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【社労士監修】令和7年度の人材開発支援助成金改正情報

公開日時:2025.02.13

令和7年(2025)度の人材開発支援助成金の概算要求額が発表され、過去最大規模となる623億円が計上されました。そのうち、「人への投資促進コース」および「事業展開等リスキリング支援コース」が569億円と9割以上を占めています。本記事では、正社員化支援の拡充や賃金助成の引き上げなど、企業の人材戦略に直結する改正点について解説します。
井上 敬裕 氏

井上 敬裕 氏

中小企業診断士・社会保険労務士

青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、現在は社会保険労務士として給与計算を中心に労務関連業務を行っている。

社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/

人材開発支援助成金のスキームと改正の概要

人材開発支援助成金とは、従業員に職業訓練を実施する事業主等を支援する制度です。雇用する労働者に対して、職務に関する専門的知識および技能を習得させるための職業訓練などを計画的に実施した場合に助成金が支給されます。訓練経費や訓練期間​​中の賃金の一部などが補助の対象となり、以下4つのコースがあります。

  1. 人材育成支援コース
  2. 教育訓練休暇等付与コース
  3. 人への投資促進コース
  4. 事業展開等リスキリング支援コース

このうち教育訓練休暇等付与コース以外は賃金助成があり、今回の改正ではすべてのコースで賃金助成の引き上げが行われます。また、人材育成支援コースで助成要件の見直しと経費助成率の引き上げが行われます。

人材育成支援コースの拡充

人材育成支援コースは人材開発支援助成金のなかでもっとも基本的なコースです。職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練であれば訓練内容に関係なく、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成の対象となります。次の3つの訓練があります。

  1. 人材育成訓練
  2. 認定実習併用職業訓練
  3. 有期実習型訓練

正社員化が有期実習型訓練の支給要件に

人材育成支援コースの3つの訓練のうち、有期契約労働者等(非正規労働者)のみを対象としているのが有期実習型訓練です。有期実習型訓練は非正規労働者が正社員に転換するための訓練で、OJTとOFF-JTを組み合わせて実施します。

従来は、有期実習型訓練を終了した後に正社員に転換させなくても支給となりました。今回の改正により、正社員への転換が支給対象要件に加わります。

また経費助成率は現状では60%、正社員へ転換を行った場合は70%になりますが、改正後は正社員化を行った労働者のみが支給対象となり75%に引き上げられます。

有期実習型訓練の改正点

項目改正前改正後
支給要件正社員転換不要正社員転換が必須
経費助成率60% (正社員転換時70%)75% (正社員転換必須)

人材育成訓練の正社員化による高経費助成率は廃止

人材育成訓練は職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上のOFF-JTの訓練で、訓練の対象者は正社員と非正規労働者に分かれます。このうち非正規労働者については経費助成率が60%、正社員への転換を行った場合は70%ですが、改正後は正社員への転換を行っても行わなくても経費助成率が70%になります。

賃金助成の引き上げ

OFF-JT期間中の賃金助成は現在1人1時間当たり760円(中小企業以外は380円)で、改正により800円(中小企業以外は400円)になります。

賃金助成額の改正

企業区分改正前改正後
中小企業760円/時間800円/時間
中小企業以外380円/時間400円/時間

その他のコースの拡充

人への投資促進コースの賃金助成の引上げ

人への投資促進コースは「人への投資」を加速化するため、令和4年~8年(2022年~2026年)度の期間限定助成として設けられたコースで、高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練、定額制訓練、自発的職業能力開発訓練、長期教育訓練休暇等制度の5つのコースがあります。
このうち賃金助成がある3コースについて、賃金助成額の引き上げが行われます。

高度デジタル人材訓練については1人1時間当たり960円(中小企業以外は480円)が改正後は1,000円(中小企業以外は500円)に、成長分野等人材訓練は960円が改正後は1,000円になります。

情報技術分野認定実習併用職業訓練については760円(中小企業以外は380円)が改正後は800円(中小企業以外は400円)に、長期教育訓練休暇制度は960円(中小企業以外は760円)が改正後は1,000円(中小企業以外は800円)になります。

賃金助成額の改正

訓練種類企業区分改正前改正後
高度デジタル人材訓練中小企業960円/時間1,000円/時間
中小企業以外480円/時間500円/時間
成長分野等人材訓練全企業960円/時間1,000円/時間
情報技術分野認定実習中小企業760円/時間800円/時間
中小企業以外380円/時間400円/時間
長期教育訓練休暇制度中小企業960円/時間1,000円/時間
中小企業以外760円/時間800円/時間

事業展開等リスキリング支援コース賃金助成の引き上げ

事業展開などに伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるためのOFF-JTまたはDX化のためのOFF-JTが対象で、正規・非正規ともに支給対象になります。

賃金助成額は人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練と同じで、次のとおりです。

企業区分改正前改正後
中小企業960円/時間1,000円/時間
中小企業以外480円/時間500円/時間

最近の改正点

ここまで来年度の改正点について見てきましたが、2024年の10月と11月に発表された改正内容についても説明します。

定額制サービスによる訓練についての見直し

2024年10月1日から、人への投資促進コース(定額制訓練)、人への投資促進コース(自発的職業能力開発訓練)、事業展開等リスキリング支援コースの定額制サービスによる訓練についての改正が行われました。

経費助成額の上限が設定され、1人1か月当たり2万円までとなりました。また、労働者1人1年度当たりの支給回数が対象のコースの合計で3回までとなりました。この改正により、支給申請書も新しい様式に更新されています。

訓練経費の申請事業主負担の明確化

2024年11月5日から、訓練経費の負担の取り扱いを明確にするため、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースの提出書類が変更されています。具体的には、訓練計画届および計画変更届に、新たに「教育訓練機関と訓練契約を締結することとなった経緯」に関する項目が追加されました。

教育訓練機関からの実質的な経費負担の減額措置は、助成金の支給対象外となることが明確化されました。具体的には、申請事業主が訓練実施後に教育訓練機関から訓練経費の返金や割戻金などを受け取る場合、助成金の支給要件を満たさないことになります。

まとめ

令和7年(2025年)度の人材開発政策全体の予算規模は約2,417億円で対前年比101.8%となっています。このうちリスキリングによる能力向上支援が約1,236億円と大半を占めており、国がリスキリングに力を入れていることが分かります。

人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースが登場したのは令和4年度なので来年度は4年目となります。

人材育成支援コースでは正社員化を促進するような改正が行われますが、国が想定するレベルが基礎レベルから実践レベルに上がってきているように見受けられます。企業としては、制度を効果的に活用し、従業員の実践的なスキル向上と組織の成長に結びつけることが求められます。

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