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【社労士監修】キャリアアップ助成金の令和7年度改正について

公開日時:2025.07.11

2025年4月よりキャリアアップ助成金の内容が改正されました。改正の対象は正社員化コースと賃金規程等改定コースで、特に正社員化コースは大きく変わりました。それぞれの改正点を含め内容を詳しく解説します。
井上 敬裕 氏

井上 敬裕 氏

中小企業診断士・社会保険労務士

青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、現在は社会保険労務士として給与計算を中心に労務関連業務を行っている。

社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/

正社員化コースでの改正点

入社3年未満の正規転換者の支給額は原則40万

キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、2023年11月29日以降に有期雇用労働者から正社員に転換した場合、一人当たりの支給額は2期(6か月×2期)で支給されていました。従来の支給額は、2期合計で80万円(大企業は60万円)です。

しかし、2025年4月1日以降に正社員へ転換した場合、雇用から3年未満の有期雇用労働者については原則として1期(6か月)で40万円(大企業は30万円)のみの支給となりました。

無期雇用労働者から正社員転換した場合の支給額は、従来どおり有期雇用労働者から正社員転換した場合の半額です。

重点支援対象者の支給額は従来どおり

一方、雇用から3年以上の有期雇用労働者の正社員転換の場合の支給額は、従来のまま2期(6か月×2期)で80万円(大企業は60万円)です。なお、雇用から3年未満の有期雇用労働者でも、一定の条件を満たす場合は従来の支給額となります。

具体的には、過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下で、かつ過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない場合が該当します。また、雇用期間に関係なく、派遣労働者や母子家庭の母、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者も同様の支給額です。

上記のように、従来の支給額を受けられる対象者を重点支援対象者と定義しています。なお、「人材開発支援助成金の特定の訓練」とは、人材育成支援コース 、事業展開等リスキリング支援コース 、人への投資促進コース のいずれかの訓練を指します。

重点支援対象者の新設に伴い、これまで実施されていた加算措置が廃止されました。派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合の加算(28.5万円)はなくなります。母子家庭の母や父子家庭の父が有期から正規雇用した場合の加算(9.5万円)、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了した後に正社員転換した場合の加算(9.5万円)も廃止されました。

なお、通算5年を超える有期雇用労働者が正社員転換する場合は、以前と変わらず無期雇用労働者からの正社員転換とみなされます。

新卒から1年未満の正規転換者は支給対象外

新規学卒者の正社員転換については、雇用から1年未満の場合は支給対象外になります。新規学卒者とは、学校を新たに卒業し卒業年度の3月31日までに内定を得た者をいいます。したがって、卒業年度の3月31日までに就職先が決まらず、4月2日以降に就職した者は新規学卒者にはなりません。

本来、新規学卒者は最初から正規雇用労働者として雇用できるにもかかわらず、まず有期雇用労働者として採用し、6か月経過後に正社員へ転換するケースが見られました。このような方法で助成金を申請することは、キャリアアップ助成金の趣旨にそぐわないと判断されたため、今回の見直しが行われました。

賃金規程等改定コースの改正点

支給区分の新設と助成額の変更

賃金規程等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、適用させた場合に助成金を支給する制度です。従来の支給区分は、

(1) 引き上げ率3%以上5%未満:支給額1人当たり5万円(大企業は3.3万円)

(2) 引き上げ率5%以上:支給額6.5万円(大企業は4.3万円)

の2区分でした。

改正後は、

(1) 3%以上4%未満:支給額4万円(大企業2.6万円)
(2) 4%以上5%未満:支給額5万円(大企業3.3万円)
(3) 5%以上6%未満:支給額6.5万円(大企業4.3万円)
(4) 6%以上:支給額7万円(大企業4.6万円)

の4区分に増えました。

昇給制度を新たに設けた場合は20万円を加算

賃金規程等改定コースの加算措置について、従来は職務評価の手法を活用して賃金規定等を増額改定した場合のみ、1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が加算されていました。

改正後はこれに加え、有期雇用労働者などの昇給制度を新たに設けた場合にも、1事業所あたり1回限りで20万円(大企業は15万円)の加算措置が新たに追加されました。

その他の改正

キャリアアップ計画書の認定が不要に

キャリアアップ計画書については、これまで各コースの取り組み実施日の前日までに管轄の労働局長へ提出し、認定を受ける必要がありました。しかし、今後は認定は不要となり、届け出のみでよくなります。

つまり、労働局から認定印が押されたキャリアアップ計画書が返送されることはなくなります。ただし、計画書の記載内容や、事前に労働局に提出する必要がある点は変わりません。また、記載内容に不備があった場合は労働局から修正の依頼があるため、対応が必要です。

まとめ

今回の改正から、正社員化よりも有期雇用労働者等の待遇の改善のほうに重点が置かれていることがわかります。人手不足が慢性化している現在、正社員化達成率は大きく改善されています。正社員化コースについては、正社員になるのが難しい有期雇用労働者などに助成対象を絞っています。有期雇用労働者の待遇改善を手厚くすることで、助成金の本来の趣旨に沿った活用を目指しているといえるでしょう。

また、従来の制度のゆるいところは厳正化し、無駄なところは簡略化するという方向性が見られます。重点支援対象者を新たに設けたのは前者で、キャリアアップ計画書の認定廃止は後者です。計画書の認定の廃止は人材開発助成金等でも前年度から行われており、今後も手続きの効率化と迅速化は進んでいくものと思われます。

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