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「労働基準法、40年ぶりの大改正」人事担当者が備えるべき主要ポイント9点

公開日時:2026.04.28

労働基準法の改正に向けた議論が進んでいます。勤務間インターバルの義務化や労働時間情報の開示、管理監督者への健康管理の適用強化など、複数の重要テーマが検討・提言されており、中堅・大手企業の人事担当者への影響は広範に及ぶ見通しです。有価証券報告書における人的資本開示との連動や多様な雇用形態を横断した勤怠管理基盤の整備など、対応の複雑さは増す一方です。
本記事では、現時点で論点となっている主要な改正テーマを人事担当者への影響度が高い順に整理し、今から着手すべき実務対応を解説します。
※本記事の内容は2026年時点での検討案をもとにしています。最終的な法令内容は官報や厚生労働省の公示をご確認ください。

なぜ今、労働基準法の改正が求められているのか

現行の労働基準法は、多様化する働き方に対応しきれていません。テレワークの定着、副業・兼業の拡大、フリーランス就労の増加。雇用の形は急速に変容しているのに、法律の枠組みは追いついていない状況が続いてきました。
厚生労働省の労働政策審議会では、こうした実態を踏まえた抜本的な見直しが進んでいます。2027年の改正施行に向けて、9点の主要テーマが現在議論されています。
企業の人事部門にとって、この改正は「対応すべき義務」であるとともに、職場環境の整備や採用競争力の向上につながる機会でもあります。受け身ではなく、戦略的にとらえることが求められます。

2027年労働基準法改正の「主要ポイント9点」とは何か

2027年の改正に向けて、労働時間の透明化・健康確保・多様な働き方の促進にかかわる9点の改正テーマが議論されています。人事担当者への影響度が高い順に、それぞれの概要を整理します。

労働基準法改正「主要ポイント9点」

本図は、厚生労働省の研究会報告書や労働政策審議会で示されている論点等をもとに、今後想定される労働基準法等の見直し項目を整理・分類したものです。現時点での情報に基づく見通し・解釈であり、最終的な法令内容を保証するものではありません。

1. 労働時間情報の開示義務化

採用時などに、実際の残業時間や休日取得状況といった労働時間情報の開示を企業に求める方向で検討されています。有価証券報告書への記載が義務化されている「人的資本開示」とも密接に関連する重要テーマのひとつです。
「求人票の労働条件と実態が異なる」という問題は長年の課題でした。近年は、上場企業を中心に、有価証券報告書での「人的資本開示」が義務化・拡充され、その重要性に対する社会的要請が急速に高まっています。改正案は、実績ベースの労働時間情報の開示を求める方向で検討されています。その場合、労働時間管理の精度が低い企業では、開示内容が自社リスクとして顕在化する可能性があります。
採用競争力の観点では、信頼性の高い労働時間データを前提に、積極的な情報開示ができる体制を整えた企業が、求職者から評価を得られ優位に立てるでしょう。そのため、正確な勤怠データを集計できる仕組みと、外部への適切な開示を支える基盤を早期に整備しておくことが重要です。

2. 勤務間インターバル制度の義務化とは

終業から翌日の始業まで原則11時間程度の休息を確保することについて、現在の努力義務から法的義務への格上げが検討されている論点です。
EU諸国では労働時間指令に基づいてすでに法定化されており、日本でも2019年から「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」で事業主の努力義務として位置づけられています。しかし、導入企業は一部にとどまっており、十分に普及していないと指摘されていました。義務化された場合には、シフト管理の見直しや、勤怠システムへのアラート・自動制御機能の実装など、システム面での対応が実務上ほぼ不可欠になると考えられます。
深夜シフト、早朝勤務、グローバル対応など、インターバル(休息時間)が確保しにくい業務形態を抱える企業は、今から勤務間隔の実態把握に着手しておくことが望まれます。

勤務間インターバル制度を導入した際に発生しがちな「始業遅延と給与の扱い」については、以下のQ&A形式の社労士監修記事で詳しく解説しています。

3. 連続勤務日数の上限規制とは

13日を超える連続勤務を法律で禁止する方向で検討されています。現行の「4週4休」特例の制限が主な論点です。
現行の労働基準法では、変形労働時間制などを活用すれば、2週間以上の連続勤務を合法的に組み込むことが可能です。この特例が長時間・連続労働を助長してきたとの指摘から、廃止・制限の方向で議論が進んでいます。
影響が大きいのは、小売・飲食・介護・製造業など、シフト制や交代勤務が常態化している業種です。繁忙期を中心に連続出勤を前提としたシフトを組んでいる職場では、勤務パターンの抜本的な見直しが必要になります。
勤務間インターバルの義務化と合わせて対応が求められるテーマであり、両者をセットでとらえた勤怠管理体制の整備が重要です。現状のシフト実態を早急に把握したうえで、36協定の設計変更も視野に入れた準備を進めることをおすすめします。

4. 管理監督者の定義明確化と健康確保措置の義務化とは

現在、労働基準法上の管理監督者の要件を満たしていない、いわゆる「名ばかり管理職」が横行しています。今後の改正では、管理監督者には、「特別な地位」にある者のみ該当することを明確に定義づける方向です。
また、現在設けられていない「健康・福祉確保措置」についても義務化し、管理監督者であっても企業による健康管理が必要となる見込みです。
「名ばかり管理職」問題については、以下の記事で詳しく解説しています。

5. 副業・兼業の労働時間通算の簡素化とは

副業時の労働時間通算による割増賃金管理についての簡素化が検討されています。
現行ルールでは、主たる事業主が他社での労働時間も通算して割増賃金を計算し支払う義務があり、副業解禁の大きな障壁になっていました。他社での労働時間の通算を廃止し、自社の労働時間だけで割増賃金を算定するようになる見込みです。
簡素化が実現すれば、副業・兼業を推進したい企業にとって制度導入や人材活用のハードルが下がる追い風となります。ただし、自社従業員の副業状況の把握と労務管理ルールの整備は引き続き必要です。
副業・兼業の労働時間については、以下の記事で詳しく解説しています。

6. 時間外労働上限規制の強化とは

業種別の猶予期間が終了し、時間外労働の上限規制がさらに強化される方向で検討されています。
建設・運輸・医療など、これまで猶予が認められてきた業種でも、2024年4月から上限規制が適用されています。今後の改正ではその枠組みがさらに厳しくなる見通しです。グループ会社や特定の現場部門での36協定の遵守状況を再点検し、抵触リスクを早期に洗い出すことが求められます。
時間外労働の上限規制については、以下の記事で詳しく解説しています。

7. 裁量労働制対象業務の拡大とは

デジタル化やジョブ型雇用の進展に対応するかたちで、裁量労働制の対象業務が拡大される可能性があります。
現行の対象業務は限定的であり、実態として裁量労働に近い働き方をしていても制度を適用できない職種が存在します。対象拡大は人材活用の柔軟性を高める好機ですが、健康確保措置の強化とセットで運用の適正化が前提となります。適用拡大を生かすには、管理体制を先行して整備する必要があります。
裁量労働制におけるインターバル確保の要否と新運用については、以下のQ&A形式の社労士監修記事で詳しく解説しています。

8. つながらない権利の明確化とは

勤務時間外の業務連絡ルールが明確化・ガイドライン化される方向です。
メールやチャットなどの常時接続が常態化するなか、フランスで法制化された「つながらない権利」が日本でも注目されています。2027年の改正に向けた提言では、労使協定や社内規定でのルール策定が求められており、全社的なコミュニケーションガイドラインの整備が重要視されています。

9. 過半数代表選出の透明化・法定化とは

36協定等の締結に必要な労働者代表の選出プロセスについて、適正化・法制化が求められる改正です。
現行では選出方法の定めがあいまいなまま運用されているケースも多く、「会社が実質的に選んでいる」との指摘が絶えません。
改正後は民主的な選出プロセスとその証跡管理が求められます。組織規模が大きい中堅・大手企業ほど、電子投票などの仕組みを整備する必要性が高くなります。36協定の有効性そのものにかかわるテーマとして軽視できません。

人事担当者が今すぐ着手すべき対応とは

改正施行まで猶予がある今こそ、実態把握と体制整備を並行して進めるべきでしょう。
まず優先すべきは、自社の現状診断です。各改正テーマに対して「自社はどの程度影響を受けるか」を雇用形態ごとに整理することが出発点になります。

改正テーマ別 雇用形態への影響度まとめ

改正テーマ正社員(一般)管理監督者パートタイム労働者派遣社員業務委託・フリーランス裁量労働制適用者
1労働時間情報の開示義務化 影響大影響大影響中 影響中 影響小 影響大
2勤務間インターバルの義務化 影響大影響中影響大影響中該当なし影響中
3連続勤務日数の上限規制 影響大 影響中影響大 影響大該当なし影響小
4管理監督者の定義明確化と健康管理適用 該当なし影響大該当なし該当なし該当なし影響小
5副業・兼業通算の簡素化影響中影響中影響小影響小 影響大 影響中
6時間外上限規制の全業種統一 影響大 影響小影響中影響中 該当なし影響小
7裁量労働制の対象業務拡大 影響中 影響小該当なし該当なし該当なし 影響大
8つながらない権利の明確化 影響大 影響大影響中 影響中 影響小 影響中
9過半数代表選出の透明化影響中影響中影響中影響小 該当なし影響中
  • 影響大……制度・運用の見直しが不可欠
  • 影響中……一部対応が必要
  • 影響小……状況確認を推奨
  • 該当なし……直接的な適用なし

次に行うことは、勤怠データの精度向上です。改正後の対応はすべて「正確な労働時間の記録・集計・開示」が前提になります。紙やエクセルベースの勤怠管理では、複数の雇用形態や勤務体系への対応に限界が生じます。
そして、就業規則や36協定の見直し計画を立案することです。社会保険労務士や法務部門と連携した改定ロードマップを今から描いておくとよいでしょう。

多様な雇用形態への対応がカギになる理由

今回の改正は、雇用形態が多様化するほど対応の複雑さが増す構造になっています。
正社員のみを管理していた時代とは異なり、現代の中堅・大手企業では、正社員、契約社員、派遣社員、パートタイム労働者、業務委託、副業者など、さまざまな就労形態が混在しています。
連続勤務禁止の対象が派遣労働者におよぶのか。業務委託契約の個人にも勤務間インターバルの確保が必要か。こうした問いへの回答は、改正後の施行規則の内容を待つ必要がありますが、「正社員だけ対応すれば済む」という前提は、もはや通用しません
雇用形態を横断した一元的な労働時間管理の仕組みを構築できている企業と、そうでない企業の間には、対応コストに大きな差が生まれます。

勤怠管理システムの整備が急務になる理由

改正への対応を確実に行うには、システムレベルでの勤怠管理体制の見直しが不可欠です。
勤務間インターバルの自動アラート、連続勤務日数のリアルタイム検知、雇用形態別の労働時間集計、採用時開示用の実績データ出力。これらはいずれも、手作業ベースのオペレーションでは対応が難しい機能です。
改正施行後に慌てて着手するのでは間に合いません。システムの選定、導入、定着には最低でも半年から1年程度かかることを踏まえると、2026年中の着手が現実的なタイムラインです。

まとめ:改正を「対応コスト」ではなく「投資」ととらえる

労働基準法の改正は、人事部門にとって確かに大きな負荷を伴います。しかし視点を変えれば、職場環境の可視化・公正な待遇の整備・採用競争力の向上を一気に推進できる機会でもあります。
「改正が決まってから動く」では、準備期間が短くなり対応コストが跳ね上がります。今から実態を把握し、システムと仕組みを整えておく企業が2027年以降も優位に立てるでしょう。

 

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FAQ:よくある質問

Q1. 2027年の施行は確定しているのでしょうか?

現時点では検討案の段階です。厚生労働省の労働政策審議会での議論を経て法案が策定され、国会審議・成立後に施行される流れとなります。施行時期や改正内容は今後変更になる可能性があるため、審議会の答申や厚生労働省の公式発表を定期的に確認することをおすすめします。人事担当者としては「確定してから動く」ではなく、複数のシナリオを想定した準備を進めておくことが現実的な対応です。

Q2. 中堅・大手企業への特例や猶予措置はありますか?

現状の議論では、一部の改正項目について中小企業に対する経過措置や適用猶予が設けられる可能性があります。一方、従業員規模の大きい中堅・大手企業については、原則として猶予措置なしで適用される見通しです。グループ会社に中小規模の事業場を含む場合は、適用範囲の線引きが複雑になるケースもあるため、グループ全体での影響範囲を早めに整理しておくことが重要です。

Q3. 現在の36協定は改正後どうなりますか?

連続勤務禁止や勤務間インターバル制度の義務化が実現した場合、現行の36協定で設定している労働パターンが新たな法定基準に抵触する可能性があります。特に、深夜・早朝シフトが常態化している職場や、繁忙期に連続出勤を前提としたシフトを組んでいる部門では、協定内容の抜本的な見直しが必要になるケースも想定されます。施行日に合わせた改定スケジュールを、顧問社労士や法務部門と連携して今から計画しておくことを推奨します。

Q4. つながらない権利はどこまで拘束力を持つのでしょうか?

現状ではガイドライン策定にとどまる見込みであり、違反に対する直接的な罰則規定は設けられない可能性が高いです。ただし、ガイドラインは労働基準監督署の行政指導や、労使紛争における裁判所の判断基準として参照される可能性があります。また、労働時間情報の開示義務化が進むなかで、深夜・休日の連絡が常態化している職場の実態が対外的に可視化されるリスクも高まります。就業規則やテレワーク規程への明文化、管理職研修への組み込みなど、実態を伴う対応が求められます。

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