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【社労士監修】2025年度の両立支援等助成金はどうなる?改正ポイントを詳しく解説

公開日時:2024.12.19

2025年4月より育児・介護休業法の改正施行が段階的に行われます。今回の改正は、出生後休業支援給付、育児時短就業給付の新設、子の看護休暇や所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大、介護離職防止のための雇用環境整備、柔軟な働き方を実現するための措置等のかなり大がかりなものとなっています。
それに伴い、両立支援等助成金の内容も変更が行われる予定です。本記事では、2024年度と比較してどのような点が変更になるのかを解説します。
井上 敬裕 氏

井上 敬裕 氏

中小企業診断士・社会保険労務士

青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、現在は社会保険労務士として給与計算を中心に労務関連業務を行っている。

社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/

両立支援等助成金のスキーム

両立支援等助成金は「育児と仕事」、「介護と仕事」の両立を支援するための助成金です。以下のように複数のコースがあります。

コース名内容
出生時両立支援コース育児休業(出生時育児休業も含む)と仕事の両立を支援
育児休業等支援コース育児休業(出生時育児休業も含む)と仕事の両立を支援
育児中等業務代替支援コース育児期間中の育児と仕事の両立を支援
柔軟な働き方選択制度等支援コース育児期間中の育児と仕事の両立を支援
介護離職防止支援コース介護と仕事の両立を支援
不妊治療両立支援コース不妊治療と仕事の両立を支援

これらについて、2024年度からの変更点を解説していきます。

育児休業と仕事の両立支援

常時雇用労働者の数が300人以下の事業主も、両立支援等助成金の支給対象に

両立支援等助成金の支給対象は中小企業事業主に限定されていますが、2025年4月1日から中小企業でなくても一部支給対象になる特例が設けられました。常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主であれば、業種を問わず支給対象になります。

中小企業者とは、業種別に以下の場合に当てはまる企業または個人を指します。

  • 小売業(飲食店含む):資本金5,000万円以下の会社または常時雇用する労働者数が50人以下の会社および個人
  • サービス業:資本金5,000万円以下の会社または常時雇用する労働者数が100人以下の会社および個人
  • 卸売業:資本金1億円以下の会社または常時雇用する労働者数が100人以下の会社および個人
  • その他:資本金3億円以下の会社または常時雇用する労働者数が300人以下の会社および個人

しかし今回の特例により、小売業(飲食店を含む)、サービス業、卸売業については、中小企業者の定義から外れていても、常時雇用する労働者数が300人以下であれば、両立支援等助成金の支給対象事業主となります。

支給内容は、「育休中等業務代替支援コース」のうち、育児休業中の手当支給(最大125万円)と、育児短時間勤務中の手当支給(最大110万円)、育児休業中の新規雇用(最大67.5万円)です。これらは合計で1年度10人まで申請可能で、初回から5年間支給申請ができます。

育児期間中の育児と仕事の両立支援

テレワークや始業時刻の変更といった措置の義務化に伴う変更

育児期間中の育児と仕事の両立支援としては、2024年4月に「柔軟な働き方選択制度等支援コース」が設けられました。現状の支給額は以下のとおりです。

  • 育児期の柔軟な働き方に関する制度を2つ導入し、対象者が利用した場合:20万円
  • 制度を3つ以上導入し、対象者が利用した場合:25万円

2025年10月1日から柔軟な働き方を実現するための措置(テレワークや始業時刻の変更など)が義務化されるのに伴い、制度導入の基準の変更が行われます。具体的には次のように変更されます。

  • 制度を3つ導入し、対象者が利用した場合:20万円
  • 制度を4つ以上導入し、対象者が利用した場合:25万円

子の看護休暇の見直しに伴う変更

育児・介護休業法改正により、2025年4月1日から子の看護休暇制度の対象年齢が、従来の「小学校就学の始期に達するまで」から「小学校3年生修了まで」に引き上げられます。これに伴い、子の看護休暇制度の対象年齢を新制度を上回る「中学校卒業まで」引き上げた事業主には、「柔軟な働き方選択制度等支援コース」の支給額に20万円が加算されます。

また、「子の看護休暇等制度有給化支援」として、子の看護等休暇を有給とする場合は30万円が支給されることになりました。

柔軟な働き方を実現するための措置の義務化や、子の看護休暇見直しの詳細は以下の記事をご覧ください。

介護と仕事の両立支援

介護休業の取得・復帰支援、介護両立支援制度利用の支給額の見直し

介護支援プランを作成し、プランに沿って労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ場合の支給額が見直されます。

現状では労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得して復帰した場合、休業取得時に30万円、職場復帰時に30万円と分けて支給されます。改正後は以下のようになります

  • 労働者が合計5日以上の介護休業を取得して復帰した場合:取得時・復帰時セットで40万円
  • 労働者が合計15日以上の介護休業を取得して復帰した場合:取得時・復帰時セットで60万円

介護両立支援制度(介護のための柔軟な就労形態の制度)については、現状では制度を1つ以上導入し対象労働者が合計20日間利用した場合に30万円が支給されます。改正後の支給額は以下のようになります。

  • 制度1つを導入し、対象労働者が制度1つを20日以上利用した場合:20万円
  • 制度1つを導入し、対象労働者が制度1つを60日以上利用した場合:30万円
  • 制度を2つ以上導入し、対象者が制度1つを20日以上利用した場合:25万円
  • 制度を2つ以上導入し、対象者が制度1つを60日以上利用した場合:40万円

業務代替支援を加算措置から要件に変更

現状では、5日以上の介護休業を取得した労働者が復帰時に支給申請を行う際に、業務代替支援加算として以下が支給されます。

  • 代替要員を新規雇用等で確保した場合:20万円
  • 代替要員を確保せずに周囲の社員への手当支給で対応した場合:5万円

改正後は、この業務代替支援が加算措置から単独の要件として支給対象になり、以下のように変更されます。

代替要員を新規雇用等で確保した場合

  • 5日以上の介護休業期間中の代替要員を新規雇用等で確保した場合:20万円
  • 15日以上の介護休業期間の代替要員を新規雇用等で確保した場合:30万円

代替要員を確保せずに周囲の社員への手当支給で対応した場合

  • 5日以上の介護休業期間について代替要員を確保せずに周囲の社員への手当支給で対応した場合:5万円
  • 15日以上の介護休業期間について代替要員を確保せずに周囲の社員への手当支給で対応した場合:10万円
  • 15日以上の介護短時間勤務中に、代替要員を確保せずに周囲の社員に手当を支給して業務を代替させた場合:3万円

個別周知・環境整備加算の要件を変更

現状では、5日以上の介護休業(休業取得時)または介護両立支援制度利用の支給申請の際、以下の両方を実施した場合に個別周知・環境整備加算として15万円が支給されます。

  • 受給対象労働者に、介護にかかる自社制度と休業取得時の待遇について資料で説明
  • 社内の労働者向けに、仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備の措置を2つ以上実施

改正後は、環境整備措置を4つすべて実施した場合のみ、環境整備加算として10万円が支給されることになります。

まとめ

2025年4月からの育児・介護休業法改正に伴い、両立支援等助成金の支給内容が大幅に見直されます。主な変更点として、2025年4月から常時雇用300人以下の企業への支給対象拡大、育児期の柔軟な働き方に関する制度要件の厳格化、介護休業取得・復帰支援の支給体系の変更などが挙げられます。

今回の改正を機に、自社の両立支援制度を見直し、助成金を活用しながら、従業員が安心して働き続けられる職場環境の整備を進めていきましょう。制度改正への対応と併せて、より充実した両立支援の実現を目指すことが、企業の持続的な成長にもつながるはずです。 

参考:

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