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人事・労務なんでもQ&A

育児・介護休業法改正で見直しのあった、「子の看護等休暇」、「介護休暇」、「養育両立支援休暇」それぞれの違いや取得ルールを教えて下さい。

2025年の育児・介護休業法改正により、従来の「子の看護休暇」は「子の看護等休暇」に拡充されました。また、2025年10月から「柔軟な働き方を実現するための措置」として2つ以上の実施が義務化された5つの選択肢のひとつに「養育両立支援休暇」があります。「介護休暇」は既存の義務制度として継続されています。人事担当者はこれらの制度の性質の違いを正確に理解し、適切な運用体制を構築することが求められます。
公開日時:2025.10.31
詳しく解説
大友 大 氏

大友 大 氏

社会保険労務士

大手資格予備校にて、制作課チーフとして社労士試験必修テキストの執筆、全国模試の監修を行う。

平成20年より都内の社会保険労務士事務所に勤務ののち、平成26年に開業。

給与計算業務を中心に行いつつ、労務にまつわるさまざまな問題に取り組む。

大友労務管理事務所 代表

Q. 法改正で新設・変更された休暇制度について詳しく知りたいです

人事部で勤怠管理を担当しています。2025年の育児・介護休業法改正により、子育てや介護に関する休暇制度が大幅に見直されたと聞きました。従来の「子の看護休暇」がどのように変わったのか、新設された「養育両立支援休暇」とはどのような制度なのか、既存の「介護休暇」との違いも含めて詳しく教えてください。また、各制度の取得要件や日数制限、人事担当者として注意すべき運用ポイントについても知りたいです。

A. 法改正により3つの休暇制度がそれぞれ異なる目的と要件で整備されました

2025年の育児・介護休業法改正により、仕事と家庭の両立支援制度が大幅に見直されました。従来の「子の看護休暇」は「子の看護等休暇」として対象範囲が拡大され、義務制度として継続されます。

2025年10月からは「柔軟な働き方を実現するための措置」として、企業は5つの選択肢から2つ以上を選んで実施することが義務化されます。その選択肢のひとつが「養育両立支援休暇」です。「介護休暇」は従来の義務制度として継続されています。

このように義務制度と選択制度が混在するため、人事担当者は各制度の法的位置づけと特徴を正確に理解しなければいけません。適切な制度選択と運用により、従業員の仕事と家庭の両立を支援しながら確実に法令遵守をすることが重要です。以下、各制度の詳細を解説していきます。

育児・介護休業法の改正については、以下の記事でも詳しく解説しています。

子の看護等休暇の概要と改正ポイント

従来の「子の看護休暇」が「子の看護等休暇」に名称が変更され、取得対象となる事由も大幅に拡大されました。病気やケガの看護だけでなく、予防接種や健康診断の付き添いも対象に含まれています。

対象者と取得要件

小学校3年生修了までの子どもを養育する労働者が対象です。有期契約労働者でも、雇用期間が6か月以上であれば正社員と同様に取得が可能です。また、配偶者の就労状況にかかわらず取得できる点も重要なポイントです。

取得可能日数と取得方法

子どもが1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得できます。1日単位に加え、半日や時間単位での取得も認められており、労働者の事情に応じて柔軟に利用できるようになっています。

改正による拡充内容

改正により、これまでは年次有給休暇で対応されていた予防接種や健康診断の付き添いも「子の看護等休暇」として取得できるようになり、労働者の負担軽減につながっています。

柔軟な働き方実現措置と養育両立支援休暇の位置づけ

2025年10月からは「柔軟な働き方を実現するための措置」として、企業は5つの選択肢から2つ以上を選んで実施することが義務化されます。養育両立支援休暇はその選択肢のひとつに位置づけられています。

養育両立支援休暇については、以下の記事でも詳しく解説しています。

5つの選択措置の概要

選択肢には、養育両立支援休暇のほか、テレワーク制度、始業時刻等の変更、保育施設の設置運営等、新たな休暇の付与、短時間勤務制度などが含まれます。企業は自社の実情に応じて最適な組み合わせを選択できます。

養育両立支援休暇を選択した場合の制度内容

養育両立支援休暇を選択措置として導入する場合、3歳から小学校就学前の子どもを養育する労働者が対象となります。保育園の送迎、学校行事への参加、配偶者の出産立会いなど、子育てに関する幅広い事由で取得可能です。

企業の制度選択における考慮点

養育両立支援休暇の導入を検討する際は、既存の子の看護等休暇との使い分けや、他の選択措置との組み合わせ効果を慎重に検討する必要があります。従業員のニーズと企業の運用体制を総合的に判断しましょう。

介護休暇の制度概要と他制度との相違点

介護休暇は法改正前から存在する制度ですが、子育て関連の新制度と混同しないよう、あらためて制度内容を確認しておきましょう。

対象者と取得要件

要介護状態の家族を介護する労働者が対象です。配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が対象家族に含まれます。雇用期間にかかわらず、有期契約労働者も取得可能です。

取得可能日数

介護対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで取得可能です。時間単位での取得も認められており、柔軟な働き方を支援しています。

取得事由の範囲

介護、通院の付き添い、介護サービスの手続き代行など、介護に関する幅広い事由が対象となります。直接的な介護行為だけでなく、関連する諸手続きも含まれる点が特徴です。

義務制度と選択制度の比較と使い分けのポイント

子の看護等休暇と介護休暇は法的な義務制度であり、養育両立支援休暇は企業が選択できる制度です。この違いを理解したうえで適切な制度設計を行い運用することが重要です。各制度の主な違いを以下の表で確認しましょう。

休暇名子の看護等休暇介護休暇養育両立支援休暇
対象者・対象年齢小学校3年生修了までの子を養育する労働者要介護状態の家族を介護する労働者3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者
取得理由・用途病気・けが、予防接種、健康診断、感染症による学級閉鎖、入園・卒園式等要介護状態の家族の介護・世話子の養育に資する目的(幅広い用途、労働者に委ねられる)
日数・取得単位年5日(2人以上は10日)、時間単位取得可年5日(2人以上は10日)、時間単位取得可年10日以上、時間単位取得可
法的位置づけ法定義務法定義務選択的義務(5つの措置から選択)
有給/無給いずれも可(会社規定による)いずれも可(会社規定による)いずれも可(会社規定による)
備考・特徴 取得理由が限定されている。2025年4月改正で対象年齢・取得理由拡大取得理由は介護に限定。対象は家族(配偶者、父母、子等)取得理由が広く、健康な子の行事や送迎等にも利用可能。2025年10月新設

義務制度の特徴

子の看護等休暇と介護休暇はすべての事業主に実施義務があります。制度の基本要件は法律で定められており、これを下回る制度設計はできません。従業員の権利として確実に保障しなければなりません。

選択制度の柔軟性

養育両立支援休暇を含む柔軟な働き方実現措置は、企業が自社の実情に応じて選択できます。他の措置との組み合わせにより、より効果的な両立支援体制を構築することが可能です。

制度間の相互補完関係

義務制度と選択制度を適切に組み合わせることで、従業員の多様なニーズに対応できます。制度の重複や相互の関係性を整理し、利用者にとって分かりやすい体系を構築しましょう。

人事担当者が知っておくべき運用上の注意点

法改正に対応した適切な制度運用のために人事担当者が把握すべき重要なポイントがあります。法令遵守と従業員支援の両立を図る観点から解説します。

就業規則の改定手続き

新制度の導入に伴い、就業規則の改定が必要です。各休暇制度の定義、取得要件、手続き方法を明確に規定し、労働基準監督署への届出を行いましょう。

申請手続きの整備

各制度に応じた申請書類の整備が重要です。取得事由の確認方法、必要書類、承認プロセスを明確にし、従業員が円滑に申請できる体制を構築しましょう。

給与計算への影響

各休暇が有給か無給かは企業の判断にゆだねられています。給与計算システムの設定変更や給与明細への適切な表示方法を検討する必要があります。

柔軟な働き方実現措置への対応

2025年10月からの新たな義務に備え、複数の選択肢から適切な措置を選択する準備が必要です。養育両立支援休暇を選択する場合の制度設計や、他の措置との組み合わせ効果を検討しましょう。

制度の効果的な周知と従業員への説明方法

新制度を効果的に活用してもらうため、従業員への適切な周知が重要です。制度理解の促進と利用促進を図る取り組みについて説明します。

制度説明会の実施

説明会を実施し、各制度の違いや取得方法について分かりやすく説明しましょう。Q&A資料の作成や具体的な取得事例の紹介により理解促進を図ることができます。

管理職への研修

直属の上司となる管理職への研修も重要です。部下からの相談対応や適切な制度選択のアドバイスができるよう、制度の詳細を理解させましょう。

社内ポータルでの情報提供

いつでも確認できるよう、社内ポータルサイトに制度概要や申請方法を掲載しましょう。FAQコーナーの設置により、従業員の疑問に迅速に回答できます。

今後の制度運用における課題と対応策

法改正により制度が複雑化するなかでも、適切な運用を継続しなければなりません。運用上の課題と対応策について整理します。持続可能な制度運用体制の構築が重要です。

制度間の整合性確保

複数の休暇制度が並存するなか、制度間の整合性を保つことが課題です。類似する取得事由について明確な基準を設け、従業員が迷わず適切な制度を選択できるようにしましょう。

業務負荷の分散

休暇取得者の増加により、残された従業員の業務負荷増大が懸念されます。事前の業務分担調整や代替要員の確保により、組織全体への影響を最小限に抑えましょう。

制度活用状況の分析

各制度の利用状況を定期的に分析し、制度改善に生かすことが重要です。取得率の低い制度については、利用阻害要因を特定し、改善策を検討しましょう。

まとめ

2025年の育児・介護休業法改正により、子育てと仕事の両立支援制度が大幅に拡充されました。子の看護等休暇、養育両立支援休暇、介護休暇という3つの制度それぞれの特徴を理解し、適切な運用体制を構築することが人事担当者の重要な役割です。

制度の効果的な活用には、従業員への丁寧な説明と管理職を含めた全社的な理解促進が不可欠です。また、勤怠管理システムの機能拡充により、正確で効率的な制度管理を実現できます。

働き方の多様化が進むなか、これらの制度を適切に運用することで従業員の仕事と家庭の両立を支援し、企業の持続的成長につなげましょう。

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参考:

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01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

勤怠管理システム
導入のポイント

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