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1300名が視聴した大好評ウェブセミナー! 労務トラブル事例から学ぶ「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか」セミナーレポート

公開日時:2021.12.27 / 更新日時:2022.03.22

2021年10月20日、「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?~労基法遵守だけでは企業を守れない!?知っておきたい労基署と裁判所で異なる着目のポイント~」をオンラインセミナー形式で開催しました。 複雑化する労務トラブルにより、労働基準法だけを遵守していても企業を守れない時代となりつつあります。労務トラブルを防ぐには「労基署と裁判所がトラブルの際に何を見るのか?」をまず押さえることが必要です。弁護士と社労士2つの顔を持つ、労働問題対策のスペシャリスト村上先生にご登壇いただき、事例をもとに、労基の臨検や労働問題の裁判では何が起きるのか、具体的に解説していただきました。 本レポートでは、セミナーでお話いただいた内容をすべてご紹介します。労務トラブル防止のために労基署・裁判所のそれぞれの視点や勤怠システムの活用方法に興味のある方はぜひご覧ください。
村上 元茂 氏

村上 元茂 氏

2008年 弁護士登録(東京弁護士会)
2014年 株式会社アクセア社外取締役就任(現任)
2015年 弁護士法人マネジメントコンシェルジュ設立(現任)
2019年 社会保険労務士法人clarity設立(現任)

人事・労務、外国人雇用、企業に対する不当クレーム対応等の業務に従事。
弁護士法人における人事労務分野対応としては、日常的な問題社員対応に加え、訴訟、労働審判、あっせん、労働組合との団体交渉を得意とする。
社会保険労務士法人における対応業務としては、紛争対応を見据えた労務管理についてのアドバイス、各種規程整備、人事評価システムに関するアドバイス、HRテックを用いた労務管理についてのアドバイスを行っている。
また、弁護士として、BtoC企業の依頼を受け、企業に対するクレーム・クレーマー対応にも多数関わる。

▼セミナー名
「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?~労基法遵守だけでは企業を守れない!?知っておきたい労基署と裁判所で異なる着目のポイント~」

▼日時
2021年月10月20日 13:30~15:00

▼開催場所
オンライン

▼費用
無料

▼講師プロフィール
村上 元茂(むらかみ もとしげ)
弁護士法人マネジメントコンシェルジュ
社会保険労務士clarity 代表社員

弁護士法人においては、使用者のみを依頼者とし、人事・労務問題を主として取り扱い、問題社員対応、労務紛争防止及び発生した労務紛争解決に注力する。また、働き方改革特化顧問サービスにより各企業の働き方改革への対応サポートに注力している。
社労士法人においては、働き方改革対応のための就業規則作成・変更、助成金申請、労務監査やIPO支援等、企業の労務リスクの監査業務に注力している。

労基署と裁判所の視点を理解し労務リスクを軽減!ウェブセミナー「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?」セミナーレポート労基署と裁判所の視点を理解し労務リスクを軽減!ウェブセミナー「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?」セミナーレポート

【第1部:村上先生より】労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?

村上:私からは労働基準監督署、裁判所はそれぞれ何を見るのかというお話をさせていただきたいと思います。

多くの裁判例と是正勧告の文章を資料に載せていますが、時間の関係上すべて読み上げはいたしません。資料がダウンロードできますので、詳細は後から目を通していただき、本セミナーではポイントについてお話をさせていただきたいと思います。

労基署と裁判所の役割の違い 役割の違いからくる目的の違い

まず労基署と裁判所の役割の違いと役割の違いからくる目的の違いについてお話させていただきます。

労基署の目的は「監督と取締り」です。裁判所に関しては「紛争の最終的な解決」が目的となっています。労基署と裁判所はそもそも役割が違っています。

労基署の監督官は、労働法に関する警察官のようなものです。労基署の監督官の役割が「取締り」なので、取締りのために法違反を探す活動をしているイメージです。

労基署の是正勧告・裁判所の判決によって企業、関係者はどのような影響を受けるか

労働時間と割増賃金、健康確保を労基署が扱うトピックの中で最も多いというところであるため、ここを中心に裁判所との違いをお伝えします。

労基署から、是正勧告や企業名の公表、送検された場合、企業にはレピュテーションの低下、つまり風評被害が生じる可能性があります。是正勧告がされた、企業名を公表されたという事実がインターネット上に載った場合、ブラック企業という風評と共に半永久的に企業名が残り続けます。そのため、採用活動を始めとして、この企業価値の低下は著しいと言えます。厚生労働省の説明では、企業名公表制度は制裁ではないと書かれていますが、事実上大きな制裁として機能しています。

もう一つは、送検によって上司や従業員といった個人が受けるものとして刑事罰が挙げられます。スライド下の労働基準法の規定をご覧ください。労基法違反で処罰を受けるのは基本的にはまず上司となっており、その抱合せで企業刑事罰を負いますという規定になっています。労基法違反があった事案で送検された事例では、まず間違いなく上司が個人として刑事罰を受けています。企業活動を行っている方としては、まさか仕事をしていて自分が刑事罰を受けることはないだろうと日々過ごしているかと思いますが、場合によっては労基法違反で前科がついてしまう場合があります。

民事労働紛争に関する裁判所の判決において敗訴した場合に企業や構成員への影響について見ていきます。

民事労働訴訟において訴えられるのは賃金の未払いや損害賠償といった金銭の支払いである場合が多くあります。労働事件に関して広く報道される場合や、判決が出て判例となり、企業名+事件で報道されるといった場合があります。そのため、労基署からの是正勧告や企業名の公表と同様に、レピュテーションの低下に大きな影響があります。

また、訴訟が起きて敗訴した場合、損害賠償義務や賃金の支払い義務といった金銭の支払いを求められます。裁判所の裁判における紛争で特徴的なものとして付加金の支払いを求められることがあります。詳しくは後ほど説明いたします。解雇紛争に限定した話であれば、一度解雇した従業員の雇用の継続を命じられる場合もあります。

上司、場合によっては取締役が損害賠償義務を個人で負う場合があります。後ほど紹介する、過労による自殺や、過労による急死の事案において、上司や取締役の方が個人で1億円近い賠償責任を負うという事案も出ていますので、判決についても企業・個人ともにとても大きな影響があると言えます。

労基署・裁判所 目的の違いからくる着眼点の違い

本セミナーのメインテーマである労基署・裁判所の目的の違いからくる着眼点の違いについて説明します。

スライド左側の労基署の目的は、法違反の発見・是正・取締りです。一方で裁判所は、当事者が請求する権利関係の確定により、紛争解決することが目的となっており、労基署と裁判所ではそもそも目的が異なります。

そのため、着目する事柄にも違いがあります。労基署は法違反を是正することが目的なので、法違反の有無を探します。他方で、裁判所は、請求があってから裁判を行う機関なので、請求の原因となる法律の要件となる事実の有無に着目します。2つの着眼点は重なる場合もありますが、全く違う場合もあります。

確認・調査事項として、労基署は法律に反する事実の有無を確認調査する一方で、裁判所はどの範囲の請求が認められるかという点を判断するために必要な事項を全て確認します。極端に言えば、労基署は法違反の有無が判断できればいいのに対して、裁判所は当事者の請求全部を認めるべきか、もしくは0か、または中間的に認めらるならばどれくらいかを細かく認定するのが仕事です。 

判断対象外の部分を見ると、違反の結果として生じる民事上の紛争解決を目的としていないのが労基署です。警察で言えば民事不介入に近いもので、実際に違反があったからといって請求できる範囲についてはノータッチです。裁判所は取締りが目的ではないため、法違反を見つけたとしてもそれが請求に入っていなければ介入しません。あくまで当事者の請求が認められるか否かという点を判断するのに必要な範囲で事実関係を確認するのが裁判所です。

類型別 労基署・裁判所の着眼点の違い

労基法、最賃法違反と労働安全衛生法の違反では「労働時間と割増賃金」と「健康確保」関連が違反として多く是正が出ているので、まずはここについて説明します。次に、労働局に対する個別の労働紛争で多い「パワハラ」や「解雇等の身分関係」について説明した上で、身分関係に関する是正と裁判所の違いを見ていきます。一番最後に少しだけ就業規則についてチェックをしていきます。

残業代不払い

残業代の不払いに関して、労基署と裁判所の着眼点の違いを見ていきます。

残業代不払いに関して、労基署がまず着目する法律は、労働時間に関する労基法の規定です。労働時間の32条や36条、37条に違反がないかどうかをチェックします。

労基署が見つけた法違反と、是正させた方法について記載されている「監督指導による賃金不払残業の是正結果」をまとめたものです。実際にどのような是正がされているかを詳しく見ていきます。 

左側は、サービス残業が客観的な記録から判明した事例、右側は、典型的な未払残業が発生している事例です。右側の事例は、労基署が目をつけて是正を出す典型的な例です。

ポイントは、茶色い文字の部分です。「実態調査を行うよう指導」がなされたという表現になっています。これは、企業が自分で実態調査をするように労基署が監督をするということです。つまり労基署は、賃金の不払いという法違反があることまでは見つけますが、具体的にいくらの不払い賃金があるかまでは調査はしません。「あとは企業が自分で是正しなさい」と指導するのが労基署の特徴です

このスライドの事例のキーワードは「乖離」です。一番左側は、ICカードで記録されていた時間と労働時間として認定してる時間との乖離、中央は店舗への入退場を管理する静脈認証システムの記録との乖離、右側は自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録との乖離があると記載されています。乖離があることに労基署は敏感に反応します。

スライド下の図で示すように、ほとんどの会社で、デジタルデータによって従業員の行動がさまざまな時点で記録されています。その中で労働時間に該当する乖離や差分があるにも関わらず賃金が支払われていないことを見つけた時点で、労基署は「実態調査をしなさい」と指示し、実際に賃金の不払いがあれば是正勧告を出してくるというロジックです。

乖離が生じるのは当然なので、出てきた乖離をどう管理するかというポイントが対裁判所では必要になり、対労基署でもしっかりと管理をしていれば乖離があっても是正は出ないということが言えます。

これから労基署の是正勧告だけでは解決できない未払い残業問題についてお話します。裁判所・最高裁が労働時間をどのように考えてるかを前提としてお伝えします。

乖離があったとしても、その差分自体、もしくは事業場内にいた時間として記録されていれば労働時間となるのではなく、あくまで指揮命令監督下にあったかなかったかが労働時間の判断基準になります。

そのため、裁判所の認定との関係、もっと言えば労基署との関係であっても、従業員が労働者の指揮命令監督下にあったかなかったかを記録していくことが重要になります。従業員の行動を示す資料が複数ある、つまり乖離がある場合、裁判所はどのようにして労働時間を認定するのかがポイントになります。ここからいくつか裁判例をご紹介します。

これらのスライドは、タイムカードを基準にした事例です。タイムカードをはじめとして、パソコンのログインログオフ、ICカードなどの客観的な記録は裁判所も証拠として強く有用として認定する傾向があります。

ただし、タイムカードを証拠とすることを否定している判決もあります。この2つの事例からお伝えしたいことは、裁判所は労働時間の管理をしていたか否かに着目するのであって、客観的な記録が残っていてもただ記録があれば労働時間として認められるわけではありません。従業員の主張に対してどのように反論するかが未払い残業代請求訴訟におけるポイントです。

現代社会においてはデジタルデータで従業員の行動を示す記録がたくさん出てきます。未払残業があった、未払賃金があった、時間外労働があった、などの不当な主張を防ぐためには、会社が主体的に労働時間を管理していくということが重要です。ただルールを決めるだけではなく、実際の運用としても徹底していくということがポイントになります。引いては労基署の是正、臨検監督においても重要で、労基署に対して「実際に労働時間をこのように管理してるんだ」と乖離がある前提で主張できれば是正勧告を受けないということが言えます。

裁判所固有の話で、どのような場合に付加金の支払いを命じるのかについてお話します。

労基法114条に規定があり、未払い残業代請求訴訟を始めとした未払賃金の紛争において判決になった場合、未払金のほか、最大でこれと同一額の付加金の支払いを命ずる判決が出ます。裁判所は労基署のように送検といった制裁はしませんが、賠償額を倍にする形で制裁を加えてくることがあります。

健康確保の過重労働時間

従業員の健康確保に関連して、労基署がどんな点に着目し、どういった内容の是正勧告を出すかについてご説明します。

事例を2つご紹介します。過重労働の疑いがあると臨検監督に入るものの、実際に是正勧告をする理由は労基法違反がある場合です。健康診断を実施していない、労働時間の把握をしていないところを労基署は見てきます。労基法違反に加え、労働時間の管理・把握や過重労働は、現在労基署の一番の関心事項です。

従業員の健康確保に関連して、裁判所にはどのような紛争が持ち込まれ、裁判所はどのような点に着目して判断を行うかについて次にお話します。

政府労災のみですべて解決できるのであれば、労災に関しては政府労災一本で安心ですが、日本ではすべて解決できる制度となっていません。法定外補償の併存主義というものがあります。政府労災で補填しきれない損害については、別途使用者が損害賠償を負うことが日本では規定されています。そのため、労基署の対応だけではなく、裁判所の対応もケアする必要があるのが健康確保の問題です。

本セミナーのメインテーマである労働時間の把握という観点からお話します。

使用者が把握すべき時間は、「労働時間」と「健康管理時間」の2つに分けられ、労働時間もさらに2つに分けられます。前節でお話したのは労基法上の労働時間、これからお話するのは労働安全衛生法上の労働時間で、この2つは異なるものです。

よく問題になる管理監督者や事業場外みなしなど、いわゆる労基法上の労働時間を管理・把握する必要のない類型の従業員は一定数います。これが上から2段目までに該当する従業員です。しかし、労働安全衛生法上はすべての従業員について使用者は労働時間を管理・把握する必要があります。そのため、多くの企業で言われている「管理職だから自分の時間は自分で管理して」という議論は当てはまりません。すべての従業員の時間を把握するのが、労働安全衛生法が求めている義務となっています。

従業員が疾病にかかったときに、スライドの一番上、相当因果関係と業務起因性が立つかどうかが労災と判断されるかのポイントです。業務起因性は政府労災の話で、相当因果関係は裁判で判断するものです。

業務と疾患との関係があるかは労基署が判断します。判断事由についてはホームページで公開されており、脳・心臓疾患や精神疾患と決められています。青い矢印に2.3番がないことに表れているように、業務起因性さえあれば政府労災はおります。

しかし、茶色の矢印には1~3番まであり、裁判所の判断には相当因果関係に加えて、安全配慮義務違反と過失相殺規定の類推適用3つの判断を経て、初めて損害賠償義務があるかどうか判断されます。同じ労災でも、労基署と裁判所では判断する要素が変わります。そのため、着眼点も変わってくるということです。

相当因果関係と業務起因性は業務と疾患・疾病・死亡と間に因果関係があるかという判断です。安全配慮義務違反とは、裁判所固有の概念です。 ここでは安全配慮義務について説明いたします。

安全配慮義務は、スライド一枚目で示すように、もともとは最高裁判所が創設した概念でしたが、今は労働契約法に規定があります。具体的な内容については2つ目のスライドをご覧ください。

人的組織の管理とは、例えばパワハラによって部下を精神疾患に追い込むような上司がいる組織にしないための管理です。経営者が直接労災に関わっていなくても、安全配慮義務違反が肯定される可能性があります。

安全配慮義務の前提となる予見可能性及び結果回避可能性についてみると、本セミナーのメインテーマである労働時間の管理・把握の観点では「従業員がこんなに長時間労働していたら、病気になるかもしれない」という予見と、業務を減らすなどの回避可能性があったかを裁判所が見て、この2つがあったにもかかわらず、義務を満たしていないと損害賠償責任を肯定して、数千万円から数億円の賠償請求を認めるというケースもあり得ます。

皆様に少し考えていただきたいところです。安全配慮義務違反のリスクの中で「予見」という話をしました。左側の建物を「法人」と考えていただいて、予見可能性を検討したときに、法人は概念上の存在なので、実際に生存している人間と違って法人が何か予見するのはあり得ないことです。しかし、裁判所は必ず法人自身が予見して、過重労働について認め、結果回避をしなかったことで損害賠償責任を認めています。

予見可能性を認定する方法は、誰かの認識で擬人化することです。普通に考えれば法人の認識ですから社長かと思うかもしれませんが、裁判所は一貫して上司の認識をもって会社の認識としています。ここが非常に強いところであり、会社の労務管理が重要なところです。基本的には会社の損害賠償責任を認定する裁判において、社長や役員が予見していたかについては一切認定されません。直接の上司が認識していたかどうかだけで認定され、会社が認識・予見していたということになっています。

労働時間の管理・把握との関係で難しい点は、労働安全衛生法上会社には、従業員の労働時間の管理・把握義務があると規定されているため「部下が過重労働になっているのを知らなかった」という抗弁は一切通じないところです。部下の様子がおかしいと感じるのにはさまざまな原因があります。企業としては、労務管理のために管理職、もっと言えば部下を抱えるすべての上司に対して、部下の労働時間の管理・把握と様子がおかしくないかの確認をさせることが重要となります。怠ると、損害賠償責任が認められてしまいます。

次に過失相殺規定についてお話します。裁判所が責任を軽減する概念として用いるのが過失相殺規定です。

企業として証拠収集しておくべきことは、従業員の喫煙や過剰なアルコール摂取、プライベートでのトラブルなどの事情です。過失相殺規定の類推適用で用いることができる可能性があります。注意点として、基本的には過失相殺規定の類推適用の前提として、労務管理の徹底が必要です。ずさんな労務管理では「従業員にも過失があった」という主張は通りません。そのため、精神疾患の従業員を探す必要はありませんが、申告がなくても会社側、上司がケアすることが必要です。

未払い賃金同様、労基署が見るのは明確な法違反の有無です。一方で裁判所は、業務起因性に加え、安全配慮義務違反があったか、あったとして損害賠償額はいくらになるか、過失相殺の類推適用がされるべきかを見ます。労災の場合では両者の視点が大きく異なっていると言えます。

解雇紛争

次に解雇紛争についてお話します。行政機関に対する相談でパワハラの次に多いのが解雇紛争です。解雇紛争に関連して、労基署から是正勧告を受ける可能性のある事項についてお伝えします。これは明確で、労基署は解雇に関する労基法の規定に違反しているかを見ます。

多くの企業で「30日前に予告すれば解雇することができる」と認識を誤っていることが見受けられます。特に中小企業の経営者でこの発言をされる方が多い印象です。もし「30日前に予告すれば解雇することができる」のであれば、労基署が「解雇予告手当の支払いをしていない」と是正勧告をすれば、裁判所で解雇紛争が争われることはありません。

しかし、そうはなりません。解雇については労基法以外に、労働契約法でも規制されてるため、解雇予告手当の支払いだけで解雇紛争を解決できません。

労基署は労働契約法について周知はするものの、特に監督の対象としていません。労基署の監督官は解雇権濫用法理に関してはほとんど裁判例を知りません。私が担当した事案でも多いのが、会社の担当者が解雇予告手当を支払うことを前提に、労基署に解雇しても問題ないかを確認し、労基署側から問題ないと言われて解雇したものの、解雇紛争となる事案です。そのため、労基署の監督官には解雇権濫用法理の判断能力はないと考えて問題ないと思います。

実際に解雇すると、従業員から地位確認とバックペイという賃金の支払い請求が提起されます。この紛争が起きることが企業にとってリスクになる理由は、民法第536条第2項によって、解雇紛争で企業側が敗れた場合、裁判所が解雇無効と言い渡す時点までの賃金相当額の支払いが命じられるためです。

解雇紛争に関しては、裁判所と労基署の着眼点の違いが本当に大きいところです。労基署が見ているのは、やはり労基法違反の有無です。裁判所が見るのは、まず解雇に客観的合理性・社会通念上の相当性があるかです。

就業規則

最後に就業規則について触れていきます。実務上、従業員が「うちの企業には就業規則がないので是正に入ってください」ということはないかもしれません。ただし就業規則は、10人以上従業員がいる事業場では基本的なルールなので、労基署は必ず確認するポイントです。そのときに「就業規則がありません」「就業規則に関して適切に選任された過半数代表者から意見聴取されていません」「労基署への届出がされていません」「従業員へ周知していません」などになると、労基法違反として是正が出ます。

労使紛争の裁判では、証拠として就業規則の提出が必ず求められます。就業規則は、基本的に労使間の契約内容の最低ラインを明確にするものです。そのため、裁判所は判断にあたって必ず就業規則を参考にします。そういう意味では、内容を精査せずに、とりあえずということで自社に適合しない就業規則を置いているのは労使紛争ではリスクとなります。裁判において不利に判断されないように整備しておくことが重要です。

労務リスクを予防する第一歩は適切な勤怠管理から!

労基署と裁判所の視点を理解し労務リスクを軽減!ウェブセミナー「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?」セミナーレポート労基署と裁判所の視点を理解し労務リスクを軽減!ウェブセミナー「労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?」セミナーレポート

【第2部:アマノより】労基署・裁判所はそれぞれ何を見るのか?

松原:村上先生どうもありがとうございました。続きまして松原より、アマノの勤怠システムの活用術についてお話しさせていただきます。「まずは出来るところから始めてみましょう」ということで、4つの事例からお話させていただきます。

【 事例1 】企業と従業員を守るために必要な「基本データ」とは

労務リスクを防ぐために、捉えておきたいデータとして「全従業員の出退勤時間」「実労働との乖離時間」の2つを紹介します。

管理者だから時刻記録しなくてもいいわけではなく、労働安全衛生法上では管理職も管理する必要があります。そのため「全従業員の出退勤時間」を必ず取るようにしていただければと思います。

もう一つは「実労働との乖離時間」です。今回この乖離時間について詳しくご紹介します。

この場合、8~9時と18~19時に空白の時間が出てきます。この時間は従業員が申請して承認されれば時間外労働という扱いになりますが、申請しない、または承認されなかった場合、乖離時間になります。乖離時間が発生する原因の多くはこの形です。

隠れ残業を見つけるには、タイムレコーダーの打刻以外に、パソコンのログオン・ログオフ時刻や入退場の記録が役立ちます。退勤打刻を打った後にお客様にメールを送信してました、パソコンは開いていないもののしばらく会社に残って仕事をしており退勤時刻と退場時刻にかなりの乖離が発生してしまったケースがあるかと思います。

これらは、パソコンのログオフ記録や退場記録も管理することで把握できるようになります。スライドにあるように、出退勤時刻と各種ログを並べて表示すると、管理していることが従業員に伝わり隠れ残業の抑止につながります。 ログを取るために勤怠管理システム以外のアプリケーションを入れる必要があり、ハードルが高くなることもあるかと思います。アマノが提供するTimePro-VGであれば、勤怠管理システム内でログを取ることも可能ですので、是非ご参考にしていただければと思います。

【 事例2 】基本データを活かして「曖昧な時間は残さない」方法

乖離時間をそのままにすると、理由なき乖離時間となり労務リスクにつながります。乖離時間に理由をつけてもらうことで、曖昧な時間を減らせます。乖離時間は勤怠管理システムを活用してチェックしていただければと思います。

システムの中で乖離時間を簡単に計算できる仕組みになっており、例えばスライドにあるように、乖離時間が30分以上の人を抽出してチェックリストを作り、乖離理由を入力していただく運用方法があります。ポイントとなるのが、乖離時間の理由入力です。

従業員によるフリー入力にすると、従業員がさまざまな理由を記入するため判別しにくくなる可能性があります。選択形式にして完全に時間外に当たらない理由を並べることで、グレーな理由が発生しにくくなります。スライド上では自己学習や休憩としていますが、お客様の業種、業態に合わせた理由をつくることが可能です。中にはどうしても当てはまらない理由もあるため、その場合はフリー入力してもらい、後ほど管理者にご確認いただく運用がよろしいのかと思います。

ここまでチェックリストの運用についてお話してきましたが、アラート表示での運用も可能です。チェックリストの場合、月に一度の運用になり労務リスクの発見が遅れることがあります。アラート表示であれば、前日までの勤怠計算をつけた上でアラートを表示してくれます。日々確認できるため、リアルタイムで確認できるようになります。

【 事例3 】労務リスクに「漏れなく、早く気付く」仕組み

乖離時間の他にも、時間外上限規制や年次有給休暇の5日以上の取得義務などがあり、リアルタイムで監視することが重要です。

お客様から「今使ってる勤怠システムでアラートメッセージを表示しているものの、内容がよく分からない。アラートに対してどのような対処をすべきか分からない。」といったお問い合わせをよくいただきます。

例えば、スライドのアラートメッセージの上から3つ目「当月可能な時間外は10時間以下です」というメッセージにすることで理解しやすい内容になります。ポイントは、就業規則や法令を理解していない従業員でも一読して理解できることです。「時間外が35時間を超えました」というアラートでは、上限が分からない人に危機感が伝わりません。「残り何時間ですよ」とすることによって、従業員が「残りこれしかできないんだ」という危機感を伝えることができます。

カウンターという機能も有効です。メッセージに加えて、グラフィックを使って有給日数や残りの時間外労働時間を伝える機能です。スライドでは、緑・黄・赤色の電池マークを利用しています。「残業時間が緑色だからまだできるな」「黄色だから少しまずいかな」「赤色だからもうできないや」というように従業員が把握しやすい勤怠システム運用をすることが重要になります。

時間外労働については、ご紹介した運用で問題ないと思いますが、時間外労働以外にもさまざまな労務リスクが潜んでいます。

打刻管理は出退勤どちらも管理する必要があります。漏れなく管理するためには、アラートメッセージを見た従業員に何をさせたいか、どういった処理をさせたいか分かる作りが必要になります。スライドの例では、アラートをクリックすると確認画面が出てきます。さらに、確認画面から出退勤打刻の修正を申請する画面まで直結させています。こうすることで、従業員が迷いなく勤怠処理を進めることができるようになります。出てくるアラートをクリックすることで従業員を誘導して日々の勤怠処理を終えるというイメージです。

管理者であれば、部下の勤怠状況も確認するため、部下の状況も一目見てわかる必要があります。管理者の確認画面でも、「当月可能な時間外は◯時間以下です」アラートを表示し、アラートをクリックすると、対象従業員の名前や具体的な残り時間をすぐに確認できるようにできます。確認できると、対象従業員が時間外労働をできないから、他の従業員にタスクを割り振れるようにもなります。

この章のまとめとして、適切なアラートメッセージの通知についてお伝えします。悪い例と良い例をスライドにまとめています。

アラートメッセージがたくさん出てくると、管理者が全てを確認しきれません。そのため、なるべく簡潔に分かりやすくすることによって、管理者の方がアラートをチェックしやすくなります。

【 事例4 】「健康管理」残業時間以外の指標からもリスクを捉える

最後に健康管理について触れさせていただきます。例えば残業時間が月平均50時間の従業員がいる場合、上限規制には達していないので大丈夫と思われるかもしれません。しかし、それだけでなく併せて遅刻・早退回数や休日出勤が異常に多いとなると、既になんらかの健康被害が出ている可能性も考えられると思います。「残業」だけを見がちですが、健康管理においては別の観点でも勤怠データを分析していく必要があります。

アマノからのご提案にはなりますが、コンディション指数を使った運用はいかがでしょうか。例えば、遅刻や早退、休日出勤などの回数によってポイントを付加します。このポイントが高ければ高いほど従業員に何か異常がある可能性を示すことができます。例えば、スライドのようにランキングを表示し、トップ10の人達には上司や他のメンバーが話を聞いてあげる運用にすれば、業務や健康の現状を確認して健康被害を察知することにつながります。

今回紹介した内容をスライドにまとめました。ぜひご確認ください。

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労務リスクを予防する第一歩は適切な勤怠管理から!

GUIDE

勤怠管理のパイオニア「AMANO」のノウハウをぎゅっと凝縮してお届けします!

01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

勤怠管理システム
導入のポイント

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