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働き方改革法改正後に迫ってきた!「人材不足に潜む労務リスク」

2019.07.22

村上 元茂 氏

村上 元茂 氏

2008年 弁護士登録(東京弁護士会)
2014年 株式会社アクセア社外取締役就任(現任)
2015年 弁護士法人マネジメントコンシェルジュ設立(現任)
2019年 社会保険労務士法人clarity設立(現任)

人事・労務、外国人雇用、企業に対する不当クレーム対応等の業務に従事。
弁護士法人における人事労務分野対応としては、日常的な問題社員対応に加え、訴訟、労働審判、あっせん、労働組合との団体交渉を得意とする。
社会保険労務士法人における対応業務としては、紛争対応を見据えた労務管理についてのアドバイス、各種規程整備、人事評価システムに関するアドバイス、HRテックを用いた労務管理についてのアドバイスを行っている。
また、弁護士として、BtoC企業の依頼を受け、企業に対するクレーム・クレーマー対応にも多数関わる。

各企業において、働き方改革関連法への対応が本格化しています。
従来、残業によって雇用調整を行ってきた多くの企業では、時間外労働の上限規制により、別の手段で雇用調整を図る必要が生じています。

また、非正規雇用による雇用調整についても、同一労働同一賃金原則(以下「同一労賃」といいます。)が大きく制限となります。

各企業で生じている実務上の問題点として、
①上限規制に対応した労働時間管理の在り方
②残業減少により給与が減った従業員の不満の解消
③時間外労働に代替する労働力の確保
④同一労賃を踏まえた賃金制度の設計
があります

上限規制に対応した労働時間管理の在り方

上限規制に対応した労働時間管理の在り方(①)については、各社の実態に合った制度設計が重要となります。

例えば、就業時間中の喫煙やスマートフォン使用の禁止、単純作業のアウトソース等によって労働生産性を上げる工夫がなされています。
それ自体はよいのですが、慢性的な長時間労働には企業毎に背景があり、他社の制度を断片的に真似てもうまく機能しない点には注意が必要です。
すなわち、企業実態を無視した時短は、かえって隠れた持ち帰り残業といった本末転倒な事態を生じさせます。

なお、近時、残業の抑制を意図して残業代相当額を歩合給から控除する賃金規定を有効とした裁判例が出ましたが(最判平成29年2月28日、東京高判平成30年2月15日)、無条件に有効と認めたわけではなく、割増賃金と通常の賃金の明確区分性や労基法37条適合性を求めておりますので、同様の制度導入を検討する場合は注意が必要です。

残業減少により給与が減った従業員の不満の解消

次に、残業減少により給与が減った従業員の不満の解消(②)のため、副業を推進する企業が散見されます。
すなわち、従来残業代をあてにしていた従業員の不満を受け「自社では残業をさせられないので他社で副業をしてもらう」といった企業です。

しかし、現状、副業には看過できない複数の法的リスクがあります。

まず、現行の労働基準法第38条及び通達によれば、労働時間は使用者を異にする場合であっても通算されます。そのため、本業と副業の労働時間を通算して法定労働時間を超過すれば後に就業させた使用者は残業代を支払う義務を負います。

例えば副業が本業より前に行われている場合、副業の始業時間から起算して法定労働時間を超過した時点で残業代が発生するのが現行法制です。
この思わぬ残業代の発生が一つ目のリスクです。

また、副業に関するもう一つのリスクは、従業員に対する安全配慮義務の問題です。
すなわち、本業と副業を合わせれば上限規制や過労死ラインを超えるような労働時間となってしまう場合、従業員の健康被害に対する企業責任が問題となるのです。

この点、労災訴訟においては、従業員の過重労働について使用者に認識があれば、安全配慮義務違反が認められます。とすれば、副業の容認が過重労働の認識、ひいては安全配慮義務の前提としての予見可能性ありとされるリスクがあります。

このように、副業を容認する以上その業務負荷も把握せざるを得ません。
しかし、副業を理由に本業において業務軽減措置が求められるのは本末転倒です。
そこで、本業と合わせて月45時間未満の残業という条件付きで副業を容認する企業が出てきています。

副業推進については、予想外の残業代と安全配慮義務について意識したうえで検討すべきです。

時間外労働に代替する労働力の確保

次に、時間外労働に代替する労働力の確保(③)として、外国人雇用に着目している企業も少なくないかと思います。

この点、今般の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)改正によって、外国人雇用の間口が広がったのは事実です。

もっとも、新たに創設された在留資格「特定技能」は、産業分野や業務区分等、資格要件が極めて厳格に規定されています。
この点、入管法上、外国人が在留資格と異なる業務に従事した場合、資格外活動(不法就労)罪が成立します。それのみならず、資格外活動を行った外国人を雇用した企業にも不法就労助長罪が成立します。しかも、不法就労助長罪は使用者の故意が要件となっておらず、「在留資格を持っていないとは知らなかった」という言い訳が通じません。

そして、ほとんどの外国人には何らかの就労制限が付いています。
すなわち、外国人雇用を検討する企業にとって在留資格制度の把握は必須といえるのです。

外国人雇用に対する関心が高まっている昨今、不法就労助長罪による検挙は、大きく報道される傾向にあります。

すなわち、外国人雇用は、深刻な法的リスク及びレピュテーションリスクを孕んでいるのです。

そこで、外国人雇用を検討する企業においては、日常的な労務管理のみならず在留資格をはじめ入管法の規定に細心の注意を払う必要があります。

同一労賃を踏まえた賃金制度の設計

最後に、同一労賃を踏まえた賃金制度の設計(④)に関しては、多くの企業で「いつから」「何が」求められているのかが理解されていません。

まず、「いつから」に関し、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)は2020年4月に施行されます(中小事業主は2021年4月)。
しかし、昨年6月、労働契約法20条に関し、実質的にパート・有期法の内容を先取りした2つの最高裁判決が出ました。これにより、有期雇用従業員は現行法下でも正規従業員との待遇格差について争い得るのであり、事実上、各企業は改正法の施行を待たず、直ちに改正法に沿った賃金制度の構築を迫られています。

次に、「何が」に関し、前提条件が同じ場合には同じ条件を求める均等待遇、前提条件が異なる場合には違いに応じた条件を求める均衡待遇が求められています。また、企業には正規従業員との待遇差について説明する義務が規定されました。
そのため、待遇差を設ける時点で、明確な根拠を準備する必要があるのです。

そして、同一労賃の対象は、基本給や賞与のみならず各種手当を含むあらゆる待遇であり、企業によっては改正法施行を待たず、直ちに賃金体系の抜本的な見直しが必要となります。

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