が適用されます。生産性を向上させ、時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入や医師の働き方改革推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主が対象です。
- 成果目標の設定
以下の「成果目標」1~4のうち1つ以上選択し、その達成を目指して実施します。各業種等ごとに選択できる目標が異なります。
- 時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行う(建設業、運送業、砂糖製造業が選択可能) 時間外・休日労働時間数を縮減し、月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行う(病院等が選択可能)
- 4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させる(建設業が選択可能)
- 9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入する(運送業、病院等が選択可能)
- 医師の働き方改革推進に関する取組として(1)労務管理体制の構築等(2)医師の労働時間の実態把握と管理を全て実施すること(病院等が選択可能)
- 支給額
成果目標の達成状況に応じ、最大でかかった経費の3/4(取り組みによっては4/5)が支給されます。(別途、上限設定あり)
また、今回紹介しませんでしたが、中小企業庁で採択された「中小企業等事業再構築促進事業」で扱う補助金「事業再構築補助金」も利用できます。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
補助金・助成金を利用する際の注意点
補助金や助成金を受け取るためには、成果目標の達成やさまざまな条件を満たさなければなりません。補助金や助成金を利用する際に、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
- 成果報告が必須である
- 交付の申請期限が限られている
- 作成書類が煩雑でわかりにくい
- 審査を通過しなければならない
- 支給までに時間がかかる
手続きや申請書類が煩雑で、そのうえ支給までに時間がかかるという手間の多い作業であることは否めません。しかし、巨額の費用を投じるにあたっては、補助金や助成金という制度は非常にありがたいものです。社内に専門のチームを設置するなどして、期間に余裕をもって取り組むことをおすすめします。
まとめ
補助金や助成金を受け取って勤怠管理システムを導入する際には、ただ単にシステムを導入すればよいのではありません。受給するための要件達成や成果報告が求められます。まずは、自社で抱えている勤怠管理の課題を明確にし、目的に合わせて適切なシステムを選定しましょう。
勤怠管理システムは、これからの企業運営において重要なツールです。補助金や助成金を上手に活用して、勤怠管理システムの導入をぜひ実現させてください。