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【社労士監修】有給休暇制度改正の最新動向と主要ポイント

公開日時:2025.10.31

厚生労働省の労働政策審議会では、年次有給休暇制度の見直しに関する議論が進んでいます。日本の有給休暇取得率はヨーロッパ諸国に比べ低く、2019年の年5日取得義務化による改善は見られるものの、多様化する働き方に対応した制度改革が求められています。現在検討されている主な改正点を解説します。

時間単位の年次有給休暇付与の見直し

時間単位年休は年5日を上限として労使協定により導入可能ですが、より柔軟な制度運用を求める声が高まっています。制度の基本的な仕組みと現在検討されている見直し内容を整理します。

年次有給休暇の時間単位付与

年次有給休暇は原則として1日単位(半日単位を含む)で付与されますが、労使協定を締結すれば、年5日を上限として時間単位での付与が可能です。この時間単位で付与される年次有給休暇を「時間単位年休」と呼びます。時間単位年休1時間分の賃金額は、

(1) 平均賃金

(2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

(3) 標準報酬日額(労使協定が必要)

のいずれかを、その日の所定労働時間数で割った額になり、どの算出方法にするかを就業規則に定める必要があります。

時間単位年休も1日単位の有給休暇と同様に、事業運営に支障をきたす場合は使用者が時季変更権を行使できます。ただし、労働者が日単位で申請したものを時間単位に変更したり、その逆に時間単位での申請を日単位に変更したりすることはできません。また、計画的付与として時間単位年休を与えることはできないとされています。

労使協定には次の4点を規定する必要があります。

(1) 時間単位年休の対象労働者の範囲

(2) 時間単位年休の日数

(3) 時間単位年休1日の時間数

(4) 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

対象労働者の範囲については、「工場のラインで働く労働者を対象外とする」など職種や部門などで範囲を限定することは可能です。ただし、「育児を行う労働者に限定する」のように取得目的による範囲の限定はできません。

時間単位年休の見直し案

厚生労働省の調査によると、時間単位年休制度の導入率は制度開始の2011年以降増加を続け、2024年には24.8%に達しています(厚生労働省「第2回労働基準関係法制研究会(令和6年2月21日)資料」より)。この制度は、通院治療や子どもの学校行事への参加、家族の介護などで柔軟な休暇取得を求める労働者のニーズに応えるものです。半日単位の有給休暇では年次有給休暇の消化が早く進んでしまい、子の看護等休暇は無給であることが多く、時間単位年休のより柔軟な活用方法が検討されています。

一方、企業側の課題も明らかになっています。独立行政法人労働政策・研修機構が2020年に実施した調査では、時間単位年休を導入していない理由として「勤怠管理が複雑になる」が50.3%で最多でした。企業にとって運用しやすい制度設計が求められています。

厚生労働省は当初、年次有給休暇本来の目的である心身の疲労回復のためのまとまった休暇取得を確保しつつ、時間単位年休の上限を年次有給休暇付与日数の50%程度まで緩和することを検討していました。しかし、労働政策審議会では「上限5日間の拡大はただちに変更する必要がない」との結論に至ったため、今後は日数の拡大ではなく、利用方法の見直しによる制度改善が行われる可能性があります。

その他の見直し案

時間単位年休以外にも、賃金算定方法の統一化、長期連続休暇の促進、特別な事情を抱える労働者への配慮など、多角的な制度改善が検討されています。

有給休暇の賃金算定方法

年次有給休暇を取得したときの賃金の算定方法は、前述したとおり 

(1) 平均賃金

(2) 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

(3) 標準報酬日額(労使協定が必要)

の3つの方法が現行定められており、いずれの方法を用いるかは就業規則その他これに準じるものに定める必要があります。

一般的に、月給制の労働者が年次有給休暇を取得する場合は、上記(2)の方法を用いて月給から減算しない手法が多く採用されています。一方、日給制や時給制の労働者については、(1)の平均賃金による算定方法が多く用いられる傾向にあります。

しかし、上記(1)や(3)の方法を用いると、賃金日額が(2)よりも少なくなってしまいます。そのため厚生労働省は、(1)や(3)を選択せざるを得ない特別な事情がある場合を除き、原則として(2)の方法を採用すべきとの方針を示しています。

長期連続休暇の取得促進策

ヨーロッパ諸国と比較すると、日本の労働者による長期休暇の取得割合は低い状況にあります。そのため厚生労働省は、労働者のニーズを踏まえつつ年次有給休暇の権利を確保する観点から、最低でも2週間連続の年次有給休暇取得を目標とすべきとしています。

この実現に向けて、計画的な長期年次有給休暇付与の仕組みづくりや、年次有給休暇を取得した労働者に対する不利益取扱いの防止策について検討が必要だとしています。

育休復帰者・退職予定者への年5日取得義務

現行制度では、育児休業からの復帰者や退職予定者など、年次有給休暇が付与される期間内に残っている労働日数が極端に少ない労働者に対しても、他の労働者と同じく「年5日分の有給休暇取得(時季指定義務)」が課されています。このため、使用者・労働者の双方にとって、実際の働き方に合わない不合理な制約が生じている現状があります。

そのため厚生労働省は、こうした特別な事情を抱える労働者に適した取扱いルールの策定が必要としています。

参考:

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