人事・労務なんでもQ&A
2026年4月から始まる子ども・子育て支援金とはどういうものですか? また、企業の負担はどうなりますか?
井上 敬裕 氏
中小企業診断士・社会保険労務士
青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、給与計算を中心に労務関連業務を行っている。
社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/
Q. 2026年4月から始まる子ども・子育て支援金とはどういうものですか? また、企業の負担はどうなりますか?
2026年4月から新しく始まる子ども・子育て支援金制度について、人事担当者として何を準備すればよいのでしょうか。企業の負担額はどの程度になるのか、給与計算や社会保険事務にどのような影響があるのか、従業員にはどう説明すればよいのか、具体的に知りたいです。
A. 医療保険料に上乗せされる子ども・子育て支援金が始まり、企業は健康保険料と同様に労使折半で負担することになります
2026年4月から、子ども・子育て支援金制度が新たにスタートします。子ども・子育て支援金とは、少子化対策の財源を確保するため、医療保険料に上乗せするかたちで徴収される新しい社会保険料です。
企業にとって重要なのは、健康保険料と同様に労使折半で負担する必要があるという点です。2026年度は支援金率が約0.23%からスタートし、2028年度にかけて段階的に0.4%程度まで引き上げられる予定となっています。例えば、従業員数100人(平均標準報酬月額30万円)の企業では2026年度の年間負担額は約42万円ですが、2028年度には約72万円まで増加する見込みです。
100人の企業の試算例
- 2026年度: 企業負担345円/人×100人×12ヶ月=約42万円
- 2028年度: 企業負担600円/人×100人×12ヶ月=約72万円
給与計算システムへの新たな控除項目の追加、社会保険料納付事務の変更、従業員への説明など、人事・労務部門では複数の実務対応が必要です。
子ども・子育て支援金制度の基本的な仕組み
子ども・子育て支援金は、医療保険制度を通じて徴収される新たな拠出金です。健康保険や国民健康保険などの医療保険料に上乗せされるかたちで、加入者から徴収されます。
この制度の目的は、児童手当の拡充や保育サービスの充実など、子育て世帯への支援強化にあります。少子化が進むなか、安定的な財源を確保するための恒久的な仕組みとして設計されました。
2026年度は比較的低い料率で開始しますが、2028年度にかけて段階的に引き上げられる予定です。
支援金の対象となるのは、医療保険の被保険者・加入者全員です。年齢や扶養家族の有無にかかわらず原則負担となりますが、国民健康保険では18歳未満の子どもに係る支援金の均等割額を軽減するなどの配慮があります。
企業が負担する支援金額の計算方法
企業が負担する支援金額は、標準報酬月額に支援金率を乗じて算出されます。この計算方法は、健康保険料や厚生年金保険料と同じ仕組みです。
2026年度の支援金率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)で0.23%程度からスタートする見込みです。この料率は労使折半となるため、企業負担分は約0.12%となります。
例えば、標準報酬月額が30万円の従業員の場合、企業負担は月額約345円です。標準報酬月額50万円なら月額約575円となります。
2028年度には料率が0.4%程度まで段階的に引き上げられる予定です。最終的には、標準報酬月額30万円の従業員で企業負担が月額約600円、50万円なら約1,000円となる見込みです。
加入する健康保険組合によって料率は若干異なる可能性があります。各組合から具体的な料率が通知されるため、定期的に確認することが重要です。
企業の実務対応で変更が必要な3つのポイント
子ども・子育て支援金の導入により、人事・労務部門では具体的にどのような業務変更が発生するのでしょうか。制度開始までの限られた期間で確実に対応するため、優先度の高い3つの実務ポイントを解説します。それぞれの対応期限や関係部門との連携方法も含めて確認しましょう。
給与計算システムの改修と設定変更
2026年4月の給与計算から新たな控除項目が追加されます。給与計算システムに「子ども・子育て支援金」の項目を設定し、正確に計算できる体制を整える必要があります。
多くの給与計算ソフトは自動アップデートで対応すると予想されますが、カスタマイズされたシステムを使用している場合は個別の対応が必要です。
また、料率は年度ごとに変更される可能性があるため、柔軟に対応できるシステム設定が求められます。特に、健康保険組合ごとに料率が異なる場合は、複数の料率を管理できる仕組みが必要です。
社会保険料の納付事務の拡大
毎月の社会保険料納付時に支援金も含めて納付することになります。納付額の計算や振込手続きの確認作業が増加するため、事務負担が増えます。
納付期限は従来の社会保険料と同じですが、支援金が加わることで総額が増加します。資金繰りの計画にも影響するため、財務部門との連携が重要です。
日本年金機構や健康保険組合から送付される納入告知書の様式も変更されます。新様式での確認ミスを防ぐため、担当者への事前教育が必要です。
従業員への説明とコミュニケーション
給与明細に新たな控除項目が表示されるため、従業員からの問い合わせが増えることが予想されます。事前に制度の趣旨や負担額をわかりやすく説明する資料を準備しましょう。
特に、「なぜ新たな負担が発生するのか」「自分の負担額はいくらか」といった質問に的確に答えられる体制が必要です。
社内イントラネットやメールでの周知に加え、Q&A形式の資料を用意すると効果的です。人事部門の負担軽減にもつながります。
2026年度と2028年度の企業負担の具体例
段階的な引き上げによって、企業の負担額がどう変化するかを具体的に見てみましょう。
企業負担の具体例
| 標準報酬月額 | 2026年度月額 | 2026年度年額 | 2028年度月額 | 2028年度年額 |
| 20万円 | 約240円 | 約2,880円 | 約400円 | 約4,800円 |
| 30万円 | 約345円 | 約4,140円 | 約600円 | 約7,200円 |
| 50万円 | 約575円 | 約6,900円 | 約1,000円 | 約12,000円 |
従業員数100人の企業(平均標準報酬月額30万円)の場合、年間の企業負担は2026年度で約41万4千円、2028年度で約72万円となる見込みです。2026年度から2028年度にかけて、企業負担は約1.7倍に増加します。中長期的な人件費計画に織り込む必要があります。
パートタイム労働者や派遣社員への影響
社会保険の適用拡大により、短時間労働者の多くが健康保険の被保険者となっています。これらの従業員にも支援金の負担が発生します。
週20時間以上勤務し、月額賃金が8.8万円以上の従業員は、社会保険の加入対象です。支援金も同様に労使折半で負担することになります。
パートタイム労働者を多く雇用する企業では、従業員1人当たりの負担額は少なくても、総額では相応の規模になります。
派遣社員については、派遣元企業が社会保険料を負担します。派遣先企業には直接的な負担は発生しませんが、派遣料金に影響する可能性が考えられます。
人材派遣会社からの料金改定の提案があった場合、支援金の影響も含めて検討する必要があるでしょう。
勤怠管理システムで対応すべき実務ポイント
正確な支援金計算のためには、標準報酬月額の基礎となる労働時間と賃金を正確に把握することが不可欠です。
勤怠管理システムと給与計算システムの連携がスムーズであれば、計算ミスのリスクを大幅に減らせます。特に、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している企業では、正確な労働時間管理が重要です。
月途中での入退社や休職・復職があった場合の日割り計算も必要です。勤怠データが正確でなければ、適切な保険料計算ができません。
社会保険料の算定基礎となる報酬には、残業手当や各種手当も含まれます。勤怠管理システムで各種手当の支給実績を正確に記録できる体制が求められます。
多様な雇用形態や勤務体系に対応した勤怠管理システムを導入することで、法改正への対応力が高まります。システム選定時には、法改正への柔軟な対応力も評価基準に加える必要があるでしょう。
今後予想される法改正への備え方
子ども・子育て支援金は、今後も制度の見直しや料率の変更が予想されます。社会情勢や政策の変化に応じて、柔軟に対応できる体制を整えておくことが重要です。
人事・労務担当者は、厚生労働省や所属する健康保険組合からの通知を定期的に確認しましょう。最新情報を速やかに把握できる仕組みが必要です。
また、支援金以外にも育児休業制度の拡充や介護離職防止策など、労働関連法の改正が続いています。個別の対応に追われるのではなく、包括的な労務管理体制の構築が求められます。
法改正への対応力を高めるには、システムの柔軟性と担当者のスキルアップの両面からアプローチすることが効果的です。
まとめ:企業が今から準備すべきこと
2026年4月からの子ども・子育て支援金制度の導入に向けて、企業が今から準備すべきポイントを整理しましょう。
給与計算システムの対応確認は最優先事項です。システムベンダーに自動対応の有無を確認し、必要に応じて設定変更やカスタマイズを依頼してください。
従業員への事前周知も重要です。2026年3月までに、制度の概要と負担額の目安を説明する資料を配布しましょう。
中長期的な人件費計画の見直しも必要です。2028年度までの段階的引き上げを織り込んだ予算計画を立ててください。
勤怠管理と給与計算の精度向上は、正確な保険料計算の基盤です。多様な雇用形態に対応できるシステム環境を整えることで、法改正への対応力が高まります。
法改正に強い勤怠管理システムで労務リスクを軽減
子ども・子育て支援金のような法改正への対応は、適切なシステム環境があれば大幅に負担を軽減できます。
アマノの勤怠管理システムは、法改正に自動対応し、多様な雇用形態や勤務体系に柔軟に対応します。正確な労働時間管理と給与計算システムとのスムーズな連携により、労務リスクを最小限に抑えられます。
法改正への対応力を高め、人事部門の業務効率を向上させたい企業の皆様は、アマノの勤怠管理システムラインアップをご確認ください。

