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人事・労務なんでもQ&A

メンタル不調で休職明けの社員が復職プログラム中に10日間の旅行休暇を要求。認めざるを得ないのでしょうか?

復職プログラム中の長期旅行は、治療上の必要性や医師の意見を踏まえた慎重な判断が必要です。単純な娯楽旅行であれば拒否できる場合もありますが、療養目的や医師が推奨する場合は配慮が求められます。産業医との相談を経て、復職プログラムへの影響を総合的に検討することが重要です。
公開日時:2025.10.31
詳しく解説
大友 大 氏

大友 大 氏

社会保険労務士

大手資格予備校にて、制作課チーフとして社労士試験必修テキストの執筆、全国模試の監修を行う。

平成20年より都内の社会保険労務士事務所に勤務ののち、平成26年に開業。

給与計算業務を中心に行いつつ、労務にまつわるさまざまな問題に取り組む。

大友労務管理事務所 代表

Q. 復職プログラム中の社員から旅行休暇の申請。どう対応すべきか悩んでいます。

人事部で復職支援を担当しています。メンタル不調で3か月休職していた社員が先月復職し、産業医の指導のもと段階的な時短勤務で復職プログラムを実施中です。ところが復職から2週間経ったところで、「気分転換のため10日間の海外旅行に行きたい」と年次有給休暇の申請がありました。復職プログラムの途中での長期休暇は復職に悪影響を与える可能性もあり、どう対応すべきか判断に迷っています。法的にこの要求を拒否することは可能でしょうか。

A. 復職プログラムへの影響と医学的見地から総合的に判断する必要があります

復職プログラム中の長期旅行については、治療上の必要性や医師の意見を踏まえた慎重な判断が必要です。年次有給休暇の取得は労働者の権利ですが、復職プログラム中という特殊な状況では単純な娯楽旅行と療養目的の旅行とで取り扱いが異なります。

まず、産業医や主治医に相談し、旅行が復職に与える影響について専門的な意見を求めることが重要です。そのうえで、復職プログラムの継続性や他の社員への影響、会社の業務運営への支障の有無なども含めて総合的に検討しましょう。場合によっては旅行時期の調整や復職プログラムの見直しが必要になります。

復職中の年次有給休暇取得の法的位置づけ

年次有給休暇は労働基準法で保障された労働者の権利ですが、復職プログラム中の取得には特別な配慮が必要です。通常の労働者と異なり、復職中の社員は段階的な職場適応を目的とした特別なプログラム下にあります。

労働基準法第39条では、年次有給休暇の時季指定権は労働者にありますが、事業の正常な運営を妨げる場合は時季変更権が使用者に認められています。復職プログラムの継続性が「事業の正常な運営」に該当するかは個別判断になりますが、医学的根拠に基づいた合理的な理由があれば時季変更を求めることも可能です。

復職プログラムの法的性質と休暇の関係

復職プログラムは医学的見地に基づいて策定された治療の一環としての側面があります。そのため、プログラムの中断は治療効果を損なう可能性があり、労働者の健康管理義務の観点からも慎重な検討が求められます。

また、段階的復職は労働契約上の特別な取り決めに基づくものであり、通常の労働状態とは異なる配慮が必要です。復職計画書に休暇取得に関する制限事項を明記している場合は、それに従った対応が原則となります。

産業医との連携による適切な判断プロセス

復職中の長期休暇申請については、産業医の専門的意見が判断の重要な根拠となります。産業医は労働者の健康状態と復職プロセスの両方を医学的観点から評価できる立場にあり、その意見を踏まえた対応が求められます。

産業医に相談すべき内容

産業医への相談では、旅行が復職プロセスに与える影響について具体的な質問をすることが大切です。長期間の環境変化が精神状態に与える影響、復職リズムの中断による治療効果への懸念、旅行先での緊急時対応の可能性などを専門的に評価してもらいましょう。

特に海外旅行の場合は、環境の変化が復職意欲や精神状態に与える影響を慎重に検討する必要があります。産業医が復職プロセスの継続性を重視し、旅行時期の調整が望ましいと判断した場合は、その医学的根拠を労働者に丁寧に説明することが重要です。復職プログラム完了後の旅行や短期間での国内旅行への変更など、代替案の提示も含めて検討しましょう。

主治医との情報共有の重要性

産業医だけでなく、可能であれば主治医の意見も確認することが望ましいです。主治医は労働者の治療経過を詳しく把握しており、旅行が治療方針に与える影響をより具体的に判断できます。

ただし、主治医への相談には労働者本人の同意が必要です。復職支援の一環として情報共有の重要性を説明し、労働者の理解を得たうえで連携を図りましょう。

旅行承認時の留意事項

やむを得ず復職中の長期旅行を承認する場合は、復職プログラムの継続性を確保するための最低限の配慮が必要です。ただし、年次有給休暇中は労働義務が免除されるため、過度な制約は避けるべきです。

復職プログラムの一時中断と再開計画

旅行承認前に、復職プログラムの一時中断と再開に関する基本的な方針を確認しておくことが重要です。旅行期間中は復職プログラムが中断されることを明確にし、帰国後の復職スケジュール再開時期を事前に調整しておきましょう。

ただし、年次有給休暇中の労働者に対して会社が連絡を取ることは、本人の同意がない限り適切ではありません。緊急時の連絡も、労働者が自発的に連絡先を提供した場合に限定すべきです。

復職再開時の配慮事項

旅行から帰国した労働者に対しては、復職プログラムの再開に向けた丁寧なフォローが必要です。産業医面談を実施し、旅行が労働者の健康状態や復職意欲に与えた影響を確認します。

必要に応じて復職計画の修正を行い、労働者が無理なく職場復帰できるよう支援しましょう。時差調整が必要な場合は、復職ペースの調整も検討することが大切です。

他の社員や組織への影響を考慮した対応

復職中の社員へ特別な配慮をする場合は、他の社員への影響も考慮する必要があります。公平性の確保と組織全体のモチベーション維持を両立させる対応が求められます。

公平性の確保

復職中の社員に対する特別な配慮について、他の社員への説明責任を果たすことが重要です。ただし、個人の健康情報は機密事項であるため、説明内容には十分な注意が必要です。

復職支援制度の存在や会社の健康管理方針を全社員に向けて適切に周知し、理解と協力を得られる環境を整備しましょう。また、将来的に他の社員が同様の状況になった場合の対応基準も明確にしておくことが大切です。

業務運営への影響最小化

復職中の社員の長期休暇は、業務分担や職場の人間関係にも影響を与える可能性があります。事前に業務の調整や代替要員の確保を行い、職場全体への負担を最小限に抑える工夫が必要です。

また、復職中の社員が担当している業務の性質や重要度も考慮し、旅行時期や期間の調整を行うことも検討しましょう。繁忙期や重要なプロジェクトの進行中は、旅行時期の変更を提案することも合理的な判断です。

労働契約や就業規則との整合性

復職中の休暇取得については、労働契約書や就業規則との整合性を確認することが重要です。既存のルールとの矛盾を避け、法的リスクを最小限に抑える対応が求められます。

復職に関する規定の確認

就業規則や復職支援規程に復職期間中の休暇取得に関する規定がある場合は、それに従った対応が原則となります。規定が不明確な場合は、今回の対応を機に明文化を検討するとよいでしょう。

また、復職計画書に休暇取得に関する制限事項や手続きが記載されている場合は、その内容に基づいた判断を行いましょう。労働者との事前合意がある場合は、それを根拠とした対応が可能です。

復職支援制度の改善

今回の事例を踏まえ、復職支援制度の改善と予防策の検討に着手しましょう。明確なルール設定により、同様の問題の再発防止と適切な復職支援の両立を図ります。

復職支援規程の整備

復職期間中の休暇取得に関する明確なルールを規程に盛り込むことが重要です。医師の意見聴取手続き、承認基準、期間制限、緊急時対応などを具体的に定めることで、判断基準が明確になります。

また、復職プログラムの内容や期間に柔軟性を持たせ、個々の労働者の状況に応じた調整ができる仕組みを整備しましょう。画一的な対応ではなく、個別の事情に配慮した復職支援が可能になります。

産業医との連携体制強化

産業医との連携体制をより強化し、復職支援の質を向上させることが重要です。定期的な情報共有の仕組みづくり、緊急時対応手順の明確化、外部医療機関との連携強化などを検討しましょう。

産業医が不在の企業でも、外部の産業医サービスや医療機関との連携により、専門的な支援体制を構築することが可能です。労働者の健康管理と適切な復職支援の両立を図りましょう。

まとめ

メンタル不調から復職中の社員から受ける長期旅行申請は、労働者の権利と復職プログラムの継続性のバランスを取るのが難しい判断です。単純な承認・拒否ではなく、医学的見地と法的要件を踏まえた総合的な検討が必要になります。

重要なのは、労働者の健康回復と職場復帰の成功を最優先に考えることです。産業医との連携を密にし、個々の事情に応じた柔軟な対応を心がけましょう。また、今回の事例を機に復職支援制度の見直しを行い、より適切な支援体制の構築を目指すことが大切です。

適切な復職支援は、労働者の健康回復だけでなく、組織全体の健康経営推進にもつながります。勤怠管理システムを活用して、復職者の勤務状況を適切に把握し、きめ細かな支援を実現しましょう。

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参考:

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