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【社労士監修】2025年年末調整の改正点について

公開日時:2025.11.12

2025年の年末調整は昨年までとは大きく異なり、若干複雑になっています。税制改革によって所得税の控除の範囲が拡大したことが原因です。所得や被扶養者の年齢などによって控除額が異なるなど、制度がより複雑化しましたが、基本は従来どおりなので、変更点のポイントを押さえていれば難なく計算が可能です。
ここでは、変更点のポイントを解説します。
井上 敬裕 氏

井上 敬裕 氏

中小企業診断士・社会保険労務士

青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、給与計算を中心に労務関連業務を行っている。

社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/

年末調整書類の変更点

まずは必要書類の変更点を説明します。2025年の年末調整に必要な書類は、全員提出が必要なものとして以下の2点があります。

  1. 令和8年分扶養控除等申告書(マル扶)
  2. 令和7年分基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書(マル基・配・特・所)

このうち前年と異なるのは、2の書類です。前年のこれに該当する書類は、「令和6年分基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書(マル基・配・所)」でした。

2024年に実施された定額減税が2025年度は実施されなかったため、定額減税の申告の記載がないのが変更点のひとつです。それ以上に大きな変更点は、「特定親族特別控除申告書(マル特)」が新たに追加されたことです。特定親族特別控除という制度が新たに設けられたためですが、これについては後段で詳しく解説します。また、「基礎控除申告書(マル基)」の書式も、基礎控除の改正により前年と大きく異なるものとなっています。

所得控除の変更点

基礎控除の変更点

基礎控除は、すべての納税者が所得税計算時に無条件で差し引ける控除です。2024年までは、ほぼすべての人の基礎控除額が48万円でしたが、2025年からは合計所得(給与収入-給与所得控除額)によって基礎控除額が変わります。

以下の表は、2025年からの基礎控除額を合計所得金額別にまとめたものです。合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。

合計所得金額収入が給与だけの場合の収入金額基礎控除額
132万円以下200万3,999円以下95万円
132万円超~336万円以下200万3,999円超~475万1,999円以下88万円
336万円超~489万円以下475万1,999円超~665万5,556円以下68万円
489万円超~655万円以下665万5,556円超~850万円以下 63万円
655万円超~2,350万円以下850万円超~2,545万円以下58万円

ポイント

  1. 最大控除額が大幅増額:48万円 → 95万円(低所得者層)
  2. 所得に応じた段階的な控除:所得が増えるにつれて控除額が減少
  3. 2027年に再度簡素化:中間所得層の控除額が統一される予定

注意事項

  • 合計所得金額 = 給与収入-給与所得控除額
  • 給与収入換算額は目安です(給与所得控除額は収入により異なるため)。
  • 上記の表は2025年~2026年の適用分です。2027年からは合計所得金額が132万円超~2,350万円以下の場合、
    一律58万円に統一される予定です。

家族の扶養控除の変更点

扶養控除は、所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる所得控除のことで、扶養親族の合計所得、年齢、同居の有無によって控除額が異なります。

主な変更点

1.扶養控除の所得要件の緩和
項目2024年まで(旧制度)2025年から(新制度)
扶養親族の所得要件合計所得48万円以下(給与収入103万円以下)合計所得58万円以下(給与収入123万円以下)
控除額38万円38万円

大きく変更になる点として、扶養親族の所得要件が緩和され、いわゆる「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられました。

2. 特定親族特別控除の新設

本来の扶養控除の対象要件は合計所得金額が58万円以下(給与収入123万円以下)です。しかし、19歳から22歳の特定扶養親族については、合計所得が58万円を超えて123万円以下(給与収入123万円超~188万円以下)であっても、「特定親族特別控除」として控除を受けられるようになりました。

この控除額は、所得が増えるにつれて63万円から3万円まで段階的に減少します。

3. 特定扶養親族(19歳~22歳)の特別措置

19歳から22歳の扶養親族(特定扶養親族)については、さらに手厚い控除が受けられるようになりました。

扶養親族の合計所得金額扶養親族の給与収入換算控除の種類控除額
58万円以下123万円以下扶養控除(特定扶養親族)63万円
58万円超~123万円以下123万円超~188万円以下特定親族特別控除63万円→3万円(段階的に減少)
123万円超188万円超控除なし0円

重要な用語の整理

用語説明
源泉控除対象親族扶養控除と特定親族特別控除の対象となる親族の総称
特定扶養親族12月31日時点で19歳から22歳の扶養親族
特定親族特別控除特定扶養親族のうち、合計所得58万円超~123万円以下の親族に適用される新しい控除

注意事項

  • 特定扶養親族の年齢(19歳~22歳)は、その年の12月31日時点の年齢で判定されます
  • 扶養控除等申告書(マル扶)の記載欄が「控除対象扶養親族」から「源泉控除対象親族」に変更されています
  • 2025年に新たに扶養対象親族になった場合は、令和7年分のマル扶の再提出が必要です(異動月日及び事由の欄に「令和7年12月1日改正」と記入)

配偶者控除の変更点

配偶者控除は、配偶者の所得が一定以下である場合に、納税者の所得から控除を受けられる制度です。

主な変更点

1. 配偶者控除の所得要件の緩和

納税者の合計所得金額が900万円以下の場合の配偶者控除について、大きな変更がありました。扶養控除と同様に、配偶者控除についても「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられました。

項目2024年まで(旧制度)2025年から(新制度)
配偶者の所得要件合計所得48万円以下(給与収入103万円以下)合計所得58万円以下(給与収入123万円以下)
控除額38万円38万円

2. 配偶者特別控除の範囲

配偶者の合計所得金額が58万円(給与収入123万円)を超える場合は、配偶者特別控除を受けられます。

納税者の合計所得金額が900万円以下の場合

配偶者特別控除は、合計所得金額が133万円(給与収入201万円)まで適用され、控除額は38万円から3万円まで段階的に減少していきます。

配偶者の合計所得金額配偶者の給与収入換算控除の種類控除額
58万円以下123万円以下配偶者控除38万円
58万円超~95万円以下123万円超~160万円以下配偶者特別控除38万円
95万円超~100万円以下160万円超~165万円以下配偶者特別控除36万円
100万円超~105万円以下165万円超~170万円以下配偶者特別控除31万円
105万円超~110万円以下170万円超~175万円以下配偶者特別控除26万円
110万円超~115万円以下175万円超~180万円以下配偶者特別控除21万円
115万円超~120万円以下180万円超~185万円以下配偶者特別控除16万円
120万円超~125万円以下185万円超~190万3,999円以下配偶者特別控除11万円
125万円超~130万円以下190万3,999円超~197万1,999円以下配偶者特別控除6万円
130万円超~133万円以下197万1,999円超~201万5,999円以下配偶者特別控除3万円
133万円超201万5,999円超控除なし0円

重要なポイント

  • 所得要件の緩和:配偶者控除の適用範囲が拡大され、より多くの配偶者が控除の対象となります。
  • 段階的な控除額:配偶者特別控除により、配偶者の収入が増えても急激に控除がなくなることなく、段階的に減少します。
  • 納税者の所得も考慮:高所得の納税者については、控除額が減額または適用されない仕組みは継続しています。

注意事項

  • 配偶者の所得は、その年の12月31日時点の見積額で判定します。
  • 社会保険の扶養(130万円の壁)とは別の制度であることに注意が必要です。
  • 配偶者控除と配偶者特別控除は、どちらか一方のみ適用されます。

その他の変更点

上記で説明した変更内容があるため、扶養控除等申告書(マル扶)の書式に変更が生じています。2024年まではマル扶の「控除対象扶養親族」という欄に扶養家族を記載するようになっていましたが、2025年からは区分名称が「源泉控除対象親族」に替わります。この欄に扶養家族を記載します。

控除対象扶養親族から源泉控除対象親族へと控除の対象範囲が広がったことに伴い、2025年に新たに扶養対象親族になった場合は、令和7年分のマル扶の再提出が必要です。異動月日及び事由の欄に「令和7年12月1日改正」と記入する必要があります。

冒頭で説明した特定親族特別控除申告書(マル特)については、特定親族(12月31日時点で19歳から22歳の親族)の12月末までの合計所得の見積額を記入します。扶養控除の範囲(123万円以上)を超えるアルバイト収入が見込まれる場合は、マル特に記入する必要があります。

その他の変更点として、住宅ローン控除については、これまで提出が必要であった金融機関発行の借入金の年末残高等証明書の提出は不要になりました。税務署から送られてくる控除証明書を提出するだけでよくなっています。

まとめ

2025年の年末調整の変更点について説明しました。これらの変更が生じた根本的な原因は、今まで長きにわたって存在してきた「103万の壁」が「123万の壁」に引き上げられたためです。

123万の壁への引き上げは、大学生等の社会保険の扶養要件の引き上げ(130万から150万円へ)にも影響を与えています。年収の壁が複雑になるため、人事労務担当者や専門家は労働者の働き方について適切なアドバイスができるように知識の習得に努めていくことが求められます。

参考:

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勤怠管理の意義と
重要性

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