
本記事では、週休3日制度の詳細について説明します。

井上 敬裕 氏
中小企業診断士・社会保険労務士
青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、現在は社会保険労務士として給与計算を中心に労務関連業務を行っている。
社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/
週休3日制度とは?
週休3日制度とは、1週間の所定労働日を4日(休日は3日)とするフルタイムの働き方をいいます。短時間正社員や育児・介護短時間勤務などは労働時間が短く、働き方が似ていると思われがちですが、これらとはまったく異なります。週休3日制度は法的には定義されておらず、変形労働時間制やフレックスタイム制を活用することにより、週休3日でフルタイムの働き方を実現するものです。なお、社員の希望に合わせて週休3日制を適用することを選択的週休3日制といいます。
1日の所定労働時間や賃金の設定は導入する企業が独自に決定しますが、週休2日制と比較したとき、主に次の3つのタイプに分けられるようです。
総労働時間維持型(1日の所定労働時間は長いが賃金は同じ)
1週間の所定労働時間を維持するために1日の所定労働時間を増やします。所定労働時間が1日8時間、週40時間の週休2日制の場合、週休3日制では1日10時間、週40時間となります。変形労働制またはフレックスタイム制を適用するため、割増賃金は発生せず、賃金は週休2日制と変わりません。
給与維持型(1日の所定労働時間も賃金も同じ)
1日の所定労働時間は変えずに、1週間の所定労働日を1日減らします。1週間の所定労働時間が減少するため、1カ月の所定労働時間も減少しますが、月給は変えないという方法です。変形労働時間制、フレックスタイム制の導入は不要で、実質賃金の引き上げが行われることになります。
給与減額型(1日の所定労働時間は同じだが賃金は減少)
1日の所定労働時間は変えずに、1週間の所定労働日を1日減らします。1週間の所定労働時間が減少するため、1カ月の所定労働時間も減少します。これに応じて給与も減少させる方法です。変形労働時間制、フレックスタイム制の導入は不要で、給与は減少しますが時間単価は変わりません。
週休3日制の導入目的と事例
企業が週休3日制を導入する目的としては、
- 社員が育児や介護、病気治療などと仕事を両立できるようにするため
- 社員が大学院等での学習やボランティア活動などと仕事を両立できるようにするため
- 兼業や副業を促進することにより人材の多様化を図るため
- 働きやすい職場であることをアピールして人材採用競争力の強化を行うため
などがあります。
ここで、厚生労働省の働き方・休み方改善ポータルサイトに掲載されている、週休3日制導入企業の事例を2件紹介します。
社会福祉法人福泉会(福井県)
社会福祉法人福泉会(所在地:福井県、社員数215名)では、介護業界の慢性的な人材不足に対応するため、多様な働き方を用意しています。そのひとつが2020年4月から導入している選択的週休3日制です。
同社の本来の所定労働時間は週40時間(8時間×5日)ですが、2020年4月に所定労働時間週32時間(8時間×4日)の短時間正職員制度(労働時間短縮型)を導入しました。2024年4月には、賃金が減らない所定労働時間週40 時間(10時間×4日)の週休3日制正職員制度(給与維持型)も導入しています。
株式会社オロ(東京都)
株式会社オロ(所在地:東京都、社員数284人)では、2023年1月に選択的週休3日制を導入しました。同社の選択的週休3日制には、1日8時間・週32時間働いて月給を5分の4にする「8時間勤務型」と、1日10時間・週40時間働いて月給は据え置く「10時間勤務型」の2タイプがあります。社員はどちらか好きな方を選択でき、「10時間勤務型」には1カ月単位の変形労働時間制が適用されます。選択的週休3日制を利用する場合に、週の勤務時間に応じて給与が減っても構わないという人もいれば、給与はできるだけ維持したいという人もいるでしょう。多様なニーズに対応するため、同社では当初から2タイプを導入する検討を進めました。
どちらのタイプでも、業務バランスと管理の煩雑さを避けるために、休日は火・水・木のいずれかの曜日に限定しています。
導入する際の注意事項
週休3日制の導入に当たっては、
- 制度導入の目的を明確にする。
- 制度導入により社員に期待する役割(職務内容、労働時間)を検討する。
- 制度の労働条件(人事評価、賃金、教育訓練)を検討する。
- 制度を導入し、周知する。
の手順で進めていきます。
交替で休日を自由に選択できる制度や週休2日制と選択できる制度になっている場合、業務の配分や責任に偏りがないように注意する必要があります。一部の社員に負担が生じてしまうと、彼らのモチベーションが一気に低下してしまうからです。また、休みの日に取引先から連絡があった場合の対応も社員任せにするのではなく、会社としてのルールを決めておく必要があります。
まとめ
週休3日制は社員に優しい制度ではありますが、会社側から見ると、より短時間で多くの成果を出すという生産性の向上が必要になってきます。業務のDX化や商品・サービスの高付加価値化などと同時に取り組んでいく必要があることから、週休3日制のハードルは低くはありません。社員にも仕事の量ではなく質が求められます。
したがって、週休3日制を実現するためには、社員も経営者意識を持って主体的に働くという組織風土づくりが不可欠となります。